53 / 82
4章 リアルとバーチャルとメス堕ちの融合
53話 練習で外出女装――していたら
しおりを挟む
「………………………………」
駅前。
休日の午後とあって、人がたくさん居る場所。
最寄りからは少し離れた繁華街――僕はそこで、女子の格好をして立っていた。
商業ビルのガラスに反射する、僕の姿。
着慣れた――自室とバーチャルで――僕のメインで使っているアバターのデフォルトの服装にそっくりなセーターに肩出しシャツ、スカート。
念のためで今日はカツラ――じゃなくてウィッグを被り、髪の毛は背中に届く程度。
コスプレっていうわけじゃないから毛の色は僕の地毛に合わせてあるおかげで、違和感のない長髪の――「女の子」。
服装自体はコスプレではあるけどもシャツの色は違うし……うん、VRなチャットに染まっている人じゃないと反応もしないだろう。
こんな休日のこんなにリアルが充実している男女だらけの場所だ、1人寂しくインするようなバーチャルの世界の住人なんて、そうそう会うはずがないから大丈夫なはず。
「………………………………」
そうだ。
今の僕を知る人はここには誰も居なくて、外見も――高くしていれば声も、女の子。
顔は家を出る前にいじってきたし、これなら僕がうっかり地声を出しちゃうか「男なんです」って言っちゃうか……うっかりにもほどがあって男子トイレに入って立ったまま用を足しちゃうとかしない限りには、バレることはないはず。
……出かける前に母さんに言われたっけ、「堂々としていれば、たとえ似合わなかったとしても違和感持つ人なんてそうそう居ないわよ」って。
だから僕は、この前に無理やり連れ出されたときとは違って、あのときのトラウマを払拭すべく自然体で歩き出す。
――ナンパ除けのいろいろは母さんから教え込まれたから大丈夫なはず。
ここに僕を知る人は居ない、気楽に行こう。
◇
……数分おきにナンパされた……もうやだ。
疲れた僕は、女の人が多いカフェをわざわざ選んで駆け込んで――ついついでまた太りそうなスイーツセットを頼む。
入ってから「女性は基本的に2人以上で歩くから、1人で入ったら男ってバレるかも」って思ったけども……いざ入ってみれば、ぽつぽつだけど1人でお茶を楽しんでいる人も居てほっとした。
「ふぅ……」
それにしても、甘いものはやっぱり良い。
このせいで無駄に太ったけども、確かに甘いものは食べていて飽きない。
男でも甘党とかいるけど……僕、そういうのだったのかな。
それとも中村が茶化すように、メス堕ちしたから甘いものが好きになったのかな。
もうどっちか分からないけども……どうせ学園祭までだ。
それが終われば女装する理由も無くなるんだし、そこで男らしくきっぱりと終わらせよう。
まだ母さんにも言ってないけども、区切りをつけておかないと僕の将来までがメス堕ちしそうだから怖いんだ。
いやだって、僕、普通に男として社会人になるつもりで居るし……別に精神的に女の子になりたいわけでもそう主張したいわけでもないから、本当に普通の男として静かに働いて暮らしたいんだ。
そうだ。
ヒカリも言ってたじゃないか――「せっかく、今だけだから」って。
なんでも思春期はホルモンバランスがどうとかで性別に疑問を持ちがちってことだけど、大人になって落ちつけばただの黒歴史で済んでくれるはず。
この衝動は、VR空間で発散すれば良い。
はしかみたいなものだから、きっとそのうちに飽きるだろう。
……飽きるよね?
