TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

文字の大きさ
17 / 167
2章 Q.女の子になったら? A.引きこもる

17話 ホルモンバランスのせいだから仕方ないはず

しおりを挟む
「その気があるのなら、今からでもやり直せる。肉体的な病気もなにもない、若者なんだから。……そう言われたって、無理なのにな」

残念ながら、世界は平和だ。
少なくとも、僕たちの周りは。

だから町も家も平和で、僕たちのしょぼい城は健在で――勝手に兵糧攻めを耐えて、居もしない敵と戦い続けている。

昨日も今日も、明日も――遙か先も。

「それが、ずっとは無理だってのも……分かってる。……でも……」

――ぴちゃん。

「うぴゃっ!?」

びくん。

浴室の天井から、雫が垂れる。

「ぐす……」

それがなぜか絶妙に僕の肩に落ちてきて、変な声が出ると同時に泣きたくなってきた。

しょうがないんだ、この体はなぜか涙もろいんだ。

――ざばっ。

「家族としての好意に甘えてぐうたら暮らしてきてるのに、僕の望む形で連れ出してほしい――なんてのは、都合が良すぎだもんな」

ふともものかなり後ろ――ほとんどおしりまでが浴槽のヘリに擦れる感覚を覚えつつ湯船から脱し、しゃーっとシャワーからお湯を出す。

「……お酒が切れるといつもこうだ。けど、お医者さんが出してくれた精神薬をいつも飲むようになっちゃうと、もう後戻りできない気がするから」

顔に温かい水滴を浴びつつ、シャンプーを手に取って髪の毛へ塗りたくる。

………………………………。

「……あ。全然足りない……そりゃそうだ、男の髪から女の子の、それもすっごく長いんだから……」

結局5プッシュくらいしてあわあわしてようやくに髪の毛を流しきり――普段のように頭頂部から後頭部へ、そこからは横髪に後ろの髪の毛と、毛にシャンプーをすり込ませてあわあわさせる作業に没頭した。

なんだかすっごくきしきししたけどもとりあえずそのままにして、体も軽くあわあわして。

「……さすがに、まだここを洗う勇気は……うん……」

……さっき漏らしてぐしょぐしょになってた部分を、男と違うところ以外をなんとか洗ったけども。
動揺して、両手のひらで洗ったけども。

腰から下のラインが――間違いなく僕自身の肉体の感覚だけれども確実に土台から作りの違う、腰に向かって広がる形と、その肉感。

「……ぎ、ぎりぎりまでちゃんと洗えば……うん、そもそもお湯に浸かってるから殺菌とまでは行かなくても、ほぼ綺麗になってるはずだし……」

――そうして慎重に避けて洗ったからこそ、なおさらに男と違う造りが手のひらから分かっちゃって気まずくって恥ずかしくって。

なによりも、やけにぞわぞわとする敏感になった肌の感覚が――僕の全身を、ぞくぞくとさせた。





「……長い」

ぶわーっ。

もう5分はしてるだろう、ドライヤー。

まだ半分も乾いていない髪の毛と、それを乾かしているうちに肩と腕がつりそうなほどに疲れてきているせいで――まだすっぱだかだったけども、僕はもう女の子の裸体に目が慣れてしまっていた。

