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2章 Q.女の子になったら? A.引きこもる
19話 ♂↔♀・双方向のボイチェンですべて解決
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「行ってきます」
――がちゃり。
優花の、いつもの声。
「……ぷはぁ……」
がちゃっ――僕は、ようやくにドアを開け、安心して廊下に出ようとして――引き返し、からからになった喉を潤す。
「と、水、水……んくっ」
寝起きで盛大にやらかした僕は、あれ以後、できる限りに水を飲まずに耐えた。
そしてなんとか優花が寝静まったと確信できる真夜中になるまで耐え、トイレへ行き――漏らすよりは遙かにマシと、もう諦めてシャツをめくっておしりと股をさらけ出した。
大丈夫、お風呂よりはマシだ。
そう思って。
そうして初めて僕自身の意思で排出してから「恥辱よりは羞恥と罪悪感の方がマシ」と、安心感だけがあって。
「恥ずかしいは恥ずかしいけど、1回しちゃえば後はもう大丈夫……でも、今夜からどうするかなぁ」
――ボイチェン。
僕自身は小さめな声でドアから少し距離を取り、耳を澄ませ、優花の声に応える返事をマイクからパソコンへ。
ボイチェンソフトを経由し、速い会話でなければ違和感なんてないラグで出力された、元の僕の声に限りなく近い声が応答――無事、毎朝の儀式は終わった。
実際、僕が聞いても僕の声に近かったしな……配信のアーカイブから声を切り抜いてボイチェンソフトに読み込ませたり調整したりとちょっとは手間がかかったものの、以後はこの女の子な声も、部屋に居る限りは一瞬で元の男の声になる。
ということで優花への返事はクリア。
そしてトイレは、夕方前から深夜までは水分を我慢することで――深夜まで耐えたらクリアできると判明。
これだけ気をつけていてトイレのために廊下に出てばったりとか悲しすぎるもん、我慢するしかない。
優花は真面目な学生だから、ちゃんと日が変わる前に布団に入るし基本的に朝まで目を覚まさない。
そして学校が充実しているから、週末以外は朝から夕方まで家には居ない。
だから、声とトイレさえなんとかなれば――しばらくは、持つ。
……とはいえ、さすがに我慢できないこともあるはず。
だから、もう買っちゃったよ……災害用の携帯トイレ。
あと、漏斗。
使うとしたら後者だろうけども。
うん……高いし無駄なことしてるなぁって思うけど、トイレに行ってばったりってのはあんまりにも悲しすぎるから。
まぁ届くのは今夜だけど、今夜から使えるんだからいいや……どうせゴミ捨ては僕の仕事だ、どっちだとしてもバレやしないだろう。
「……服の洗濯もゴミ捨ても僕の担当で良かった。いや、高校生も3年になって、まだ兄である僕に下着まで洗わせて平気な優花も優花だけどさぁ……まぁ下着はネットに放り込んで洗って、乾燥機に入れられないからネットから取り出して手ずから干して……いや、やっぱ年頃の娘が兄にさせることじゃない気がする……いや、単純に僕が兄とも男とも認識されていないだけか……あれだ、昔の高貴な身分の人は下の身分の人を人と認識していないあれだろうなぁ……」
どうせ「使用人B」あたりに格下げになったんだろうしな、大学中退あたりで……いやそれでも、それまでもずっと下着を平気で渡してくるのは……うーん。
「まぁ絶対にとっかえひっかえしてるだろう彼氏さんとかに比べたら僕なんて……くぴくぴくぴくぴ……!」
妹がどこかの男と付き合う。
そう考えるだけで頭が真っ青になって吐き気が止まらないんだ。
兄ってのは最も弱い種族なんだ。
ぐっしょりと水分を盛大に吸い込んだ服の山を洗面所に運び、きちゃなくなったそれらだけをお風呂場に持っていって、シャワーで先に洗う。
……さすがに無事だった服と、なにより優花の服を僕のおしっこまみれにしたら――洗剤とすすぎ多めなら衛生的には問題なくとも、僕の心が苦しいんだ。
「ふぅ……お粥、わざわざ作らせるのは悪いんだけど」
部屋の入り口――お盆の上に載せてある、つい10分ほど前にできたてだろうそれを眺めながら、罪悪感のため息。
普段料理しない彼女ががんばってくれたのは嬉しい。
けども、優花は味の調節が苦手だからなぁ……。
「ボイチェンに掛けた声も微妙に変なクセあったし……これも風邪ってことで納得してもらわないと。まぁドア越しならバレようがないけどさ」
優花は、長い日には10分くらいかけて学校のことを話してくる。
それには相づちだけで良いんだけども……耳が良い彼女のことだ、油断はできない。
「とりあえず、もっと精度高めなきゃ……ああ、先にお粥と、ゼリー系飲料買っとかないと……」
僕は、ぽてぽてと――小さくなった足の裏で、てしてしと廊下を歩いた。
◇
「こんばんは。もう風邪は大丈夫なので……こっちのゲームの新モード、やってみます」
【草】
【早くない??】
【今朝アプデ来たばかりのやつか】
【攻略情報一切ないから助かる】
【そらまぁ普通は仕事か学校……あっ】
【草】
【お前……】
【こはねちゃんは自由なんだよ】
【そうだよ】
【風邪報告した割にはお休み1日とか……さては配信中毒だな?】
【こはねさん、体には気をつけなきゃダメよ?】
【配信もゲームも体力使うからね】
【普段両方ともやってる=実は結構体力あるこはねちゃん】
【日の光に当たれないだけだからね】
【吸血鬼かな?】
【草】
【ほんと、対面じゃなきゃどうにでもなりそうなんだけどなぁ……】
【でも1年の半分がハイとローなもんだから、ローの期間が鍵だな】
「ん、病み上がりなのは分かってるって。あ、喉の方は普通に違和感あるので、当分は実況少なめ。ちょっと変な声だけど我慢してね。風邪のときとかってガラガラするよね」
【りょ】
【確かに喉、枯れてる感じだな】
【語尾の方が……いや、まさかな……】
【無理するなよー】
【ひより「せっかくのこはねちゃんさんの声が……!」】
「先生はまず学校の宿題とイラスト制作しましょうね」
【ひより「はい……」】
【草】
【ひよりちゃん先生に対しては厳しいヒキニート】
【「大切な人ほど自分のようになってほしくない」とかいう、これ以上ないし拒否できない説得力よ】
【草】
【草】
【ヤマアラシのなんとかかんとか】
【つよい】
【けど良かった、いつものこはねさんだ】
【だがTSっ子になっている】
【ダメか?】
【いや、むしろ嬉しい】
【まだ引きずるのか……】
【なんかムイッターでそのツリーがバズってたしな】
【草】
「そうだぞー。お前らの悪ノリのせいで、僕はTSしたんだからなー」
かちゃかちゃ。
モニターの隅っこで――リアルの僕の顔と同じ顔が、いたずらっぽく笑う。
心の中では、絞り出すように叫びながら。
――結局、声の問題さえクリアすれば元の通り。
考えてみればこの2年、優花と顔すら合わせていないし、僕がトイレに出るときも――たぶん、僕のドアを開ける音と足音を察知して、彼女の方が遠慮して合わせないように時間をずらしてくれている。
だからトイレでばったりも――っていうかこの2年間で数えるほどだったんだから心配いらないんだけども、逆に言えば数ヶ月に1回の頻度で確率的に遭遇するということで……やっぱり携帯トイレさんにお世話になるか。
漏斗とペットボトル?
