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4章 女の子声での配信生活
46話 ワンピースを着てみた
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「………………………………」
鏡の前には、横に置いた段ボールから取り出したばかりの――制服っぽいワンピースを着た女の子が居る。
ワンピース。
スカートと並び、男がまず身につけるはずのない服装。
一生それを着るどころか、悲しいことに自分のものでなくとも触れることもない人生を送る男も多い代物。
……そもそもとして男が圧倒的に不遇なんだよな。
なにしろ、服といえばシャツにズボン――はい、おしまい。
それ以上におしゃれをしようとしても、基本的に羽織りものや上着、靴下や靴などの追加パーツで攻めるしかない。
髪の毛だって基本的に――多くの学校では長くすること自体を禁止されていて、社会的にも伸ばしていると反抗的とか見られがちで。
つまりはバリエーションといえば短くするか中くらいにするか、ツンツンさせたりうねうねさせたり染めるくらいしかない。
校則とかってのは、女子が髪を伸ばすことはある程度許容しようとも男子には許容せず、女子がスカートとスラックスを選べるのに対し男子にはズボン以外は認めない。
女子の長髪は許されても、男のロン毛は許されないのが規則。
女子の長髪は美しさ、男のロン毛は反社会的とかナルシストとか思われるのが感情。
不平等ではあっても、それが楽なんだよなぁ――そう思ってた。
女の子になってみる前は。
うん。
「……女の子が優花とかもそうだったけど、小さいころから母さんと一緒に何時間でも服屋回って着替え何十回もしたり、普段着が毎日全然違うの選んでたのとか、今なら分かる気がする……あ、髪型も気分で変えてたっけ……」
ごそごそ。
ふとももをくすぐるなんとも言えない感覚にぞくぞくしながら、ヘアゴムってのを取り出し――
「いたっ」
普通に髪の毛を挟んで毛根さんへダメージを与えてしまった。
毛根さんは男にとって、命の次に大切なものなのに。
僕はなんて愚かな行為をしているんだ。
「ま、まあ、どう見てもこの体は僕のじゃない……つまりは毛根へのダメージも、戻ったときにはなんともない……と、良いなぁ……」
がんばって左、右と、それらしい位置で髪を結んでみる。
……しかし、やっぱ髪の毛、やたら長いよなぁ。
背中の真ん中くらいまでってことは……男のときより50センチも伸びたのか。
「よし。……じゃないなぁ、こりゃあ……」
鏡に映り直したのは、左右を留めているけども上下のバランスも髪の量も崩れていて、ツインテールにもなっていない謎の髪型をした女の子だ。
「いたっ……毛根……」
仕方がないから片方だけを引っこ抜く。
ヘアゴムに細長い髪の毛が何本か――見なかったことにする。
「ふぅ」
確か、サイドテール――片方の髪だけを横に結う髪型。
それになっていて、なかなかサマになっている女の子が、ふんすとどや顔をしている。
「かわい――――――う゛ぇっ……!」
「かわいい女の子が居る」――小さいときの優花を愛でているときの感覚になったとたん、強烈な嗚咽と横隔膜の痙攣。
「げぼっ……う゛、う゛ぇぇ……っ」
自分を客観視すると――男の時から発生する、自己嫌悪による激しい吐き気。
そのせいで、僕は高校生デビューを失敗したあの日から――「僕自身を、認識することができない」。
「ぼくのかおなんか……だめ、ゆうかがなく……」
僕は慌てて机へ駆け寄りきゅぽんと酒瓶を空け、ひと煽りする。
――こくこくこくこく。
「……うぷっ、うぇぇぇ……っ」
……びしゃっ。
飲み干せなかった分が、口に含んだ大半が足元にこぼれ落ちる。
「……ふぅっ、ふぅっ……」
一定量以上のアルコールが粘膜から吸収されると次第に楽になってくる。
感覚を、頭の中の声を、鈍らせるんだ。
