TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

文字の大きさ
153 / 167
12章 日常に立ちはだかる敵と味方と

158話 チーターさん

しおりを挟む
オンラインゲームの実況プレイ配信――つまりは特定のゲームの特定の時間帯の特定のランク・強さと自機の組み合わせが分かり、さらにはマッチング開始時刻が秒単位で分かるという致命的なバグを抱えている遊びには、たまーに悪い人が悪ノリをする。

ゲーム全体のマップを隠すとゲームの流れが分からないから――中級者以上にとってはとたんにつまらなくなるから、僕は基本的に味方の動きや観測した敵の動きを映す戦略マップは、隠していない。

けども――だからこそ、僕の配信を見ていれば。

味方として戦うのならまだしも、敵としてマッチングした場合には――僕の、つまりは「彼」にとっての敵の大まかな動きと一緒に、僕の動きや口にした思考が、完全に把握できるんだ。

配信だから数秒のラグはあるにしても、ゲーム全体からすればささいな差であって、接近戦とかでもなければそこまでの影響はない。

単純に索敵情報が全部だだ漏れなだけで、勝ちにつなげる方法はいくらでもある。

そういうマッチング合わせの行為は、仮に配信中で配信主とは敵にスポーンしたら、推しであっても配信画面と声を試合終了まで見ないで戦う――そういうマナーを、大半の人が守る。

けども……単純に1試合でも多く勝ちたかったり、ただ邪魔をしたりしたいっていたずらっ子、何が何でも負けたくない人は、一定数――すごく少ないけども居るっていうのは、知識で知っていた。

悲しいけども安心できることに僕は需要の少ない配信をしていたから、そういうのとは無縁だったんだ。

今回は、けども、そうじゃない。

ただでさえTSしてからのいろいろなやらかしが積み重なったせいで、僕がどんなつまらないことをしていてもかなりの数の人が観に来るんだ。

その上で、一般的にはマイナーなゲームでも全戦全勝を数時間――深夜帯に差し掛かる直前のこのタイミングは、このゲームでなくとも界隈が最も活発的で目をつけられるもの。

「視」れば、SNSと各種掲示板で――なによりもムーチューブのおすすめ欄に、僕の、この画面が表示されている。

だからこそ、こういう人も現れる。

――これが、有名になることのデメリット。

なのに、吐き気も起きていない。

………………………………。

やっぱ……なぁにこれぇ……?

知らない人たちに観られてるし悪意も向けられてるのに、それが分かってるのに全然気持ち悪くならない……それが気持ち悪い。

――きゅぽんっ……こきゅっ。

「ふぅ」

意識を切り替えると、今、「彼」のしようとしていることが分かる。

分かってしまう。

それは――「彼」が僕を見てやっているのとおんなじこと。
「彼」は配信をズル見するチートで、僕はよく分からないチートで。

「……たぶん、エイムアシストとオート射撃。動きがあまりにも機械的なときがある――確か運営が定期的にBANしてるツール、それを使ってるね」

ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。

逃げた先で――「あえて」自機の一部をチラ見せすると、「人間では不可能な反応速度」で撃ってくる「彼」。

僕の手元を配信で見ていて、プラスでオートエイム射撃。
この場面の「彼」の勝率は100%だろうね。

――普通なら。

【ふぁっ!?】
【えっ】

【確かに今のは経験則からのグミ撃ちにしても……】
【ありえないタイミングとエイム……だよな……?】

【あっ……敵のネームタグがこはねちゃんさんの画面に】

【あの……映ってたユーザー、煽りの常習犯で常にトップランカーの、悪名高い海外ユーザー……確かにツール悪用疑惑があるっぽい】

【え? てことは……】

【海外勢の配信で情報収集中  「あの特徴的なネーミング、まーたあいつだよ」って叩かれてる】

【内偵助かる】
【あー、有名人なのね】
【荒らしって居るからなぁ】
【ゲーム自体が有名なら荒らしも多いもんだけど、このゲームは】
【※ちょい古めのゲームなので海外勢の方が人気です】
【あー】

かちかちかち。
かたかたかた。

僕は両手の指先――から「マウスのボタンとキーボードのキーの沈み込むところからスイッチに接触し、押す動作がPCに伝達されるまで」を認識しながら、まるでドのつく初心者かやけくそになった人みたいに、自機を完全なランダムで動かし始める。

「ゲームはね、ルールを守っているから楽しいんだ。ルールを守っているからこそ彼我の経験値や戦闘数、その日の体調、膠着状態になったときの読み合いとにらみ合い――そして勝ち負けが決まったときの爽快感と悔しさがあるんだ。スポーツとか……あとはテストと同じだよね。自分の実力を出せるから楽しいんだ」

