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4章 リアルとバーチャルとメス堕ちの融合
52話 クラスが女装している
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「おはよ……う!?」
「お、おう……」
「佐々木……お、おはよう……」
「やっぱり似合うわー!」
「はぁ……いい……いいよぉそのアングル……!」
――そういえば学園祭が近いなって思っていた今日このごろ。
いつもの通りに眠気をこらえて登校した僕は、教室のドアを開けた。
……そうしたら、男子の数が少なくなっていた。
いや……微妙に女子も減っている。
その代わり、……。
「ほ、ほら……もうすぐだろ? だから……」
「女子たちが言うからな! 仕方ないんだ」
「そ、そっか……」
第一印象は「あれ? 運動部の女子がやけに多いな」だった。
あと「文学系の男子も多い気がする」だった。
平均的に背が高く身幅もがっちりしていて、顔も……うん、運動できそうって印象の女子が多かったし、逆に背が低くて制服がぶかぶかの、髪が長い男子が多い印象だった。
けれども――たまたま扉近くに居た「女子たち」が振り向いてきたと思ったら、どこかで見たことのある顔だったから。
あと、「男子たち」も……こっちはさすがに、顔が女性的すぎた。
「に、似合ってるか……?」
「う、うん……ぱっと見じゃ分からない……かな……」
「佐々木からもパスしたぞ!」
「やべぇな……俺たち、女装の天才かもしれない……!」
野太い声できゃっきゃとはしゃぎ始めた「女子」たちを尻目に、そっと離れて席へ向かう。
……まさか。
そうは思ったけども、そういや帰りの会とかで「早いうちから準備始めるように」ってあったっけ。
「……おい、頼まれたセリフ」
「あ、やべ。……あ、あー! 俺、実はVRなチャットやっててさー!」
「!」
ちょうど席に着いた僕の耳に飛び込んできたのは――思わずでどきっとしてしまうワード。
「ま、マジかー、最近流行りって言うもんなー!」
「お、俺も実はやってたんだぜー! ほら、当日用にケモ耳バンドも持って来ててさー!」
「私も、実はネットでネナベやっててさー! スクショ見るー?」
「………………………………」
――世界は、狭い。
いや、それだけあの蠱毒とも表現できる世界が浸透しているんだろう。
そんな――僕と同じく魔境に足を踏み入れ、しかもこんな場で暴露し始めた男子生徒は――バーチャルの世界では毎日のように視界に入るキャラクターのケモ耳を、装着する。
……おお。
一気に雰囲気がリアルからバーチャルに……!
「お前、ネットでは女の子やってるのかよー」
「そうだぜー? てか今どき普通だしー!」
「そうそう、メス堕ちなんてよく聞くもんなー!」
「うんうん、普通のこと普通のことー!」
……普通のことなのか?
眠いフリをして机に突っ伏しながら、ちらちらと様子をうかがってみる。
――1人、また1人とバーチャルに染まっている秘密を暴露していく野郎ども。
それに反応して「自分も」と言い出す女子。
僕のクラスは――異様な雰囲気に包まれていた。
◇
「おう、他の教師やクラスには伝えておいてあるからな。本番のためにがんばれよ」
「「「はーい!」」」
やっぱり基本は面倒くさがりなうちの担任が……どうしてか、ことこの件に関してはやる気を出しているらしい。
「………………………………」
「?」
……そんな、筋肉のうるさい担任と目が合ったと思ったけども、次の瞬間には別の人を見ていた……なんだ、気のせいか。
「男子はスカートの扱いとか……イスに座るとき、階段歩くとき、その他いろいろあるから早めにねー」
「あ、女子は女子で意外と動きにくかったりするから、やっぱ早めの方がいいかなー」
……なるほど。
確かに僕も、普段は部屋の中でしか基本的に女装しないから忘れてたけども……女子は、階段を登るときとかはさりげなくスカートの裾をガードしたりするんだっけ。
僕はそもそも痴漢って思われたくないから、登り階段で上を見ることはないけども……なるほど、これは勉強になる。
「あー。トイレについては自分の性別の……元の性別のそれか、教員用の共用のを使ってくれ。さすがにそこまでは多様性という言葉の効力もなくてな」
「いやまぁそうでしょ」
「男が女のトイレも、女が男のトイレもなぁ」
「お互いに気まずいし……」
「さすがに他のクラスから総スカンだわなぁ」
「あ、でも、似合いすぎてる人とかなら……」
「……?」
最近の席替えで最後尾っていう素敵な場所を手に入れはずの僕が、なぜか視線を感じる。
なんだかみんながちらちらと振り返ってきているような気もするけども……いや、僕じゃないな。
たぶん僕の両隣の生徒か、あるいは僕の前の中村を見ているんだろう。
「……どうだ?」
「考えてるみたい」
「もう少し人数増やさないと……」
「いや、まだ時間はある……違和感を持たれないように……」
「………………………………」
けど……確かに。
他のみんなはともかく、僕は……普段から女装を趣味にしているから、外でしないのはもったいない……気がする。
もっとも、悪友のせいで外出させられて女子に泣いているところを見られたのがトラウマなせいで、あれから頑として拒否してはいるけども。
………………………………。
……うん。
みんながやってるんだし……そうだ、勇気が。
勇気が出たら……うん。
学校までは普通の制服で来て……で、学校で着替えるなら。
うん、そうすれば人目も最小限。
クラスの人たちは――今日のでもう慣れているだろうし、そこまで気にならないはず。