注文はしたし、コスパ的にはこっち一択だけども、たぶん無理だと思う……その、狙いとかつけられないし、勢いとかコントロールできそうになかったし……なによりも最後の一線って感じで抵抗がすごいし、それで部屋がおしっこまみれとか悲しすぎるもん。
あと、普通に恥ずかしいし……おまるみたいで。
うん……男は立ちションしてもおかしくはない――今は法的にも倫理的にもアウトになりはしてるけども、緊急時にはみんなしょうがないって思ってくれるから――その一方で立ちションも野外ションも許されない女の子はトイレが不便ってのは本当だったんだね……。
家事は基本的に僕の分担――食材とかの買い物はネットでどうにかで、なるべく優花の出かけてる時間に配達してもらって自分で引き込むから問題はない。
問題があるとすれば、必ず家から十数歩は出ないと実現しないゴミ捨てくらい。
けどもそれだって早朝ならほぼ人に見られることはないし、フードをかぶったパーカー姿で――下も、今配送中になってるズボンならば違和感はないはずだ。
そして生活も、ベッドでごろごろするかパソコン弄るか電子書籍読むしかない部屋の中で完結する。
よって、座高さえクリアすれば――ちょっと使いにくくなったけども、キーボードとマウスはこれまで通り。
「……なんだ。僕が女の子になったとしたって、なんにも変わらないじゃないか」
ぽつり。
安心、それとも悲しい気持ち。
普段の自虐よりも数倍に重いそれが、僕にのしかかる。
【草】
【え? マジでTSを!?】
【ついに認めたな】
あっ。
「うぷっ……」
さあっ、と、顔から血の気が引いて胃液がこみ上げてきそうになる。
【こはねちゃん、さては味を占めたな?】
【実際、あのリプの嵐見て来たリスナーで同接伸びてるしな】
【バ美肉専門のやつらが食いついてきてるからな】
……けども、大丈夫だったらしい。
TSネタで構ってやったおかげで、このネタをしつこく擦ってるって思われる程度で済んでいる様子。
【あいつらすげぇよ……「むしろ男の方が安心するし興奮する」とか】
【わかる】
【ひぇっ】
【ちょっと分かる 興奮する】
【えぇ……】
【草】
とはいえ危なかったな……独り言でも呟くクセのせいで、うっかり本当のところがバレたらどうなるか。
そのおかげで、なんにも考えずにゲーム実況とか雑談とかで間が持つ気がする程度には気まずくならないんだけども、今回に限ってはよろしくない。
「今日の同接は30……来てくれてありがとう。でも気持ち悪くなるので以降は数えません」
こくっ。
きゅっとなっている胃袋をもみほぐすイメージで、お酒を1杯。
【草】
【気持ち悪いって言われた!?】
【初見に気持ち悪いって言う斬新な配信よ】
【まぁこはねちゃんの事情はなんとなく分かったし】
【そうそう、それに興奮するし】
【えぇ……】
「でも、そういう設定が……なぜか昨日の夜にできただけの男なので、嘘つきとか言わないで、嫌ならそっと切ってください。ただのネタなので」
よし、こう言っておけば大半の新規の人たちにはお帰りいただけるだろう。
僕は少人数相手にこぢんまりとちやほやされるのを求めているんだ。
バズとか人気とかは……あ、胃液。
――がちゃり。
優花の、いつもの声。
「……ぷはぁ……」
がちゃっ――僕は、ようやくにドアを開け、安心して廊下に出ようとして――引き返し、からからになった喉を潤す。
「と、水、水……んくっ」
寝起きで盛大にやらかした僕は、あれ以後、できる限りに水を飲まずに耐えた。
そしてなんとか優花が寝静まったと確信できる真夜中になるまで耐え、トイレへ行き――漏らすよりは遙かにマシと、もう諦めてシャツをめくっておしりと股をさらけ出した。
大丈夫、お風呂よりはマシだ。
そう思って。
そうして初めて僕自身の意思で排出してから「恥辱よりは羞恥と罪悪感の方がマシ」と、安心感だけがあって。
「恥ずかしいは恥ずかしいけど、1回しちゃえば後はもう大丈夫……でも、今夜からどうするかなぁ」
――ボイチェン。
僕自身は小さめな声でドアから少し距離を取り、耳を澄ませ、優花の声に応える返事をマイクからパソコンへ。
ボイチェンソフトを経由し、速い会話でなければ違和感なんてないラグで出力された、元の僕の声に限りなく近い声が応答――無事、毎朝の儀式は終わった。
実際、僕が聞いても僕の声に近かったしな……配信のアーカイブから声を切り抜いてボイチェンソフトに読み込ませたり調整したりとちょっとは手間がかかったものの、以後はこの女の子な声も、部屋に居る限りは一瞬で元の男の声になる。
ということで優花への返事はクリア。
そしてトイレは、夕方前から深夜までは水分を我慢することで――深夜まで耐えたらクリアできると判明。
これだけ気をつけていてトイレのために廊下に出てばったりとか悲しすぎるもん、我慢するしかない。
優花は真面目な学生だから、ちゃんと日が変わる前に布団に入るし基本的に朝まで目を覚まさない。
そして学校が充実しているから、週末以外は朝から夕方まで家には居ない。
だから、声とトイレさえなんとかなれば――しばらくは、持つ。
