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3章 全世界にバレた僕の声
28話 完璧に声バレ回避できた
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「あと、勝手に切り抜いて拡散した人。居るでしょ」
【ギクッ】
【なぜバレた!?】
【草】
【まぁ複数居るわな】
「あ、居たんだ……いや、女の子バレした僕が泣きじゃくる姿とか絶対おいしいから待機してると思ってた。あ、違う違う、そういうドッキリにね」
え?
コミュ障?
――僕だって、怒りを覚えてる相手にくらいは普通にしゃべれるよ?
泣いてすっきりしてるし、結構疲れてるからね。
相手がヤンキーとか陽キャとか群れてる相手じゃなきゃ大丈夫大丈夫。
「もう拡散されたのとかはどうしようもないってのは知ってる。それ狙いだったし……ほら、泣く演技にハマっちゃったから」
【草】
【ギャン泣きをそう主張するのか……】
【し、しーっ!】
【そうだったな……演技上手だなー(棒】
「そうそう、だからバズったのとか、全部僕に送ってね? そうだなぁ……『バ美肉ボイチェンで野郎どもを釣ってみたら大漁だった』とかなタイトルで僕のチャンネルの広告塔になってもらうから。あとSNSでもリポストして、少しでも僕の得になるようにしてやるから。ドッキリに釣られちゃったんだからしょうがないよね」
ひとしきり――子供のときぶりに盛大に泣いた僕に怖いものなんて無い。
ここは強気に出て「本当にそういう企画だったんだな」って信憑性を高めるのに使わせてもらう。
え?
登録者とか収益?
そんなの要らないし……女の子と思って釣られてきた野郎どもが住み着いてもやだし、そもそも怒りが静まったら人見知り発動するから怖いし……。
【草】
【つよい】
【したたかな幼女】
【だから25歳の男だって】
【そうだったなー(棒】
【え? マジで企画?】
【そんなぁ】
【あー、炎上したのを逆手に取るか】
【うまい】
【大混乱で草】
【でもずびずび音とか……】
【し、しーっ!】
【だからダメだって!】
【あー、やられたわー そういうのも、事前準備ありならボイチェン使って用意できるわーマジできるわー ……できるよな?】
【できな……そうだな、できるな(棒】
【あー、できますできます(棒】
【あっ……(察し】
【マジかー(棒】
【えー(棒】
【お前ら釣られてやんの】
【お前だって】
【そうだけど……】
【草】
【分かりました……ついでについさっきの鼻かみ音まで編集したの、DMで送ります……ムイッター用とミックミック用とミューチュームショートと通常版で編集して……うぅ……ぐや゛じい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛……】
【草】
【草】
【手厚すぎて草】
【まぁ釣られたわけだしな】
【こはねちゃんさんの方が何枚も上手だったからな】
【潔くて草】
【完璧な釣りだったからな】
【え? どっかの事務所の企画?】
【でも個人勢だって】
【箱に移籍するとか】
「いやいや、そんなのないです。ただの思いつきがびっくりするくらいにハマっただけで」
ふぅ。
……なんだ、ネットの向こうだったら案外普通に話せるじゃんか。
良かった、やらかしちゃったけどなんとかなって。
◇
【お、懐かしいな、これ】
【学生時代にやったわ】
【すげー、まだ続いてたんだ】
【昔は流行ってたよなぁ】
【当時のグラまんまだけど微妙に良くなってる】
「そうだよ。一時期はサーバーが落ちるくらい人気だったんだから。10年近く経って……干支がひとまわりした結果、かつての僕たちとおんなじ層が流入してきてるから持ち直してるらしいけど」
【あ、俺のアカウント、スマホ変えてログインできないわ】
【そもそもメールアドレス、yモードとかいうとっくに終わったやつだったわ……】
【あるある】
それから――意外とみんな素直に「逆ドッキリ」に納得してくれたらしく、特に荒れることもなく――荒れていたら僕はトラウマを発症して配信をブチ切りしてネットの世界からも引きこもっていたはずだ――かといって配信からさっさと退出することもなく、なぜか和気あいあいと昔語りしていた。
……大漁の文字列が怖いけど、まだおかしくなってるテンションは上がったままだから大丈夫……なはず。
【10年……12年……干支……うっ……】
【つらい】
