151 / 167
12章 日常に立ちはだかる敵と味方と
156話 【速報・こはねちゃん、覚醒】
しおりを挟む
「………………………………」
ばきゅーん、ばきゅーん。
いつものゲーム。
僕はそれを――最近はちょっと忙しくってなかなかできてなかったせいで、ランクが最底辺へ落っこちてたそれをプレイしている。
……途中からは完全に無心で。
無言で。
それを、はや数十分。
無言配信。
配信事故。
だからみんな、飽きてどっか行ってくれたらいいんだけどなぁ。
ちらり。
勝利画面に水分補給をしながら、コメント欄を見ようとして――諦めた。
だって――――「分かっちゃう」んだもん。
【あの……こはねちゃん、そろそろぶっ続けでランクマ5時間……】
【集中力はすごいけどさ……】
【えっと……うん……】
【なぁにこれぇ……】
【※同接もレッサーパンダのとき以来、久しぶりにバグってます】
【そらそうよ……】
【だって……】
【なぁ……?】
「くぴくぴくぴ……」
僕はお酒を飲む。
飲みちぎる。
――――なのに、思考能力も指先の動きも、全然衰えない。
【※今日のこはねちゃん、全勝です 夕方に始めてからずっとです】
【※なぁにこれぇ……】
【※最下位から始めたのに、すでにトップリーグです】
【※回線がラグいときでも完全に未来予測してました】
【※みんながラグの中、ひとりだけ先行入力しまくって試合時間短縮してました】
【※1個前の試合の敵に前シーズンの最強クランが揃ってたのも粉砕しました いくら上手とはいえ、もちろん誰かとパーティー組んだりできない野良プレイヤーのこはねちゃんが】
【草】
【それは言わないだげてよぉ!】
【まぁ今日の動きとか見る限り、ソロの方が強いことは確実だから……】
【なるほど……人見知りぼっちだからこそ、ソロで完結させられるようにって……】
【※この異常さに、このゲームの界隈がざわついてます】
【※ゲームの掲示板の流れ 「なんだこいつチーターか?」→「おい、手元画面配信してるぞ」→「えっ……何この動き……(ドン引き」→「え、動き、全部予測されてるんだけど」→「この避け方おかしくね?」→「ようじょこわい」です】
【草】
【時差の大きい海外勢もざわついてるレベルだし】
【素人目にもやべー動きしてたからなぁ】
【※ガチ勢たちがこはねちゃんさんに興味を持ちました】
【※全世界のうち何人かのプレイヤーが配信中にこはねちゃんに負けてから検索し、何かを悟ってから同時配信解説へ移行しました】
「………………………………」
僕は、天井を仰ぐ。
――やばい。
どうしよう。
……僕の、コメント欄の人を認識できる程度の能力が――オンラインゲームの対戦相手の思考まで読めるようになっちゃったんだけど……これ、どうしよう?
「……あー、えーっと」
僕は、途中からしゃべっていなかったのを今さらながらに思い出して声を発する。
【幼女がしゃべった!】
【シャベッタァァァァ】
【耳がかわいさでないなった】
【草】
【唐突にかわいい声が脳髄を蕩かす】
【脳が……幼女ヴォイスで溶けていく……】
【修羅の声じゃなくて良かった……】
【それはそれで聞きたかったけども、無事でなにより】
【良かった……無事だった……】
【心配だったけど、超集中とかしてるから連勝できてるんなら邪魔したくなかったしなぁ】
【それな】
【介護班も一応空中待機していたけど大丈夫そうなので解散します】
【草】
【いつでも即応体制なのはすげぇわ】
【深夜までお疲れ様です】
「えっと……うん。確かに今日はゲームの勘が働いてるし、手先も動いてはいるんだけどさ」
わきわき。
マッチング中の画面を見ながら、指を動かしてみる。
「なんか、こう……対戦相手全員、プラスでチームの味方全員の思考と動かしてる操作が読めちゃうっていうか……」
【!?】
【もしかして:覚醒】
【覚醒で済むのか、これ……】
【おろろろろろ】
【こはねちゃんが進化してるぅ……】
【人間業じゃなくない? さっきの動きとか】
【ゾーンに入ってるのか】
【あー、スポーツ選手とかのあれか】
【ゲーマーの配信でもたまにあるよな】
【調子悪いのと真逆の、なにやっても神がかったプレイになるやつか】
【これは切り抜きもバズる】
【またこはねちゃんが一段階羽ばたいていく……】
【レッサーパンダが羽ばたくだって!?】
【羽ばたこうとしてそのままひっくり返りそう】
【それにびびってお空を見上げながら威嚇してそう】
【ただのかわいいいきものになってそう】
【草】
【草】
【おなかいたい】
【このギャップはこはねちゃんさんにしか出せないな!】
【ああ】
【なにしろ演技じゃなくて素だからな!】
次のマッチングが完了し、準備画面に入る。
――と同時に、一気に手に取るように分かる「今この瞬間にゲームのサーバー内で交差している僕とマッチングした人たち」の意識。
この時間にお仕事から帰ってきて夕食を食べてからようやくINしたばかりの人、もう何戦かやって今日の調子を考えてる人、お酒飲んでる人、配信しながらマッチングの解説をしてる人。
彼らの脳内、あるいは口から発せられる声、彼らの姿――なんで素っ裸の男がいるのかは分からないけども、僕はちょっと気持ち悪くなった。
……なにこれこわい。
ほんと、なんだこれ……あ、意識を外したら見えもしなくって聞こえなくなった。
「………………………………」
……なぁにこれぇ……?
