きつねうどん、たぬきそば

ユカ子

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きつねうどん、たぬきそば

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 体育祭もあと一週間に迫った日の放課後、正之助は生徒会室でエロ本を広げて熱心に眺めていた。他の生徒会役員は既にクラブ活動に参加していて、残っているのはどのクラブにも所属していない進也と正之助だけだった。勉強をしていた進也は手を休め、正之助を見やる。
「それ、どうせ茂樹に回してもらったんだろ」
「うん。アナルに興味があるって言ったら、くれた」
進也は葉っぱを器用にフリスビーに変えると、正之助の頭にぶつけた。
「って!!」
「だから、どうしてお前はそう阿呆な失言ばっかすんだよ!」
その時の茂樹の反応が容易に脳裏に描かれて、進也は頭が痛くなる。繰り返される正之助の愚行を流せない自分に問題があるのだろうかと進也は思ってしまう。
「だって前は痛かったからさ・・・・痛くならない方法を覚えとかなきゃ、怪我するかもしれないじゃん」
ぱらぱらとページをめくって、正之助は男女が絡む写真を真剣に見つめる。人間の雌の裸を見ても、正之助は何も感じない。こんな細い体でこんな大きな乳房をよく支えられるなぁと言う、ずれた感想ぐらいしかない。
 この雑誌はアナルセックス特集号で、男女間のみならず、男同士や女同士と言ったゲイカップルにも対応した、非常にオーラルな編集の下、最高のエクスタシーを味わう為のアナルセックスの極意を伝授してくれる、優れた指南書だった。こんな雑誌を持っていた茂樹の趣向を疑う。
 進也は正之助から雑誌を奪い取って、ゴミ箱に放り捨てた。
「なにすんだよ!痛いのはやだって言ってんだろ!」
「もういいんだよ!」
正之助が手を伸ばしてゴミ箱を取ろうとすると、その手を進也が掴んだ。
「もう・・・あの教師とヤらなくてもいい」
「え?なんで??」
理由を問われても、進也はうまく答えられなかった。とにかく、もう正之助とは関わって欲しくなかった。あの男を地獄に叩き落す方法なら、他にもいくらだってあるだろう。そう自分に言い聞かす。
進也が答えないので、正之助は不安になってきた。もしかして、自分はまた知らない内に大きな失敗をしでかしてしまったのではないか、と。
「・・・俺・・・・また何かやっちゃった?」
「違う・・・・ただ俺が・・・・・」
その続きを、進也は言葉に出来ない。言いたくないのではなく、言えないのだ。自分でも、どう表現していいか分からない感情だった。人間はこの感情をどう言葉で言い表すのだろう。長く人間に混じって生きてきたのに分からなくて、もどかしかった。
「・・・体育委員会が始まるから・・・今日は先に帰れ」
「うん・・・・・・・はい」
素直に帰っていこうとする正之助の腕を掴み、進也はその顔に顔を寄せた。唇を甘く噛み、舌を滑り込ませる。正之助は進也にしがみついて、口付けに応えた。
しばし唇を貪った後、進也は正之助を放した。少し気持ちが落ち着いて、息を整える進也を、正之助が覗き込んだ。
「進也?」
「なんでもねぇ。ほら、行け」
「でも・・・・」
「お前、俺に逆らう気?バラされたくなかったら、言う事聞け」
「はいはい」
「はいは一回!」
「はい!」
窘められ、訂正した正之助に進也が頷いていると、正之助がヘヘッと軽く笑った。
「そういう所、お前ってホント稲荷さんにソックリだよな」
「・・・・・・」
「じゃ。いってきまーす」
正之助は鞄を抱えて生徒会室を後にした。正之助が出て行って、進也は息を吐く。もう正之助を使うつもりがないなら、彼を解放してやらなければと思うが、手放せない自分がいる。
 あの狸をどうしたいか、進也は自分でも分からなかった。



+



 家に帰って、たぬき蕎麦を啜りながら一家団欒していると、突如、玄関の扉を激しく叩かれた。ガタガタ音が鳴って扉壊しそうな訪問者の勢いに、慌てて正之助は人間に変化して扉を開けた。そこにいたのは、丈だった。人間に変化して、なり子もやってくる。
「どうしたの?」
「お姉ちゃんがいなくなった!」
「純が?」
「家に帰って来ないんだ!!」
そう言って、丈はウォウウォウと泣き出した。素早くなり子が丈の鼻を舐めてやる。それを見て僅かに苛立ちながら、正之助はなり子を丈から引き離すと、厳しい表情で問うた。
「お前ん家の父ちゃんと母ちゃんは?」
「母ちゃんは警察に行ってる。父ちゃんは近所の人と一緒に探しに行って・・・・」
「俺も探すの手伝うよ。お前は家に帰って、連絡を待ってろ」
「でも・・・・・」
一人で心細いのか、丈はそわそわしていた。正之助がなり子に言った。
「なり子、丈についてってあげて。俺が迎えに行くまで、一緒に居るんだ」
なり子はブンブン首を縦に振り回した。それを奥で聞いていた祖父が、血相を変えて飛んできた。
「いかんいかん!そんな乱暴そうな人間の家になり子を連れて行くな!!!お前も・・・こんな遅い時間に外を出歩いたら、悪い人間に捕まる!狸汁にされるぞ!!!!!」
祖父の言葉に丈はきょとんとしていたが、なり子は目を剥いて祖父を威嚇し、正之助は大声で言い返した。
「丈はそんな人間じゃない!なり子の友達なんだよ!俺も・・・・友達を探しに行きたいんだ!」
「正之助・・・・!お前までワシに逆らう気か!!!!」
祖父が腕をまくって葉っぱを取り出したので、その手を後ろから正平が掴んで止めた。正平が怒鳴る。
「兄ちゃん、早く行ってあげて」
「うん・・・・はい!ごめん、爺ちゃん」
勘当だと叫んでいる祖父を置いて、正之助となり子は丈の後について純の家に向かった。