無駄に耐性があるせいか、それなりに摂取しないと効果は長続きしない。
……かといって危ないお薬は……うん、さすがに危険性は知ってるから手は出さない。
大学中退引きこもりニートがお薬で捕まるなんてなったら、ニートの恥だから。
「……僕は男、僕は男……そう、これは女装……僕の顔じゃない、大丈夫、大丈夫……いや、それもダメージあるけど……」
すでにもう手遅れな気もするけども、女の子の体な以上、女の子の体を楽しまないと損。
「僕の顔なんて、もう存在しない」んだから大丈夫なんだ。
「……ふぅ、ふぅ……あー、苦しかったぁ……」
――決していかがわしい意味じゃないし、いかがわしいことをしたら……その、もう男へ戻れず、戻ったとしても女の子の体になることを懇願するような未来が見えるから気づかないことにしているのはどうでも良いとして。
僕は苦しさから解放され、ワンピースっていう女の子でしかない服を着た「僕じゃない僕」を眺める。
「思ったより服、安いしな……男のよりパーツも種類も多いからか? まぁいいや」
そこそこの段ボールに詰まった、1週間分くらいのいろんな種類の服。
ワンピースのサイズが合っていた以上、他のもたぶん大丈夫。
「男に戻るまで。そう、戻るまでだから……」
鏡の前で、1回くるん。
スカートの裾がふわりと舞い上がり、ふとももがちらちらと見え、そのふとももに空気を感じる。
「………………………………」
くるん。
くるん。
くる――――――べしゃっ。
「み゛っ」
――かわいい女の子の体になったとしても、中身の運動神経の悪さは男のときと変わらなかった。
「み゛ぃぃぃぃ……」
転んだときの痛さも変わらなかった。
あと、
「……あー、お酒がぁ……」
とくとくとく。
一升瓶から流れていく、僕の命の水。
またしばらく、部屋の中がお酒臭くなりそうだ。
◇
「……なんかファンアートが増えてる」
【おめ】
【人気だもんな】
【TS連呼厨のおかげでな】
【ついこないだまで知る人ぞ知るレベルの個人勢、男声バ美肉系としては大躍進だな!】
【自称男、な?】
【え、女の子って聞いたけど】
【TSっ子だよ?】
【↑こういう視聴者が触れ回るせいで、こはねちゃんにバ美肉属性とTS属性とリアル女の子属性の三つ巴の戦いになって謎の絵師たちが張り合っている】
【性癖をかけた戦争か……】
【草】
【地獄で草】
【天国だよ?】
【ある意味でな……】
【こはねさん? 嫌ならはっきりと言いなよ……?】
【うん、また気持ち悪くなったりメンタル病んだりしちゃったら】
「あー……うん。いや、ただ男の僕が、バ美肉した姿であんなことやこんなことしてるのとか見て、はたしてどんな感情で眺めたら良いのかなって思案してたとこ」
僕はイラストサイトを開き――そっと閉じる。
うん。
複雑だ。
単純に裸体とかえっちな雰囲気での若干の興奮、それが僕だっていう戸惑い、僕自身にそういう興奮が向けられてるっていう嫌悪感。
それがミックスされた、脳みそが変になりそうな感覚で。
「……男である僕が女の子にされて、女の子としてえっちな目に遭わされているのをどんな気持ちで眺めたら良いんだろうって。創作物にいきなり僕の分身が出てきていろいろされてるの、脳みそが混乱して興奮とか難しくない? それが物語のキャラクターならまだしもさ、僕の分身がさ……」
うん。
興奮して良いのかどうか、分からないんだ。
や、多少……な感じはあるから、しようと思えばできるんだろうけどさ。
【草】
【草】
【複雑すぎる】
【通常の人間が一生で背負う業じゃなくて草】
【草】
【こはねさんが何をしたっていうんだ……】
【かわいそう】
【ニートをしただけにしては過酷すぎる】
【ひどいよ、こんなのあんまりだよ】
【草】
【ほんとうにひどすぎる】
【でも興奮する】
【分かる】
【かわいそうはかわいい】
【アイデンティティー崩壊の危機!】
【バ美肉は良いぞ】
