TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

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4章 女の子声での配信生活

47話 服装談義

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私が小学生のころ、兄さんは言いました。

『優花、良い? 人は見た目じゃないよ』

――恐らくは、私の容姿が優れていたから。

私が、それを良いことに傲慢にならないように、と。
ただ褒めるだけだった周囲とは違い、褒めてくれつつも「在り方」を教えてくれました。

ですが、

『? それは兄さんがとんでもないイケメンだから彼女を作って連れ込むという事ですか? 刺しますか? にんしんしていないって、しょうこをお腹の中からひきずり出しますか?』

『いやいや優花?? そういうのどこで覚えたの??』

『最近人気の、このマンガです。1日に1回広告を見れば無料でさいしん話です。ちなみに今はヒロインのけなげな妹が10股しているヒロインたちと武器で戦っている場面です。すでに3人だつらくしました。あと7人です』

『えぇ……』

兄さんは、昔から優しい人です。

そして――幼いころから顔が整っているという理由で周囲からちやほやされていた私を、おごり高ぶる前に引き戻してくれた素敵な人です。

子供を産みたいです。
産み続けられる限りには、毎年でも。

でも、学校で教わりました。

「血の繋がっているきょうだいは、子供を作ってしまうとその子供たちが困る」ことになると。

そして――お母さんやお父さん、親戚の人たちも風評被害というので困って――兄さん自身が、とても困ると。

逮捕されると。
もう二度と会えなくなると。

だから、我慢します。

『……優花……これ、小3が読んで良いマンガじゃないよ……』

『? クラスの子たちのあいだで最新話のこうしん直後はマインのグループチャットで予習ひっすですけど?』

『……ああ、うん……女子はそういうとこがあるからね……うん……それならしょうがないよね……うん……情操教育以前に、女子コミュニティーはね……』

兄さんは、7歳も年下の私にでさえ、優しい人です。

だから孕みたいです。

同じサイトのマンガみたいに「せいり」っていうのが来たら「誘って」「襲ってもらって」「襲って」産みたいです。

それを「孕む」って言うらしいです。

でも、我慢します。

何よりも、兄さんはそういう「正しくないこと」を良くないって思っているから。

――――――でも、いつも思うんです。

「もし、兄さんが私と血の繋がった本当の兄さん」でなければ――――――と。

だから何回も父さんと母さんに不倫していないか聞きました。
でも残念なことに、2人はとても仲良しでそんな気配はありませんでした。

残念でした。

とても残念でした。

残念で残念で――残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で残念で仕方がなかったので、ずっと我慢してきました。

でも、もう――――――――――――





【ひより先生の画力が最近やべぇ】

【1週間経つと明らかに上達が分かるレベルだよな】
【若いしな】
【若さもそうだけど熱量よ】

【おんなじ子を毎日描いてたら、しかも服とか髪型毎回変える努力してるからな】

【何回も描いてる感じのはマジでやべーくらいかわいい】
【創作の熱量を全部こはねちゃんのファンアートに注ぎ込んでいるママの鏡】
【ひより先生? こはねちゃんにどハマりしてない?】
【草】
【ままぁ……】

大変だ。

先生が僕なんかに時間を割いている。
これは良くない。

けども、なぜか先生は僕――正確には僕のガワに熱心であらせられる。

ならば、

「……無理だけはしないでくださいね。あと、依頼料はほんと、払うのでいつでも言ってください。ろくでなしごくつぶしニートでも、小遣いはもらっているので。養ってもらってるくせに小遣いとかふてぶてしいにも程がありますけど、お金はお金ですから。たとえ自販機の下から発掘した100円玉でも……あ、今はもう電子マネーだからそういうのは少なくなってるか……」

【草】
【そういやそうだったわ】
【大丈夫、結構まだ現金のみのも多いぞ】
【10年前の価値観を理解してくれるJC】
【これは自称25歳】

【ゲーム機とか流行りの作品の話題とか感想は、ガチで25歳の男なんだよなぁ】

【勉強熱心だなー(棒】
【いや、マジでな  だから仮に演技だったとしても……好みを合わせてくれるからこそ推せるんだ】
【分かる】

【嘘だったとしても、嘘は嘘としてちゃんとロールプレイしてくれるのが良いんだ】

【ちゃんと騙してくれるって、本当に大切よね】
【信じさせてくれるこはねちゃんさん……天使かな?】
【分かる】
【本当に分かる】

【それはそれとして卑下が半端ないこはねちゃん】
【自虐で草】

【そうだぞ、ニートは謙虚さがアピールポイントだぞ  どんなお荷物でも、常に申し訳なそうにして愛想振りまいて話し相手になったりして、手伝いとかマメにやってればそうそう追い出されない……しかも機嫌良くさせたら小遣いももらえる  良く分かっているじゃないか……僕たちは無駄飯ぐらいではあっても役に立つペットとして常に媚びるんだ】

【えらそうだけどやってることはえらい】

【どこから目線だよ草】
【え、同僚――つまりはニートだけど】
【えらそうで草】
【それを言うのなら同類では?】

【だってこはねたんと同じだもん】
【興奮するよね】

【うわぁ……】
【草】
【この配信、ほんとおもしれー】

【ひより「そのお金はお母さんからもらった大切なお金なので、こはねちゃんさんのために使ってくださいね  お金はお金でも、こはねさんが必要なものに使うんです  私はその方が嬉しいです」】

「ぐぅ……」

困った。

最近の推し絵師が強すぎる。
良い人過ぎてまぶしすぎる。

【草】
【ここまで娘推しのママってなかなか居ないよな】
【そら実質一人娘だし】
【しかもお互い完全に無名な状況からの関係っていう】
【てぇてぇ……】
【うっ……(尊死】

【居ることは居るけど、大手同士だったりとかリアル友人だったりするからなぁ】
【ひより先生もフォロワー爆増したよな、こはねちゃんに釣られて】

【個人勢も無名も、お互いの実績とか信頼とかない状態で難しいからなぁ】
【それな】
【リア友とかならある程度、最低でも人格とか分かるけどな】
【それが普通は難しいんよ】

【知らない人はなぁ……やらかすリスクがあるしなぁ……】
【新人であればあるほどに前世がこわいんよ】
【ほんそれ】

【だから一流絵師様たちは値段とかはともかく、個人の依頼を受けてくれないんだよなぁ】
【当然の自己防衛よな】
【実績無い状態で実績が必要っていうね】

【俺たち古参もこはねちゃん経由でひより先生のファンでもあるから鼻が高い】

【どれどれ……あっ……この人はマジで「古参様」だ……皆の者、崇めよ  格が違う】

【草】

【え、それは何か思ってた反応じゃない】

【草】
【草】

――イラストは、1枚で数時間を必要とするという。

絵を描くっていう才能とスキル、情熱を注いでの数時間だ。
それはとんでもない価値があるはずのもの。

つまり僕は先生に1日数時間を使わせている――時給最低賃金換算だとしても、1日5000円くらいは払うべき対価を頂いてしまっている。

なぜ僕のことなんかを気に入ったのかは分からないけども、おかげでイラストの質は以前とは段違い。

前のものもほわほわかわいくて好きだったけども、最近のは……なんていうのか、ぱっと見て「何のアニメとかゲームのキャラ?」ってリプが来るくらいには垢抜けてきている。

僕を描いた他人のファンアート――もちろん健全なものの方が多いし、最近は忘れられてきたのか減ってきている――の細かいところが違うのが気に入らないらしく、本当にいろんな方向から描いてくれていて、だからか立体感がすごくなってきた気がする。

イラストのことなんて全然分からないけども、彼女のフォロワー数が毎日増えていくのを見るのは楽しい。

……いずれ大成するイラストレーターさんのモチベーションになってるって思い込んで納得するかしないか。

あとはとにかく、隙あらば先生の宣伝。
僕にできるのは――マグレでのバズってのをやらかした以上には、これを使わない手はないんだ。

【ひより「すごく勉強になってますから。服の裏地とか、今まで描かなかったそういうところまで見るようになって」】

「あ、そうですよね」

僕は、深くうなずく。

「先週のワンピース着てるイラストの服の裏のひらひらとか、通販サイトで最近人気のとおんなじでびっくりしましたし。あー、こうやって参考にしてるんだなぁって。先生も買ったんですか?」

僕は、おしりと太ももを包んでいるスカートの裾をつまみ上げる。
その裏側には、白いひらひらがアクセントとして縫い付けられている。

「このざらざらした感じとか、細かく描いてるなって。ほら、ふとももの付け根のとこに縫い付けられてる……裏地?までちゃんと描いてあって細かいなーって。でも、描き込み過ぎると大変でしょうから――」

――――――あっ。

さぁっと、おでこから血の気の引く感覚。

【ひより「あ、はい、お店に行って良いなって思った服のを着てみて自撮りとかを参考に……え?」】

【えっ】
【あっ】

【買った……?】
【ひよりママ「も」……?】
【ガタッ】

【速報・こはねちゃんさん、女装デビュー】

【つまり、今も……】

【速報・ひより先生、こはねちゃんイラストの服とか自撮りしてる】
【つまり、あのイラストはこはねちゃんでもあり、ひより先生でも……】

【え、マジで?】
【!?!?】
【いや、普通に女子としてひより先生と同じお店で……ゑ?】
【????】

【やばい、どっちだ!?】
【どっちでも興奮する】
【分かる】
【どっちが男でもどっちが女の子でもどちらかがどちらでも興奮できる】

【脳が……興奮する……】
【普通に興奮してるだけだろそれ】
【草】
【草】

【TSしたからね、そろそろお着替えに目覚めるころかな?】
【お前……】

【でもさ、外に出ないニートな男がそんなことまで……まさか通販でXLとか男が着られるサイズを……!?】

【いや、やっぱ常識的に考えたら普通に女の子……】
【だよなぁ……?】
【普段着?にできるんだから女装よりは女の子の方が説得力ありそう】

「……こくこくこくこく……! ふぅ……」

――こんっ。

机に当たったビンの音。

ひっつかんだウォッカをぐいっとやり――頭がくらくらしたから。

……本当は良くないけども、緊急回避だからしょうがないんだ。

【今、ビンの音が】
【配信の最初に、度数40って……】

【よし、この話題はここまでだ】
【りょ】
【OK】
【こはねちゃんさんはかよわい存在なんだ、いいな?】
【ケー】

【こはねちゃん?? お酒を楽しむのは良いけど逃げるのは良くないよ??】
【まぁ毎日イラスト見てれば細かいとことか分かるよな! うん!】
【そうだよな! ひより先生に話を合わせただけだもんな!】
【そうそう、妹ちゃんの服とかで知ってるもんな!】

……良かった、みんな気にしていないみたい。

「じゃ、じゃあ、今日も適当にプレイしていくね」

僕は動揺を隠すため――最近は結構長くなったっていうか無意識にというか、増えた雑談を打ち切ってゲームを起動。

「あ、立ち絵ソフト、フリーズしてる」

ゲーム起動で負荷が掛かったからかと思ったけども、起動が終わっても半目で固まっている僕のアバター。

【あー】
【かわいい】
【ジト目もそれはそれで】
【分かる】

【最近のムィンドウズのバージョン、いろんなアプリで不具合出てるからなぁ】

【この前のボイチェンソフトのあれもそれだっけ?】
【そうそう、なんか不安定な時期は使わないのが理想】
【ムィンドウズが不安定→ソフトもみんな巻き込まれっていう地獄でな】
【まぁ逆ドッキリかましたこはねちゃんさんならへっちゃらだとは思うけど】

【使ってるって言ってた立ち絵ソフト、まーた低確率でカメラ入っちゃうバグもあるからマジで気をつけてね】

「そうだね。けど、うん。気をつけるよ」

そういえば最近、何もしていないのにパソコンが変な挙動をしたりしてるもんな。
調べたらただのバグらしいし、そういうもんだろう。

僕は特に気にも留めず、立ち絵ソフトを強制終了させて再起動させた。

そのあとは普通に立ち上がった僕のアバターは――――――いつも通りに僕を見ていた。





【ふぅん】

【そうなんだ】

【――じゃ、もうちょっとTSっ子らしさを見せないとね】
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