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6章 女装して辺境伯領を堕とした(10歳)
111話 ゴブリン&オークを前にして
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ゴブリン、オーク。
普段なら近づくことのない、二足歩行で人間に近い構造をしている――醜悪な化け物。
それは特に女子が大半の、このパーティーにとっては忌むべき存在で。
――他のモンスターとの違いは、ただの1点。
ほとんどのモンスターは人間を捕食することだけを目的にしているけども、これらやローパーなどの特殊なそれらの目的は――「人間を使っての繁殖」。
ただ人間が食べられるだけとは違い、放っておくと人間が衰弱するまでモンスターを増やされ続けてあっという間に数倍の群れに膨れ上がる。
そして、たどり着いた先でさらに母体を補給――すなわち、他の地域の被害を差し置いてでも討伐すべき存在。
だから「ユリア」としての僕が請け負った。
この子たちを危険に晒してまで。
このことを、みんなは察してくれている。
察してくれているけども――目の前にしたら、やっぱり動揺はするもの。
「私たちがこうしてゆっくりと歩いているあいだにも、もしかしたら……!」
身を乗り出そうとしているマルテルさんの腕を、そっと――少しだけ強く、握る。
「マルテル様、落ち着いてください。返り討ちでは意味がありません」
「分かっているわよ! ……ごめんなさい」
「いえ……ただ、慎重でないと危険ですから」
この世界において、人間は男女限らずに弱者であり被捕食者であり――捕食者を増やすための「母体」だ。
この世界の人間とは、食糧であり繁殖先――男女を問わずに。
そうだ、この世界は主人公くんが覚醒するまでは残酷で瀬戸際なんだ。
「主人公くんが覚醒しないと100年以内に人類は絶滅する」――そんな考察が、ふと記憶に浮かぶ。
「……今の私たちができる範囲でダンジョンを攻略し、連れ去られた方々が居たら保護、護衛しながら町まで撤退というのが目的です。各自、周囲への警戒を」
特に女性にとっては嫌悪と恐怖しかないモンスターの巣くうダンジョン――洞窟。
僕は、先頭を歩いていたテオくんと並ぶ。
「ユリア様」
「ええ。――僕たちが、彼女たちを守りますよ」
彼と、男同士の無言の首肯。
――今回のダンジョン攻略は、手強そうだ。
「! グヘヘ……」
「オデ、ハラマス……」
「ヨウジョ、オンナ、クウ……」
ダンジョン、その1階層。
――いきなりの大部屋、いきなりに十数匹のゴブリンたち。
背丈は僕たちと同じくらいの子供――ただし、完全に僕たちを「そういうもの」と認識している。
悪臭が漂う。
……ゲーム内でもそれらしいセリフとか説明とかもあったし、ヒロインたちが危うくという場面もあったりしたし、さらりとそういう目に遭った女性を救助したと書かれていたのを思い出す。
そして薄い本に限らずSNSのTLには、よくそういうイラストが流れてきていたのもなんとなく覚えている。
――けども。
けども、それが現実だと認識すると――恐怖が生まれるのも仕方はない。
さらに、
「――なんと醜悪な……!」
「みなさんは俺の後ろへ! 男なら――」
「ショタ……ハラマス……」
「ひぃっ!?」
「テオ、これらは男でも関係なく襲います。私の後ろに下がりなさい」
思わずでおしりを抑えつつ踵を返してきたテオくん。
ひっぺりごしになるのも仕方ないよね。
うん。
僕も男だから分かるよ。
こういう場面で「男なら大丈夫」って思ってたら男も狙われてたっていう、あの恐怖を。
本当、この世界のモンスター――魔王軍ってのは、人類を襲うために存在するんだ。
人類が捕食され蹂躙され駆逐される対象で、魔王軍はそのためだけに存在する。
それが、この世界の仕組みだ。
――でも、そんなものは変えられる。
その未来を知っているからこそ、僕は絶望せずに前へ進めるんだ。