ばきゅーん、ばきゅーん。
いつものゲーム。
僕はそれを――最近はちょっと忙しくってなかなかできてなかったせいで、ランクが最底辺へ落っこちてたそれをプレイしている。
……途中からは完全に無心で。
無言で。
それを、はや数十分。
無言配信。
配信事故。
だからみんな、飽きてどっか行ってくれたらいいんだけどなぁ。
ちらり。
勝利画面に水分補給をしながら、コメント欄を見ようとして――諦めた。
だって――――「分かっちゃう」んだもん。
【あの……こはねちゃん、そろそろぶっ続けでランクマ5時間……】
【集中力はすごいけどさ……】
【えっと……うん……】
【なぁにこれぇ……】
【※同接もレッサーパンダのとき以来、久しぶりにバグってます】
【そらそうよ……】
【だって……】
【なぁ……?】
「くぴくぴくぴ……」
僕はお酒を飲む。
飲みちぎる。
――――なのに、思考能力も指先の動きも、全然衰えない。
【※今日のこはねちゃん、全勝です 夕方に始めてからずっとです】
【※なぁにこれぇ……】
【※最下位から始めたのに、すでにトップリーグです】
【※回線がラグいときでも完全に未来予測してました】
【※みんながラグの中、ひとりだけ先行入力しまくって試合時間短縮してました】
【※1個前の試合の敵に前シーズンの最強クランが揃ってたのも粉砕しました いくら上手とはいえ、もちろん誰かとパーティー組んだりできない野良プレイヤーのこはねちゃんが】
【草】
【それは言わないだげてよぉ!】
【まぁ今日の動きとか見る限り、ソロの方が強いことは確実だから……】
【なるほど……人見知りぼっちだからこそ、ソロで完結させられるようにって……】
【※この異常さに、このゲームの界隈がざわついてます】
【※ゲームの掲示板の流れ 「なんだこいつチーターか?」→「おい、手元画面配信してるぞ」→「えっ……何この動き……(ドン引き」→「え、動き、全部予測されてるんだけど」→「この避け方おかしくね?」→「ようじょこわい」です】
【草】
【時差の大きい海外勢もざわついてるレベルだし】
【素人目にもやべー動きしてたからなぁ】
【※ガチ勢たちがこはねちゃんさんに興味を持ちました】
【※全世界のうち何人かのプレイヤーが配信中にこはねちゃんに負けてから検索し、何かを悟ってから同時配信解説へ移行しました】
「………………………………」
僕は、天井を仰ぐ。
――やばい。
どうしよう。
……僕の、コメント欄の人を認識できる程度の能力が――オンラインゲームの対戦相手の思考まで読めるようになっちゃったんだけど……これ、どうしよう?
