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10話 抵抗と絶望と vs.黒おっさん
しおりを挟むさっきから……いつぶりだろう、こうして鏡の前で僕自身を観察するのは……、しかも今度はド・ふりふりろりろりーな格好で。
………………………………………………………………………………………………。
うん。
どー見てもこれ、小学生だわ。
そんなコーディネートされちゃってるもんだからしょうがないんだけどさ。
黒おっさんを油断させるために最近はおっぱいさんたち、おっと、娘さんたちとその友だちさんたちに好き放題されているわけだけど、そんな姿をわざと見せているわけだけど、だからこそどんなカッコさせられても文句言えないっていう弱点に気がついたのはついこないだ。
なんてこったい。
ふわふわふかふかいい匂いに包まれる代償がこれ……ならいっか、女体に勝る重要性はどこにもないもんな。
いや、今はわりとぐへへされる危機に晒されているわけだけども。
だからほら、こんなにロリロリしいパジャマを着せられているっていうのもしょうがないんだ、うん。
髪の毛を解こうとしてここに来たわけだけど、ツインテっぽいやつ……なんか違うけど、覚えにくかったから覚えてない……させられて、デカリボンつけられているもんだから、もうこれ幼女だって素直に認めちゃうくらい。
困った。
ま、でもいいや、僕自身の見た目のことは。
それよりも眠いフリして着替えさせてくれるメイドさんのふかふかに抱きつく方が大切だし。
ああ、朝が楽しみだ。
………………………………………………………………………………………………。
……ダメだ、ここのところ、気がつくとこうして現実逃避をしている。
けど、おかげでまだ……僕自身のことを、女っぽい顔つきと髪の毛と服装をさせられている、女装させられているって認識から抜け出せないからまだセーフ。
これで僕がかわいいとかもっと着飾りたいとか思って来ちゃうようになったりしたらアウト。
新おっさん大好き!とかなったら自我崩壊。
これ以上なく明快な基準だな。
まあ、ないと思うけど。
と、話は戻して。
……そういうわけで、今は、あの夜にたまたま目が覚めなきゃ……大事にされているって、黒おっさんも意外といい人かもしれんなって思っちゃいそうな待遇の中で、やったらに食べろ食べろと各国の珍味を……あ、これはすっごくおいしいからいいんだけど……これでもかと食卓に用意させられていた、出荷前の期間。
やはり適度な肉付きになるまで、そして従順になるまで待ってから出荷するんだろう。
僕は子ブタなんだろーか。
別の意味でおいしくいただかれる高級なやつって感じな?
そんな、己の行く末を知っている、知性を持ってしまった悲しい子ブタな気分だ。
だから、なんにも勘づいていないよ?っていう無邪気なこどもなスマイルをもって、それはそれは喜んでるって感じに今までどおりにこどもを演じつつ……こどもだからと油断してぽろぽろ漏らしてくれるようになってきたもんだから、使用人の人から始めていろんな人の弱味を握っていき、その過程で裏帳簿とか、あくどい証拠とかも集めて準備していった。
まー、そりゃーみんななにかしら抱えてるもんだし?