 丈となり子を置いて別れると、正之助はドロンと猫に変化して、進也の家に向かった。純の家から進也の家は近く、すぐに辿り着く。家には明かりは点されてなく、誰も居ないようだ。正之助はドロンとカラスに変化すると、空へと飛び上がった。
 進也や茂樹なら純の居場所が分かりそうなのだが、彼らの居場所がまず分からない。もしかして学校に残っているのかもしれないと、正之助はそのまま学校へと飛んでいったのだった。
 風の強い日だったので、空から飛んでいくのは骨が折れた。けれども、純を探すには空を飛んだ方が手っ取り早い。眼下に広がる人間の住まいの間に目を走らせる。空はとっぷり暮れてしまっていたが、夜目のきく正之助には問題ではなかった。家々の明かりや星星のきらめきが、正之助の手助けをしてくれた。
 学校に到達し、正之助は裏庭に降り立った。そこから校舎へと歩いていこうとして、ふと、足を止めた。兎小屋を見る。兎達に混じって、大きな黒い影が見えた。
 正之助はふと思い出す。ここで、純が言った言葉を。
「・・・・純?」
声をかけると、その暗闇はビクッと大きく揺れた。正之助は確信を得た。恐る恐る兎小屋に近づき、もう一度呼びかける。
「純」
「・・・・・・」
雲の漂いから月が顔を出せば、月明かりが兎小屋を照らし、純の顔を正之助にはっきりと見せてくれた。ふてた表情で、純は兎を抱いて座り込んでいた。正之助はほっとする。
「良かった。・・・いなくなったって聞いて、びっくりしたよ」
「・・・・・・・」
「早く帰ろう。ここ寒いよ」
「・・・・・・・」
純は黙ったまま、返事をしない。こんな頑なな純は初めてで、正之助は首をかしげる。
「どうしたの?皆、心配してるよ」
正之助は兎が怖いのでこれ以上は近づけない。離れた場所から様子を伺う。純はじっと動かず、兎に顔を埋めた。
「・・・帰りたくない」
「え?」
普段、滅多にわがままの言わない純が、家人に心配までかけさせた上、こんな所に留まると言い出したので、正之助は戸惑った。純は唇を尖らせ、うっすら目に涙をため、意地を張ったように睨み付けるように正之助を見ている。
「勝手に私の将来を決め付ける・・・あんな家に帰りたくない。私の夢を応援してくれない友達にも会いたくない」
そう言って、純は兎にしがみついた。
「・・・・・・うーん・・・」
正之助は唸った。どうやら彼女の望む進路を周囲から反対され、拗ねているようだ。正之助にはいまいちピンと来ない話題で、答えに窮する。
「多抜くんも・・・・皆と同じ・・なんでしょ・・・私に・・・正しい選択をしろって・・・押し付けてくるんでしょ・・・」
正之助は腕を組んだ。純がどんな返事を望んでいるか、さっぱり分からない。だから、彼なりに整理しながら、答えを返した。
「・・・・俺には分からないよ。どうして、将来の事を今決めようとするのか。だから、どっちが正しいなんて言えない」
純は眉を寄せた。
「大事なのは・・・・どうすれば純が幸せになれるか、じゃないかな?それを、純も皆も考えたらさ、答えは同じになると思うんだけど、どうしてそうならないんだろうね」
正之助は呟きながら、答えを探す。
「丈が心配してた。きっと君のお父さんもお母さんも心配してると思う。それは純が好きだからだろう?純の事が好きなんだから、絶対、一番に純の幸せを考えてくれてる。もう一度、よく、純がどうしたら幸せになるか話してみたら?」
それは詭弁だ。奇麗事だ。世の中、そんな単純な構造に出来ていない。話せば分かるなんて、そういつもいつも理屈で人間は生きていない。それが正之助には分からない。
「それでも・・・・・分かってくれなかったら?」
難しい問題だ。正之助は必死で頭を回転させる。自分に置き換えて、考えてみる。ダメだ、全然想像がつかない。そもそも家族に逆らうなんて出来ないと思ったが、そう言えばついさっき、祖父に喧嘩を売って家を出てきたのだと思い出した。その時の自分の気持ちなら、分かる。
正之助はにっこり笑った。
「勇気が必要かな」
「・・・勇気?」
困惑した顔で復唱した純に、正之助は大きく頷いてみせた。
「戦う勇気だよ。どうしても自分の幸せを追う為に他の人間と衝突しちゃうんなら、その時は、戦う勇気が必要だろう?こんな所にいたって、戦えない」
純は兎をギュッと抱き締め、奥へ体を動かせた。正之助は困ったように眉を下げる。
「純」
「・・・無理よ・・・・」
ろくに反抗期も無かった純にとって、親に歯向かうだけの勇気は、せいぜいこうやって行方をくらますぐらいだ。それももって一日だと自分でも分かっている。明日には親の言う通りの進路希望を提出しているだろう。そう思うと、やるせない。
首を振って後ずさる純に、正之助はぐっと拳を握り締めると、一歩前に進んだ。
「純なら・・・出来るよ」
また一歩、正之助は小屋へと近づく。兎が正之助の匂いを察し、うろうろ動き出す。あからさまに兎は正之助を警戒している。正之助だって、兎に近づきたくない。噛み付かれたらどうしよう。火をつけられたら?からしを塗りつけられたら?泥船に飛び乗ったつもりで、正之助は小屋の取っ手に手をかけた。純がはっと顔を上げる。
「俺も一緒についてってあげるから、もう帰ろう」
決死の覚悟で正之助は兎小屋を開けると、素早く中に入って、純の手を掴んだ。兎が正之助に噛み付いてくる。正之助の顔は真っ青だ。それでも、無理に正之助は純に笑いかけた。
 当惑していた純だったが、その引きつった笑顔を見ていると、涙が込み上げてきた。見るのも怖い兎の輪の中に入ってまで、自分を迎えに来た正之助の気持ちが嬉しい。嬉しいのに、どうしても込み上げてくる思いに、嗚咽が止まらない。
唇を噛み締め、一度手で涙を拭うと、純はやっと正之助に笑い返した。
「なんでその言葉を言ってくれたのが・・・多抜くんなんだろ」
「え・・・・・・」
「進ちゃんに言って欲しかったのに・・・・・・・・進ちゃんに来て欲しかった」
そう言って、純は正之助に抱きついた。強く正之助を抱き締め、ぐすぐすと泣き出す。正之助はただされるがままに抱き締められ、呆然とその言葉を聞いていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 ここにこうやって助けに来たのは正之助なのに、純が求めていたのは正之助じゃなく進也だった。ここに来た自分が否定された気分だった。兎にまで噛まれて、自分は一体ここで何をしているのだろうと、そう思うと正之助は胸が苦しくなったのだった。