【わかる】
【すごく良く分かる】

【オフゲーでも、公式から出されたりする難易度調整とかツールを使ったチートモードとかって、最初は楽しいけどすぐに飽きるんだよな】

【そりゃあ連戦連勝、どれだけつえー敵でも一太刀でばっさばっさは楽しいんだよな】
【まぁ時短目的ならそれで良いんだよな】
【ちょっと楽しむだけならな】

【でも】
【すぐに飽きて、そのゲームに触ることすらなくなるんだよな】
【楽しかったはずのゲームが、なんだか見るのも嫌になるんだよな】

【昔、カンニングして成績上げてバレました  でも、バレたからほっとしました】
【「そんなことして楽しいの?」って聞かれて泣いて止めました】

【お前ら……】

【誰だって大小軽重あっても、なにかしらズルしたこと、あるよな】
【それでなんとも思わずに満喫する人も居はするだろうけど】
【たったの1回、あるいはちょっとで止めて大事にならない人も多いだろうけど】

【俺は、それに耐えられなかったんだ】
【見つかって、先生に叱ってもらえて良かったの】

「うん。人はみんな、間違いをする。……僕だって、ちょっとした対人関係のストレスから全部を投げ出して情けなく泣きわめいて、引きこもって――それから何年も、部屋の中に閉じこもってきたから」

そうだ。

後悔という1点において、僕はみんなよりもずっと造詣が深いんだ。

だから、僕は――「彼」にも、チートなんてつまんないんだよって教えてあげたいんだ。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

辺境ギルドの受付嬢ですが、冒険者の嘘は帳簿でぜんぶバレます

蒼月よる
ファンタジー
素材の重さが申告と合わない。鑑定書の書式がおかしい。冒険者が持ち込む報告書には、いつもどこかに嘘がある。 辺境の小さなギルド支部で、受付嬢ナタリアは今日も一人、帳簿を武器に冒険者たちの嘘と向き合っている。剣も魔法も使えない。でも素材を見る目と、数字の辻褄を見抜く勘だけは、誰にも負けない。 持ち込まれた棘鱗の産地が違う。新人冒険者の目が妙に鋭い。腕のいい薬師が素性を隠している。書類を処理するだけの毎日のはずが、カウンターの向こうには不思議な人々と、小さな謎が絶えない。 一話完結の日常謎解き。辺境の受付カウンターから覗く、冒険者たちの嘘と真実の物語。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
「英雄なんて、もう二度とごめんだ」 ダンジョン出現から10年。 攻略が『配信』という娯楽に形を変えた現代。 かつて日本を救った伝説の英雄は、ある事情から表舞台を去り、ダンジョン攻略支援用AI『アリス』の開発に没頭する裏方へと転身していた。 ダンジョンも、配信も、そして英雄と呼ばれることも。 すべてを忌み嫌う彼は、裏方に徹してその生涯を終える……はずだった。 アリスの試験運用中に遭遇した、迷惑系配信者の暴挙。 少女を救うために放った一撃が、あろうことか世界中にライブ配信されてしまう。 その結果―― 「――ダンジョン嫌いニキ、強すぎるだろ!!」 意図せず爆増するファン、殺到するスポンサー。 静寂を望む願いをよそに、世界は彼を再び『英雄』の座へと引きずり戻していく。

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

異世界で鍛冶屋をやってるだけのはずが、神々に最強認定されてハーレムができてた件

えりぽん
ファンタジー
平凡な青年リクは、異世界に転生して鍛冶屋として静かに暮らしていた――はずだった。 だが、彼が何気なく作った剣は竜を貫き、魔王をも滅ぼすほどの威力を秘めていた。本人はただの職人のつもりでも、周囲からは「神の使徒」として崇められ、王女や聖女、果ては魔族までが次々と彼の元に集う。 「俺、本当にただの鍛冶屋なんですが……?」 気づけば彼は、闇の勢力も聖なる教団も巻き込む世界最大の戦争の鍵を握る存在に――。 これは、無自覚に最強となった青年が世界を変える、“作るだけ無双ファンタジー”。

たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―

佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。 19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。 しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。 突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。 「焦らず、お前のペースで進もう」 そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。 けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。 学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。 外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。 「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」 余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。 理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。 「ゆっくり」なんて、ただの建前。 一度火がついた熱は、誰にも止められない。 兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。

処理中です...