【女装……女装をするのです……】
【女の子に目覚めた男の子はね、最高なの】
【分かる】
【こはねさんのおかげで無事女装に目覚めました!】
【女装子に目覚めて充実しています!】
【あーあ】
【性癖が歪まされてて草】
【ひより「こはねちゃんさんのイラスト、量産しないと……みんなが描いてる結構衣装の作画ミス多いので。三面図、昨日描いたのに……」】
【ママのダメ出しだ!】
【娘?息子?のいいつけ通りにコメント欄あんまり見ない、偉いひより先生】
【さすがは顔を出すたびに宿題とイラストとデッサン練習を聞かれているだけはあるな!】
【草】
【完全に立場が逆転していて草】
【娘のFA――ファンアートを無償で描き続ける狂気の絵師がいると聞いて】
【ほんの少し前までこはねちゃんさんの立ち絵は1枚だけ、しかも上半身だけしか映らなかったからなぁ】
【今やミクシブにもタグだけで数百とかやべー増殖具合】
【数百!?】
【ひぇっ】
【なんか謎におすすめに出てくるからな……】
【もう零細個人Vの規模じゃないんよ】
「ひより先生、いくらなんでも1日1枚ペースで僕のこと描くの悪いです。三面図とか……せめて1枚数千円の依頼料で……引きこもりなので多少の貯蓄はありますから」
僕はクレジットカードを手に取る。
無職だったとしても――大学生だったからこそ取れたまま、審査がゆるゆるなおかげで継続しているこの魔法の、大人の力をかざして。
「大人のカード、あります。大学の時のだから次の更新で切れますけど」
【草】
【あー】
【審査厳しいよなぁ】
【まぁ滞納歴とかなければ……】
ひより先生。
最近、アップするイラストの量が異様に増えていて――僕をいろんな角度、服装、髪型で描いてくれている。
……今のサイドテールにワンピース、下はタイツな服装もその中のひとつ。
というか、ネット通販で買うとき完全にそのイラストを参考にしたまである。
「課金させてください」
【ひより「私が描きたいから描いているので」】
「そこをなんとか……」
【ひより「ダメです」】
「課金させてもらえないんですか?」
【ひより「させません」】
「なら、新しい立ち絵の依頼とか」
【ひより「私自身が練習中なので駄目です」】
む……手強い。
最近の先生は、画力が付いてきたからか強いんだ。
「ならば、こんな配信見てないでイラストと勉強に集中してください。先生の成長にとって害悪です。このコメント欄とかも目にすることすら有害です」
【は?】
【草】
【悲報・俺たち害悪って名指しされた】
【視聴者を罵倒して回るVが居ると聞いて】
【草】
【草】
【大丈夫、興奮するから】
【ロリっ子ならどんなこと言っても許されるのよ】
【かわいいは正義】
【メスガキだってかわいいからこそ】
【分かる】
【うん……まぁひより先生のピュアさ的に、ここのコメント欄の性癖は特にね……】
【ひより「最近は学校にいるあいだに宿題とテスト勉強終わらせてるので、もうそういうのは効きませんー 中間テストも平均+10点ですー」】
「ぐ……なぜだ、なぜ最近の先生はこんなに素晴らしいんだ……! そのせいでこの配信から追い出せないじゃないか……!」
【ひより「ふふんっ」】
困った。
僕は相手のミスを責める以外の交渉を知らないんだ。
【草】
【草】
【褒めあっているのかそれ】
【た、たぶん……?】
【草】
【最近はママが強くなってきたな】
【息子が……いや、娘がたじたじだ】
【ふぅ……】
【えぇ……】
【おもしれー配信で草】
【てぇてぇ】
【もうリアルの性別なんてどうでも良いわ てぇてぇすぎる】
【分かる】
【<URL>?】
【あ、大丈夫です 実は高校生男子なこはねちゃんさん設定で行けるようになったので】
【ならよし】
【えぇ……】
【草】
【視聴者たちが順当に侵食されている】
【どんどん改宗してて草】
【こはねちゃんの威力がね……ひよりママとセットでおかしいからね……】