 純を連れて家に戻ると、なり子は多抜家に帰されて、代わりに連絡を受けた茂樹と進也が家に居た。純の両親はおざなりに正之助に礼を言うと、純を連れて奥に引っ込んでしまった。丈が両親の代わりに正之助を奥へと招いたが、正之助は断った。正之助と一緒に茂樹と進也も純の家を出て、ぽつぽつ歩いていく。三人とも、何を言っていいか分からなかった。体育祭の準備に追われて、それほど純が悩んでいたとは、誰も気づかなかった。
 先に進也が家に辿りつき、別れた。
 二人きりになると、茂樹が正之助に言い聞かすように、話し始めた。
「・・・お前・・なんで純を見つけた時に進也に連絡してやらねーんだよ・・・・」
「なんで・・・?」
「純が進也を好きなのは見てたら分かるだろ?純は進也に来て欲しかったんだよ。どうしてそんな簡単な事が分からねーんだよ。あいつの事が好きなら、弱ってる時に狙う真似するんじゃねーよ」
誤解が生じていた。正之助は純に特別な感情を持っているつもりはない。けれども、はたから見れば十分、正之助が純に好意を抱いているように見えていたのは事実だ。真意や真実より周囲の目の方が、時にその人間の人生に大きな影響を与える。それは人間に化けた狸も例外ではなかった。
「俺はそんな卑怯な真似はしない・・・・・・」
「・・・・・茂樹は純が好きなのか?」
何を今更と言わんばかりの軽蔑の目を茂樹は送った。微妙なラインを行ったり来たり、思春期特有のあやふやな境界線など、ただでさえ鈍感な狸の正之助に察せられようものではない。
「好きなら、言えばいいじゃないか」
「傷つけんの分かってて、言えるわけがねぇだろう!」
ムキになって茂樹は言い返した。自分の気持ちを押し付けて純を困らせるよりは、彼女の幸せを応援したい。ずっとそのスタイルでやってきて、これからもそれを貫き通すつもりだった。純がめでたく進也と結ばれるまでは。
 不器用に自分の恋を捨て、器用に相手の恋を応援する、そんなややこしい事情は正之助にはさっぱり分からない。
「傷つけるかどうかなんて、言ってみないと分かんないだろ」
「うるせぇな!お前に純の気持ちが分かんのかよ?!」
「純の気持ちもお前の気持ちも俺にはわかんないよ。でも、誰かを好きだって気持ちは分かる。どうしてその気持ちを言えないの?好きなら好きって言えばいいじゃん。好きって言うのは、言うのも言われるのも気持ちいいよ」
素朴な疑問だ。正之助は恋愛感情で誰かを好きになった経験は無いが、家族や親しい人への愛情は持っているつもりだ。
正之助の発言はまるで子供の理屈だ。歳をとるごとに、そう直線ではいられなくなる。
「言えるかよ」
「なんで?」
歪に曲がっていく関係に歯止めをかけないのは・・・・
「怖いんだよ」
ついに本音を零してしまい、茂樹は口元を手で覆った。
言ってしまえば今の関係さえも終わってしまいそうで、そうなるぐらいなら、永遠に口を閉ざした方がいい。在り来たりな逃げ口上だ。
「全部終わっちまいそうで・・・・」
ぼそりと呟いた言葉は、正之助にも届いた。たった一言が、すべてを終わらせてしまうぐらい強い力を持つのだろうかと、正之助は考える。でも、人間は逞しい。昔、大きな争いがあってこの辺り全て焼け野原になったと聞いてる。そこからよくもここまで大きな建物や車みたいな機械をいくつも作って、自分達の山まで崩したものだ。そこまでタフな人間達だから、弱音を吐くのは意外だった。
「終わったら、また始めればいいんじゃないの」
ハッと顔を上げた茂樹は、しばし正之助を凝視していたが、やがて悔しそうに正之助を睨みつけ、吐き捨てた。
「簡単に言うなよ。俺は、お前みてぇに単純じゃねぇんだっ。お前と俺は、全っ然違うんだよ!!」
叩きつけられた言葉が胸にグサリと突き刺さる。
人間が作った言葉と言うのは非常に便利だが、時に刃物よりも人の心を抉るらしい。
 茂樹は走り去っていった。その後を正之助はボンヤリ眺めていた。純の気持ちも、茂樹の気持ちも、本当に分からない。あんなに一緒に仲良く過ごしていた日々は、全部嘘だった気がしてくる。実際、人間に化けて嘘の日々を過ごしていたのだ。
そう、所詮全部偽りの世界だ。自分は人間じゃない。
 ドロンと狸の姿に戻ると、そのまま自分の家へと走って帰っていったのだった。

 家に帰ると、激怒した祖父が家に入れてくれなかった。仕方なく、正之助は庭にある犬小屋の中に入る。そこにはなり子も入っていた。二人身を寄せ合い、蹲る。
「・・・・ジュン、いた?」
「うん。もう家に帰ったよ」
「・・・・また来てくれる?」
「分からない」
正之助なりに、皆の事を思っていたつもりだった。けれども、その気持ちは全部見当違いの方向へ誤解されて、空しさばかりが胸に残る。
 なんて面倒くさい。
 これ以上、無意味な事を考えるのはもう嫌だった。
 正之助はなおも喋りかけてくるなり子を無視し、狸寝入りを決め込んだ。


