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第一章 始まりの数々
朝の訓練
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「おはようございます。マリアナさん。」
ユウマの朝は早い。鍛錬に時間を当てるのだが、ただの鍛錬ではない。幻術魔法により元S級冒険者のガロンが戦った魔獣の幻影を映し出て相手をする。所謂、擬似なのだが初見の相手と戦いが出来るので大いに参考になる。勿論、本物と大差ないので森深くに入り誰にも見つからないように行うのだが…。
「あぁ。おはよう。かなり早いな?鍛錬か?」
なめ回すようでは、無いが上から下までサッと目を通す。
「えぇ。日課なもので。軽くですけどね。ふふふ。」
ユウマは、合わせるように答える。
「構わんぞ。朝食に間に合えすれば。で…アランも一緒にか?」
階段に目を向けると、まだ眠たそうに目を擦るアランの姿があった。
「イヤイヤ。授業初日の日から鍛錬って気合い入りまくりでしょう?俺は、喉が乾いたので飲み物を頂きに参りました。何か、変な感覚なんですよね…。フラフラするっているか…。」
「あはは。それは、二日酔いだ。水でも飲んで横になれば治るわさ。」
マリアナは、気に止めることなく食堂へと向かうアランを見送る。
「さて、いよいよ学園も始まるわけだが一つ忠告しておこう。ユウマ。全力を出すなよ。例え、授業でも試験でも、そして殺し合いになってもな!」
キセルをビシッとユウマに向け、そうアドバイスした。
「おやおや。成績が落ちるのは困りますし、殺されるのも嫌ですね。困ったな。」
頭を掻き分けながら、微笑むユウマを見て
「ま~、そんな相手は数少ないだろうね…。熱くならないことだわさ。行ってくるがいいわさ。」
背中を向け、本を読むマリアナに頭を下げ門を出ていく。
「さぁーて、軽く行ってきますか。」
屈伸を二回ほどすると、走り出す。
瞬間的にマックススピードになり木があればジャンプして枝を伝い、開ければ、下に軽やかに降りスピードを緩めることは無い。
【身体強化魔法】…………そして、いつの間にか右目は紅く輝いている。僅か5分程で15Kmを走り北の演習場にやって来た。
そして魔眼を解除すると感知・記録の片眼鏡をはめ魔力を流す。
(そうだな…。今日は、スピードと剣に対応するためにデュラハンにでも相手してもらおうか。お祖父様の記録では…初めての対戦が冒険者ランクCかぁ。レベル83。ちと、キツイけどトライ!)
「精霊から魔落ちした闇精霊さん。よろしく!」
剣を構えると、早速デュラハンが早馬に乗り攻撃してくる。
キン!…カキーン…シッパッ…。
耐物理、耐魔防のコートか裂ける。
「あぶね。左右どちらの手でも攻撃可能で馬のスピードも速すぎる。」
ユウマは、軽く額から汗を流しながら戦略を練る。
(距離感を無くして、一気に決めるか!)
「ダークネス・グラビティ(闇魔法・加重)」
すれ違いざまスピードの落ちたデュラハンに
「ロング・メイス!」
鉄の剣が槍に変形する。
メイスモードに変形し胸元に突き刺さった剣は、赤い光となったデュラハンを吸収してもとに戻った。
「ハァハァ。どれどれ、タイムは?お祖父様が1分18秒…。俺が5分32秒。」
その場に座り込むと祖父の戦闘を映像化して確認する。
「落とし穴に光魔法で消滅か…流石、お祖父様。センスが違うね。でも、今日の課題は、剣との勝負。良しとしよう。」
タオルを出して軽く拭くと帰りの準備をする。
「モッフが待ってるから、早く帰ろっと」
転移 シュッ…………
「お帰りなさいませ。主。この枕、欲しいでやんす。」
モッフは、丸い体を【天使の枕】に乗せ惰眠を貪ろうとしていた。
「コラコラ。昨日タップリと魔力を与えたから、モッフには、暫く睡眠活動は、必要ないはずだよな?」
「いえ。この枕の睡魔には勝てないです。寝るです。ゴロゴロするです。」
「ほぉーそうかい。駄目なルームドーラーには、お仕置きが必要らしい。一度、全身を炎で包まれてみるか?」
ニヤリと笑いユウマが指を鳴らそうとすると
「だー!!もう、わかったです。起きるです。もう、鬱陶しいです。」
泣き顔のモッフがピョンピョンと空中を跳ね回る。
「ところで、外の状況は?」
「主の読み通りです。精霊に似た何かが寮長部屋を監視してました。先程、消えたでやんす。」
「精霊に似た何かとは?」
ユウマは、ハッキリしない事に疑問を持つ。
「存在は精霊に近く、体質は無機質…。つまり紙なのですよ。あんな物、見た事も聞いたこともないでやんす。ダンジョン産のアイテムといったところでやんすね。」
モッフは、短い脚を組みながら空中で寝転がり答える。
「それでは、モッフ。姿・気配を気取られずにこの針を床へ、そしてスライムの干したこの透明な膜を制服の何処でも構わないから少しつけてきてくれる?」
「アランの部屋に行けとおっしゃるのですか?それは、む・りです。何があるか分かったもんじゃ無いです。断るです。反抗するです。」
空中で首を振り、嫌がるモッフ。
「1度、灰になり生まれ治すか??ふふふ。」
ユウマの目が紅く輝る。
「ガロンの子孫が何でそんなに冷たいですか?呪うです。恨むです。反抗するです~!」
「中級精霊に昇格して上げても構わないんだけどな~」
ユウマは、後ろを向き手のひらを天に向け銀の指輪をチラつかせる。
「やるです。頑張るです。ご褒美欲しいです。」
モッフは、下等妖精であり思考も単純であった。
「じゃ、頼むね!!」
笑顔で振り向くユウマ。
「何か騙された気がするです…。」
乗り気では無いモッフに【隠遁のマント】を覆うと
「気配は、くれぐれも消してくれよ。」
と頼み制服に着替え食事へと向かってゆく。
ユウマの朝は早い。鍛錬に時間を当てるのだが、ただの鍛錬ではない。幻術魔法により元S級冒険者のガロンが戦った魔獣の幻影を映し出て相手をする。所謂、擬似なのだが初見の相手と戦いが出来るので大いに参考になる。勿論、本物と大差ないので森深くに入り誰にも見つからないように行うのだが…。
「あぁ。おはよう。かなり早いな?鍛錬か?」
なめ回すようでは、無いが上から下までサッと目を通す。
「えぇ。日課なもので。軽くですけどね。ふふふ。」
ユウマは、合わせるように答える。
「構わんぞ。朝食に間に合えすれば。で…アランも一緒にか?」
階段に目を向けると、まだ眠たそうに目を擦るアランの姿があった。
「イヤイヤ。授業初日の日から鍛錬って気合い入りまくりでしょう?俺は、喉が乾いたので飲み物を頂きに参りました。何か、変な感覚なんですよね…。フラフラするっているか…。」
「あはは。それは、二日酔いだ。水でも飲んで横になれば治るわさ。」
マリアナは、気に止めることなく食堂へと向かうアランを見送る。
「さて、いよいよ学園も始まるわけだが一つ忠告しておこう。ユウマ。全力を出すなよ。例え、授業でも試験でも、そして殺し合いになってもな!」
キセルをビシッとユウマに向け、そうアドバイスした。
「おやおや。成績が落ちるのは困りますし、殺されるのも嫌ですね。困ったな。」
頭を掻き分けながら、微笑むユウマを見て
「ま~、そんな相手は数少ないだろうね…。熱くならないことだわさ。行ってくるがいいわさ。」
背中を向け、本を読むマリアナに頭を下げ門を出ていく。
「さぁーて、軽く行ってきますか。」
屈伸を二回ほどすると、走り出す。
瞬間的にマックススピードになり木があればジャンプして枝を伝い、開ければ、下に軽やかに降りスピードを緩めることは無い。
【身体強化魔法】…………そして、いつの間にか右目は紅く輝いている。僅か5分程で15Kmを走り北の演習場にやって来た。
そして魔眼を解除すると感知・記録の片眼鏡をはめ魔力を流す。
(そうだな…。今日は、スピードと剣に対応するためにデュラハンにでも相手してもらおうか。お祖父様の記録では…初めての対戦が冒険者ランクCかぁ。レベル83。ちと、キツイけどトライ!)
「精霊から魔落ちした闇精霊さん。よろしく!」
剣を構えると、早速デュラハンが早馬に乗り攻撃してくる。
キン!…カキーン…シッパッ…。
耐物理、耐魔防のコートか裂ける。
「あぶね。左右どちらの手でも攻撃可能で馬のスピードも速すぎる。」
ユウマは、軽く額から汗を流しながら戦略を練る。
(距離感を無くして、一気に決めるか!)
「ダークネス・グラビティ(闇魔法・加重)」
すれ違いざまスピードの落ちたデュラハンに
「ロング・メイス!」
鉄の剣が槍に変形する。
メイスモードに変形し胸元に突き刺さった剣は、赤い光となったデュラハンを吸収してもとに戻った。
「ハァハァ。どれどれ、タイムは?お祖父様が1分18秒…。俺が5分32秒。」
その場に座り込むと祖父の戦闘を映像化して確認する。
「落とし穴に光魔法で消滅か…流石、お祖父様。センスが違うね。でも、今日の課題は、剣との勝負。良しとしよう。」
タオルを出して軽く拭くと帰りの準備をする。
「モッフが待ってるから、早く帰ろっと」
転移 シュッ…………
「お帰りなさいませ。主。この枕、欲しいでやんす。」
モッフは、丸い体を【天使の枕】に乗せ惰眠を貪ろうとしていた。
「コラコラ。昨日タップリと魔力を与えたから、モッフには、暫く睡眠活動は、必要ないはずだよな?」
「いえ。この枕の睡魔には勝てないです。寝るです。ゴロゴロするです。」
「ほぉーそうかい。駄目なルームドーラーには、お仕置きが必要らしい。一度、全身を炎で包まれてみるか?」
ニヤリと笑いユウマが指を鳴らそうとすると
「だー!!もう、わかったです。起きるです。もう、鬱陶しいです。」
泣き顔のモッフがピョンピョンと空中を跳ね回る。
「ところで、外の状況は?」
「主の読み通りです。精霊に似た何かが寮長部屋を監視してました。先程、消えたでやんす。」
「精霊に似た何かとは?」
ユウマは、ハッキリしない事に疑問を持つ。
「存在は精霊に近く、体質は無機質…。つまり紙なのですよ。あんな物、見た事も聞いたこともないでやんす。ダンジョン産のアイテムといったところでやんすね。」
モッフは、短い脚を組みながら空中で寝転がり答える。
「それでは、モッフ。姿・気配を気取られずにこの針を床へ、そしてスライムの干したこの透明な膜を制服の何処でも構わないから少しつけてきてくれる?」
「アランの部屋に行けとおっしゃるのですか?それは、む・りです。何があるか分かったもんじゃ無いです。断るです。反抗するです。」
空中で首を振り、嫌がるモッフ。
「1度、灰になり生まれ治すか??ふふふ。」
ユウマの目が紅く輝る。
「ガロンの子孫が何でそんなに冷たいですか?呪うです。恨むです。反抗するです~!」
「中級精霊に昇格して上げても構わないんだけどな~」
ユウマは、後ろを向き手のひらを天に向け銀の指輪をチラつかせる。
「やるです。頑張るです。ご褒美欲しいです。」
モッフは、下等妖精であり思考も単純であった。
「じゃ、頼むね!!」
笑顔で振り向くユウマ。
「何か騙された気がするです…。」
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と頼み制服に着替え食事へと向かってゆく。
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