「身の毛もよだつというのはこういうことね……吐き気がするわ」
「無理もありません。マルテル様、退避――」
「するわけがないでしょう。あなたたちも居るんだから」
顔を真っ青にしながらも、普段の勝ち気な調子を崩さない金髪の彼女。
彼女は、ちらりと後ろを――ルーシーちゃんやリラちゃん、3人娘へ目をやる。
「……ユリア」
「ええ、敵の抵抗が激しければ退却できるうちに下がります。緊急依頼とはいえ、私たちが……苗床になり、戦力と情報が削がれるよりはマシという言い訳で済ませてもらいます。今から前に出ますが、撤退の判断へは従ってください」
「そうね、頼むわよデュクロワ伯令嬢」
ゴブリンたちは、僕たちを――なぜか、本当になぜか、特に僕を見ながら、
「アノゴクジョウノ……」
「オデ! オデイチバン!」
「ダメダ、オデダ」
「……? オス……? ……ドッチデモイイ……ママニシテヤル……!」
ひそひそと相談をしながら――そのくせ既に数体が離れながら左右へ展開。
――多少の知性があるのも、また厄介なのがこいつらだ。
「このダンジョンのモンスターたちは連携して攻撃してきます。私たちのレベルなら苦戦することはない相手ですが、いきなり誰かを集中攻撃してきたり隙を見て突撃してくることもあるとのこと。みなさん、強敵と見なして油断せずに。誰か1人でも痛手を負うか、私が合図を出したら撤退――行きますっ!」
「「「はいっ!」」」
「ですの!」
「ですわ!」
けども、この3年間ずっとパーティーを組んできた子たちだ。
士気は高い。
普段通りに戦えたなら目の前の敵は問題ないはず。
これなら――。
◇
「……はぁっ……♥」
ダンジョンの最深層。
ダンジョンの最も濃度の濃い場所。
数百体のゴブリン、オーク、トロールの死骸から産み出された魔石が消費され――地面に刻み込まれた召喚陣から、「それ」は復活した。
「――魔王様ぁ。このエロディー……貴方の復活を希望に、何度でも何度でも戻ってきますわぁ……♥」
恍惚とした顔。
魔族である彼女の、サキュバスとして色欲を振りまきつつも――その目は、ダンジョンの上層階を覗いていた。
普段なら近づくことのない、二足歩行で人間に近い構造をしている――醜悪な化け物。
それは特に女子が大半の、このパーティーにとっては忌むべき存在で。
――他のモンスターとの違いは、ただの1点。
ほとんどのモンスターは人間を捕食することだけを目的にしているけども、これらやローパーなどの特殊なそれらの目的は――「人間を使っての繁殖」。
ただ人間が食べられるだけとは違い、放っておくと人間が衰弱するまでモンスターを増やされ続けてあっという間に数倍の群れに膨れ上がる。
そして、たどり着いた先でさらに母体を補給――すなわち、他の地域の被害を差し置いてでも討伐すべき存在。
だから「ユリア」としての僕が請け負った。
この子たちを危険に晒してまで。
このことを、みんなは察してくれている。
察してくれているけども――目の前にしたら、やっぱり動揺はするもの。
「私たちがこうしてゆっくりと歩いているあいだにも、もしかしたら……!」
身を乗り出そうとしているマルテルさんの腕を、そっと――少しだけ強く、握る。
「マルテル様、落ち着いてください。返り討ちでは意味がありません」
「分かっているわよ! ……ごめんなさい」
「いえ……ただ、慎重でないと危険ですから」
この世界において、人間は男女限らずに弱者であり被捕食者であり――捕食者を増やすための「母体」だ。
この世界の人間とは、食糧であり繁殖先――男女を問わずに。
そうだ、この世界は主人公くんが覚醒するまでは残酷で瀬戸際なんだ。
「主人公くんが覚醒しないと100年以内に人類は絶滅する」――そんな考察が、ふと記憶に浮かぶ。
「……今の私たちができる範囲でダンジョンを攻略し、連れ去られた方々が居たら保護、護衛しながら町まで撤退というのが目的です。各自、周囲への警戒を」
特に女性にとっては嫌悪と恐怖しかないモンスターの巣くうダンジョン――洞窟。