こどもだからと油断して隙が多いから証拠集めていって、言い逃れができなくなった時点で、僕、これ知ってるんだけどなー、なーんて感じにしていった。
いやぁ、みなさんなんだかんだ裏があるもんで。
で、その結果として黒おっさんがいない時間帯にセキュリティの薄いとこに案内されてはおっさん関係の情報を集めたりして数日。
で、なんとなく思っていたのがどんぴしゃどころかもっとすんげー感じだった。
そらもー。
うあー。
………………………………………………………………………………………………。
………………………………まさか僕の家族がおだぶつになったあの病気が、実はわざと黒おっさんの手下から持ち込まれたやつで……そーいや疫病って、ウイルスが残っている服とかからでも移るんだよなぁ……つまりははじめっから僕たちを不幸な事件として根絶やしにして、付き合いがあって、ついでのようにどっか遠いとこで血が繋がっているのを盾に、あとはあのときの証文を武器に押収してひとりじめしようとしていて。
……っていうかさっさと金目のものと証文以外は焼き払ってまるもうけ、っていう計画だったっていうのを知ったときにはドン引きしたけどな。
そんなのをもう……ここまで大きいのはなかったけど、でも、他の人たちに対して何回も繰り返してるっていうのを知ったときも。
僕が死んでりゃどさくさに紛れて家の使用人さんたちもとっ捕まえてうっぱらおうとか、人権ってもんを知ってる僕にとってはかなりのカルチャーショックだったなぁ。
いちおう僕が生きているからって、懐柔するためだろーけど、それでも家族の品とかのいくらかを持ち出してくれたけど……そうじゃなかったら今ごろ形見の品さえなかったってわけで。
いやぁ、人間って言うのは……どこの時代、どこの世界でも変わらないものよ。
ましてや金に執着している商人なんてという生きものは、なぁ。
人を数十、百人単位で殺しても、なんとも思わないとは。
いやはや。
ほんっと、中世こわいって改めて確認した。
………………………………僕にゃ絶対に受け入れられない考えで、感覚だよなぁ……。
☆
とまぁ。
いろんなものに絶望と、改めての異文化コミュニケーションをドストレートに投げつけられつつも、僕はどうにかして策を練った。
せっかく自由に動けるんだ、しない手はない。
………………………………んで、こんだけの証拠と記録があれば、あとは領主さまにでも直訴……なんてのは余程の幸運がない限りまずムリだから、ひとまずは黒おっさんたちと敵対している商人さんたちに頼んで流してもらおう。
噂が広まれば、真偽を確かめるために……もう引いちゃっただろう騎士さまとかを連れて、説明せよって感じで黒おっさんさちが呼ばれるだろうしな。
そう思っていた。
………………………………………………………………なのに、ダメだった。
あ、いや、ダメだっていうことが分かったんだ。
っていうのも、具合が悪いって嘘ついて寝込んでいるフリをして様子を窺っていたときに、たまたま家族旅行とかで……あ、もちろん僕と監視は置いて……離れたスキをついて突き止めた金庫。
その中に、……万が一のことがあったら「お互いに」「お互いの家族と財産と販路」を任せ合おう、ってな文言の証書……それも国王さまのサイン付きのやつがあったもんだから、頓挫した。
それも、僕の家対いくつかの商家のあいだの取り決めってやつで。
いくらなんでも、……前世基準でも相当にお人好しだった今世の亡き父さんだったとしても、こーんなお花畑な書面を作るはずもないから、これは捏造されたものだっていうのはすぐに分かる。
というか、このレベルの約束って……大親友とかすごく近い親戚同士とか、そういうよっぽどのことがなけりゃ作ることすらしないものだし。
そもそも付き合いすらほっとんどなかったんだしなぁ。
………………………………だけど、そこにあるのは国王さまのサインだよサイン。
国王さまの。
この世界では、少なくともこの地域……馬車でがんばっても端から端までひと月はかかるような、広い世界の……絶対的な権力者の、直筆のサイン。
ほんと、どーやったんだか。
けど、僕だから、分かっちゃった。
父さんの手伝いで、たまーに見たことがある特徴的なサインだったから、それはもう、はっきりと。
………………………………たとえここに書かれている約束が嘘っぱちでも、僕がそれを暴いたとしても、せいぜいが僕たちを皆殺しにしようとした黒おっさんだけが……適当な理由をつけて処刑されるだけ。
で、黒おっさんがすんごくあくどいことしてたって分かっても約束は約束、国王さまのサインは絶対なんだから……これを片手に別の人、ここに書かれている何人かの商人の人たち……それこそ僕を買おうとしている新おっさんなんかへ、さっさと、合法的に、何ヶ月か早く僕を手に入れるだけ。
雲の上のお人たちにとっては、平民の存在なんてただの情報で、どうでもいいことなんだから。