【俺はまだおじさんじゃない俺はまだおじさんじゃない】
【お姉さんなの私はまだお姉ちゃんお姉さんお姉ちゃんお姉さん】
【ひぇっ】
【こわいよー】
【この配信、こはねちゃんの被害を受ける属性が多すぎる】
「うん、つらいよね。でもしょうがないよ、僕だって引きこもって1日1日を過ごしてたらもう25だもん。好きで年取ったんじゃないもんね」
よし、もう大丈夫。
みんな、誰も声バレ疑惑のことなんて覚えていない。
そうだ、人間ってのは基本おバカなんだ。
今みたいな雑な言い訳でも、ころっと信じ込んじゃうんだから……あー、安心した。
増えた――いや、男だって判明したらかなり減ったけども、前から居た雰囲気の視聴者たちに近い人たちが残ってくれたのか、かなり初対面の人たち――新規さんを前にしても、僕のコミュ障は発動していない。
まぁ、たぶんアドレナリンとかいろいろなのがどばどば出てるからなんだろうし。
あと、アルコールでかなり緩和してるからってのもあるし。
……これ、終わったあとが地獄だなぁ……。
ほら、今の体、本当に喜怒哀楽激しくて特にちょっとした刺激で泣いちゃうし……。
「時間だけは平等って言うけど、やっぱ充実したリアル過ごした人たちの方が絶対的に時間の密度は高いんだ。だから僕みたいなのはこうして青春から干支が見える歳になると落ち込むんだ。無駄に過ごした時間でさ」
【草】
【草】
【わかりみが深い】
【こいつ……できる……!】
【え、なんでこんなトークできる人が今まで埋もれて……ああ、ゲームのチョイスぅ……】
【あとは普通の男ボイス】
【声は別に気にならないんだけど】
【VTuberな見た目から入ってくるからミスマッチ起こしとる】
【それな】
【悪いけど、同接とか再生数少ないのは見ないもんね……】
【普通は物好きとかファンしか見ないからなぁ、数字が取れてないと】
【サムネもタイトルも凝ってないせいでムーチューブ的に失敗しとるな】
【聞いてたらおもしろいんだけどなぁ】
【まぁでも実際、普段の実況だと穏やかすぎるし】
【ほんと、チョイスがね……】
【悲しいなぁ】
【あと、かわいいことはかわいいけど正直立ち絵もクオリティー低いし】
【あっ】
【それは】
【待て、早く謝れ】
【え?】
「……1回目は許す。2回目はBANね。僕、お釈迦様にはほど遠いから」
【ひぇっ】
【え、なんで】
【急にガチトーンになってる】
【こわいよー】
【ヒント:こはねちゃんさんはこの立ち絵のイラストレーターさんが最推し】
【こはねちゃんさんが唯一キレるのがひよりママの悪口だからなぁ】
【ひより「いえ、やっぱり下手ですし……」】
「良いですか、先生。あと新規の人たち」
すぅ、と、僕は息を吸う。
【ひより「はい……」】
【はい……】
【はい……(おい、いつものだぞ)】
【はい……(正座して聞け)】
【はい……(なんだこれ)】
【草】
【なぜか先生が怒られる展開で草】
【すでに叱られる準備できてて草】
【おもしれーやつらで草】
「芸術ってのには基準なんてないんです。美大とか出たみたいなすごい作品よりも友達とか……は僕には居ないので、家族……とも仲が悪いので。………………………………。ふぅ……特に良いたとえとかできませんけど……ふぐっ……」
僕は空を仰ぐ。
「ぐすっ……泣かない、泣かない……今はひより先生……」
ああ、僕は今日もずいぶんとしゃべっている。
カーテン越しだから空なんて見えやしないけど。
【草】
【草】
【胸が苦しい】
【この気持ちは……まさか、恋……?】
【変だよ】
【草】
【男の声で泣くのはやめて……せめてボイチェンにして……】
【まさか男声で第4ラウンドを!?】
【少し興味があります】
【ひぇっ】
【草】
「ふぅ……で、説得力はないですけど、たとえ技巧が今の段階では稚拙だったとしても、先生の絵からは他の誰にも真似できない味がにじみ出ているんです。少なくとも僕にとってはかけがえのない存在です。それが芸術っていうものでしょう? 先生にしか、今の先生にしか創造できない絵柄なんです。そんな先生の、今の姿が好きなんです。今できる技量で、今表現したいもの……それを見られるだけで、ファンは幸せなんです」
【分かる】
【分かる】
【すごくよく分かる】
【感動した】
みんな、マンガなら分かってくれるんだけどなぁ……ほら、最初の方の巻の絵柄が好きだとかって。
それがイラストになると、とたんに厳しくなるんだから。
【ひより「……え、それって……/////」】
ん?