「………………………………」
……その闇が母親と父親と学友に知れているのは……学友はどうせ社会に出たら疎遠になるから良いとして、両親はどうすべきかなぁ……。
気の迷いってことでなんとかお互いに口にしにくい話題ってことにしたいんだけど……どうするかなぁ。
と、甘いものでダウナーな心を中和していたらスマホに電話が。
『レイきゅんだいじょぶ?』
「うん、なんとかね」
『野郎にかわいい連呼されて丸め込まれて連れ込まれたりしてない?』
「するわけないだろ……」
『でもメス堕ちしてるから心配で』
「メス堕――は止めてくれヒカリ……」
周囲の盛り上がっている女性同士の会話の方がうるさいから問題は無いだろうけども、話してる内容が内容だ。
自然に声は小さくなるけども、普段通りのヒカリについつい抗議してしまう。
「…………?」
『んでんで? 露出の感想は?』
「女装な? ……思ったよりも平常心だ」
『なるほどぉ。なら心配しなくて良いっぽい?』
「うん。ナンパも軽くあしらえたし……いざとなったら走って逃げれば良いし」
『あー、うん。さすがにそこは男の脚力だからねぇ……普段運動してなくっても普通の男子だからなんとかなりそうね』
「まぁスカートだから走りづらそうだけど」
『確かに。そのスカート、長めだし』
「シアノちゃんのだからね……」
『レイきゅんの好きな、清楚系のアバターだからね!』
「……!」
「……あ、ごめん。今お店の中。電話して睨まれたら怖いから切るよ」
『うん、がんばってねぇー』
ぴっ。
「ふぅ……」
しゃべっている最中から視線を感じた僕は、そのままだと今日の感想をいろいろしゃべっちゃいそうだったこともあって、なんとか会話を打ち切った。
悔しいけど、今の友人の中で僕のことをいちばんくわしく知ってて話も弾むのがあいつだからなぁ……。
「……あの、ちょっと良いですか?」
「え? あ、はい」
顔を上げると――女の人。
大学生くらいな雰囲気の、おしゃれな人。
確か隣のテーブルで1人で優雅にスイーツを楽しんでいた人だっけ。
怒っている感じじゃないけど、わざわざ話しかけてくるってことは。
「ごめんなさい、電話がうるさかった――」
「あの、人違いだったらスルーしてほしいんですけど」
と、僕に被せるようにたたみかけてきた彼女は、
「……あなた、もしかしてレイくん?」
「……へ?」
僕は――座っている僕に向かって少し屈むようにしてのぞき込んできている、年上でおしゃれで、声も優しい感じで――けれども「似た声をどこかで聞いたことがあるような」感じがして――ぼけっとしながらなにも反応できずに居た。
駅前。
休日の午後とあって、人がたくさん居る場所。
最寄りからは少し離れた繁華街――僕はそこで、女子の格好をして立っていた。
商業ビルのガラスに反射する、僕の姿。
着慣れた――自室とバーチャルで――僕のメインで使っているアバターのデフォルトの服装にそっくりなセーターに肩出しシャツ、スカート。
念のためで今日はカツラ――じゃなくてウィッグを被り、髪の毛は背中に届く程度。
コスプレっていうわけじゃないから毛の色は僕の地毛に合わせてあるおかげで、違和感のない長髪の――「女の子」。
服装自体はコスプレではあるけどもシャツの色は違うし……うん、VRなチャットに染まっている人じゃないと反応もしないだろう。
こんな休日のこんなにリアルが充実している男女だらけの場所だ、1人寂しくインするようなバーチャルの世界の住人なんて、そうそう会うはずがないから大丈夫なはず。
「………………………………」
そうだ。
今の僕を知る人はここには誰も居なくて、外見も――高くしていれば声も、女の子。
顔は家を出る前にいじってきたし、これなら僕がうっかり地声を出しちゃうか「男なんです」って言っちゃうか……うっかりにもほどがあって男子トイレに入って立ったまま用を足しちゃうとかしない限りには、バレることはないはず。
……出かける前に母さんに言われたっけ、「堂々としていれば、たとえ似合わなかったとしても違和感持つ人なんてそうそう居ないわよ」って。
だから僕は、この前に無理やり連れ出されたときとは違って、あのときのトラウマを払拭すべく自然体で歩き出す。
――ナンパ除けのいろいろは母さんから教え込まれたから大丈夫なはず。
ここに僕を知る人は居ない、気楽に行こう。
◇
……数分おきにナンパされた……もうやだ。
疲れた僕は、女の人が多いカフェをわざわざ選んで駆け込んで――ついついでまた太りそうなスイーツセットを頼む。
入ってから「女性は基本的に2人以上で歩くから、1人で入ったら男ってバレるかも」って思ったけども……いざ入ってみれば、ぽつぽつだけど1人でお茶を楽しんでいる人も居てほっとした。
「ふぅ……」
それにしても、甘いものはやっぱり良い。
このせいで無駄に太ったけども、確かに甘いものは食べていて飽きない。
男でも甘党とかいるけど……僕、そういうのだったのかな。
それとも中村が茶化すように、メス堕ちしたから甘いものが好きになったのかな。
もうどっちか分からないけども……どうせ学園祭までだ。
それが終われば女装する理由も無くなるんだし、そこで男らしくきっぱりと終わらせよう。
まだ母さんにも言ってないけども、区切りをつけておかないと僕の将来までがメス堕ちしそうだから怖いんだ。
いやだって、僕、普通に男として社会人になるつもりで居るし……別に精神的に女の子になりたいわけでもそう主張したいわけでもないから、本当に普通の男として静かに働いて暮らしたいんだ。
そうだ。
ヒカリも言ってたじゃないか――「せっかく、今だけだから」って。
なんでも思春期はホルモンバランスがどうとかで性別に疑問を持ちがちってことだけど、大人になって落ちつけばただの黒歴史で済んでくれるはず。
この衝動は、VR空間で発散すれば良い。
はしかみたいなものだから、きっとそのうちに飽きるだろう。
……飽きるよね?
「………………………………」
……その闇が母親と父親と学友に知れているのは……学友はどうせ社会に出たら疎遠になるから良いとして、両親はどうすべきかなぁ……。
気の迷いってことでなんとかお互いに口にしにくい話題ってことにしたいんだけど……どうするかなぁ。
と、甘いものでダウナーな心を中和していたらスマホに電話が。
『レイきゅんだいじょぶ?』
「うん、なんとかね」
『野郎にかわいい連呼されて丸め込まれて連れ込まれたりしてない?』
「するわけないだろ……」
『でもメス堕ちしてるから心配で』
「メス堕――は止めてくれヒカリ……」
周囲の盛り上がっている女性同士の会話の方がうるさいから問題は無いだろうけども、話してる内容が内容だ。
自然に声は小さくなるけども、普段通りのヒカリについつい抗議してしまう。
「…………?」
『んでんで? 露出の感想は?』
「女装な? ……思ったよりも平常心だ」
『なるほどぉ。なら心配しなくて良いっぽい?』
「うん。ナンパも軽くあしらえたし……いざとなったら走って逃げれば良いし」
『あー、うん。さすがにそこは男の脚力だからねぇ……普段運動してなくっても普通の男子だからなんとかなりそうね』
「まぁスカートだから走りづらそうだけど」
『確かに。そのスカート、長めだし』
「シアノちゃんのだからね……」
『レイきゅんの好きな、清楚系のアバターだからね!』
「……!」
「……あ、ごめん。今お店の中。電話して睨まれたら怖いから切るよ」
『うん、がんばってねぇー』
ぴっ。
「ふぅ……」
しゃべっている最中から視線を感じた僕は、そのままだと今日の感想をいろいろしゃべっちゃいそうだったこともあって、なんとか会話を打ち切った。
悔しいけど、今の友人の中で僕のことをいちばんくわしく知ってて話も弾むのがあいつだからなぁ……。
「……あの、ちょっと良いですか?」
「え? あ、はい」
顔を上げると――女の人。
大学生くらいな雰囲気の、おしゃれな人。
確か隣のテーブルで1人で優雅にスイーツを楽しんでいた人だっけ。
怒っている感じじゃないけど、わざわざ話しかけてくるってことは。
「ごめんなさい、電話がうるさかった――」
「あの、人違いだったらスルーしてほしいんですけど」
と、僕に被せるようにたたみかけてきた彼女は、
「……あなた、もしかしてレイくん?」
「……へ?」
僕は――座っている僕に向かって少し屈むようにしてのぞき込んできている、年上でおしゃれで、声も優しい感じで――けれども「似た声をどこかで聞いたことがあるような」感じがして――ぼけっとしながらなにも反応できずに居た。
6
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。
エース皇命
青春
高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。
そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。
最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。
陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。
以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。
※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
※表紙にはAI生成画像を使用しています。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる