せっかく女の子に生まれ変わったんだから、僕はただ……お嬢さまを僕好みに育てるついでに愛でて撫で回して甘やかして楽しもうって思っただけなのに!

あずももも

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3話 ふ、男(王子)なんてちょろいものよ

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僕の女神さまたるジュリーさま。

王妃さまになるための教育っていうものを受け続けてきたストレスと、どんだけ遅くても十数年後には王妃さまとして、それからはずっと……な未来、生涯ってやつを想像できちゃってるストレスがあって。

それを、なまじっか頭がいいもんだからはっきりと自覚できちゃうっていうストレスがストレスになって、ストレスフルで。

お年ごろっていうのを除いても……まー、それはそれはナーバスな状態なジュリーお嬢さま。

ふと目を離すと、うつむいて涙ぐんでるときも……まだまだ、あるしなぁ。

僕のヒーリング技術も、まだまだらしい。

もっと研鑽を積まねば。

……それを考えるに、アルベールくんは実に優秀だ。

どんな場だとしても、こうしてジュリーさまのストレス解消にひと役以上に買っているんだから。

ぜひこのまま、生涯に渡ってがんばってほしいものだ。

これが少し落ち着いたら、きっとお似合いの王さま王妃さまになるんだろーし。

………………………………………………………………………………………………。

ただでさえ青春時代っていう不安定なお年ごろに、お貴族さま、それも中世の……いや、時代は関係ないか?……な事情をお持ちで。

そのストレスのやつあたり先をアルベールくんっていう、気心が知れていて将来もきっとずっと一緒だろう人だけにしているっていうのもまた、大変にかわいらしくって結構だと思う。

これだけちやほや……受け入れるようになったのは最近だけども……されながら育ってきても、こうしてわがままふしゃーになっていても、絶対に言っちゃいけないことなんかはどんだけムカついても口にしないのはよーく知っているし、だからこそ僕ひとりでなんとかできているわけだ。

じゃなかったら僕のいないところでとっくになにかしらをやらかして、いや、それ以前に僕がジュリーさまに、見た目と心に惹かれるなんてこと、あるはずがないんだもんな。

嗚呼。

いつもながらにジュリーお嬢さまの、ザ・金髪ロングお嬢さまっぷりと、それに負けないおっぱい(偽乳)……ドレスだと当然に盛っているし僕が直にお手伝いして盛らせたしうへへ……おっと、な、お姿が僕の目を引き寄せる。

ジュリーさまは金髪ロングで美乳でちょいつり目でっていう、それだけでもマシマシなのに、さらにさらに、それでいて背は高いっていう僕的には大変に重要なポイントを獲得していらっしゃる。

あぁ、今日もまた、ストレスをまき散らすあのお姿もかわいらしい……。

……………………………………………………………………………………。

………………………………………………………………おっと、いけない。

お嬢さまのかわいさを堪能するのは帰ってからいくらでもできるんだし、またする予定なんだから後にしよう。

うん、今日もまた、お着替えとお食事とおふろとマッサージと。

うへ、うへへへぇ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………じゃ、なくて。

そろそろにボルテージが上がり切る頃合いだし、ここはアルベールくんにはお引き取りを願わねば。

「……アルベールさま」

視界の外で気配を隠しながら機会をうかがってしばらく、いつもどおりのここぞという出番を見つけて、すすすっと王子くんのそばに這い寄る僕。

ちっこいからこそ、視界外からこっそりと。

ジュリーさまがぷりぷりしながら食べものを取り巻きさんに取らせている、その隙に。

みんなの前で、ジュリーお嬢さまの最近のお姿を知るみなさんの前で、こうしてあえてジュリーさまを叱ることで、お嬢さまへのヘイトを下げつつに……なんだかんだ夫婦として、王さま王妃さまとしてうまくやっていけそうな雰囲気を維持しているアルベールくん……たぶん無意識にだろうけど、これが持つ者の才能ってヤツかな?……への、おみやげを、ご苦労さんというねぎらいも。

「……おぉ、リラですか。 ……と、ですから貴女は! …………、はぁ……いつも言っているではありませんか、その背丈ではこういう場は大変でしょうから、私の者にでもひと言かけていただければと。 少しでも人目につかないというのは大変なのですと………………………………、む」

振り返ってきて、しゃがんできて……さすが中身までのイケメン、僕がたとえ同い年だとしてもやりおる……いつものように諭す感じで言ってくるアルベールくん。

おー、顔がキラキラして見える。

もちろん金髪のおかげではあるんだけどな、ジュリーお嬢さまとおんなじで。

頭をぽんぽんされたあと、目元をぐにぐにされる。

イケメン、あるいは王子じゃなかったら通報もんだぞ?