何か変な反応?
【????】
【言いたいことは分かるが】
【まさかの全世界公開告白!?】
【草】
【女の子の身バレ配信かと思ってきてみたら予想外におもしろくて、かと思ったらいきなり告ってて草】
【これはこれで】
………………………………?
……あー、先生もみんなもそっちで捕らえたか……すぅっ。
「いやいや、ありえないので。片や駆け出しリアルも創作も充実してる学生のひより先生と、僕みたいにコミュ障で大学を中退して引きこもってるニートとなんて。ありえないので、くれぐれも変な噂立ててひより先生のキャリアを台無しにすることだけはやめてね、みんな。さすがにそれだけは法的措置も辞さないから。僕は家族にお金をせびって開示請求とかできるタイプのニートなんだぞ? 本気で家族に土下座してでも捻出して、先生への誹謗中傷ってことで開示して対面――は無理だから弁護士の先生に謝ってもらうからな? あーあ、僕が本当にさっきの声の通りの肉体だったら変な噂は立たないんだけど、残念ながらこの通りの男だからなぁ」
まったく。
男も女もどいつもこいつも、男と女――かもしれない組み合わせが、ちょっとばかし親しいからっていってすぐにこれだ。
悲しいかな、僕を含めて大多数の人間ってのは小学生低学年からろくに進化できないらしい。
ほら、小学校であるあれだよ、「うわ、男女で手ぇ繋いでる! 夫婦だ!」って、あれ。
――そもそも僕は女の子になってるのにね……ってのをきっぱり否定したからこそなんだろうけども。
ああいや、このあまりにも自由すぎる時代なもんだから、男同士でも女の子同士でもそれはそれではやし立てるのか……やっぱ精神年齢10歳から成長しないんだな、みんな。
「――失うものがなにひとつないからこそ、たとえどんな目に遭ってでも、先生が被害を受けた分は償わせることができるって――覚えといてね? 僕が生きてる限りは、どんなことしてでも追い詰めるから」
可能な限りのすごみを聞かせて――マイクぎりぎりで、言う。
もっとも、ボイチェンの通用しない現実では、ただ小さい女の子がかわいくすごもうとしてるだけにしか聞こえてないけども。
【ひぇっ】
【ひぇっ】
【めっちゃ怖くて草】
【こわいよー】
【草】
【しかし話が滑らかすぎる】
【これでなんでニートしてるんだ草】
【これ、絶対普通に就職できるって】
【うちの会社の潤滑油で良いから……どう?】
【まて、うちに】
「ニートをなめるなよ? 詳しくは過去のアーカイブ参照。ひより先生も良いですね?」
【ひより「 」】
【し、死んでる……!】
【草】
【そらそうよ……】
【どう聞いても熱烈な告白だったからなぁ】
【でも悲しいかな、こはねちゃんは引きこもりニートだからひよりママとは会えないのよね たとえ男でも女の子でもTSっ子だったとしても……いや、最大の原因はさっきのギャン泣きまで起こり得るパニックか……】
【ぶわっ】
【それなんて悲劇?】
【今の時代を象徴する哲学だな!】
感情がマイナスに吹っ切れた反動からか、やけにハイテンションで――普段に比べたらお酒もたいして入っていないのに、その後の配信はやけにコメント欄が盛り上がっていた。
◇
「うぷっ……ひん……おろろろろろ」
で、そのあと冷静になった僕はその反動の反動で――とびきりの美少女になったのにゲロを吐いた。
「うぇぇ……やだぁ、こわいぃ……ひと、こわいぃ……ふぇぇぇぇぇ゛……!」
「おろろろろろ……ぐす……」
で。
げろげろしてたって報告だけしといたら、ぶら下がったリプライにその音とか映像とか上げてほしかったっていうのが――それなりに大量に来てて、もっかい吐いた。
やっぱ人間って……怖い。
◇
――ガタッ!
「綾瀬さん!?」
「綾瀬様、どうかしましたか!?」
――とある高校、3年の教室。
「……ぃ、いえ……何でも……」
2時間かけての試験が終わり、気が緩んだ休み時間。
それでもまだ静かな中、普段は「お淑やか」なはずの彼女がいきなり立ち上がり、あやうくイスを倒しかけたのに驚く同級生たち。
顔を真っ赤にしながら座り直した綾瀬優花は――頭を抱えた。
――こっそり、なんとなく、本当に気まぐれで見てしまったスマホのSNSで『声バレ幼女こはねちゃんのギャン泣き配信』という文字列を見てしまったから。
【ギクッ】
【なぜバレた!?】
【草】
【まぁ複数居るわな】
「あ、居たんだ……いや、女の子バレした僕が泣きじゃくる姿とか絶対おいしいから待機してると思ってた。あ、違う違う、そういうドッキリにね」
え?