【男疑惑のおかげで無事視聴者たちが脳を焼かれてて草】
【もうどっちでもいいや……こんなにかわいいんだもん】
【分かる】
鏡の前には、横に置いた段ボールから取り出したばかりの――制服っぽいワンピースを着た女の子が居る。
ワンピース。
スカートと並び、男がまず身につけるはずのない服装。
一生それを着るどころか、悲しいことに自分のものでなくとも触れることもない人生を送る男も多い代物。
……そもそもとして男が圧倒的に不遇なんだよな。
なにしろ、服といえばシャツにズボン――はい、おしまい。
それ以上におしゃれをしようとしても、基本的に羽織りものや上着、靴下や靴などの追加パーツで攻めるしかない。
髪の毛だって基本的に――多くの学校では長くすること自体を禁止されていて、社会的にも伸ばしていると反抗的とか見られがちで。
つまりはバリエーションといえば短くするか中くらいにするか、ツンツンさせたりうねうねさせたり染めるくらいしかない。
校則とかってのは、女子が髪を伸ばすことはある程度許容しようとも男子には許容せず、女子がスカートとスラックスを選べるのに対し男子にはズボン以外は認めない。
女子の長髪は許されても、男のロン毛は許されないのが規則。
女子の長髪は美しさ、男のロン毛は反社会的とかナルシストとか思われるのが感情。
不平等ではあっても、それが楽なんだよなぁ――そう思ってた。
女の子になってみる前は。
うん。
「……女の子が優花とかもそうだったけど、小さいころから母さんと一緒に何時間でも服屋回って着替え何十回もしたり、普段着が毎日全然違うの選んでたのとか、今なら分かる気がする……あ、髪型も気分で変えてたっけ……」
ごそごそ。
ふとももをくすぐるなんとも言えない感覚にぞくぞくしながら、ヘアゴムってのを取り出し――
「いたっ」
普通に髪の毛を挟んで毛根さんへダメージを与えてしまった。
毛根さんは男にとって、命の次に大切なものなのに。
僕はなんて愚かな行為をしているんだ。
「ま、まあ、どう見てもこの体は僕のじゃない……つまりは毛根へのダメージも、戻ったときにはなんともない……と、良いなぁ……」
がんばって左、右と、それらしい位置で髪を結んでみる。
……しかし、やっぱ髪の毛、やたら長いよなぁ。
背中の真ん中くらいまでってことは……男のときより50センチも伸びたのか。
「よし。……じゃないなぁ、こりゃあ……」
鏡に映り直したのは、左右を留めているけども上下のバランスも髪の量も崩れていて、ツインテールにもなっていない謎の髪型をした女の子だ。
「いたっ……毛根……」
仕方がないから片方だけを引っこ抜く。
ヘアゴムに細長い髪の毛が何本か――見なかったことにする。
「ふぅ」
確か、サイドテール――片方の髪だけを横に結う髪型。
それになっていて、なかなかサマになっている女の子が、ふんすとどや顔をしている。
「かわい――――――う゛ぇっ……!」
「かわいい女の子が居る」――小さいときの優花を愛でているときの感覚になったとたん、強烈な嗚咽と横隔膜の痙攣。
「げぼっ……う゛、う゛ぇぇ……っ」
自分を客観視すると――男の時から発生する、自己嫌悪による激しい吐き気。
そのせいで、僕は高校生デビューを失敗したあの日から――「僕自身を、認識することができない」。
「ぼくのかおなんか……だめ、ゆうかがなく……」
僕は慌てて机へ駆け寄りきゅぽんと酒瓶を空け、ひと煽りする。
――こくこくこくこく。
「……うぷっ、うぇぇぇ……っ」
……びしゃっ。
飲み干せなかった分が、口に含んだ大半が足元にこぼれ落ちる。
「……ふぅっ、ふぅっ……」
一定量以上のアルコールが粘膜から吸収されると次第に楽になってくる。
感覚を、頭の中の声を、鈍らせるんだ。
無駄に耐性があるせいか、それなりに摂取しないと効果は長続きしない。
……かといって危ないお薬は……うん、さすがに危険性は知ってるから手は出さない。
大学中退引きこもりニートがお薬で捕まるなんてなったら、ニートの恥だから。
