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4.フィリックside 婚約者

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結婚適齢期をすぎた今、同僚や部下からのお節介が多くなり、それに加え仕えている主からも結婚の話が出るようになった

そんなある日、父から送られてきた1つの手紙によって婚約者を娶ることになった。


「アルケルト子爵家の娘か」


なぜ伯爵位を持っている俺が子爵家のものを娶るのか、理由は何個かあったが1番の理由は派閥が関係ない上に歳が近い者という条件にアルケルト子爵家の娘が当てはまったからだ


「旦那様、アルケルト子爵家からでございます」


とうとう婚約者が来るまで1週間後となった時、屋敷を統括してくれているハリスが一通の手紙を持ってきた

その内容はただただ普通の婚約前挨拶


ある程度婚約者の部屋を整えるよう指示し、自分の役務に努める



婚約者が来る日

執務室で溜まっている書類を片付けている間に婚約者が到着したらしい

窓から見ると
何とも子爵と言えども貴族らしいとは言えない馬車


どんな者が来たのか、これからを共にするのだからと書類仕事は置いて婚約者を迎えに行く



馬車の前に行くと出てきたのは全体的に色素の薄い瞳と髪が目を引く人がでてきた

瞳と髪色に目を引いていたがよく見ると家の使用人の方がもう少し身なりを気にしているだろうと思うぐらいにその人はドレスで誤魔化した容姿だ


互いに挨拶を行い、アルケルト子爵の噂を思い出した


アルケルト姉妹は長女はとても金遣いの荒い悪女であり社交界にも出てこない変わり者だ


金遣いの荒い……悪女、

そんな言葉とは正反対な格好をしている目の前の婚約者となるスティーナ嬢


気になることが多すぎるがとりあえずハリスに屋敷のことは任せているので案内も任せる



「ヤマ」

「はい、お呼びでしょうか旦那様」

執務室へ戻り、専属として着いているヤマを呼ぶ

「スティーナ嬢について調べてくれ」

「はい、、あの失礼ですが理由を伺っても」

「スティーナ嬢についての噂を知っているか?」

「確か、アルケルト姉妹の長女は金遣いの荒い悪女であり社交界にも出ない変わり者……という噂ですか」

「あぁ、だが俺の目の前にいた噂の本人であるスティーナ嬢の印象は全くの別物だ」

「ふむ、かしこまりました。お任せ下さい」

「ありがとう」

これでスティーナ嬢に関することは大丈夫なはず

それから仕事に集中する


「失礼致します」

「……ハリスか」

「旦那様、御夕食はいかが致しましょうか」


どうとは……と思ったが今日からはスティーナ嬢もいるからか、


「スティーナ嬢も一緒に」

「かしこまりました」

「あ、ハリス。これから食事は一緒で頼む」

「はい」


そうだ。食事の時にスティーナ嬢の人となりを確認すればいい

噂通りの人じゃなくとも少しは分かるだろう

私がスティーナ嬢に取り繕ってるようにスティーナ嬢も俺に本性は隠しているだろう


そう思い1週間全て朝食から夕食を共にしたが、悪女という印象は無い

変わり者というのは貴族としては当てはまるだろう

ただ噂のような変わり者と言うよりは、貴族でありながらまるで平民や使用人のような反応・態度をする

俺が今まで出会ってきた貴族令嬢とは全く違う



……これはスティーナ嬢よりアルケルト子爵家全体を調べてもらった方がいいな、


とりあえず昨日送られてきた王族主催の舞踏会でのパートナーを願いに行く


庭園で待っていたスティーナ嬢は屋敷に来た頃より1週間だが見て分かる程度には健康的になりその元々の容姿も見違えるようになっている

俺が贈った青のドレスもその持ち前の薄い色素の瞳や髪色とよくあっている


パートナーを願い出た時は戸惑いを見せたが少し考えスティーナ嬢は了承してくれた

噂通りならば社交界には出たことがない

とりあえず了承は得れたので後のことはヤマからの報告の後に考えることにする

話が終わり席を外そうとしたとき、

スティーナ嬢に付いている侍女のシンシアという者が話しかけてきた

それはスティーナ嬢のドレスの件だった

確かに俺が送ったドレス以外に来ている覚えがあるものは使用人が着るお仕着せのようなものばかりの記憶がある

了承をし、その場から離れる

通常の貴族社会や屋敷では使用人が主人に不躾に話しかけるのは処分対象になるが内容が内容だったので処分はなしにしよう

それからの準備はヤマからの報告を待ってからになるだろう
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