TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

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5章 全世界にバレた僕の顔

58話 【優花お姉ちゃんとこはねちゃん】

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「――すぅっ……ふぅ……」

「……?」

優花が、何かを決意したらしい。

けども、疲れ切って頭の奥まで半分寝てる感じの僕には、もう何も分からないんだ。

「……皆様、初めまして。こはねさん――いえ。『兄』の『妹』の、優花と申します。この度はご迷惑と――なによりもご心配をおかけしました」

ぺこり。

優花が、頭を下げている。

モニターの上のカメラへ、おじぎをしている。

あれ?

あれに映ったらいけないんじゃないのかな。

………………………………。

「……おかけ、しました」

なぜかは分からないけども、たぶん僕が悪いことをしたんだ。
だから僕は優花に習って頭を下げてみる。

大丈夫、優花の服を、しっかり握っていられるから。

【かわいい】
【かわいい】
【待って、くっそかわいいんだけど】

【お姉ちゃんっ子こはねちゃんか】
【ごく自然に……これは妹】
【妹ちゃんの妹ちゃん】

【でも、今、「兄」って】

【……妹ちゃんの妹ちゃん=お兄ちゃん?】
【妹ちゃんのお姉ちゃん=妹ちゃん?】

【こはねちゃん=お兄ちゃん?】
【こはねちゃん=妹ちゃん?】

【妹ちゃんなのに酒乱?】
【妹ちゃんなのに自称成人男性で妹からも「兄」呼び……?】
【身体的にはどう見ても歳の離れた美人姉妹なのに?】

【………………………………?】
【………………………………?】
【………………………………?】
【………………………………?】

【かわいいね】
【かわいいね】
【わー、ちょうちょー】
【ないないはご勘弁ください】
【んにゃぴ……】

【脳が……別の世界線を観測する……】

【脳みそが量子的存在になって消滅してそう】
【観測者の皆様は、くれぐれもご自身の世界線を忘れないでください】
【帰るべき世界を忘れちゃうとね、永遠に渡り歩くしかなくなるんだよ】
【そして考えるのを止めた】

【草】
【草】
【いろいろしっちゃかめっちゃかで草】
【なぁにこれぇ……】
【わからん……】
【分かるやつがいたらやべぇよこんなん】

「――今回は、たくさんの方に助けていただきました。こうして『兄』がフラッシュバック――それに伴うパニックの発作を起こし、医師から心配されていました自傷癖も……こはねさん、頭を見せてください」

「んぅ……いたっ」

優花が、僕の頭をかき分けてくる。

あちこちが痛い。

「……何カ所かケガを……ですが、大規模な出血、頻繁なあくびや意識の混濁は見受けられず……ストレスからの嘔吐こそありますが、恐らくは普段通りの……いえ、でもこの後はお医者様に診てもらいますからね。万が一はありますから。すぐに向かいますので、ご安心ください」

病院。

病院はダメだ。

僕が僕じゃなくなったってバレちゃうんだ。

DNAは、もう家族じゃないんだってバレるんだ。

優花のお兄ちゃんじゃないって、優花に知られちゃうんだ。

「ひぐっ……びょういんいやぁ……」

「大丈夫。私も着いています」

「あ゛ー……」
「よしよし、大丈夫、大丈夫。一緒に居ますからね」

疲れ切ってるから思ったように泣けないところを、優花が撫でてくれる。

ああ。

「僕は、こうしてもらいたかったんだ」。

『君はお兄ちゃんだから我慢しようね』『ひとりでも留守番、大丈夫よね?』『直羽はお兄ちゃんだからへっちゃらだよな!』『男が泣くんじゃない』『いい歳した男が何言ってるの?』『男なんだからもっと堂々としなよ』『なんかそういうのって男らしくないよね』――そういうのから、こうやって守ってもらいたかったんだ。

誰か、「僕よりも大きくて優しい人」に。

「大丈夫ですよ。私も、ずっと一緒に……診察室や検査室で、手を握っていますからね」

「……ほんと?」
「ええ、本当です」

「………………………………」
「………………………………」

そっか。

優花が来てくれるんだ。

うん。
すっごく怖いけど、

「……ゆうかがついてきてくれるなら、がまんする……」

――さっきみたいに、落ち着きたい。

そう思った僕が腕を差し出すと――優しく包んでくれる。

あったかい。

「良い子ですね。今はケガをしているので、撫でるのは治ってからですよ」

「ん……」

「好きなだけ抱きついて良いですからね」

「んぅーっ……」

「ふふ、かわいい」

【抱きついてる】
【かわいい】
【急に素直になってかわいい】
【くっそかわいい】

【え、まってこの甘え声マジでやばいんだけど!!!!!  尊くて死にそう】

【てぇてぇ】
【あっ……(昇天】
【あっあっあっ】
【さっきのから反転しすぎて脳が開きそう】
【右脳と左脳が独立すると大変だぞ、すぐに病院行け】

【草】
【落ち着け】
【気持ちは分かる】
【感情のジェットコースターで死にそう】
【ジェットコースターっていうか上下に乱高下するアレっていうか】

【尋常じゃないとは思ったけど、やっぱガチでPTSD的なやつか】

【さすがにここまできたら、過去に何かあったとかのかなりの精神疾患持ちよねぇ……】

【あれはヤバかったからねぇ】
【見てるだけでも死ぬかと思った、俺が】
【分かる】
【こはねちゃんに筋力と体力がないからあの程度で済んだと言えるか】

【空?だとはいえ、酒瓶を頭に振りかぶったときはもうダメかと】
【そういうときでも優花お姉ちゃんの名前つぶやいて降ろしてたし、ぎりぎりの自制は効いてたんだな】

【家族が最後の歯止めだったか】
【お姉ちゃんっ子か……】
【美しき姉妹愛】

【顔も……そこまで似てないけど美人さん同士だし、この仲の良さ見たら家族って分かるね】

【なにやら複雑怪奇摩訶不思議な家族関係らしいが、もうそんなのは良いくらい尊い】

【草】
【言い方ぁ!】
【親の再婚で連れ子とかそういうのもちらつくけど……これは家族だな】
【感動した】
【よかった……ほんとよかった……】

「……この通り、『兄』と私は――事情があり、複雑な家庭環境です」

「……?」

優花の中に埋まっているから、優花が誰かに話す声がぼんやりと聞こえる。

………………………………。

でも、今はこのままで良いや。

僕は、ちょっと、疲れちゃってるから。

【複雑すぎる】
【草】
【すげぇ……理路整然と落ちついて聞かされると何でも信じられる……!】

【ガチ泣きより?】
【ガチ泣きより】

【ギャン泣きより?】
【ギャン泣きより】

【草】
【草】

【こはねちゃん(妹ちゃん)(お兄ちゃん) <<<<<< 妹ちゃん(お姉ちゃん)な信頼度】

【草】
【んにゃぴ……】

「皆様に、お願いをしても良いでしょうか」

【お】
【なんだなんだ】
【とりあえずまかせろ】

「――この配信は、このあとすぐに停止。アーカイブを非公開にします」

【りょ】
【まぁそれが最善だな】
【その判断してくれるの助かる】
【やはり保護者……】
【ありがとうお姉ちゃん】

「そして……可能でしたら、切り抜きや拡散もご遠慮願いたく。また、すでにSNSなどに流出しているでしょう本日の映像やスクリーンショット――たぶんこの瞬間にも私の顔や制服なども――皆様のお力で、なんとかこれ以上広まらないよう、助けて頂けますと……本当に、有り難く思います」

「おもいます」

ぺこり。

優花が頭を下げてるんだ、僕も下げなきゃいけない。
そんな気がするんだ。

【草】
【かわいい】
【ねぇ、この子10歳行ってないんじゃ】
【しーっ!】

【酒瓶風のジュース……いや、無理があるか……?】
【無理やりにでもそう主張しないとやばいからな……】
【※スタッフがおいしくいただきました】
【※登場人物は全員20歳以上……無理かなぁ……】
【草】

【けど分かったよ妹ちゃん】
【ゆうか?お姉ちゃんの頼みだからな】

【とりあえずで片っ端から検索して画像の削除を要請、言うこと聞かないやつには通報祭りだな】

【ああ、被害者の家族じきじきの頼みだからな!】
【実際、個人情報とかいろいろですぐに通るだろ】
【しかも未成年、しかも女子のとあっては今どきはスムーズだからな】
【祭りだ祭りだ!】
【心が痛まないタイプの祭りならなんでも来い】

【こはねちゃんだけならまだしも、妹ちゃん……お姉ちゃん……御姉様……いや、妹ちゃん……には迷惑かけられないからな!】

【そうそう、こはねちゃんだけならまだしもご家族にはな!】
【お姉ちゃんささやいて付き合ってあとおっぱいもう少し】

【草】
【欲望にじませるも何て呼べば良いか分からなくなってて草】
【それはそう】

【任せて】
【だから今はこはねちゃんのお世話をお願い】
【はよ病院連れてったって  もちろん体と頭の両方の】
【頭はMRIとかって意味だろ! それだと変な意味に取れるだろ!!】
【いや、でもこはねちゃん、そっちでも病院に通ってるっぽいし】
【日本語って難しいね】
【どんな言語でもすれ違いは起きる  だから、話し合うんだよ】

「……ありがとうございます。兄は、また元気になったら……そのうちに。では、失礼しますね」

「します」

――ぽちっ。

画面の「配信停止」ボタンが、クリックされる。

「……念のために」
「わぷ」

優花が僕の上に覆いかぶさり、モニター上のカメラをくいっと下げ。

「後は……こう」

卓上マイクを触り、コードを外し。

「……ふぅ。少し済みません、電話を……もしもし」

「………………………………」

……眠い。

なんだか急に、眠くなってきたんだ。

「はい……はい。そちらでも確認を……ありがとうございます。兄は今から……」

ゆうか。

いもうと。

ぼくのいもうと。

ぼくは、おにいちゃん。

ぼくは、ゆうかをみあげる。

ゆうかのやわらかかったおっぱいも、そのさきのきれいになってるかおも、ずっとずっとうえにある。

だから、ぼくのほうがちいさい。

ぼくのほうが、こども。

ぼくは、いもうと?

なら、

「……ゆうか、おねえちゃん……」

「――!?!?!?!?!?!?」

ぽふっ。

僕は、べとべとになってないところを探して――ゆうかの、やわらかいところに、せのびをしてふにゅんってかおをうずめて、りょうてでゆうかのおなかをだきしめる。

「ににににに兄さん!? ……あ、ちょっ……!?」

ずりずりずり……ぽふん。

力尽きそうになっていた僕は、最後の瞬間に抱きしめられて、もう1回優花の柔らかさと匂いに包まれて、安心して――――――――意識を手放した。
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