+



 祖父が家に入れてくれず、学校にも行く気になれない正之助は、猫に変化すると、家から少し遠くにある公園をぶらぶら歩いていた。ペットを連れた老父がベンチに座って友達と囲碁を打っている。子連れの母親がベビーカーをつき合わせて井戸端会議に花を咲かせている。空には雲ひとつ無く、凪ぐ風も無い。
 こうして猫に変化していれば、人間社会のごちゃごちゃした厄介事に巻き込まれずに済むし、のんびり生活出来ると正之助は思った。なんで人間なんかに変化していたのだろう。
こうやって猫になって、人間から餌をもらって生きていく、きっとそっちの方が性に合っている。
 ベンチで腹を出して寝転がっていると、影が出来た。傍に誰かが座り、腹を撫でてくれる。それが気持ちよくてゴロゴロ喉を鳴らしていたら、プッと笑われた。よく知っている笑い声だ。
「お前、狸じゃなくて猫だったのかよ」
進也だった。時計を見れば、もうとっくに一時間目が始まっている時間の筈なのに、どうして進也がここにいるのか解せなかった。体を起こし、ニャァと鳴いてみる。進也は正之助が何を聞きたいか分かっているようで、足を組んで、ベンチに背凭れた。
「・・・昨日晩、茂樹から電話があった」
なら、大体状況を把握出来ているのだろう。進也は聡い。
 正之助は腕に顎をつけて、寝そべる。その背を進也は撫でた。二人はしばらくそこに座っていた。老父達は昼食の為にぞろぞろ帰って行き、母親も井戸端会議を終わらせると、各々の家へと別れていく。今度は公園の傍に車が数台停まり、中ではサラリーマン風の男が電話を片手にパンを頬ばっている。大工の一団が公園の脇で青ビニールのシーツを広げ、弁当を食べていた。車の流れも変わっている。人間の、ごく当たり前の日常の一場面を、二匹はぼんやりと眺めていた。少し空に雲が流れ始めて、二人の上空を過ぎていく。
 ぽつり、進也が呟いた。
「今日は一日・・・お前に付き合ってやるよ。人間に化けるのも悪くねーもんだぞ」
その言い回しが不自然で、返事に詰まっている正之助を進也は抱き上げた。反論は許されないらしい。進也は正之助を抱え、自宅へ向かって歩き出した。
 家に着いて、進也は葉っぱを頭に乗せると、ドロンと変化した。それは、高校生の進也をもう少し歳を取らせた大人の男性だった。
「お前も変化しろよ。それとも、こういう高度な変化は出来ねーの?」
正之助は渋ったが、進也に促され、仕方なくドロンと変化した。同じく、少し大人になった正之助になった。
「・・・・何すんのさ」
「デート」
「はぁ?」
ククッと進也は笑って、正之助の手を引っ張って、奥の部屋へと移動した。こっそり武信の部屋に忍び込み、多くあるスーツを数着体に宛がう。二人はスーツに着替えると、外に停めてあった車に乗り込んだ。
 正之助が不安そうに進也を見た。
「お前・・・運転出来るの?」
「まぁな。免許は持ってないけど」
「おいおい」
呆れる正之助に構わず、進也は車を発信させた。
 車の先には丸い輪とYの字がついている。これは高級車ではと、正之助はそわそわしながら車の中を物色する。時々、タクシーに乗ることはあったが、年に数回だ。車に乗ること自体、正之助は慣れていない。流れる景色の速さに目を輝かせる。
「速いなぁ。こんなの発明するって、人間ってすごいな」
「今頃何言ってんだよ」
進也はクスクス笑った。車を更に加速させ、高速道路に入る。びゅんびゅん飛ばす車ばかりで、正之助は更に驚いた。よく見れば、自分達の乗っている車もものすごい速さで動いている。
「電車みたい」
「さすがにそこまで早くねーけど。気持ちいいだろ」
「窓開けていい?」
「ダメ。危ない」
「ちぇっ」
この速度で窓を開けて何をする気なのか、進也は冷や冷やした。この狸の常識の範囲は、未だ把握出来ていない。
 二人が高速道路を下りると、海沿いの道に入った。道路はさほど混んでおらず、正之助はキラキラ輝く海の光に目を見張る。
「・・・・これ、海だよな」
「見たこと、ある?」
「ううん、初めて。・・・・すごい・・・これ全部水なんだ・・・・」
山育ちの正之助には、噂では聞いたものの海がどんなものなのか、知らなかった。人間になって一度は来てみたいと思っていたが、生活において重要でない為、連れてきてもらった事は無かった。
 男二人で海とは寒い事この上ないが、その辺の微妙な感覚はまだ狸も狐もついていない。
 二人はドライブスルーでハンバーガーを買うと、近くのパーキングに車を停め、浜に下りていった。進也は浜辺に座ってハンバーガーを食べ始めたが、正之助はそのまま海へと突進していく。
「おい!服濡らすなよっ・・・!」
「冷てぇ~~!!!!」
既にズボンを濡らしてしまった正之助には進也の忠告は聞こえていない。進也は食べかけのハンバーガーを置くと、ズボンの裾をまくり、靴を置いて自分も海へ向かって走っていった。
 海ではしゃぐ狸を浜まで引っ張り、裾を上げてやる。そうしてると、狸が足で水を蹴っ飛ばして濡らしてくるので、進也はそのまま正之助を突き飛ばした。ばしゃんと海にはまってしまった正之助を進也は大笑いする。
「しょっぱい!!!飲めないじゃん」
「海水は塩水なんだよ。お前、さすがにそれぐらい知ってろよ」
「だったっけ。うっかり忘れてた」
アハハハと正之助は無邪気に笑った。
 もう濡らしてしまったので、進也は足で水を蹴っ飛ばして、正之助にかける。正之助はけらけら笑っていた。泳ぐには少し早い季節だったが、もともと体温の高い正之助にはちょうどよい冷たさだった。
「顔突っ込んで目を開けてみろよ」
「開けれないよ」
「開けられる。ほら」
「ぶぶっ!」
進也が正之助の頭を掴んで海水に突っ込む。頭を押さえて上げられないように押さえ込むと、正之助の抵抗が止んだ。そっと手を離してやると、ザバッと正之助は顔を出した。興奮して頬が真っ赤に染まっている。
「魚がいた!」
「海にも魚はいるんだよ」
「食べていい?」
「ハンバーガーがあるだろ」
コツンと正之助の頭を小突き、進也は体を起こした。座ったままの正之助の手を引っ張り、立ち上がらせる。正之助がニヤッと笑った。進也が鋭い目で見返す。
「お前な・・・・突き飛ばしたらここに置いてくぞ」
「まさか!」
と言った途端、正之助は進也を引っ張って海の中に駆け出した。これは予想外だ。進也は抵抗して足を踏ん張ったが、適わなかった。そのまま二人は海の中にドボンと落ちた。思った以上に深かったらしく、正之助が溺れる。進也は暴れる正之助を後ろから抱き締め、そのまま浅瀬へ泳いでいったのだった。
「はぁ・・・はぁ・・・・びっくりした・・・・」
「こっちがびっくりだよ。海の怖さを知らないのか」
「川だとあんなに深くなかったからさ」
浅瀬に腰掛け、正之助はずっと昔に遊んだ小さな川を思い出す。そこで手を洗っていると、アライグマみたいだとよく母親に言われた。もうその川は無い。山ごと、無い。
 濡れてしまった服を脱ぎ、正之助はズボンだけ履いて浜辺に座ってハンバーガーを食べていた。その間に進也が服を調達してくる。
「他にどっか行きたい所あるか?ゲーセンとかカラオケとか」
「あぁ、あのピコピコうるさい所だろう。いい、いい。覚えるのが多いものばっかりで面倒臭い」
「・・・お前なぁ。どうりでクラブに入ってないワケだ」
正之助はゲームにもスポーツにも興味は無い。理由はシンプルで、ルールを覚えるのが嫌いなだけだ。カラオケは言わずもがな。曲も歌詞も覚えるのが大変なのだ。
「男二人で遊園地ってのも変だしな」
「遊園地ってなんだっけ。えーと・・・ぐるぐる回るやつ?」
「まぁ、そんなもんだ。俺はガキの頃に乗ったっきりだけど・・・・死ぬかと思ったな。二度と乗りたくない」
「アハハハ、お前でも人間の乗り物で嫌いなモノあったんだな」
人間社会にいくら馴染んでいても、生理的に受け付けられないものがある。人工的な機械に振り回されるのは、名状し難い恐怖がある。
 進也が意地悪い笑みを浮かべた。
「・・・・じゃあ、動物園は?」
「絶っ対、イヤ!!!!」
「檻に入れられている狸とか狐でも見るか?」
「悪い冗談はやめろよ!」
正之助がムキになって怒ると、進也は寂しそうに肩をすくめて笑ってみせた。
「・・・・ホント、悪い冗談だよな」
「・・・・・・・檻に入るのがイヤなら・・・こうやって人間に混じって暮らしていくしかないのかな・・・」
ぽつりと正之助が呟いた。
「俺は・・・人間の気持ちなんて・・やっぱり分からない」
 少し肌寒いのか、正之助はしきりに体を掻いている。進也が上着を脱いで、正之助にかけてやった。そのまま、頭を撫でてやる。
「俺も分からないよ。でも、分かりたいと思うんだ。茂樹は・・自分の幸せより純の幸せの方が大事だから・・・お前にあぁ言ったんだよ。その気持ちは分かってやれよ」
「・・・・・・・俺だって、純が好きだもん」
進也の手が止まった。顔を顰め、正之助を見下ろす。正之助は唇を尖らせた。
「茂樹の事も、お前の事も好きだもん。・・・皆が幸せになればいいって思ってるのに、なんでそれが分からないの?」
「・・・・・・お前、俺の事が好きなの?」
進也が改まって問うと、正之助はあっさり頷いた。
「お前、口うるさいけどイヤな狐じゃないし。色々教えてくれるし、美味しいものくれるもん」
「・・・・基準がそこか」
ハァと進也はため息を吐いた。呆れてはいるものの、何処か胸に温かいものが流れてくる。進也は正之助の頭をぽんと軽く叩いた。
「お前の気持ち、茂樹も純も分かってるよ。ただ、辛い時はうまくそれを伝えられないもんさ。明日になりゃ、気持ちも落ち着いてお前に謝ってくるんじゃないか?」
「・・・・・・そうかな」
「すぐに仲直り出来ないなら、時間をかけるしかない。狸の頃と違って、時間はあっと言う間に流れるさ」
日がゆっくりと傾き始めた。浜辺に人がいなくなっていく。大の男二人がはしゃいでいた姿を近所の主婦がニヤニヤ笑ってみていたが、彼女達も夕食の準備の為に帰ってしまった。波の位置が来た頃より近くなっている。潮には満ち引きがあると習ったが、こうやって間近で体験するのは初めてだった。
 自分達が知らないこの大地や天の事を、人間は随分詳しく知っていると思う。月にまで行ったと聞いた時、人間はどうしてそこまでして未知の世界を開拓していくのか、不思議に思ったものだ。知らない事を知って、それで腹が膨れるわけでなし。
「行こうか」
「うん・・・・・・はい。お腹減った」
「さっき食ったばっかじゃねーか」
そう言った進也の目は柔らかに細められ、優しげだった。
 車に乗り込み、二人は帰路に着く。だんだん暗くなっていく風景を正之助はシートに背もたれて、ぼんやり眺めていた。暗くなっていくと、車や街に明かりが点りだす。山の夜には見られない光景だ。空の光をぼやけさせる、人工の輝き。綺麗だけど、何処か寂しい気がした。



 進也の家に着くと、奥の部屋に明かりが点っていた。進也は正之助と共に、そろそろ音を立てずに家の中に入り込む。階上の進也の部屋に移動していると、奥の扉が開いた。ビクリと二人は硬直し、ドロンと進也は大仏に変化した。相変わらず、正之助は茶釜だ。暗かったから、そんな不自然なものが置かれてあるのにも気づかず、武信は足を引き摺りながら歩いていく。それを奥から引き止める声がした。
「待てよ。そう怒んなよ」
「うるさい!!!お前が出て行かないなら、俺が出て行く!」
「ここ、お前ん家だろ」
聞き覚えのある声だった。茶釜からそろりと正之助は顔を出した。その前をパタパタと男が通り過ぎていった。武信の腕を引っ張って、壁に押し付ける。武信は顔を逸らしている。
「俺がガキ相手に本気になると思ってんのか?遊びじゃん、あんなの」
「・・・・・・それが言い訳になると思ってるお前に吐き気がする」
「それでも俺が好きな癖に」
武信はギロリと男を睨みつけた。ニッと笑った男の顔が、正之助にはっきり見えた。思わず声を上げそうになり、後ろから進也がそれを手で押さえて止めた。
英介だった。武信を押さえ込み、不敵に笑っている。
「酒でも飲みに行こうぜ。酔ったら、少しは気分もマシになるって」
「お前なんかと居たくない。俺はここで・・・進也を待つ」
「あいつにはあいつの付き合いがある。過保護なのはいいけどさ・・・もっと俺を構えよ。お前が構ってくれねーから、つい遊んじゃうんだろ」
勝手な言い分だと正之助は呆れた。
 武信は頭を押さえ、力なく首を振った。
「・・・・もう少し節度を弁えろ。生徒に手を出すなんて・・・非常識だ。その子の将来を考えろ」
「またそれか。俺には未来なんて考えられないって、いつも言ってんじゃん。今が大事なんだよ」
武信はカッとなって、英介の胸倉を掴んだ。彼はされるがままだった。体格差は歴然で、武信の事を全く恐れていないのは態度で分かる。
「俺はっ・・・お前の事も・・・先まで考えているつもりだ。どうしてお前はそれに応えてくれない?」
「・・・・・・・お前らと違って、俺には難しいんだよ」
「ハナからその気もない癖に」
ふいと顔を逸らした武信に、彼は少し傷ついた表情を浮かべた後、武信の腰を掴んで引き寄せた。抗議に開かれた唇に触れ、深く口を合わせる。湿った音が耳に届き、正之助は僅かに体が熱くなった。
 唇が離れると、武信は歯がゆそうに俯いた。その手を英介が引っ張って、歩いていく。引き摺って遅い足に苛立ち、彼は武信を抱き上げた。
「おい!」
「今日は朝まで飲みに行く!決めた」
「勝手な事を・・・」
「俺はいつでも勝手でしょ!」
武信はぐちぐち零していたが、暴れたり、明確な拒絶の言葉は言わなかった。その態度から、彼とて真に英介を嫌っていないのが伝わってきた。玄関の扉がパタンと閉まると、しばらくして車が発進する音がして、後は静寂が家に訪れる。
 茶釜の狸がコロンと階段から転げ落ちた。進也が手を離したのだ。
「いってー」
ドロンと元の人間の姿に戻った正之助は、上を見上げた。大仏からいつの間にか人間の姿に戻っている進也は、悔しそうな顔で玄関を見つめていた。正之助は肩をすくめた。
「・・・・お前が先生を嫌いなワケ・・・・・やっと分かった」
今にも泣き出しそうな顔の進也の鼻先を正之助がぺろりと舐めてやると、進也が強く正之助を抱き締めた。さっきの二人みたいに、進也は正之助に口付ける。もつれる足で奥の部屋へ行くと、武信のベッドの上に二人は転がった。既に乱れたベッドは、さっきまで何が行われていたのか、教えてくれた。皺だらけのシーツに正之助を押さえ込み、進也はじっと見下ろした。こんな風に、武信はさっきまであの男に言いようにされていたのだと思うと、胸が痛い。同時に、同じくらい激しい欲望が込み上げてくる。
 進也は正之助の服に手をかけた。いつ彼らが帰ってくるか分からないと正之助が焦ってその手を止めたが、進也は首を振ってその手を振り払った。
「桔根!?」
「・・・・・・・・」
言っても聞かない。正之助は声を荒げる。
「きつ・・・進也!」
「・・・・ヤりてぇんだよ・・・・」
悲痛な声に正之助は息を呑む。進也の下腹部は既に反応していて、正之助には驚く。何が彼を興奮させているのか、正之助には分からない。進也は泣き出しそうな顔で、叫んだ。
「ここで・・っ、あいつは稲荷さんを雌みてぇにガンガン犯してたっ・・・・!稲荷さんは泣いてたっ・・・!あいつは・・・稲荷さんを傷つけてばっかりだっ・・・!でも、・・・・稲荷さんは・・・・俺よりあいつの方が・・・・」
「・・・・・・・」
正之助の胸が締め付けられる。こうして自分を押し倒しているのに、進也の胸の中には武信がいるのだと思った。思えば、進也の生活は全て武信の為のものだ。子供が居ない武信の病院の跡を継ぐ為に勉強し、優等生を演じている。人間の気持ちを分かりたいんじゃない、進也は武信が分かりたいのだろう。彼の傍にいたいのだろう。彼と一緒に幸せになりたいのだと、正之助は思った。
 胸がちくちく痛かったけれど、正之助は無理に笑顔を作って、ひとつ提案した。
「稲荷さんになってやろうか?」
進也は驚いて目を見開いた。正之助が苦笑いしている。たちの悪い冗談じゃない。この狸にはそんな高度な真似は出来ない。その方向性の誤った思いやりが更に進也の胸を苦しめた。
 進也は首を振り、正之助に口付けた。唇を合わせながら、正之助のズボンを剥いで行く。正之助が近くに落ちている葉っぱに手を伸ばす。
「いい。お前でいいから」
「でも・・・」
「お前がいい」
そう言葉を落とすと、もう進也は何も言わず、正之助の股間に顔を埋めた。これまで何度か強制されてきた事だったが、進也から受けるのは初めてで、正之助は足を引きつらせる。痙攣する足を撫でて落ち着かせ、進也は震える正之助の手に手を重ねる。
 ややあって正之助が吐精すると、その濡れた唇を胸に移動させ、丹念に乳首を舐め始めた。既に敏感になっていた体は何処に触れても熱くて、進也の勃ち上がった性器が体を擦っていくのにも敏感に反応してしまう。
「俺も・・・やる」
正之助が進也の股間に手を伸ばしたが、その手を進也がやんわり押さえ、ニッと笑う。正之助は顔を引きつらせた。
「・・・・また、アソコに入れるの?」
「今度は痛くねぇから」
武信の部屋の奥からローションとワインを取ってきて、進也は正之助の体にとぽとぽ落としていく。冷たさに体をよじらせながら、正之助はシーツの汚れを心配する。進也はワインをラッパ飲みした。旨そうにワインを飲むので、正之助も欲しくなってくる。
「いいのかよ。今は高校生なんだぞ」
「これくらい、普通だよ。お前も飲め」
口にワインを突っ込まれ、正之助はごくごく残りを全部飲み干した。体がカーッと熱くなって、頭がくらくらする。焼酎や酒は飲んだ事があるが、ワインは初めてで、一気に酔いが回った。
 進也はぐったりしている正之助の足を掴んで開かせると、指をゆっくりと差し入れた。数本なら息が詰まる程度で、痛みは感じなかった。
「痛い?」
「目が回る」
「酔ってんのかよ」
ククッと進也は笑うと、更に奥に指を突っ込んだ。正之助がビクンと体を震わせた。尚も進也がそこを突くと、正之助は首をぶんぶん振る。
「気持ちいい?」
「わかんね。変だ。ぞくぞくする」
「それって気持ちいいって事だろ」
そう言って進也が指の数を増やせていくと、正之助は体をのけぞらせた。手を振り回すので、進也は尻尾でそれを押さえた。
「こら、暴れんな」
「ふふふ。狸に戻りそ」
「入れた途端に戻るんじゃねーぞ」
随分陽気になってしまった正之助から進也は指を引っこ抜くと、勃起している自分の性器を宛がった。正之助がひくりと体をひくつかせる。
「へ・・・・何すんの」
「だから・・・・・ヤるって言ったじゃん」
「でも・・・・俺・・・子供産めないぞ・・・・・・」
「子供はお前で十分だよ」
「そこから赤ちゃんも出てこない・・・・・」
「出てきたらビックリだよ」
まだ喋ろうとする正之助の唇を進也は口で覆った。舌を絡ませながら、激しく口を合わせている間に、徐々に進也は体を押し進める。正之助がびくびく震える。
「ハッ・・・・だ・・め・・だ・・・」
「だめ・・じゃねぇ・・よ・・」
「戻っちゃ・・うっ・・・・て・・・・」
さほど痛みはないようだ。進也は首を弱弱しく振る正之助を見下ろし、楽しげに笑んだ。
「狸に戻ったら・・・俺も狐に戻ってヤッてやる」
そう言い捨てると、進也は腰を動かした。自分で擦るより、正之助の中は心地よかった。人間がなんでこんな行為に没頭し、時には破滅してしまうのか、分かった気がする。この快楽は他に勝る。どの動物にも備わった種の生存本能から僅かにずれた行動だが、もたらす快感は変わらない。
「はっ・・・・あっ・・・・イ・・・く」
「はぁっ・・・はっ・・・・」
正之助が絶頂を迎えると、ほぼ同時に進也も正之助の中で果てた。くったりしている正之助は狸に戻る気力もないらしく、呆然と寝転がっている。その横にコロンと寝転がり、進也は丸まった。シーツには武信の匂いが染み付いている。その匂いに安心したのか、進也は目を閉じた。
「・・・・稲荷さん・・・・」
閉じかけた目を、ぱちりと正之助は開けた。横を見れば、進也は疲れて眠ってしまっている。酔いが残っている頬は赤く、さっき呟いた自分の言葉もきっと記憶に残っていないだろう。へたをすれば、ここで自分と抱き合った事も忘れてしまっているかもしれない。
それでいいと正之助は思った。
茂樹がどうして自分を責めたのか、正之助は今なら理解出来た。あの時、進也に変化して純を迎えてあげれば、きっと問題は無かったのかもしれない。
今だって、本当は武信に変化して抱かれてあげれば、進也は満足だったろう。
「・・・・・・・・・・・」
けれど、自分でも進也はいいと言ってくれた。たとえその場の雰囲気で言ったのだとしても、それが嬉しかった。


 すやすや眠る進也を起こさないようベッドから降りると、ドロンと音が鳴って正之助は振り返った。見ると、進也は狐の姿に戻っていた。無意識なのだろうか、無防備な狐の格好のまま、ここで寝かせていていいのかと正之助は考える。
 その時、玄関の扉が開く音がした。武信だ。正之助は慌てて進也に変化する。狐の進也を抱き上げ、急いで進也の部屋に移動しようとしたが、廊下を横切ったら、武信に見つかって、声をかけられた。
「進也」
正之助は進也を抱いたまま、立ち止まった。硬直している正之助を訝しげに眺め、武信は胸に抱かれた狐に気づいた。狐と正之助を交互に見つめ、あぁと納得する。
「・・・・そうか、君はこの前遊びに来た正之助くんだね」
正之助は目を見開いた。引きつりそうになりながら、声を出す。
「な・・に言ってるんですか・・・僕は・・・進也で・・」
「進也なら、君が抱いてるじゃないか」
「!」
ごくん。正之助は息を呑み、武信を凝視した。
言い逃れは出来なかった。腕の中に進也が居るから、変化したり幻術を見せて逃げる事も出来ない。
 ここで進也なら、しらを切りとおして居たかも知れない。けれども、正之助はそんな器用な狸じゃない。困った表情で突っ立ったまま、動けなくなった。武信は家に上がりこむと、泣き出しそうな正之助から進也を掴んで抱き上げ、進也の部屋へと上がっていった。正之助は慌ててついていった。
 そっと進也をベッドに下ろし、布団の中に入れてやる。扉の外から、正之助はその姿を見つめていた。眠っている狐を撫でながら、武信は話す。
「・・・進也は・・・寝ている時は気が抜けるのか、無意識に狐に戻るんだ。多分、本人は気づいてないけどね・・・・」
「・・・・・・・・いつ・・・・」
気づいたのか。
「いつだったかな?忘れてしまったよ」
武信はフッと笑った。思い出せないぐらい昔の話なのだ。
 そのまま狐を寝かせ、武信は正之助を連れて階下へ下りていった。もじもじしている正之助を促して、キッチンのテーブルに座らせると、温かいココアを入れてくれた。自分はブラックコーヒーを啜る。
「・・・捕まえないんですか」
テレビ局に売ったり、科学者や生物学者に引き渡したり、こんな奇妙な動物を見つけたらいくらでも金を稼いで名前を売る方法が思いつく。一夜にして億万長者になれる可能性があるのにも関わらず、この男は黙って一緒に暮らしていたのだ。
「進也は私の息子だ。息子を売る奴は人間でもなかなか居ないさ」
また武信は笑った。
 まだ会って三度目だが、こんなに気安い武信の姿を見るのは初めてで、段々と正之助も気が抜けてきた。もともと、あまり緊張感の無い狸だ。
「驚いた?」
「そりゃ、まぁね。でも・・・嬉しかったかな。私は口下手で、人付き合いも苦手で・・・・・・・ずっと一人だったから」
自分が助けた狐だと分かった時は昔話みたいだと思ったもんだと、武信はしみじみと語った。最初は山に帰してやろうかと、色々狐の生態を勉強して、狐が多く住んでいる山を見つけてきたのだが、いざ山に帰そうと思ったら、手放せなくなった。
「進也は・・・・・誰も傍にいなかった私の・・・・家族の代わりになってくれたんだ」
ぽそっと武信が零した言葉に、正之助は首を振った。
「代わりじゃないよ。進也はあなたの家族だよ。あなたにも、進也にも、代わりなんていないもん」
ハッとした顔で、武信が正之助を見た。
優しく微笑む正之助と顔を合わせていると、武信の心も穏やかになってくる。
「そうだね」
代わりなんて居ないと、自分でそう言ってやっと正之助は気づいた。思い知った。
 いくら器用に化けられても、自分は、進也にも武信にもなれない。自分は只の狸で、進也と親しくなったのは脅迫されたからだ。そうでなかったら、今でも自分はろくに授業も受けず、一人でのんびり用具室でサボる毎日だったろう。人間と交流しようなんて、思わなかった筈だ。ましてや、狐なんて論外だ。
 人間に変化して、友達が出来て、まるで本当に人間や狐と繋がった気分だった。今日は特に気分が良かった。でも、現実はそうじゃない。森を追われた自分はただ鉄の檻に入らなかっただけで、人間社会の広い檻の中にいるに過ぎない。どちらも同じ檻に変わらないのなら・・・・。
「・・・・・俺は狸のままがいいや」
「え?」
武信が聞き返す。正之助はココアを飲み干すと、立ち上がった。
「俺、帰ります」
「送っていくよ」
「大丈夫、鳥にも変化出来るから」
ニッと正之助は無邪気に笑ってみせた。武信は軽く目を見開いて、感心した。
玄関の外まで見送ってもらい、正之助は白み始めた空を見た。もうそんな時間か、どうりで眠いと思った。一つ大きく伸びをしてから、武信に向き直る。武信は柔らかな表情で正之助を見下ろしていた。
「・・・進也にはいつ話すの?」
「進也から話してくれるのを待つよ。きっと、私以上に覚悟が必要だろうからね」
雰囲気は厳しそうで、近寄りがたい人間に見えるが、話の端々に見える彼の懐の深さや心の豊かさに、正之助は進也が彼を好きになった気持ちがよく分かった。この人間となら、きっと進也は幸福なままでいられる。
「それに、・・・昔ばなしでも正体が分かってしまったら、いなくなってしまうだろう?だから、知らん振りしてる・・・」
そう言って苦笑する武信の姿が、純や茂樹と被って見えた。
 狸の正之助からすれば完璧に見える人間達も、自分達の関係をうまく形成する為に様々な抑圧があるのだと、ふと思った。それは進也も例外じゃない。彼は狐だけれども、正体を現さない理由は正之助達ではなく、むしろ武信と同じ理由なのだろう。
 進也も頑固な狐だ。武信の幸せをひたすらに想う彼だから、決して自分から狐とバラす事はないと想像がつく。しかし、このまま二人が互いに黙りあっていれば、いずれ決定的な大きな穴があいてしまう気がした。
 小さな親切、大きなナンチャラ。正之助の脳裏をその言葉がかすめたが、無視した。
「稲荷さんは・・・進也の本音、聞きたくないですか?」
「え?」
「なんなら、狸直伝の化かし方、教えてあげますよ」
そう言って、正之助は狸特有のこずるい笑みを浮かべたのだった。




+



 多抜家に辿り着くと、玄関の前で二匹の犬が毛布に丸まって眠っていた。正平となり子だ。正之助の気配に気づき、正平が体を起こす。正之助だと分かると、ドロンと人間に変化して飛び上がった。
「兄ちゃん!」
正之助をガバッと抱き締めた。正之助は苦笑する。
「外で変化するなよ。誰が見てるか分からないぞ」
自分の事を棚に上げて、正之助は正平を叱る。
その正平の顔に酷い痣が出来ていたので、正之助は驚いた。
「なんだ、その顔?誰にやられた???」
「それより!兄ちゃん!今までどこで何やってたんだよ?!・・・学校にも来ないし・・・みんな心配してたんだよ。何処行ってたのさ?!」
「デートしてた」
笑って正之助が答えれば、正平は顔を歪ませて体を離した。しかめっ面で、正之助を凝視する。
「なにそれ」
「・・・話すと長くなるんだけど・・・・・・・」
正之助はなり子を抱き上げると、正平と一緒に犬小屋に移動した。狭い小屋の中で三人身を寄せ合い、正之助はこれまでの経緯を正平に説明する。武信が正体を知っていた事は伏せておいた。
 話し終わった後は、正平は憤懣して、声を上げた。
「なんで狐なんかの言いなりになってんだよ!狐なんて、俺と兄ちゃん二人がかりで尻尾掴んで動物園に売ってやりゃいいんだよ!」
「お前な・・・俺の話聞いてたのか?兄ちゃんは進也に色々教えてもらったんだよ」
「脅迫されて、だろ」
それも事実だが、正之助は進也を嫌いになれない。嫌いになれないどころか、むしろ・・・・。
 返事に窮する兄に、正平はハッとなった。彼は正之助より勘が鋭い。唸っている兄を見て、目を吊り上げたが、段々と厳しい表情を作っていられなくなり、悲しそうに正之助に寄り添った。
 正之助は擦り寄ってくる正平の頭を撫でてやりながら、問う。
「お前こそ、どうしたんだよ?その顔」
「あぁ、これ」
青くなっている額をペチと叩き、正平はおどけて言った。
「喧嘩したんだよ。アイツと」
「宇佐木か?」
怪訝な顔を見せる正之助に対し、正平はケロリとしている。
「そ。また仕掛けてくるだろうけど・・・もう俺は怖くない」
正平の説明によれば、今回の件で、以前から宇佐木のやり方に反感持っている者もいて、正平がメンバーから抜けると情報が入るや、彼らは正平側につき、二つのグループが対決したらしいのだ。この傷はその戦果だと。
2年生は好戦的だと進也達から聞いてはいるが、その荒れっぷりは凄まじいと正之助は慄然とする。
「面白いんだぜ。俺の話を聞いて、皆が一番怒ったのが、犬をいじめた事なんだよ」
「犬なんかいたっけ」
正平は苦笑する。
「兄ちゃんの事だよ」
「あぁ」
咄嗟に犬に変化したのは攻撃性が高く、人間社会にいてもおかしくない動物だからだ。正之助自身はあまり犬は得意ではない。
正平は無邪気に言った。
「俺、思うんだ。人間とは共存していけるって」
「・・・・・・・・・・・」
あんな暴行を加えられ、痛い目にあったというのに、この狸は懲りてない。いや、正平の話を聞けば、人間の恐ろしさを知った反面、優しさにも触れたようだ。正之助からすれば犬は犬だが、そうではない人間が多いのだろう。異種族を同族と変わらぬ愛情を注げるのは、人間独特の感性なのだろう。
 黙り込んだ兄に気づくと、正平は悲しげな面持ちで兄を見やる。
「兄ちゃんはそう思わないの?」
思わないわけがない。進也と武信の関係を、正之助は応援したい。武信のような人間がいるのなら、正平にだって運命の人間が現れてもおかしくない。なり子も然りだ。
 けれども、自分はそうなれるとも、なりたいとも思わなかった。今回の事で、つくづく思い知った。自分は人間社会には向いてない。人間社会で生きて、色々と知識も身につけた。昔みたいにこそ泥のような真似はしないが、わざわざ一個人の人間に扮せずとも、うまく立ち回って、影で生きていけるだろう。
「俺は狸に戻るよ」
「えっ」
 学校で時々見かける兄は友達に囲まれて、楽しそうだった。呑気に寝て過ごしている狸の兄も嫌いではないけれど、こんな風に人間生活を終わらせてしまっていいものかと、正平は思う。
 不満そうな正平に、正之助は笑って言った。
「その前に・・・お前や進也が円滑に人間ライフを送れるように、手を打ってやる」
狸に戻ると腹を決めれば、後の時間で何が自分出来るかやりたいかが見えてきた。
 弟が言うのもなんだが、兄はそう狡猾な狸ではない。昔から、簡単なミスも多い。罠を張るのも苦手で、卑怯とは対極に居るような狸だ。せいぜい、食べ物を盗むぐらしか兄は出来ない。そう失礼な事を思っている正平に、正之助は自信満々に言い放った。
「どうやって?」
「勿論。化かしてやるのさ」
ますます説得力が無いと、正平は思ったのだった。
 これ以上、人間の生活を続ける気は正之助には無かった。けれども、最後に一つだけ、変化の術を使って終わらせなければならない仕事がある。

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