僕は、先頭を歩いていたテオくんと並ぶ。
「ユリア様」
「ええ。――僕たちが、彼女たちを守りますよ」
彼と、男同士の無言の首肯。
――今回のダンジョン攻略は、手強そうだ。
「! グヘヘ……」
「オデ、ハラマス……」
「ヨウジョ、オンナ、クウ……」
ダンジョン、その1階層。
――いきなりの大部屋、いきなりに十数匹のゴブリンたち。
背丈は僕たちと同じくらいの子供――ただし、完全に僕たちを「そういうもの」と認識している。
悪臭が漂う。
……ゲーム内でもそれらしいセリフとか説明とかもあったし、ヒロインたちが危うくという場面もあったりしたし、さらりとそういう目に遭った女性を救助したと書かれていたのを思い出す。
そして薄い本に限らずSNSのTLには、よくそういうイラストが流れてきていたのもなんとなく覚えている。
――けども。
けども、それが現実だと認識すると――恐怖が生まれるのも仕方はない。
さらに、
「――なんと醜悪な……!」
「みなさんは俺の後ろへ! 男なら――」
「ショタ……ハラマス……」
「ひぃっ!?」
「テオ、これらは男でも関係なく襲います。私の後ろに下がりなさい」
思わずでおしりを抑えつつ踵を返してきたテオくん。
ひっぺりごしになるのも仕方ないよね。
うん。
僕も男だから分かるよ。
こういう場面で「男なら大丈夫」って思ってたら男も狙われてたっていう、あの恐怖を。
本当、この世界のモンスター――魔王軍ってのは、人類を襲うために存在するんだ。
人類が捕食され蹂躙され駆逐される対象で、魔王軍はそのためだけに存在する。
それが、この世界の仕組みだ。
――でも、そんなものは変えられる。
その未来を知っているからこそ、僕は絶望せずに前へ進めるんだ。
「身の毛もよだつというのはこういうことね……吐き気がするわ」
「無理もありません。マルテル様、退避――」
「するわけがないでしょう。あなたたちも居るんだから」
顔を真っ青にしながらも、普段の勝ち気な調子を崩さない金髪の彼女。
彼女は、ちらりと後ろを――ルーシーちゃんやリラちゃん、3人娘へ目をやる。
「……ユリア」
「ええ、敵の抵抗が激しければ退却できるうちに下がります。緊急依頼とはいえ、私たちが……苗床になり、戦力と情報が削がれるよりはマシという言い訳で済ませてもらいます。今から前に出ますが、撤退の判断へは従ってください」
「そうね、頼むわよデュクロワ伯令嬢」
ゴブリンたちは、僕たちを――なぜか、本当になぜか、特に僕を見ながら、
「アノゴクジョウノ……」
「オデ! オデイチバン!」
「ダメダ、オデダ」
「……? オス……? ……ドッチデモイイ……ママニシテヤル……!」
ひそひそと相談をしながら――そのくせ既に数体が離れながら左右へ展開。
――多少の知性があるのも、また厄介なのがこいつらだ。
「このダンジョンのモンスターたちは連携して攻撃してきます。私たちのレベルなら苦戦することはない相手ですが、いきなり誰かを集中攻撃してきたり隙を見て突撃してくることもあるとのこと。みなさん、強敵と見なして油断せずに。誰か1人でも痛手を負うか、私が合図を出したら撤退――行きますっ!」
「「「はいっ!」」」
「ですの!」
「ですわ!」
けども、この3年間ずっとパーティーを組んできた子たちだ。
士気は高い。
普段通りに戦えたなら目の前の敵は問題ないはず。
これなら――。
◇
「……はぁっ……♥」
ダンジョンの最深層。
ダンジョンの最も濃度の濃い場所。
数百体のゴブリン、オーク、トロールの死骸から産み出された魔石が消費され――地面に刻み込まれた召喚陣から、「それ」は復活した。
「――魔王様ぁ。このエロディー……貴方の復活を希望に、何度でも何度でも戻ってきますわぁ……♥」
恍惚とした顔。
魔族である彼女の、サキュバスとして色欲を振りまきつつも――その目は、ダンジョンの上層階を覗いていた。
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