「……おっぱいが目に入るよりもめんどくささの方が……か。まぁ当然か、興奮すべき物体が存在しないんだからな」

視線を落とすと、ほんのりと膨らんでいる桜色の、おちょこをひっくり返して貼りつけた感じの双丘。

その先にうっすらと桃色に染まる肌を伝う雫――その下の、何もない股。

「男として興奮できないのが、こんな子供に興奮しないで安心してるのに繋がるけど……悲しい……安心できるのに悲しくって複雑……ふぐぅ……!」

TS――その中でも、男から女へ。

その事実が、感覚でもはっきりと自覚できてしまった喪失感で胃液がこみ上げる。

「うぷっ……大学生ですらなくなって、高卒の資格しかなくなったって理解したとき以来だな、これ……」

ぶぉぉぉ。

乾かない髪の毛と格闘しながら、僕はまたひとつ要らないトラウマを植え付けられた。

……ちなみにドライヤーはその後すぐに諦めた。

そもそも長くし過ぎたら――起きていたら優花に変だと思われるし。
とりあえず今は夏だし、ほっとけば乾くだろうってことで。

けども、お風呂ってのはやっぱりいい。

脱衣所から気配探知と気配消失を同時並行しながらなんとか部屋に戻った僕は――ちょっとだけ、元気になったから。

それでも僕は、平均身長で中1の女子。
遺伝子的に、どう見ても元の僕どころかこの家に居座る権利のない存在。

しかもシャツ1枚、はいてない、お風呂の熱が冷めたらすーすーする。

けども、僕は僕だ。

「……とりあえずお酒飲んでゲームでもして忘れよう……」

僕は、定期的に汚くなる――空き瓶やゴミ袋で足の踏み場がなくなる部屋の床をかき分けてできている動線を伝い、パソコンへ向かう。

僕が唯一拠り所としている世界へと。





「………………………………」

……もにゅ。

「………………………………」

……もにゅもにゅ。

誓って言う。

最初は無意識だった。

途中からも、半分以上は仕方がなくって……もう半分は、男としての本能だった。

だって、女の子の胸だよ?

男には存在しない、おっぱいだよ?

興味――なかったら男じゃないし、完全に女の子でしょ?

とはいえ、

「……なんでぴりぴり痒いんだこれ……虫さされみたい……」

シャツの下から――猫背になってると目立たないけども普通にしてるとかすかに主張する、ふたつの丘。
その先端から――不定期に、ぴりぴりじくじくとした謎の感覚。

顔とか体がなぜか急に痒くなり、無視しても結局掻くまで止まらない、あの謎の現象が――よりにもよってセンシティブ過ぎる場所に、ピンポイントに起きている。

かゆい。
痛がゆい。

田舎に行ったときの虫さされ並みにしつこくてかゆすぎるんだ。

「ちゃんと洗わなかったから……? いや、でも、下はともかく上は汚くなってないはずだし……んっ」

ぴりっ。

指先で、布越しで軽くつねると体がぴくっとなる。

それはまるで、虫さされを爪の先でいじめるような痛がゆい、あの感覚。

それと同じくして、軽い刺激を与えるとしばらく意識に上がることもなくなる。

「……なになに? 『成長期の女の子は、ホルモンバランスの関係で……刺激を減らすために、ブラジャーの着用を』。……まじかぁ……」

――どうやらこれは、虫さされと同じく、刺激は厳禁だったらしい。

まさか、シャツの擦れる刺激だけでこんなにもぴりぴりするだなんて、知らなかった。
そりゃあ女子は小学校のあいだにブラジャーとか付け出すよな。

優花だって小5くらいに……いや、だって、洗濯物畳むの僕の仕事だったから毎日のように触るしかないじゃん……今だって畳まされてるからしょうがないじゃん……。

で、これは虫さされと同じように、なるべく触らないようにして忘れるようにしさえすれば大丈夫らしい。

あとは、

「『どうしても我慢できない場合には、人の見ていない場所で』……いやいやダメダメ、そういうのじゃない。よく分かんないけど、そういうのは良くないんだ」

とりあえずとして病気とかでもないらしいし、虫さされみたいに軽くぎゅっとしとけば引いてくれるから大丈夫。

……でも、最近の小学校女子用の情報って、ずいぶん進んでるんだな。

なんかもう、かつての僕が中学の終わりとか高校になって知ったようなことまで平気で書かれてて、ぎょっとしちゃったよ。

まぁ女子は……その、ほら……ね?