つまり、僕は。
家族がみんな死んだ時点で、詰んだも同然だったんだ。
そう、詰んでいた。
…………、絶望した。
買われて飼われる愛玩奴隷としての、悲しい未来に。
………………………………女として産まれちゃった、ばかりに。
いや、男でも、そういう地位に堕ちるっていうのは確実で、そうなるとかんたんには這い上がれない、中世基準の奴隷な未来が待っているはずなんだけども、だけど。
こうなったらもー、もはや悔しいとかそういう感情さえどっか行っちゃった。
ただただ……人前でこそ今まで通りにしていたけど、心は真っ黒になっていって、リラとして産まれたことを後悔するだけになって、………………………………そして、いよいよと売られるときが来て。
それでもいちおうは、なんとか、どーにかして買い取り先を新おっさんから逸らす程度の工作はしたけど、それでも僕がぐへへされる運命は変わらず。
お先は、真っ暗なまま、で。
☆
僕は、この世界では異端だ。
だって前世の記憶……というか知識とアイデンティティーだけがあるんだから。
そういうわけで、いろいろと集めた悪事の証拠を片手に、どうにかするつもりだったんだ。
だけどまさか……さすがにこれは想定していなかったはず……いや、していたらもうこわい以外の感情を抱けないんだけど……ともかく、僕を残されたものごと手に入れた挙げ句に、僕自身をいちばん高い対価を払って買ってくれそうな新おっさんに売りつけようとしていた黒おっさん。
その、破滅のあと1歩前のとこまで来ていた僕だったけど、よりにもよって……どんな手段でかは分からんけど、王さまっていう雲の上の人からのサインをいただいちゃっている以上、もはやどんな弁明も無意味だ。
たぶんだけど、僕があのときサインさせられた証文だって……なんらかの方法で王さま、あるいはそれに近い公爵さまとかにお名前を書いてもらっちゃっているんだろう。
だってここは中世だ、中世。
しかもそれなりに安定した王国で、歴史があって、王さまや貴族さまたちの権威っていうものは、どんなものよりもそびえ立っている。
…………………………そーんな王さまからの、しかも当代さまの、直筆のサインが記された書面が見つかっちゃったんじゃー、もーどーしよーもないわな。
……それも、一介の商人同士の、盃をなんとやらみたいな、ごくごくプライベートな内容のものにわざわざ書かせているあたり、こやつ、相当に顔が利くらしい。
黒おっさんのくせに。
それも、僕の家族がまだ生きていた段階から、なぁ…………………………。
つまりは僕自身もそれに気がつけなかったっていうわけで。
だけど、王さまのサインはともかく、あと黒おっさんのそれもともかく、僕の家族……父さんが書いた、ことになっている文言。
これ、………………文字どころか言いまわしすらニセモノ、なんだよなぁ。
どう見ても、父親や執事さん、その他の誰のものでもなかったぞ。
ハンコの存在しない世界観だ、文字の鑑定は必須技術だしな、僕には分かる。
手伝いもしていたんだ、よく、知っていたんだ。
でも、………………………………王さまのサインの下に書かれている名前だけは、父さんの文字で。
これはもしや、かんっぜんに安心させといて、あ、ついでにこれにもお願い?……って感じで、ごくさりげなーい感じに滑り込ませてあった書類のひとつとかなんじゃないかな。
小悪党なんだ、それくらいは朝飯前だろう。
使用人さんの誰かとでも通じていたんだろーか。
………………………………………………………………………………………………。
それは、やだなぁ。
………………………………、でも。
こんな大事なもの、中堅商人やってた父さんなら絶対に見逃さないはずなんだ。
………………………………まぁそれも含めてみんなぽっくりだから、真相はもう黒おっさん……たち、しか知らないんだけども。
とはいえ、確かめるすべは失われているから、考えるだけ無駄の無駄だ。
もはや僕にできることは、運命を逸らす程度のことしかないこととなる。
だからこそ、今ぐへへされるよりは、まだ……かろうじて何とかなりそうな、未来のぐへへにするために動いたんだ。
そんでもって、そのお相手先は………………………………ショタっ子となった。人畜無害そうなお家の、数歳年下の。
ま、ガチなロリのコンな新おっさんよか、まだ僕次第でなんとかなりそうなお相手に変えたわけだ。
…………僕だって心は男だ、男を相手にするのはとんでもなくイヤ。だけども。
………………………………どーせそうなる運命なら、おっさんよりかは中学生くらい少年、いろんな欲望渦巻くペ、ロリコンよりかはピュアッピュアだろーショタっ子だろう。
うん。僕は、がんばったんだ。だから、………………………………もう、受け入れよう。
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