「……あー、えーっと」
僕は、途中からしゃべっていなかったのを今さらながらに思い出して声を発する。
【幼女がしゃべった!】
【シャベッタァァァァ】
【耳がかわいさでないなった】
【草】
【唐突にかわいい声が脳髄を蕩かす】
【脳が……幼女ヴォイスで溶けていく……】
【修羅の声じゃなくて良かった……】
【それはそれで聞きたかったけども、無事でなにより】
【良かった……無事だった……】
【心配だったけど、超集中とかしてるから連勝できてるんなら邪魔したくなかったしなぁ】
【それな】
【介護班も一応空中待機していたけど大丈夫そうなので解散します】
【草】
【いつでも即応体制なのはすげぇわ】
【深夜までお疲れ様です】
「えっと……うん。確かに今日はゲームの勘が働いてるし、手先も動いてはいるんだけどさ」
わきわき。
マッチング中の画面を見ながら、指を動かしてみる。
「なんか、こう……対戦相手全員、プラスでチームの味方全員の思考と動かしてる操作が読めちゃうっていうか……」
【!?】
【もしかして:覚醒】
【覚醒で済むのか、これ……】
【おろろろろろ】
【こはねちゃんが進化してるぅ……】
【人間業じゃなくない? さっきの動きとか】
【ゾーンに入ってるのか】
【あー、スポーツ選手とかのあれか】
【ゲーマーの配信でもたまにあるよな】
【調子悪いのと真逆の、なにやっても神がかったプレイになるやつか】
【これは切り抜きもバズる】
【またこはねちゃんが一段階羽ばたいていく……】
【レッサーパンダが羽ばたくだって!?】
【羽ばたこうとしてそのままひっくり返りそう】
【それにびびってお空を見上げながら威嚇してそう】
【ただのかわいいいきものになってそう】
【草】
【草】
【おなかいたい】
【このギャップはこはねちゃんさんにしか出せないな!】
【ああ】
【なにしろ演技じゃなくて素だからな!】
次のマッチングが完了し、準備画面に入る。
――と同時に、一気に手に取るように分かる「今この瞬間にゲームのサーバー内で交差している僕とマッチングした人たち」の意識。
この時間にお仕事から帰ってきて夕食を食べてからようやくINしたばかりの人、もう何戦かやって今日の調子を考えてる人、お酒飲んでる人、配信しながらマッチングの解説をしてる人。
彼らの脳内、あるいは口から発せられる声、彼らの姿――なんで素っ裸の男がいるのかは分からないけども、僕はちょっと気持ち悪くなった。
……なにこれこわい。
ほんと、なんだこれ……あ、意識を外したら見えもしなくって聞こえなくなった。
「………………………………」
……なぁにこれぇ……?
6
あなたにおすすめの小説
辺境ギルドの受付嬢ですが、冒険者の嘘は帳簿でぜんぶバレます
蒼月よる
ファンタジー
素材の重さが申告と合わない。鑑定書の書式がおかしい。冒険者が持ち込む報告書には、いつもどこかに嘘がある。
辺境の小さなギルド支部で、受付嬢ナタリアは今日も一人、帳簿を武器に冒険者たちの嘘と向き合っている。剣も魔法も使えない。でも素材を見る目と、数字の辻褄を見抜く勘だけは、誰にも負けない。
持ち込まれた棘鱗の産地が違う。新人冒険者の目が妙に鋭い。腕のいい薬師が素性を隠している。書類を処理するだけの毎日のはずが、カウンターの向こうには不思議な人々と、小さな謎が絶えない。
一話完結の日常謎解き。辺境の受付カウンターから覗く、冒険者たちの嘘と真実の物語。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
「英雄なんて、もう二度とごめんだ」
ダンジョン出現から10年。
攻略が『配信』という娯楽に形を変えた現代。
かつて日本を救った伝説の英雄は、ある事情から表舞台を去り、ダンジョン攻略支援用AI『アリス』の開発に没頭する裏方へと転身していた。
ダンジョンも、配信も、そして英雄と呼ばれることも。
すべてを忌み嫌う彼は、裏方に徹してその生涯を終える……はずだった。
アリスの試験運用中に遭遇した、迷惑系配信者の暴挙。
少女を救うために放った一撃が、あろうことか世界中にライブ配信されてしまう。
その結果――
「――ダンジョン嫌いニキ、強すぎるだろ!!」
意図せず爆増するファン、殺到するスポンサー。
静寂を望む願いをよそに、世界は彼を再び『英雄』の座へと引きずり戻していく。
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
異世界で鍛冶屋をやってるだけのはずが、神々に最強認定されてハーレムができてた件
えりぽん
ファンタジー
平凡な青年リクは、異世界に転生して鍛冶屋として静かに暮らしていた――はずだった。
だが、彼が何気なく作った剣は竜を貫き、魔王をも滅ぼすほどの威力を秘めていた。本人はただの職人のつもりでも、周囲からは「神の使徒」として崇められ、王女や聖女、果ては魔族までが次々と彼の元に集う。
「俺、本当にただの鍛冶屋なんですが……?」
気づけば彼は、闇の勢力も聖なる教団も巻き込む世界最大の戦争の鍵を握る存在に――。
これは、無自覚に最強となった青年が世界を変える、“作るだけ無双ファンタジー”。
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる