TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

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12章 日常に立ちはだかる敵と味方と

140話 お正月配信2

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「すんすん……」

ぼくはかなしい。
ぼくはかなしいんだ。

「すんっ……結構じゅうたんに飲まれちゃった……」

ちゃぷんっ。

両手で持って振ってみた一升瓶は、半分くらいのところで水面が揺らぐ。

「すんっ……ぼくのおさけぇ……」

すんすん。

「じゅうたんが……のんじゃったぁ……!」

ようやく収まった涙と鼻水、なによりもこぼれちゃったお酒のせいでじゅうたんの上は吸い取るためのタオルとティッシュだらけで大惨事だ。

「おさけぇ……! ふぐぅ……!」

なんで。
どうして。

「……どうしてぇぇぇぇ……!」

【草】
【心の底から絞り出すような鳴き声】
【なにこのかわいいいきもの】
【レッサーパンダこはねちゃんだよ  みんなで眺めてあげようね】
【動物園の動物と同じく怖がらせないようにね】
【ストレスで簡単に泣いちゃうからね】
【草】
【草】

【介護班連絡  お姉様、必要はないと判断の上学校へUターン中】

【りょ】
【草】
【新学期早々にお忙しい妹ちゃん】
【お姉様だぞ】
【そうよ!】
【おちつけ】

【ああ、気をつけろ……介護班に大量入荷した新顔たちは、こはねちゃんと同等以上にお姉さん(妹ちゃん)を崇拝しているからな……】

【介護班……こわい】

【大丈夫大丈夫  火事のときに持って逃げるくらい命の次に大切な印鑑や書類とかを善意(強制)で自主的に差し出した(強制的に差し押さえられた)ものを保管してくれるくらいには優しいから】

【ある意味貸金庫だよね  まぁ俺らの人生も預かられてるんだが】
【うん  いろんな秘密を知ってるからね  いろんな秘密をね】
【ひぇっ】
【なぁにこれぇ……】

【けどさ  うっかり腕が当たってお酒(ジュース)をこぼしたくらいでギャン泣きするだなんて……】

【草】
【草】
【うん、こはねちゃんだからね】
【こういうのでいいんだよ】
【わかる】

【私、ギャン泣きの切り抜きから張りついてるの……】
【母性本能くすぐられるよね】
【父性本能もくすぐられるぞ!】
【こはねちゃんのおかげで子供が欲しくなってパートナーゲットしました】

【感動した】
【イイハナシダナー】
【ああ、父母会】

【子供を持っていないんだけどどうやったら加入できますか?】

【まずは出会いを作りましょう  いいか、出会いを待つんじゃない  普段馬鹿にしてる合コンでもマチアプでも友達や家族に頼み込んで異性を紹介してもらうのでもなんでもいい  片っ端から本気で探せ  んでよっぽどダメじゃない限りは前向きに仲良くなれ  でないと仕事はあっても結婚相談所ですらマッチングしない年齢に……うぅ……】

【ぶわっ】
【ないた】

【書き込んだのはいい人みたいなんだけどなぁ】
【いい人とバイタリティーがあって異性と出会えるのとは別だからね……】
【異性じゃなくてもパートナーは自分から探し回らないと、ね……】

【直接、間接の知り合いじゃない限りにはお互いの顔と年齢と年収と肩書きと家庭環境と将来設計っていう、どうしようもならない部分が多いステータス表記だけでの殴り合いになるからね……】

【数値化って残酷ね】
【そう思うと異世界転生とかでステータスオープンできるのも持ってる方しか得がないもんね】
【世知辛いのじゃー】

【だからこそ、みじめな思いしてでもさっさと身近に居る異性と出会え  なーに、大概の人間はよっぽどダメな相手じゃない限りなんとなくでも好きになれるしあばたもえくぼだ  ガチャと同じく数をこなすんだぞ】

【見識に助かる】
【ちょっとがんばるか……】
【こはねちゃんのおかげでまた、子供を持つご家庭が……!】

「すんっ……なんのはなしぃ……?」

ちゃぷんっ。

僕はようやく吹き終わった足回り――ぐちょぐちょになっちゃったじゅうたんは窓際で換気ついでに乾かし、イスの下に跳ねたのを吹いたり床を拭いたりして疲れ切ったかわいそうな僕は、お酒を口に含みながら尋ねる。

「ぐす……くぴっ」

【かわいそう】
【かわいいねぇ】
【\150 まあまあ新しいジュースでも買いなよ】

「すんっ……150円とか今どきは自販機でも知らない名前の変なジュースか水しか買えないぃ……しかもお酒じゃないぃ……」

【草】
【草】
【こんのレッサーパンダめ……贅沢なこと言いおって……】
【そうだな、ムーチューブが何割か取っちゃうからな  投げるなら1.5倍の金額じゃないと届かないぞ】
【なるほど】

【\200】
【\180】
【\100  さすがにスーパーの安いペットボトルでも厳しいかな?】
【ここ最近ずっと値上がりしてるからなぁ】
【庶民には厳しい時代だもんね】
【ほんとになぁ】

【あの  形だけでも信じとかないとレッサーパンダモードのこはねちゃんさんがまーたギャン泣きするんじゃ】

【草】
【でも自称成人男性だし……】
【自分のご機嫌くらいはなんとか……】
【ねぇ……?】

「すん……くぴっ……すんすん……」

くしくし。

そうだ、僕は成人男性なんだ。
だから自分の機嫌は自分で取ろう――どっかの配信で僕自身が言ったセリフだ。

「……ふぅ。無性に泣きたくなるときってあるよね」

【うわぁぁぁ急に落ち着くなぁぁぁ!?】
【草】
【誰だ貴様! 声だけはかわいいこはねちゃんだけど!】
【あ、急に戻った】
【スンッってした!】

【声のトーンが普段に戻ってる  癇癪が静まったか】

「癇癪……うん  さっきのがショックすぎて動揺してたかな」

よく考えると、なんであんなに泣き散らしてたのかが分からないくらいにどうしょうもないことで泣いてたのに気がつく。

しかも、配信を通じて僕が男で大人だって知られてるのに。

しかもしかも、ひより先生どころか家族――優花も両親も僕のことを知っていて、恐らくは配信を観るいるか後で観るだろうとも知っているのに。

「えっとね、空けたばかりの酒瓶を足元に落としちゃって、一瞬瓶ごと割れて大惨事になるんじゃって思ったら運良くじゅうたんに当たって割れなくってほっとして、でも盛大にお酒が飛び散って台無しになって……なんかいろいろと悲しくなったんだ。この気持ちは分かるよね?」

一応で弁明はしておく。

……帰ってきたら呆れられるだろうけども。

【草】
【急に早口になってて草】
【このふてぶてしさはこはねちゃんだ】
【感動した】

【レッサーパンダがないなった】
【さっき堪能したから良いだろ?】
【それもそうだな  あとで切り抜きループしよ】
【草】
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