勇者の処分いたします

はにわ

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勇者エクスの幼馴染

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ビアンはエクスの幼馴染として、物心つく頃から彼と一緒にいた。
エクスは両親からほとんど相手にされることなく育ってきたので、一緒にいた時間でいうなら両親よりビアンの方が長い。ビアンの家族からも気に入られており、ビアンこそがエクスにとって本物の家族のようであった。

エクスは勇者として旅立っていろいろと経験し、それなりに女性を知ってから、ある日あくまで自分の中ではビアンこそが一番で揺るぎない存在であることを自覚する。
そしてエクスはビアンと本当の家族になりたいと思うようになり、魔王を倒した後、彼女にプロポーズをして受け入れられた。

エクスは孤独が好きだ。自由でいる時間が好きだ。
だが、本当の孤独は嫌いだった。自分が自由に飽きたとき、帰りたくなったとき、家で待っている人が欲しい。
エクスはそんな至極自分勝手なことを考えている男だった。

だが、そんなエクスのことを幼馴染のビアンは理解してくれていた。そしてそんなエクスを受け止めた。
エクスは嬉しかった。自分を理解してくれている者がいてくれることを。
ビアンはメンドクサイはずのこんな自分を受け止めてくれるーーー  そう思っていた。









「毒を・・・盛った?・・・ビアンが・・・?」



だから、ビアンがエクスに毒を盛ったと告白したとき、エクスは信じられないと目を見張った。
言葉の意味はわかるが、理解が追い付かない、そんな有様だった。
一時は根性で体に回った毒を克服しそうになったが、今はすっかり脱力してしまい、再び毒が体を徐々に蝕んでいた。


「朝食を食べたでしょ。あれの中に入れたの。シンさんに言われてね」


エクスに頭の中にビアンと食べた朝食のことが思い出される。


「ビアン様にはエクス様より先にお会いになり、そのときにお願い申し上げたのです。エクス様にラダーム王室とラバースの貴族の不義の落とし前をきちんとつけるようであれば、解毒剤をそれとなく飲ませ、逃げるようであれば毒はそのままにしておいてほしいと」


シンがビアンに続いて説明する。エクスはそれを黙って聞くのみで、返事はしない。既に意識が朦朧としていて、自分から話す気力もないのだ。


「エクスを騙すのは気が引けるけど、でも、私はエクスのことがわかってる。こういうとき、きっと自由が大好きなエクスは逃げ出すんだろうなって。けど私はこんなときに逃げ出すようなエクスであって欲しくない。きちんとケジメは取ってほしいの。だから、協力した」


「・・・ビアン・・・」


ぽつりと絞り出すように呟いたエクスの言葉は、果たして意識したものなのかどうなのか。


「どんな形でもいい。逃げてばかりいないで、きちんと責任を取って。あなたは私の勇者様でしょう?私を幻滅させないで」


涙を流しながら最後にそう言ったビアンの言葉を聞き終えたからなのか、エクスはそのまま意識を失った。
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