……とはいえ、さすがに我慢できないこともあるはず。
だから、もう買っちゃったよ……災害用の携帯トイレ。
あと、漏斗。
使うとしたら後者だろうけども。
うん……高いし無駄なことしてるなぁって思うけど、トイレに行ってばったりってのはあんまりにも悲しすぎるから。
まぁ届くのは今夜だけど、今夜から使えるんだからいいや……どうせゴミ捨ては僕の仕事だ、どっちだとしてもバレやしないだろう。
「……服の洗濯もゴミ捨ても僕の担当で良かった。いや、高校生も3年になって、まだ兄である僕に下着まで洗わせて平気な優花も優花だけどさぁ……まぁ下着はネットに放り込んで洗って、乾燥機に入れられないからネットから取り出して手ずから干して……いや、やっぱ年頃の娘が兄にさせることじゃない気がする……いや、単純に僕が兄とも男とも認識されていないだけか……あれだ、昔の高貴な身分の人は下の身分の人を人と認識していないあれだろうなぁ……」
どうせ「使用人B」あたりに格下げになったんだろうしな、大学中退あたりで……いやそれでも、それまでもずっと下着を平気で渡してくるのは……うーん。
「まぁ絶対にとっかえひっかえしてるだろう彼氏さんとかに比べたら僕なんて……くぴくぴくぴくぴ……!」
妹がどこかの男と付き合う。
そう考えるだけで頭が真っ青になって吐き気が止まらないんだ。
兄ってのは最も弱い種族なんだ。
ぐっしょりと水分を盛大に吸い込んだ服の山を洗面所に運び、きちゃなくなったそれらだけをお風呂場に持っていって、シャワーで先に洗う。
……さすがに無事だった服と、なにより優花の服を僕のおしっこまみれにしたら――洗剤とすすぎ多めなら衛生的には問題なくとも、僕の心が苦しいんだ。
「ふぅ……お粥、わざわざ作らせるのは悪いんだけど」
部屋の入り口――お盆の上に載せてある、つい10分ほど前にできたてだろうそれを眺めながら、罪悪感のため息。
普段料理しない彼女ががんばってくれたのは嬉しい。
けども、優花は味の調節が苦手だからなぁ……。
「ボイチェンに掛けた声も微妙に変なクセあったし……これも風邪ってことで納得してもらわないと。まぁドア越しならバレようがないけどさ」
優花は、長い日には10分くらいかけて学校のことを話してくる。
それには相づちだけで良いんだけども……耳が良い彼女のことだ、油断はできない。
「とりあえず、もっと精度高めなきゃ……ああ、先にお粥と、ゼリー系飲料買っとかないと……」
僕は、ぽてぽてと――小さくなった足の裏で、てしてしと廊下を歩いた。
◇
「こんばんは。もう風邪は大丈夫なので……こっちのゲームの新モード、やってみます」
【草】
【早くない??】
【今朝アプデ来たばかりのやつか】
【攻略情報一切ないから助かる】
【そらまぁ普通は仕事か学校……あっ】
【草】
【お前……】
【こはねちゃんは自由なんだよ】
【そうだよ】
【風邪報告した割にはお休み1日とか……さては配信中毒だな?】
【こはねさん、体には気をつけなきゃダメよ?】
【配信もゲームも体力使うからね】
【普段両方ともやってる=実は結構体力あるこはねちゃん】
【日の光に当たれないだけだからね】
【吸血鬼かな?】
【草】
【ほんと、対面じゃなきゃどうにでもなりそうなんだけどなぁ……】
【でも1年の半分がハイとローなもんだから、ローの期間が鍵だな】
「ん、病み上がりなのは分かってるって。あ、喉の方は普通に違和感あるので、当分は実況少なめ。ちょっと変な声だけど我慢してね。風邪のときとかってガラガラするよね」
【りょ】
【確かに喉、枯れてる感じだな】
【語尾の方が……いや、まさかな……】
【無理するなよー】
【ひより「せっかくのこはねちゃんさんの声が……!」】
「先生はまず学校の宿題とイラスト制作しましょうね」
【ひより「はい……」】
【草】
【ひよりちゃん先生に対しては厳しいヒキニート】
【「大切な人ほど自分のようになってほしくない」とかいう、これ以上ないし拒否できない説得力よ】
【草】
【草】
【ヤマアラシのなんとかかんとか】
【つよい】
【けど良かった、いつものこはねさんだ】
【だがTSっ子になっている】
【ダメか?】
【いや、むしろ嬉しい】
【まだ引きずるのか……】
【なんかムイッターでそのツリーがバズってたしな】
【草】
「そうだぞー。お前らの悪ノリのせいで、僕はTSしたんだからなー」
かちゃかちゃ。
モニターの隅っこで――リアルの僕の顔と同じ顔が、いたずらっぽく笑う。
心の中では、絞り出すように叫びながら。
――結局、声の問題さえクリアすれば元の通り。
考えてみればこの2年、優花と顔すら合わせていないし、僕がトイレに出るときも――たぶん、僕のドアを開ける音と足音を察知して、彼女の方が遠慮して合わせないように時間をずらしてくれている。
だからトイレでばったりも――っていうかこの2年間で数えるほどだったんだから心配いらないんだけども、逆に言えば数ヶ月に1回の頻度で確率的に遭遇するということで……やっぱり携帯トイレさんにお世話になるか。
漏斗とペットボトル?
