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5章 僕のおしまいとはじまり
66話 メイド服、教室、衆人環視
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「……これが……当日の……」
「うん、男子は待機中は女子の制服、サーブ時はメイド服って仕様だからね!」
「……それ、知らなかったんだけど……?」
「うん、実行委員同士でのサプライズ☆」
「中村……お前……」
こんなサプライズを叩き込まれ、さすがに教室も騒然としている。
なお、そのどよめきは意識しても低くできていない女子の声と、アニメとかのあからさまではあっても一応高くはなる裏声での男子たちと、廊下から聞いたら女子だらけの教室だと思われるだろう音程だ。
「だってかわいいでしょ?」
「制服で女装に慣れたと思って安心した男子たちに追加でドン……これよ」
「ああ、この顔が見たかったのよ!」
……地獄だな。
なにがって、クラスの人数的にも雰囲気的にもそうだけども、なによりも制服の手配や女装の指南っていう世話をさんざんされたあとってこと。
男子たちには、もはや抵抗する力も失われている。
男女平等社会において、男子たちは相対的に抑圧されているんだ。
悲しいね。
そして男としての誇りなんか女子の制服で消滅しているんだから悲惨だね。
「でも、佐々木が着るなら……」
「がんばれるよな」
「あ、俺、この前メイド喫茶を体験バイトして……」
教卓に置かれているのは、統一された白と黒の衣装。
「そういう専門の店からのレンタルだし、今日と当日しかお金かからないから気にしなくて良いよー」
「サイズ合わないの着けて壊したりしなきゃ大丈夫!」
「しかも先生のポケットマネーだもんね」
「うむ。数が多い分、割引も効いた……気にしなくて良いぞ」
そう、教卓でつぶやいた教師は――マッチョメイドになっている。
けども、無駄に毎日女装をし――「学園祭の催しのために、生徒のために身を捧げるだなんて!」と謎の賞賛が起きた結果、女性の先生たちにいろいろ指南された彼は――なんかもう、そこそこ体格の良い女性に見えている。
まぁさすがに声は無理だけど、それでもぱっと見では完全に女性教師だ。
しかもこの格好で、今朝の職員会議にも出たとか。
「生徒たちのため」って大義名分があると、人ってここまで動けるんだね……。
けども、メイド服。
………………………………。
……大丈夫、VRなチャットだったとはいえ、それっぽいのは練習したから。
最後の方は違和感とか無くなってたし、きっと大丈夫。
「あ、オプションで猫耳と尻尾もありまーす!」
「尻尾はぁ……ふふっ、どこにつけるんだろうね……?」
「!?」
「!?」
「尻尾……だと……!?」
「佐々木の尻尾……」
実行委員の女子生徒が両手にしているのは、カチューシャ型の猫耳に――その、クラスの中とはいえ高校に持ってきて良いものじゃ。
「ん? レイきゅん、あれ着けたことあるでしょ? みんなに教えてあげなよ。 ちゃんと力抜いて装着するんだって」
「「「!?」」」
「……ヒカリ、じゃない、中村。訂正しとけ」
一瞬頭は真っ白になったけども、僕は慣れている。
「僕が着けたのは、腰に巻くやつだ」
「へー? じゃーあー、レイきゅんが今思い浮かべた『アレ』はぁー、どうやって着けるのかなー?」
「どうやってって……!?」
――教室に存在する、すべての目が僕を見ている!?
「……あー、実行委員。それはバレたら俺が教頭に叱られるからダメだ。あと、SNSでそれっぽいのが広まった時点でこのイベント自体が潰されるから禁止な」
「ちぇー、分かりましたー」
……助かった……というかこのクラス、雰囲気おかしくないか……?
◇
メイド服のヘッドドレス――頭の上に着けるあれだ――は、カチューシャ式。
ちなみに猫耳のやつと一緒に着けると数分で頭痛がしてくることが判明し、無事片方を選択するだけになった。
そしてメイド服の構造は、まったく想像できない中で思っていたよりはいくらか簡単だった。
いくつかのパーツを個別に着け、黒いワンピースみたいな服を着て。
……ちなみに「男子用の」だったらしく、サイズは奇跡的に全員が装着してぴったりに。
そこから白いエプロンをふんわりと身につける――うん、1回着たらこんなもんかって感じだ。
「おお……」
「当日までは我慢しろ……!」
「写真はあとで中村さんが……」
クラスの半分がメイドになっている教室――しかもそのすべてが男子。
ああ、なぜこのクラスはこんなにも道を踏み外した独自路線を疾走しているんだろう。
「レイきゅん、サイズは大丈夫? でぶった分とか」
「ちょうどお前のお姉さんの高校時代と同じだから大丈夫だよ……」
「よし分かった! でぶりレイきゅんとおんなじウェストとヒップだって姉ちゃんにいたたたた」
「男女の骨格の差だからな? 間違えるなよ?」
「メイドさんに虐められる……」
「その中身は男の娘……」
「そういうのもあるのか……」
そんなこんなで、その日の自習は僕たちの着替えにメイド服のお披露目になった。
……ちなみに、その着替えとかで女子が教室に残っていた理由。
そもそもとして男子の半分以上が女子から身ぐるみ剥がされた経験持ちで今さらってのと、やっぱり下着まで女子のものだったから。
「今日のレイきゅんは水玉♥ 朝見てから知っていたたたたた」
「そういうのは言わなくて良いからな?」
――下着とか、選択で母親に見られて茶化されるものだけど……他の男子たちはどうやって乗り越えているんだろうか?
僕?
「中村がしつこいから」で乗り切っているから大丈夫。
母さんもそれ以上は突っ込んでこないし。
……あ、でも、この前父さんが「久しぶりに親子で風呂でもどうだ」とか言ってきたのは……我が父ながら正直気持ち悪かった。
「うん、男子は待機中は女子の制服、サーブ時はメイド服って仕様だからね!」
「……それ、知らなかったんだけど……?」
「うん、実行委員同士でのサプライズ☆」
「中村……お前……」
こんなサプライズを叩き込まれ、さすがに教室も騒然としている。
なお、そのどよめきは意識しても低くできていない女子の声と、アニメとかのあからさまではあっても一応高くはなる裏声での男子たちと、廊下から聞いたら女子だらけの教室だと思われるだろう音程だ。
「だってかわいいでしょ?」
「制服で女装に慣れたと思って安心した男子たちに追加でドン……これよ」
「ああ、この顔が見たかったのよ!」
……地獄だな。
なにがって、クラスの人数的にも雰囲気的にもそうだけども、なによりも制服の手配や女装の指南っていう世話をさんざんされたあとってこと。
男子たちには、もはや抵抗する力も失われている。
男女平等社会において、男子たちは相対的に抑圧されているんだ。
悲しいね。
そして男としての誇りなんか女子の制服で消滅しているんだから悲惨だね。
「でも、佐々木が着るなら……」
「がんばれるよな」
「あ、俺、この前メイド喫茶を体験バイトして……」
教卓に置かれているのは、統一された白と黒の衣装。
「そういう専門の店からのレンタルだし、今日と当日しかお金かからないから気にしなくて良いよー」
「サイズ合わないの着けて壊したりしなきゃ大丈夫!」
「しかも先生のポケットマネーだもんね」
「うむ。数が多い分、割引も効いた……気にしなくて良いぞ」
そう、教卓でつぶやいた教師は――マッチョメイドになっている。
けども、無駄に毎日女装をし――「学園祭の催しのために、生徒のために身を捧げるだなんて!」と謎の賞賛が起きた結果、女性の先生たちにいろいろ指南された彼は――なんかもう、そこそこ体格の良い女性に見えている。
まぁさすがに声は無理だけど、それでもぱっと見では完全に女性教師だ。
しかもこの格好で、今朝の職員会議にも出たとか。
「生徒たちのため」って大義名分があると、人ってここまで動けるんだね……。
けども、メイド服。
………………………………。
……大丈夫、VRなチャットだったとはいえ、それっぽいのは練習したから。
最後の方は違和感とか無くなってたし、きっと大丈夫。
「あ、オプションで猫耳と尻尾もありまーす!」
「尻尾はぁ……ふふっ、どこにつけるんだろうね……?」
「!?」
「!?」
「尻尾……だと……!?」
「佐々木の尻尾……」
実行委員の女子生徒が両手にしているのは、カチューシャ型の猫耳に――その、クラスの中とはいえ高校に持ってきて良いものじゃ。
「ん? レイきゅん、あれ着けたことあるでしょ? みんなに教えてあげなよ。 ちゃんと力抜いて装着するんだって」
「「「!?」」」
「……ヒカリ、じゃない、中村。訂正しとけ」
一瞬頭は真っ白になったけども、僕は慣れている。
「僕が着けたのは、腰に巻くやつだ」
「へー? じゃーあー、レイきゅんが今思い浮かべた『アレ』はぁー、どうやって着けるのかなー?」
「どうやってって……!?」
――教室に存在する、すべての目が僕を見ている!?
「……あー、実行委員。それはバレたら俺が教頭に叱られるからダメだ。あと、SNSでそれっぽいのが広まった時点でこのイベント自体が潰されるから禁止な」
「ちぇー、分かりましたー」
……助かった……というかこのクラス、雰囲気おかしくないか……?
◇
メイド服のヘッドドレス――頭の上に着けるあれだ――は、カチューシャ式。
ちなみに猫耳のやつと一緒に着けると数分で頭痛がしてくることが判明し、無事片方を選択するだけになった。
そしてメイド服の構造は、まったく想像できない中で思っていたよりはいくらか簡単だった。
いくつかのパーツを個別に着け、黒いワンピースみたいな服を着て。
……ちなみに「男子用の」だったらしく、サイズは奇跡的に全員が装着してぴったりに。
そこから白いエプロンをふんわりと身につける――うん、1回着たらこんなもんかって感じだ。
「おお……」
「当日までは我慢しろ……!」
「写真はあとで中村さんが……」
クラスの半分がメイドになっている教室――しかもそのすべてが男子。
ああ、なぜこのクラスはこんなにも道を踏み外した独自路線を疾走しているんだろう。
「レイきゅん、サイズは大丈夫? でぶった分とか」
「ちょうどお前のお姉さんの高校時代と同じだから大丈夫だよ……」
「よし分かった! でぶりレイきゅんとおんなじウェストとヒップだって姉ちゃんにいたたたた」
「男女の骨格の差だからな? 間違えるなよ?」
「メイドさんに虐められる……」
「その中身は男の娘……」
「そういうのもあるのか……」
そんなこんなで、その日の自習は僕たちの着替えにメイド服のお披露目になった。
……ちなみに、その着替えとかで女子が教室に残っていた理由。
そもそもとして男子の半分以上が女子から身ぐるみ剥がされた経験持ちで今さらってのと、やっぱり下着まで女子のものだったから。
「今日のレイきゅんは水玉♥ 朝見てから知っていたたたたた」
「そういうのは言わなくて良いからな?」
――下着とか、選択で母親に見られて茶化されるものだけど……他の男子たちはどうやって乗り越えているんだろうか?
僕?
「中村がしつこいから」で乗り切っているから大丈夫。
母さんもそれ以上は突っ込んでこないし。
……あ、でも、この前父さんが「久しぶりに親子で風呂でもどうだ」とか言ってきたのは……我が父ながら正直気持ち悪かった。
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