平均的にかなり早熟で、しかもおませさんだから年上の男に憧れがちで……そういうことに手を出すっていうか出されがちで、そうしてそういう知識がないと大変なことになりがちだからね……うん、僕たち男子が小中学生なんてマンガ読んでゲームしてただけなのにね……。

そんな感想を持ちつつ、僕は通販サイトを開く。

……しょうがない、買っとくか……ブラジャー。

とりあえずでジュニアブラってのを買っとけば……とてつもなく罪悪感があるけど、この痒みを治すためにはシャツと擦れないようにするしかないらしいし……うん、しょうがないよな。

あ、調べたらああいうのがあったな、ブラジャーのブラの部分だけが縫い付けられてるシャツってのが。
うん、あれなら抵抗も薄い気がする。

あ、優花も使ってるみたいなブラトップってやつ……これが良いな。

………………………………。

「んっ……」

……けど、虫さされよりもすっごく痒いし、かいたら気持ちいいけど……女の子ってのは感覚が鋭いらしいし、こういうもんなんだろう、うん。

そういや優花も一時期、僕に触られるたびにこんな感じの声出してたし、やたらと体をくねくねと擦りつけてきてたし……きっと敏感になって痒くなってただけなんだろう。

ちょうどお風呂に一緒に入らなくなってから少しして止めてくれたし、きっと対処法を母さんにでも聞いたんだろう、うん。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

辺境ギルドの受付嬢ですが、冒険者の嘘は帳簿でぜんぶバレます

蒼月よる
ファンタジー
素材の重さが申告と合わない。鑑定書の書式がおかしい。冒険者が持ち込む報告書には、いつもどこかに嘘がある。 辺境の小さなギルド支部で、受付嬢ナタリアは今日も一人、帳簿を武器に冒険者たちの嘘と向き合っている。剣も魔法も使えない。でも素材を見る目と、数字の辻褄を見抜く勘だけは、誰にも負けない。 持ち込まれた棘鱗の産地が違う。新人冒険者の目が妙に鋭い。腕のいい薬師が素性を隠している。書類を処理するだけの毎日のはずが、カウンターの向こうには不思議な人々と、小さな謎が絶えない。 一話完結の日常謎解き。辺境の受付カウンターから覗く、冒険者たちの嘘と真実の物語。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
「英雄なんて、もう二度とごめんだ」 ダンジョン出現から10年。 攻略が『配信』という娯楽に形を変えた現代。 かつて日本を救った伝説の英雄は、ある事情から表舞台を去り、ダンジョン攻略支援用AI『アリス』の開発に没頭する裏方へと転身していた。 ダンジョンも、配信も、そして英雄と呼ばれることも。 すべてを忌み嫌う彼は、裏方に徹してその生涯を終える……はずだった。 アリスの試験運用中に遭遇した、迷惑系配信者の暴挙。 少女を救うために放った一撃が、あろうことか世界中にライブ配信されてしまう。 その結果―― 「――ダンジョン嫌いニキ、強すぎるだろ!!」 意図せず爆増するファン、殺到するスポンサー。 静寂を望む願いをよそに、世界は彼を再び『英雄』の座へと引きずり戻していく。

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

異世界で鍛冶屋をやってるだけのはずが、神々に最強認定されてハーレムができてた件

えりぽん
ファンタジー
平凡な青年リクは、異世界に転生して鍛冶屋として静かに暮らしていた――はずだった。 だが、彼が何気なく作った剣は竜を貫き、魔王をも滅ぼすほどの威力を秘めていた。本人はただの職人のつもりでも、周囲からは「神の使徒」として崇められ、王女や聖女、果ては魔族までが次々と彼の元に集う。 「俺、本当にただの鍛冶屋なんですが……?」 気づけば彼は、闇の勢力も聖なる教団も巻き込む世界最大の戦争の鍵を握る存在に――。 これは、無自覚に最強となった青年が世界を変える、“作るだけ無双ファンタジー”。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

処理中です...