注文はしたし、コスパ的にはこっち一択だけども、たぶん無理だと思う……その、狙いとかつけられないし、勢いとかコントロールできそうになかったし……なによりも最後の一線って感じで抵抗がすごいし、それで部屋がおしっこまみれとか悲しすぎるもん。
あと、普通に恥ずかしいし……おまるみたいで。
うん……男は立ちションしてもおかしくはない――今は法的にも倫理的にもアウトになりはしてるけども、緊急時にはみんなしょうがないって思ってくれるから――その一方で立ちションも野外ションも許されない女の子はトイレが不便ってのは本当だったんだね……。
家事は基本的に僕の分担――食材とかの買い物はネットでどうにかで、なるべく優花の出かけてる時間に配達してもらって自分で引き込むから問題はない。
問題があるとすれば、必ず家から十数歩は出ないと実現しないゴミ捨てくらい。
けどもそれだって早朝ならほぼ人に見られることはないし、フードをかぶったパーカー姿で――下も、今配送中になってるズボンならば違和感はないはずだ。
そして生活も、ベッドでごろごろするかパソコン弄るか電子書籍読むしかない部屋の中で完結する。
よって、座高さえクリアすれば――ちょっと使いにくくなったけども、キーボードとマウスはこれまで通り。
「……なんだ。僕が女の子になったとしたって、なんにも変わらないじゃないか」
ぽつり。
安心、それとも悲しい気持ち。
普段の自虐よりも数倍に重いそれが、僕にのしかかる。
【草】
【え? マジでTSを!?】
【ついに認めたな】
あっ。
「うぷっ……」
さあっ、と、顔から血の気が引いて胃液がこみ上げてきそうになる。
【こはねちゃん、さては味を占めたな?】
【実際、あのリプの嵐見て来たリスナーで同接伸びてるしな】
【バ美肉専門のやつらが食いついてきてるからな】
……けども、大丈夫だったらしい。
TSネタで構ってやったおかげで、このネタをしつこく擦ってるって思われる程度で済んでいる様子。
【あいつらすげぇよ……「むしろ男の方が安心するし興奮する」とか】
【わかる】
【ひぇっ】
【ちょっと分かる 興奮する】
【えぇ……】
【草】
とはいえ危なかったな……独り言でも呟くクセのせいで、うっかり本当のところがバレたらどうなるか。
そのおかげで、なんにも考えずにゲーム実況とか雑談とかで間が持つ気がする程度には気まずくならないんだけども、今回に限ってはよろしくない。
「今日の同接は30……来てくれてありがとう。でも気持ち悪くなるので以降は数えません」
こくっ。
きゅっとなっている胃袋をもみほぐすイメージで、お酒を1杯。
【草】
【気持ち悪いって言われた!?】
【初見に気持ち悪いって言う斬新な配信よ】
【まぁこはねちゃんの事情はなんとなく分かったし】
【そうそう、それに興奮するし】
【えぇ……】
「でも、そういう設定が……なぜか昨日の夜にできただけの男なので、嘘つきとか言わないで、嫌ならそっと切ってください。ただのネタなので」
よし、こう言っておけば大半の新規の人たちにはお帰りいただけるだろう。
僕は少人数相手にこぢんまりとちやほやされるのを求めているんだ。
バズとか人気とかは……あ、胃液。
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