「……僕は男、僕は男……そう、これは女装……僕の顔じゃない、大丈夫、大丈夫……いや、それもダメージあるけど……」
すでにもう手遅れな気もするけども、女の子の体な以上、女の子の体を楽しまないと損。
「僕の顔なんて、もう存在しない」んだから大丈夫なんだ。
「……ふぅ、ふぅ……あー、苦しかったぁ……」
――決していかがわしい意味じゃないし、いかがわしいことをしたら……その、もう男へ戻れず、戻ったとしても女の子の体になることを懇願するような未来が見えるから気づかないことにしているのはどうでも良いとして。
僕は苦しさから解放され、ワンピースっていう女の子でしかない服を着た「僕じゃない僕」を眺める。
「思ったより服、安いしな……男のよりパーツも種類も多いからか? まぁいいや」
そこそこの段ボールに詰まった、1週間分くらいのいろんな種類の服。
ワンピースのサイズが合っていた以上、他のもたぶん大丈夫。
「男に戻るまで。そう、戻るまでだから……」
鏡の前で、1回くるん。
スカートの裾がふわりと舞い上がり、ふとももがちらちらと見え、そのふとももに空気を感じる。
「………………………………」
くるん。
くるん。
くる――――――べしゃっ。
「み゛っ」
――かわいい女の子の体になったとしても、中身の運動神経の悪さは男のときと変わらなかった。
「み゛ぃぃぃぃ……」
転んだときの痛さも変わらなかった。
あと、
「……あー、お酒がぁ……」
とくとくとく。
一升瓶から流れていく、僕の命の水。
またしばらく、部屋の中がお酒臭くなりそうだ。
◇
「……なんかファンアートが増えてる」
【おめ】
【人気だもんな】
【TS連呼厨のおかげでな】
【ついこないだまで知る人ぞ知るレベルの個人勢、男声バ美肉系としては大躍進だな!】
【自称男、な?】
【え、女の子って聞いたけど】
【TSっ子だよ?】
【↑こういう視聴者が触れ回るせいで、こはねちゃんにバ美肉属性とTS属性とリアル女の子属性の三つ巴の戦いになって謎の絵師たちが張り合っている】
【性癖をかけた戦争か……】
【草】
【地獄で草】
【天国だよ?】
【ある意味でな……】
【こはねさん? 嫌ならはっきりと言いなよ……?】
【うん、また気持ち悪くなったりメンタル病んだりしちゃったら】
「あー……うん。いや、ただ男の僕が、バ美肉した姿であんなことやこんなことしてるのとか見て、はたしてどんな感情で眺めたら良いのかなって思案してたとこ」
僕はイラストサイトを開き――そっと閉じる。
うん。
複雑だ。
単純に裸体とかえっちな雰囲気での若干の興奮、それが僕だっていう戸惑い、僕自身にそういう興奮が向けられてるっていう嫌悪感。
それがミックスされた、脳みそが変になりそうな感覚で。
「……男である僕が女の子にされて、女の子としてえっちな目に遭わされているのをどんな気持ちで眺めたら良いんだろうって。創作物にいきなり僕の分身が出てきていろいろされてるの、脳みそが混乱して興奮とか難しくない? それが物語のキャラクターならまだしもさ、僕の分身がさ……」
うん。
興奮して良いのかどうか、分からないんだ。
や、多少……な感じはあるから、しようと思えばできるんだろうけどさ。
【草】
【草】
【複雑すぎる】
【通常の人間が一生で背負う業じゃなくて草】
【草】
【こはねさんが何をしたっていうんだ……】
【かわいそう】
【ニートをしただけにしては過酷すぎる】
【ひどいよ、こんなのあんまりだよ】
【草】
【ほんとうにひどすぎる】
【でも興奮する】
【分かる】
【かわいそうはかわいい】
【アイデンティティー崩壊の危機!】
【バ美肉は良いぞ】
【女装……女装をするのです……】
【女の子に目覚めた男の子はね、最高なの】
【分かる】
【こはねさんのおかげで無事女装に目覚めました!】
【女装子に目覚めて充実しています!】
【あーあ】
【性癖が歪まされてて草】
