勇者の処分いたします

はにわ

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キラが勇者から排除された事情

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「それでは勇者フレイルよ。王国の名に恥じぬ行いを心掛け、民草の手本となるべく励むがよい」


「ありがたき幸せに存じます」


王城の謁見室に置いて、一つの儀式が終わりを迎えた。

それはかつてキラも経験した、ラバース国の国王の名の元に新たな勇者が認定される儀式である。
この日、キラと入れ替わるように新たな勇者が王によって認定された。






ーーーーーーーーーー



「いやいや、良くぞ間に合わせてくれた。よくやったぞ室長」


宰相が弾けるような笑顔で室長と呼んだ男の肩を叩いた。


「恐縮です」


室長は無表情で静かにそうとだけ答える。


「頼りになるな。これからも期待しているぞ」


室長の態度などまるで気にしていない風に、宰相は笑いながら去っていった。







「つつがなく終わったようで何よりです室長」


王城の一室にある『王室調査室』こと通称『王調』と呼ばれる組織の本部にて、王調の室長を務めるベントに王調の職員であるシンが声をかけた。


「いや、君たちの活躍あってこそだ。よくやってくれた」


ベントはシンをそう言って労った。


「定員オーバーの勇者様の中から一人を排除して、どうにか新しい勇者様をねじ込めと言われたときはどんな無茶をしてこれを叶えなければならないのかと愕然としたよ。今回はシン君に大分無理をさせたな」


「いえ、たまたまです」


シンは謙遜してそう答える。
今回、王調が王室より下された命は通常なら完遂するに困難を極めるものであった。

ラバース王国では国威高揚の一環として勇者認定制度を取り入れている。
武が優れ人格に問題もない人間の中から、特に優秀な者を勇者として国が認定し、強い権利と名声を与えながらも、通常の冒険者や軍でも対処しきれない事案について勅命を出し、これを解決してもらう。こうした「勇者」は国でも30人まで認定されていた。
勅命は時に国外はおろか魔境に人を遣わすこともあるくらいなので、30人勇者がいても多すぎるということはない。
だが、勇者を一人一人サポートするために莫大な国税が投入されているのも事実である。
よって、勇者の数は30人までと定められていた。

ここ数か月前までは特に問題はなかったが、とある公爵家の三男が冒険者として家を飛び出したと思ったら、優秀な名うての冒険者として里帰りするという出来事があった。

公爵家は三男を勇者として認定してくれと王室に持ち掛けてきた。だが、既に認定された勇者は30人いっぱいいっぱいであった。新たに認定をすることは出来ない。

ならば・・・
新たに公爵家の三男を勇者としてねじ込むため、既存の勇者の中から一人どうにか排除せよという命を王調は拝命したのだった。
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