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▽31.礫帝、戦力の増強を図る。その2.
しおりを挟む「五倍って……」
その数値に、フレイヤは続く言葉を失った。
他の四天王たちも、あっけに取られて俺を見る。
「あの、クロノさん。失礼ですけど、そんな都合のいいものが本当にあるんですか……?」
「んー、まあ、確かにこれはめちゃくちゃ貴重な魔石だからな……」
そう言いながら、俺は鍵付きの引き出しから小さな箱を取り出した。
それは俺がストックしている魔石のうちでもよりレアなものを入れている、小型結界付きの宝石箱だ。
「実を言うと、元帥たちに追放された後、ロゼッタと一緒にあちこちのダンジョンに潜ってさ。最深階層のモンスターを二人で倒しまくったんだよ。それで、ドロップした魔石を色々と持ち帰ったのさ」
追放後に村で過ごしていた時、時間だけはあったので、俺たちはかなりの数のダンジョンを攻略していた。
そこで手に入れた魔石や宝石の中には、地上ではお目に掛かったことのない、言うなればSランク相当の石もある。
それらを大事に取っておくよりは今ここで使った方が意味があると思い、フレイヤたちにそれを身に付けてもらうことにしたのである。
俺は箱の中から魔石を鷲掴みにして机上に置き、その中から各人にふさわしいものを選り分けていく。
炎帝フレイヤには、火属性最上魔石のサラマンデルルビーを。
氷帝アストリアには、水属性最上魔石のネレイドアクアマリンを。
雷帝クラウディアには、雷属性最上魔石のスプライトオパールを。
それぞれに手渡してから、強化が可能かを解析魔法で確認していく。
幸いなことに適合性は問題なし。これで三人は、それらの魔石によって今以上の力を手に入れることが確実となった。
「……で、この魔石、どうすればいいかな」
俺は三人に尋ねる。
「どうする」というのは、どのようにして彼らの身にまとわせるかという意味だ。
別にどんな形でも問題ないが、前回は胸元や襟元に付けられるようブローチ状に加工して贈呈した。
今回もそれでいいかと思い、その旨を言いかけるが、しかしそこでアストリアが声を上げる。
「あ、あのっ、クロノさんっ。僕、今回は、ゆ、指輪がいいですっ……!」
「……指輪?」
何だか知らないが、頬を赤らめて恥ずかしそうにそう言われた。
そして、それを聞いた他の二人は、「あらまぁ」といった感じの表情となり、何故か目を輝かせてそれに続く。
「あ、じゃあ私も指輪がいいー」
「いいわねぇ。私もそれでお願いしようかしら」
「ふ、フレイヤさんっ、クラウディアさんっ!?」
アストリアは少し慌てた様子で二人の名を呼ぶ。
すると二人は、アストリアを囲んでそそくさと部屋の隅に連れて行くと、三人でひそひそ話を始めだした。
「……──アストリアったら、結構大胆じゃない──……」
「……──あ、あの、僕──……つもりじゃ──……」
「……──ねぇ、二人とも、私思うんだけど、この際三人とも、クロノ君のお妾さんに──……」
「……──お、お妾さん──……って、つまり愛人ってことじゃ──……ま、まさか、クラウディアさんたちも、クロノさんのことが──……」
「……──そうよ? 気付かなかったの? だって──……」
「……何喋ってんだ? 三人で……」
「わかりません……何でしょうか……」
残された俺とロゼッタはきょとんとして、彼女たちの動向を後ろから眺めるしかない。
結局、魔力強化の魔石は三人とも指輪ということになり、早速それらの魔石を彼女らの手に合うように加工することとなった。
加工それ自体は魔術で行うので、数分ほどで済んでしまう。
なので、三人にはその場で待ってもらい、それぞれのサイズに合った指輪を作り出し、手ずから三人へとはめさせてもらった。
つける位置は三人とも右手の薬指がいいとのことで、その位置だ。
(それにしても……指輪がいいってだけで、わざわざあんな内緒話をする必要あったのか……? よくわからん……)
ともあれ、こうして我らが魔王軍四天王たちは、今までの何倍もの魔力を手にすることになったのだった。
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