コミュ障?
――僕だって、怒りを覚えてる相手にくらいは普通にしゃべれるよ?
泣いてすっきりしてるし、結構疲れてるからね。
相手がヤンキーとか陽キャとか群れてる相手じゃなきゃ大丈夫大丈夫。
「もう拡散されたのとかはどうしようもないってのは知ってる。それ狙いだったし……ほら、泣く演技にハマっちゃったから」
【草】
【ギャン泣きをそう主張するのか……】
【し、しーっ!】
【そうだったな……演技上手だなー(棒】
「そうそう、だからバズったのとか、全部僕に送ってね? そうだなぁ……『バ美肉ボイチェンで野郎どもを釣ってみたら大漁だった』とかなタイトルで僕のチャンネルの広告塔になってもらうから。あとSNSでもリポストして、少しでも僕の得になるようにしてやるから。ドッキリに釣られちゃったんだからしょうがないよね」
ひとしきり――子供のときぶりに盛大に泣いた僕に怖いものなんて無い。
ここは強気に出て「本当にそういう企画だったんだな」って信憑性を高めるのに使わせてもらう。
え?
登録者とか収益?
そんなの要らないし……女の子と思って釣られてきた野郎どもが住み着いてもやだし、そもそも怒りが静まったら人見知り発動するから怖いし……。
【草】
【つよい】
【したたかな幼女】
【だから25歳の男だって】
【そうだったなー(棒】
【え? マジで企画?】
【そんなぁ】
【あー、炎上したのを逆手に取るか】
【うまい】
【大混乱で草】
【でもずびずび音とか……】
【し、しーっ!】
【だからダメだって!】
【あー、やられたわー そういうのも、事前準備ありならボイチェン使って用意できるわーマジできるわー ……できるよな?】
【できな……そうだな、できるな(棒】
【あー、できますできます(棒】
【あっ……(察し】
【マジかー(棒】
【えー(棒】
【お前ら釣られてやんの】
【お前だって】
【そうだけど……】
【草】
【分かりました……ついでについさっきの鼻かみ音まで編集したの、DMで送ります……ムイッター用とミックミック用とミューチュームショートと通常版で編集して……うぅ……ぐや゛じい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛……】
【草】
【草】
【手厚すぎて草】
【まぁ釣られたわけだしな】
【こはねちゃんさんの方が何枚も上手だったからな】
【潔くて草】
【完璧な釣りだったからな】
【え? どっかの事務所の企画?】
【でも個人勢だって】
【箱に移籍するとか】
「いやいや、そんなのないです。ただの思いつきがびっくりするくらいにハマっただけで」
ふぅ。
……なんだ、ネットの向こうだったら案外普通に話せるじゃんか。
良かった、やらかしちゃったけどなんとかなって。
◇
【お、懐かしいな、これ】
【学生時代にやったわ】
【すげー、まだ続いてたんだ】
【昔は流行ってたよなぁ】
【当時のグラまんまだけど微妙に良くなってる】
「そうだよ。一時期はサーバーが落ちるくらい人気だったんだから。10年近く経って……干支がひとまわりした結果、かつての僕たちとおんなじ層が流入してきてるから持ち直してるらしいけど」
【あ、俺のアカウント、スマホ変えてログインできないわ】
【そもそもメールアドレス、yモードとかいうとっくに終わったやつだったわ……】
【あるある】
それから――意外とみんな素直に「逆ドッキリ」に納得してくれたらしく、特に荒れることもなく――荒れていたら僕はトラウマを発症して配信をブチ切りしてネットの世界からも引きこもっていたはずだ――かといって配信からさっさと退出することもなく、なぜか和気あいあいと昔語りしていた。
……大漁の文字列が怖いけど、まだおかしくなってるテンションは上がったままだから大丈夫……なはず。
【10年……12年……干支……うっ……】
【つらい】
【俺はまだおじさんじゃない俺はまだおじさんじゃない】
【お姉さんなの私はまだお姉ちゃんお姉さんお姉ちゃんお姉さん】
【ひぇっ】
【こわいよー】
【この配信、こはねちゃんの被害を受ける属性が多すぎる】
「うん、つらいよね。でもしょうがないよ、僕だって引きこもって1日1日を過ごしてたらもう25だもん。好きで年取ったんじゃないもんね」
よし、もう大丈夫。
みんな、誰も声バレ疑惑のことなんて覚えていない。
そうだ、人間ってのは基本おバカなんだ。
今みたいな雑な言い訳でも、ころっと信じ込んじゃうんだから……あー、安心した。
増えた――いや、男だって判明したらかなり減ったけども、前から居た雰囲気の視聴者たちに近い人たちが残ってくれたのか、かなり初対面の人たち――新規さんを前にしても、僕のコミュ障は発動していない。
まぁ、たぶんアドレナリンとかいろいろなのがどばどば出てるからなんだろうし。
あと、アルコールでかなり緩和してるからってのもあるし。
……これ、終わったあとが地獄だなぁ……。
ほら、今の体、本当に喜怒哀楽激しくて特にちょっとした刺激で泣いちゃうし……。
「時間だけは平等って言うけど、やっぱ充実したリアル過ごした人たちの方が絶対的に時間の密度は高いんだ。だから僕みたいなのはこうして青春から干支が見える歳になると落ち込むんだ。無駄に過ごした時間でさ」
【草】
【草】
【わかりみが深い】
【こいつ……できる……!】
【え、なんでこんなトークできる人が今まで埋もれて……ああ、ゲームのチョイスぅ……】
【あとは普通の男ボイス】
【声は別に気にならないんだけど】
【VTuberな見た目から入ってくるからミスマッチ起こしとる】
【それな】
【悪いけど、同接とか再生数少ないのは見ないもんね……】
【普通は物好きとかファンしか見ないからなぁ、数字が取れてないと】
【サムネもタイトルも凝ってないせいでムーチューブ的に失敗しとるな】
【聞いてたらおもしろいんだけどなぁ】
【まぁでも実際、普段の実況だと穏やかすぎるし】
【ほんと、チョイスがね……】
【悲しいなぁ】
【あと、かわいいことはかわいいけど正直立ち絵もクオリティー低いし】
【あっ】
【それは】
【待て、早く謝れ】
【え?】
「……1回目は許す。2回目はBANね。僕、お釈迦様にはほど遠いから」
【ひぇっ】
【え、なんで】
【急にガチトーンになってる】
【こわいよー】
【ヒント:こはねちゃんさんはこの立ち絵のイラストレーターさんが最推し】
【こはねちゃんさんが唯一キレるのがひよりママの悪口だからなぁ】
【ひより「いえ、やっぱり下手ですし……」】
「良いですか、先生。あと新規の人たち」
すぅ、と、僕は息を吸う。
【ひより「はい……」】
【はい……】
【はい……(おい、いつものだぞ)】
【はい……(正座して聞け)】
【はい……(なんだこれ)】
【草】
【なぜか先生が怒られる展開で草】
【すでに叱られる準備できてて草】
【おもしれーやつらで草】
「芸術ってのには基準なんてないんです。美大とか出たみたいなすごい作品よりも友達とか……は僕には居ないので、家族……とも仲が悪いので。………………………………。ふぅ……特に良いたとえとかできませんけど……ふぐっ……」
僕は空を仰ぐ。
「ぐすっ……泣かない、泣かない……今はひより先生……」
ああ、僕は今日もずいぶんとしゃべっている。
カーテン越しだから空なんて見えやしないけど。
【草】
【草】
【胸が苦しい】
【この気持ちは……まさか、恋……?】
【変だよ】
【草】
【男の声で泣くのはやめて……せめてボイチェンにして……】
【まさか男声で第4ラウンドを!?】
【少し興味があります】
【ひぇっ】
【草】
「ふぅ……で、説得力はないですけど、たとえ技巧が今の段階では稚拙だったとしても、先生の絵からは他の誰にも真似できない味がにじみ出ているんです。少なくとも僕にとってはかけがえのない存在です。それが芸術っていうものでしょう? 先生にしか、今の先生にしか創造できない絵柄なんです。そんな先生の、今の姿が好きなんです。今できる技量で、今表現したいもの……それを見られるだけで、ファンは幸せなんです」
【分かる】
【分かる】
【すごくよく分かる】
【感動した】
みんな、マンガなら分かってくれるんだけどなぁ……ほら、最初の方の巻の絵柄が好きだとかって。
それがイラストになると、とたんに厳しくなるんだから。
【ひより「……え、それって……/////」】
ん?
何か変な反応?
【????】
【言いたいことは分かるが】
【まさかの全世界公開告白!?】
【草】
【女の子の身バレ配信かと思ってきてみたら予想外におもしろくて、かと思ったらいきなり告ってて草】
【これはこれで】
………………………………?
……あー、先生もみんなもそっちで捕らえたか……すぅっ。
「いやいや、ありえないので。片や駆け出しリアルも創作も充実してる学生のひより先生と、僕みたいにコミュ障で大学を中退して引きこもってるニートとなんて。ありえないので、くれぐれも変な噂立ててひより先生のキャリアを台無しにすることだけはやめてね、みんな。さすがにそれだけは法的措置も辞さないから。僕は家族にお金をせびって開示請求とかできるタイプのニートなんだぞ? 本気で家族に土下座してでも捻出して、先生への誹謗中傷ってことで開示して対面――は無理だから弁護士の先生に謝ってもらうからな? あーあ、僕が本当にさっきの声の通りの肉体だったら変な噂は立たないんだけど、残念ながらこの通りの男だからなぁ」
まったく。
男も女もどいつもこいつも、男と女――かもしれない組み合わせが、ちょっとばかし親しいからっていってすぐにこれだ。
悲しいかな、僕を含めて大多数の人間ってのは小学生低学年からろくに進化できないらしい。
ほら、小学校であるあれだよ、「うわ、男女で手ぇ繋いでる! 夫婦だ!」って、あれ。
――そもそも僕は女の子になってるのにね……ってのをきっぱり否定したからこそなんだろうけども。
ああいや、このあまりにも自由すぎる時代なもんだから、男同士でも女の子同士でもそれはそれではやし立てるのか……やっぱ精神年齢10歳から成長しないんだな、みんな。
「――失うものがなにひとつないからこそ、たとえどんな目に遭ってでも、先生が被害を受けた分は償わせることができるって――覚えといてね? 僕が生きてる限りは、どんなことしてでも追い詰めるから」
可能な限りのすごみを聞かせて――マイクぎりぎりで、言う。
もっとも、ボイチェンの通用しない現実では、ただ小さい女の子がかわいくすごもうとしてるだけにしか聞こえてないけども。
【ひぇっ】
【ひぇっ】
【めっちゃ怖くて草】
【こわいよー】
【草】
【しかし話が滑らかすぎる】
【これでなんでニートしてるんだ草】
【これ、絶対普通に就職できるって】
【うちの会社の潤滑油で良いから……どう?】
【まて、うちに】
「ニートをなめるなよ? 詳しくは過去のアーカイブ参照。ひより先生も良いですね?」
【ひより「 」】
【し、死んでる……!】
【草】
【そらそうよ……】
【どう聞いても熱烈な告白だったからなぁ】
【でも悲しいかな、こはねちゃんは引きこもりニートだからひよりママとは会えないのよね たとえ男でも女の子でもTSっ子だったとしても……いや、最大の原因はさっきのギャン泣きまで起こり得るパニックか……】
【ぶわっ】
【それなんて悲劇?】
【今の時代を象徴する哲学だな!】
感情がマイナスに吹っ切れた反動からか、やけにハイテンションで――普段に比べたらお酒もたいして入っていないのに、その後の配信はやけにコメント欄が盛り上がっていた。
◇
「うぷっ……ひん……おろろろろろ」
で、そのあと冷静になった僕はその反動の反動で――とびきりの美少女になったのにゲロを吐いた。
「うぇぇ……やだぁ、こわいぃ……ひと、こわいぃ……ふぇぇぇぇぇ゛……!」
「おろろろろろ……ぐす……」
で。
げろげろしてたって報告だけしといたら、ぶら下がったリプライにその音とか映像とか上げてほしかったっていうのが――それなりに大量に来てて、もっかい吐いた。
やっぱ人間って……怖い。
◇
――ガタッ!
「綾瀬さん!?」
「綾瀬様、どうかしましたか!?」
――とある高校、3年の教室。
「……ぃ、いえ……何でも……」
2時間かけての試験が終わり、気が緩んだ休み時間。
それでもまだ静かな中、普段は「お淑やか」なはずの彼女がいきなり立ち上がり、あやうくイスを倒しかけたのに驚く同級生たち。
顔を真っ赤にしながら座り直した綾瀬優花は――頭を抱えた。
――こっそり、なんとなく、本当に気まぐれで見てしまったスマホのSNSで『声バレ幼女こはねちゃんのギャン泣き配信』という文字列を見てしまったから。
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