いつもだからもう慣れたけど。

というか立場的にイヤだとしても拒否なんてできないしな。

公爵令嬢になっちゃったけど、元平民だし。

「……目元が黒くなっていますし、お肌も荒れています。 また最近、ろくに寝ていないのでしょう? それなのにこのような場でも化粧をしない……というのはいつものことですからともかく。 きちんと休んでくださいと、いつもあれほど……。 でなければ……いつか、貴女が倒れてしまわないかと、私はジュリー以上に、最近は遊んでばかりいるあのジュリー以上に、貴女のことが心配です」

「おかまいなく」

アルベールくん。

なぜヤロウに君付けているかというと、こういうわけだ。

疲れを顔に出さないようにして、それなのに些細な体調の変化を見抜けて……こんな元平民なのに……つまりはすべてを持って産まれた上に性根までまっすぐで、階級隔たりなく気配りもできるアルベールくん。

うん、僕のジュリーお嬢さまっていう正妻ストッパーがいないと、この先一体どれだけの側室さんとかを抱えることになるんだか。

出歩くたびに増えそうでこわいくらい。

並みの腕では、ぽっと出の黒々としたお妾さんとかが暴走しかねないもんな。

いや、そうなるために……ちょっとした隙に捕食されかねん。

だから………………………………うむうむ。

アルベールくんにならジュリーお嬢さまをお任せできる。

僕の天使さまを。

「……いつものそれですか。 まぁ、貴女のことですから、大丈夫と仰る以上には大丈夫なのでしょうけれども。 ですが、もし。 ほんとうにお辛い、ジュリーなどには言いにくいことがあったならば、私に仰ってください。 たとえジュリーがなにを言おうと、私がなんとか致します」

おー、謎のエフェクトでキラッキラしてる。

僕が女だったら間違いなく堕ちてるな。

いや、体は女ではあるけど、心はほら、生粋の男だし。

しかし、これが天然のタラシってやつで、しかも下心ゼロというのがまた末恐ろしい。

やはり被捕食対象存在だな。

もちろん性的に。

うらやましいといえばうらやましいけど……捕食者が相手だからやっぱいいや。

カマキリの相手はご勘弁。

「いえ。 僕は、ジュリーさまのもの、ですので。 嫌なことなどございませぬ」

「ほんとうに、なにかあったら仰ってくださいね? ……それで、貴女からも今一度、ここで、皆の前で少々きつくでも指摘しては頂けませんか? 彼女も貴女の言であれば素直に聞くのは皆が知るとおりです。 ……私も、あそこまで分からず屋になってしまっては、もうどうしたらいいか」

「いつも申し上げております」

あの人がちょっとおこでしたよ、とか、おこおこでしたよー、ってな感じには。

「……そのおかげであれで収まっているのですか……。 いえ、それでも、改めて。 ぜひ、この場で、…………私、少々……さるお方から言付かっておりまして、なんとかしなければジュリーの立場がそろそろまずいのです。 ……彼女の気持ちは分かっているのです。 ですから、せめて、素直でおしとやかな、かつてのような振りをしてくださるだけでもと」

………………………………なるほど。

先日のパーティーをフイにした件とかで、なんかスイッチ入っちゃったお貴族さまがいらっしゃるのか、なるほどねぇ。

なら、お嬢さまとそのお貴族さま方の、両方へ働きかけねば。

……今日こうしてわざと遅れてきたおかげで、頭上でだったり僕へだったりといろんなおはなしを耳にしてきたけども、まーた……まーただな、ちょーっと雲行きが怪しくなって来ているみたいだもんなぁ、お嬢さまの。

それに、またディナーとかでアルベールくんのお父さんたち……王さまたちともおはなししておかないと、か。

ジュリーさまには、まだまだ静養が必要なんですよーって、な。

と、真剣な顔してまだなにかマジメなことを話し続けているアルベールくんを手を突き出して遮り、そぅっと………………………………かさりとお手紙を握らせる。

ワイロじゃないよ?

受け取らないだろーし、そもそも国いちばんの金持ち一家だしな。

「……………………………………………………………………………………これを」

「これは? …………………………………………、リラ……これは、まさか!」

「そう、おへんじです。 アルベールさまが先日、目で追われていた、あの、長い栗色のお方の。 先ほどようやくコンタ……接触できた次第でして」

ジュリーさまっていう特上の女性に加え、何人もの、それはそれはきれいどころと結婚するっていう未来が待っているアルベールくん。

だがしかし、彼もまた男だ。

町に出た先にいた、つい目を惹かれる好みの子がいたとしても不思議じゃない。

うん、わかる。

僕も、よーく。

だってあの子は素朴な感じの美少女だったもんな。

うんうん。

……だからアルベールくんのために、連絡先を手に入れてきてやったのだ。

もちろん王子である以上……最低でもジュリーさまとの間に男の子が産まれるまでは手出ししないっていう信頼があるからこそ、ただデートをしたいだけだって知っているからこそ、いつものようにご紹介するわけだけれども。

「今週末の劇場で、その席で待っていらっしゃるとのことです。 もちろん現在彼氏なし、とりあえずお友だちからでぜんぜんいいっていういいお方でした。 例のごとく、裏はない、ごくふつうのお方です。 またお忍びの格好で向かわれるとよろしいかと」

「………………このお礼は、また、改めて。 ですが、これとジュリーの件は」
「……どのくらい聞いてくださるかわかりません。 けど、言っておきますから」

アルベールくんは、名前と当日の席が書かれた小さな四つ折りを、ぶー垂れている感じなああああかわいらしいなぁもぅジュリーさまから見えないように目を通し、……彼と僕、目と目で合図、いつもの演技のスタート。

アルベールくんと僕は通じ合っている。

男同士だしな。

と、とたんに声を張り上げるアルベールくん。

もちろんワケあってのことなのは、とっくに知っている。

「……それならば、後は任せます、リラさま。 きちんと、……義理とはいえども貴女の姉です。 貴女を愛しているのですから、貴女の仰ることであればまず間違いなく聞いてくださるでしょう。 ……ええ、リラさまが強く言ってくだされば、直に元に戻られるでしょう!」

ムダ話していた周りの貴族さまたちが、しんとされる。

もちろん、僕たちの会話を聞きに来ているのは知っていたから、ここまではそーっと話していたわけで……だからこそインパクトがあるってものだ。

で、僕はお嬢さまを探すフリをして軽く周りを見回して……いつもいつも長い髪の毛がぶわってなってうざったいなぁ……。

「承知致しました、アルベールさま。 ………………………………………………………………大丈夫です、数名の方が納得したお顔をしていらっしゃいます」

「………………………………リラ、貴女にはいつも助けられています。 特に今日は、二重に……。 ……それでは私の方からも、話をしてきます」
「はい、よろしくお願いします」

いつの頃からか……よくするようになった演技を終えたアルベールくんは、颯爽と僕たちから離れていき、次の談笑先のおっさん……お貴族さまへと向かっていった。

よし。

ふ、たかが1度目の人生、しかも男子学生のそれだ、実に他愛ないものよ。

2回目の僕とはちがうのだよ。

転生チートとはこのことだな。

なんで死んだのかは知らんし、なんで記憶を持ち越しているのかは知らんけど、とにかくお得なんだ、これからも存分に使い倒そう。

………………………………………………………………………………………………。

もっとも、見た目は小学生そのものなんだけどな。

まったくに、………………………………人生とは解せぬものだ。

2回目の人生だけど、対人関係の記憶がない以上、実質1回目プラスな感じだしなぁ。
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