【ひより「こはねちゃんさんのイラスト、量産しないと……みんなが描いてる結構衣装の作画ミス多いので。三面図、昨日描いたのに……」】
【ママのダメ出しだ!】
【娘?息子?のいいつけ通りにコメント欄あんまり見ない、偉いひより先生】
【さすがは顔を出すたびに宿題とイラストとデッサン練習を聞かれているだけはあるな!】
【草】
【完全に立場が逆転していて草】
【娘のFA――ファンアートを無償で描き続ける狂気の絵師がいると聞いて】
【ほんの少し前までこはねちゃんさんの立ち絵は1枚だけ、しかも上半身だけしか映らなかったからなぁ】
【今やミクシブにもタグだけで数百とかやべー増殖具合】
【数百!?】
【ひぇっ】
【なんか謎におすすめに出てくるからな……】
【もう零細個人Vの規模じゃないんよ】
「ひより先生、いくらなんでも1日1枚ペースで僕のこと描くの悪いです。三面図とか……せめて1枚数千円の依頼料で……引きこもりなので多少の貯蓄はありますから」
僕はクレジットカードを手に取る。
無職だったとしても――大学生だったからこそ取れたまま、審査がゆるゆるなおかげで継続しているこの魔法の、大人の力をかざして。
「大人のカード、あります。大学の時のだから次の更新で切れますけど」
【草】
【あー】
【審査厳しいよなぁ】
【まぁ滞納歴とかなければ……】
ひより先生。
最近、アップするイラストの量が異様に増えていて――僕をいろんな角度、服装、髪型で描いてくれている。
……今のサイドテールにワンピース、下はタイツな服装もその中のひとつ。
というか、ネット通販で買うとき完全にそのイラストを参考にしたまである。
「課金させてください」
【ひより「私が描きたいから描いているので」】
「そこをなんとか……」
【ひより「ダメです」】
「課金させてもらえないんですか?」
【ひより「させません」】
「なら、新しい立ち絵の依頼とか」
【ひより「私自身が練習中なので駄目です」】
む……手強い。
最近の先生は、画力が付いてきたからか強いんだ。
「ならば、こんな配信見てないでイラストと勉強に集中してください。先生の成長にとって害悪です。このコメント欄とかも目にすることすら有害です」
【は?】
【草】
【悲報・俺たち害悪って名指しされた】
【視聴者を罵倒して回るVが居ると聞いて】
【草】
【草】
【大丈夫、興奮するから】
【ロリっ子ならどんなこと言っても許されるのよ】
【かわいいは正義】
【メスガキだってかわいいからこそ】
【分かる】
【うん……まぁひより先生のピュアさ的に、ここのコメント欄の性癖は特にね……】
【ひより「最近は学校にいるあいだに宿題とテスト勉強終わらせてるので、もうそういうのは効きませんー 中間テストも平均+10点ですー」】
「ぐ……なぜだ、なぜ最近の先生はこんなに素晴らしいんだ……! そのせいでこの配信から追い出せないじゃないか……!」
【ひより「ふふんっ」】
困った。
僕は相手のミスを責める以外の交渉を知らないんだ。
【草】
【草】
【褒めあっているのかそれ】
【た、たぶん……?】
【草】
【最近はママが強くなってきたな】
【息子が……いや、娘がたじたじだ】
【ふぅ……】
【えぇ……】
【おもしれー配信で草】
【てぇてぇ】
【もうリアルの性別なんてどうでも良いわ てぇてぇすぎる】
【分かる】
【<URL>?】
【あ、大丈夫です 実は高校生男子なこはねちゃんさん設定で行けるようになったので】
【ならよし】
【えぇ……】
【草】
【視聴者たちが順当に侵食されている】
【どんどん改宗してて草】
【こはねちゃんの威力がね……ひよりママとセットでおかしいからね……】
【男疑惑のおかげで無事視聴者たちが脳を焼かれてて草】
【もうどっちでもいいや……こんなにかわいいんだもん】
【分かる】
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