うん。
やる気が出たら。
勇気が出たら……やってみようかな。
「お、おう……」
「佐々木……お、おはよう……」
「やっぱり似合うわー!」
「はぁ……いい……いいよぉそのアングル……!」
――そういえば学園祭が近いなって思っていた今日このごろ。
いつもの通りに眠気をこらえて登校した僕は、教室のドアを開けた。
……そうしたら、男子の数が少なくなっていた。
いや……微妙に女子も減っている。
その代わり、……。
「ほ、ほら……もうすぐだろ? だから……」
「女子たちが言うからな! 仕方ないんだ」
「そ、そっか……」
第一印象は「あれ? 運動部の女子がやけに多いな」だった。
あと「文学系の男子も多い気がする」だった。
平均的に背が高く身幅もがっちりしていて、顔も……うん、運動できそうって印象の女子が多かったし、逆に背が低くて制服がぶかぶかの、髪が長い男子が多い印象だった。
けれども――たまたま扉近くに居た「女子たち」が振り向いてきたと思ったら、どこかで見たことのある顔だったから。
あと、「男子たち」も……こっちはさすがに、顔が女性的すぎた。
「に、似合ってるか……?」
「う、うん……ぱっと見じゃ分からない……かな……」
「佐々木からもパスしたぞ!」
「やべぇな……俺たち、女装の天才かもしれない……!」
野太い声できゃっきゃとはしゃぎ始めた「女子」たちを尻目に、そっと離れて席へ向かう。
……まさか。
そうは思ったけども、そういや帰りの会とかで「早いうちから準備始めるように」ってあったっけ。
「……おい、頼まれたセリフ」
「あ、やべ。……あ、あー! 俺、実はVRなチャットやっててさー!」
「!」
ちょうど席に着いた僕の耳に飛び込んできたのは――思わずでどきっとしてしまうワード。
「ま、マジかー、最近流行りって言うもんなー!」
「お、俺も実はやってたんだぜー! ほら、当日用にケモ耳バンドも持って来ててさー!」
「私も、実はネットでネナベやっててさー! スクショ見るー?」
「………………………………」
――世界は、狭い。
いや、それだけあの蠱毒とも表現できる世界が浸透しているんだろう。
そんな――僕と同じく魔境に足を踏み入れ、しかもこんな場で暴露し始めた男子生徒は――バーチャルの世界では毎日のように視界に入るキャラクターのケモ耳を、装着する。
……おお。
一気に雰囲気がリアルからバーチャルに……!
「お前、ネットでは女の子やってるのかよー」
「そうだぜー? てか今どき普通だしー!」
「そうそう、メス堕ちなんてよく聞くもんなー!」
「うんうん、普通のこと普通のことー!」
……普通のことなのか?
眠いフリをして机に突っ伏しながら、ちらちらと様子をうかがってみる。
――1人、また1人とバーチャルに染まっている秘密を暴露していく野郎ども。
それに反応して「自分も」と言い出す女子。
僕のクラスは――異様な雰囲気に包まれていた。
◇
「おう、他の教師やクラスには伝えておいてあるからな。本番のためにがんばれよ」
「「「はーい!」」」
やっぱり基本は面倒くさがりなうちの担任が……どうしてか、ことこの件に関してはやる気を出しているらしい。
「………………………………」
「?」
……そんな、筋肉のうるさい担任と目が合ったと思ったけども、次の瞬間には別の人を見ていた……なんだ、気のせいか。
「男子はスカートの扱いとか……イスに座るとき、階段歩くとき、その他いろいろあるから早めにねー」
「あ、女子は女子で意外と動きにくかったりするから、やっぱ早めの方がいいかなー」
……なるほど。
確かに僕も、普段は部屋の中でしか基本的に女装しないから忘れてたけども……女子は、階段を登るときとかはさりげなくスカートの裾をガードしたりするんだっけ。
僕はそもそも痴漢って思われたくないから、登り階段で上を見ることはないけども……なるほど、これは勉強になる。
「あー。トイレについては自分の性別の……元の性別のそれか、教員用の共用のを使ってくれ。さすがにそこまでは多様性という言葉の効力もなくてな」
「いやまぁそうでしょ」
「男が女のトイレも、女が男のトイレもなぁ」
「お互いに気まずいし……」
「さすがに他のクラスから総スカンだわなぁ」
「あ、でも、似合いすぎてる人とかなら……」
「……?」
最近の席替えで最後尾っていう素敵な場所を手に入れはずの僕が、なぜか視線を感じる。
なんだかみんながちらちらと振り返ってきているような気もするけども……いや、僕じゃないな。
たぶん僕の両隣の生徒か、あるいは僕の前の中村を見ているんだろう。
「……どうだ?」
「考えてるみたい」
「もう少し人数増やさないと……」
「いや、まだ時間はある……違和感を持たれないように……」
「………………………………」
けど……確かに。
他のみんなはともかく、僕は……普段から女装を趣味にしているから、外でしないのはもったいない……気がする。
もっとも、悪友のせいで外出させられて女子に泣いているところを見られたのがトラウマなせいで、あれから頑として拒否してはいるけども。
………………………………。
……うん。
みんながやってるんだし……そうだ、勇気が。
勇気が出たら……うん。
学校までは普通の制服で来て……で、学校で着替えるなら。
うん、そうすれば人目も最小限。
クラスの人たちは――今日のでもう慣れているだろうし、そこまで気にならないはず。
うん。
やる気が出たら。
勇気が出たら……やってみようかな。
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