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4章 リアルとバーチャルとメス堕ちの融合
56話 ルーチェさんの距離が近い
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「うーん、確かに……言われてみればそうかもって感じ」
「僕、手とか足が小さくて……」
にぎにぎ。
なぜか僕はルーチェさんに手を取られ、両手で揉まれている。
「男の子の手の甲って女装では大切なポイントって聞くけど……レイくんみたいに綺麗な手だとあまり関係ないみたいねぇ」
「もともとインドアで日焼けもしてませんし……あの、そろそろ」
「……あ、ご、ごめんね!? つい!」
ぱっと離される同時に、ふわりと漂う彼女の髪の毛の香り。
……落ちつこう僕、あれはシャンプーとかの匂いだって知ってるじゃないか……そうそう、僕自身もシャンプーの匂い振りまいてるから、たまにクラスの人から「香水とかつけてる?」って聞かれるようになったし。
「適度に華奢なのも女装向けなのねぇ。かといって痩せ過ぎじゃないし」
僕の肩とかを見ながら――両手でほっぺを覆いながら両肘で体を支えているルーチェさん。
「あ、その態勢、VRでもよくやってますよね」
「え? ……あ、ほんとだ! やだもー……」
「僕だってそれで見破られたようなものですし、おあいこですよ」
「そうだねぇ、癖って案外消せないし、わかっちゃうものみたいだもんね」
お互いの――主に僕の方からだけども――恥ずかしいって感じる時間が過ぎれば途端に普段のように、普段バーチャルで会っているみたいな感覚になって落ちついてきた気がする。
「けど、ずるいなぁヒカリちゃん」
「ヒカリが……ですか?」
「うん。こんなにかわいいレイくんをひとりじめしてるんだもん」
「アイツはなんとも思ってないはずですから大丈夫ですよ」
それだけは断言できる。
アイツは僕を弄ぶ対象としか見てないからな。
「……じゃあ……私が………………くんを……」
「? えっと、ごめんなさい、近くの人たちの声で聞こえなくって」
ちょうど彼女がしゃべり始めたタイミングで、僕が苦手なタイプの女性の笑い声が響き渡ったせいで聞きそびれたのに、もう。
「……ううん、なんでもないの。それより、もう食べちゃったみたいだけどまだ居て良いの?」
「あー……確かにそろそろ出ないとですね」
今日は特段の用事もなく、ただここのスイーツセットを食べるためだけに来たと言っても過言ではない。
なんだか記憶が改竄されてる気もしなくもないけども、そういうことにしておこう。
「それに、こうしてこういう格好で外に出るのは初めて――1人では初めてなので、疲れてきちゃって」
「そうよねぇ、勇気要りそうだもん。うん、付き合ってくれてありがと」
さっさっとテーブルの上を片づけて……よし。
「じゃあ、今日はありがとうございました」
「うん、こちらこそ」
がたっ。
僕「たち」が、同時に席を立つ。
「………………………………?」
「?」
「……ルーチェさんも、出るんですか?」
「? うん、もちろん」
「……そうですか」
こてん、と首をかしげる姿は僕がよく知る彼女の癖。
……ああ。
確かに――姿形はまったく違うし、普段の声も違うけども――彼女は彼女だ。
バーチャルでもリアルでも、同じ人間だ。
◇
「……ということがありまして」
「リヒターくんに内緒にする意味とかないしってことでー」
「……そんな! 拙者は! 某は! 吾輩は! なんたる無為な時間を……!」
「どうでもいいですけど、一人称、いい加減統一した方が楽じゃないです……?」
数日後。
たまたま、この気心の知れた3人が集まったから他の人が入ってこられない設定のワールドに移動し、僕の恥部を露呈する。
いや、ルーチェさんは気を遣って「別に全部正直に言う必要ないんだよ?」とか言ってくれたけど――さすがは大人の女性だね――それでも僕は、なんとなく。
たぶん、学校で1年とか仲良く過ごした学友と同じレベルでイケメン騎士のリヒターさんと心の距離的なものが近いって感じている。
友人――フレンドさんだもんね。
他の人はともかく、彼にはなんとなく知っていてほしい。
そう思ったから……数日かかったけど言えてほっとした。
「ルーチェ殿……?」
「ふふーん。レイくんはね、リアルで見たら」
たたっと僕の後ろに回り、アバター僕の後ろから頬がくっつくくらいの距離感で話し出すルーチェさん……いや、距離近くない?
「――たぶん、すぐに分かるよ。だって、このアバターのレイくんそのものだから」
「顔は全然違いますけどね」
「違うって言ってもパラメーター弄ってカスタマイズしてるし、服だって自分で選んでる。そのセンスとかもアバターに反映されてるよ?」
「……そうですか?」
「うん!」
僕はリアルの顔を――コントローラーを握っているせいでつかめないけども、リアルの頬にプラスチック製のそれが当たる感覚と、バーチャルのミラーに映っている、頬を触るようにしている僕自身を見る。
「……可憐でござる……」
「そうよ? 可憐よ?」
「そ、そこまでは……」
――僕は、友人に恵まれたな。
リアルで女装してるって聞いても馬鹿にしなくって、ただの僕の一面――ちょうど、使っているアバターの属性とか程度にしか気にしないでくれている人たちに。
……そっか。
VRなチャットも――リアルの一部なんだな。
人間関係も、僕たち自身の内面も含めて……。
「僕、手とか足が小さくて……」
にぎにぎ。
なぜか僕はルーチェさんに手を取られ、両手で揉まれている。
「男の子の手の甲って女装では大切なポイントって聞くけど……レイくんみたいに綺麗な手だとあまり関係ないみたいねぇ」
「もともとインドアで日焼けもしてませんし……あの、そろそろ」
「……あ、ご、ごめんね!? つい!」
ぱっと離される同時に、ふわりと漂う彼女の髪の毛の香り。
……落ちつこう僕、あれはシャンプーとかの匂いだって知ってるじゃないか……そうそう、僕自身もシャンプーの匂い振りまいてるから、たまにクラスの人から「香水とかつけてる?」って聞かれるようになったし。
「適度に華奢なのも女装向けなのねぇ。かといって痩せ過ぎじゃないし」
僕の肩とかを見ながら――両手でほっぺを覆いながら両肘で体を支えているルーチェさん。
「あ、その態勢、VRでもよくやってますよね」
「え? ……あ、ほんとだ! やだもー……」
「僕だってそれで見破られたようなものですし、おあいこですよ」
「そうだねぇ、癖って案外消せないし、わかっちゃうものみたいだもんね」
お互いの――主に僕の方からだけども――恥ずかしいって感じる時間が過ぎれば途端に普段のように、普段バーチャルで会っているみたいな感覚になって落ちついてきた気がする。
「けど、ずるいなぁヒカリちゃん」
「ヒカリが……ですか?」
「うん。こんなにかわいいレイくんをひとりじめしてるんだもん」
「アイツはなんとも思ってないはずですから大丈夫ですよ」
それだけは断言できる。
アイツは僕を弄ぶ対象としか見てないからな。
「……じゃあ……私が………………くんを……」
「? えっと、ごめんなさい、近くの人たちの声で聞こえなくって」
ちょうど彼女がしゃべり始めたタイミングで、僕が苦手なタイプの女性の笑い声が響き渡ったせいで聞きそびれたのに、もう。
「……ううん、なんでもないの。それより、もう食べちゃったみたいだけどまだ居て良いの?」
「あー……確かにそろそろ出ないとですね」
今日は特段の用事もなく、ただここのスイーツセットを食べるためだけに来たと言っても過言ではない。
なんだか記憶が改竄されてる気もしなくもないけども、そういうことにしておこう。
「それに、こうしてこういう格好で外に出るのは初めて――1人では初めてなので、疲れてきちゃって」
「そうよねぇ、勇気要りそうだもん。うん、付き合ってくれてありがと」
さっさっとテーブルの上を片づけて……よし。
「じゃあ、今日はありがとうございました」
「うん、こちらこそ」
がたっ。
僕「たち」が、同時に席を立つ。
「………………………………?」
「?」
「……ルーチェさんも、出るんですか?」
「? うん、もちろん」
「……そうですか」
こてん、と首をかしげる姿は僕がよく知る彼女の癖。
……ああ。
確かに――姿形はまったく違うし、普段の声も違うけども――彼女は彼女だ。
バーチャルでもリアルでも、同じ人間だ。
◇
「……ということがありまして」
「リヒターくんに内緒にする意味とかないしってことでー」
「……そんな! 拙者は! 某は! 吾輩は! なんたる無為な時間を……!」
「どうでもいいですけど、一人称、いい加減統一した方が楽じゃないです……?」
数日後。
たまたま、この気心の知れた3人が集まったから他の人が入ってこられない設定のワールドに移動し、僕の恥部を露呈する。
いや、ルーチェさんは気を遣って「別に全部正直に言う必要ないんだよ?」とか言ってくれたけど――さすがは大人の女性だね――それでも僕は、なんとなく。
たぶん、学校で1年とか仲良く過ごした学友と同じレベルでイケメン騎士のリヒターさんと心の距離的なものが近いって感じている。
友人――フレンドさんだもんね。
他の人はともかく、彼にはなんとなく知っていてほしい。
そう思ったから……数日かかったけど言えてほっとした。
「ルーチェ殿……?」
「ふふーん。レイくんはね、リアルで見たら」
たたっと僕の後ろに回り、アバター僕の後ろから頬がくっつくくらいの距離感で話し出すルーチェさん……いや、距離近くない?
「――たぶん、すぐに分かるよ。だって、このアバターのレイくんそのものだから」
「顔は全然違いますけどね」
「違うって言ってもパラメーター弄ってカスタマイズしてるし、服だって自分で選んでる。そのセンスとかもアバターに反映されてるよ?」
「……そうですか?」
「うん!」
僕はリアルの顔を――コントローラーを握っているせいでつかめないけども、リアルの頬にプラスチック製のそれが当たる感覚と、バーチャルのミラーに映っている、頬を触るようにしている僕自身を見る。
「……可憐でござる……」
「そうよ? 可憐よ?」
「そ、そこまでは……」
――僕は、友人に恵まれたな。
リアルで女装してるって聞いても馬鹿にしなくって、ただの僕の一面――ちょうど、使っているアバターの属性とか程度にしか気にしないでくれている人たちに。
……そっか。
VRなチャットも――リアルの一部なんだな。
人間関係も、僕たち自身の内面も含めて……。
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