53 / 338
勇者パーティー 強欲の勇者8
しおりを挟む
ライルは違法アイテムの力により、違法の能力『魅了』を手に入れた。
違法、違法と『勇者』としての品格を損なうあるまじきことであるが、それでもライルは『魅了』を必要とした。何故なら女にモテたいからである。
ライルは帝都に来て初っ端から挫折し、それ以来禁欲して己を磨いてきた。
そしてそれなりに『勇者』として身を立てられるようになると、今度は皮肉なことに世間体が無暗に浮名が流すことを良しとしなくなった。
シュウに連れられて娼館に行って欲望は一旦スッキリさせたものの、たまたまバレなかったものの『勇者』として娼館通いはバレたらまずいということにライルは後で気付く。
しかし中途半端に色を覚えてしまったからには、もう我慢することが苦痛で苦痛で仕方が無くなってしまった。
だからこそ、自分の魅力だけではどうしても口説き切れない時のために『魅了』のスキルが欲しいと考えていた。
もちろん、プライドと違法魔法としての取り締まりのリスクがあるのであくまで使用するのは奥の手だ。最低でも自分のパーティーメンバーは実力で口説いてしまいたい。それでも駄目なら・・・と、何度も何度も言うが、ライルはつくづく残念な勇者に育ってしまった。
奥の手とはいえ、実際に『魅了』スキルが使えるようになっているのか気になったライルは、誰かで実験してみようかと考える。
しかし、その相手は誰でも良いわけではない。何しろ『魅了』は使用だけでなく、スキルを持つこと自体が処罰の対象になるのだから、誰彼構わずに使用すれば、どこからライルの持つ『魅了』スキルの存在が知られてしまうかわからないのだ。
「レーナなら・・・」
そこで目を付けたのが、パーティーメンバーであるレーナだった。
ライルはレーナの父であるレウス司教から彼女を娶ることを勧められているが、当の彼女自身にはその気が無いことはわかっていた。嫌われてはいないと思うが、男としては相手にされていない状態である。
何度か遠まわしにアプローチをしたことはあるものの、気付いているのかいないのか、婚約内定者であるシュウの存在のことがあるからなのだろうか、全くのなしのつぶて状態だ。
レーナの以前の奔放な男関係の話を知っているライルは、自分が男として相手にされていないこの事実にやきもきしていたのだ。
(レーナだったら同じパーティーだから『魅了』のことが知られるリスクは減るだろうし、元が奔放な彼女のことだから僕と突如親しくなったところで怪しむ人はいないはず)
そんな最低の予想を立て、ライルは『魅了』スキルのテストをレーナに対して行った。
レウス司教のことについて相談があると適当なことを言って飲みに連れ出し、じわじわと『魅了』を使って誘惑すると、効果が出るまでにいくらかの時間はかかったが、その夜本当にレーナはライルにお持ち帰りされることになった。
(この『魅了』本物だ!)
これまで簡単そうでいて全くガードの崩れなかったレーナを口説き落せたことで、ライルは自身の『魅了』スキルの効果を実感した。
最初はレーナとのことは軽いテスト程度での接触に留めておこうと思ったが、一度寝てしまえばタガが外れたかのようにライルはレーナを求めた。レーナも『魅了』の効果があってか強く反発することはなく、二人の関係はずるずると深まっていくことになる。
シュウに関係が何となく知られていることにもライルは気付いていた。
しかし、かつては自分が尊敬する存在だったシュウの女を奪ったという達成感と愉悦感が勝り、罪悪感は感じない。
この当時シュウは既にパーティーの中でも最も戦闘に貢献できない人間になっていたので、ライルとしてはむしろシュウの方から居たたまれなくなって消えてくれるなら、それに越したことは無いとすら考えている。
祖国でかつて傲慢にしていたライル一度の挫折で心を入れ替えたはずなのに、今ではすっかり元通り・・・いや、反動がついたかのように拍車をかけて『嫌な奴』になってしまっていた。
しかし・・・
(嘘だろ!?まさか二人とも僕ではなくてシュウのことが好きだったなんて!)
時は現在に戻る。
アイラとの会話の後、ライルはパーティー拠点として購入した屋敷へ足早に向かっていた。
ライルの心にあるのは怒り、焦燥、困惑、そして屈辱。
自分が見下していたと思っていたシュウに、男として負けていた。
そしてそのシュウによって自分の立てていた計画どころか、超一流の冒険者パーティーである『光の戦士達』の存続自体が脅かされている。
全てが自分の行いが裏目に出ただけなのだが、ライルはシュウに対して身勝手な逆恨みを抱いてさえいた。
(ちっ、どこまでも目障りな人だ!)
ライルが漸く『光の戦士達』の拠点に着く。
まず向かうはサーラの部屋。
(それほどシュウのことが好きだというのなら、『魅了』を使ってでも僕のことで頭の中を塗り替えてやる!)
プライドだとかリスクだとかはライルの頭の中から抜け落ちていた。
ここでパーティー存続のために手を尽くさなければ、ライルの栄華はここで終わってしまう。
「サーラ!」
ライルはノックをすることもなく、サーラの部屋の扉を開けた。
「・・・いない」
ライルはここで少しばかり冷静になって、漸くアイラの言葉を思い出す。そういえば急用があると言っていたと。用事があるのなら自室にいない事は当然であった。
「ちっ、僕としたことが焦り過ぎていたか・・・アリエスもまだいないのかな?仕方ない、彼女達のことを待つとしようか」
ふぅと溜め息をついて、ライルは部屋から出て行こうとする。
すると、そこでふと彼の目にテーブルの上に『ライルへ』と書かれた封筒が目に入った。
「僕宛て・・・?」
ハッとして、思わずひったくるようにライルは封筒を手に取った。
異様に悪い予感がする--
ライルはいつの間にか冷や汗を全身から流していた。僅かに震える手で封筒を破ると、中に入っている手紙に急いで目を通す。
「 は ? 」
手紙の内容は、サーラがパーティーを脱退する旨のものだった。
違法、違法と『勇者』としての品格を損なうあるまじきことであるが、それでもライルは『魅了』を必要とした。何故なら女にモテたいからである。
ライルは帝都に来て初っ端から挫折し、それ以来禁欲して己を磨いてきた。
そしてそれなりに『勇者』として身を立てられるようになると、今度は皮肉なことに世間体が無暗に浮名が流すことを良しとしなくなった。
シュウに連れられて娼館に行って欲望は一旦スッキリさせたものの、たまたまバレなかったものの『勇者』として娼館通いはバレたらまずいということにライルは後で気付く。
しかし中途半端に色を覚えてしまったからには、もう我慢することが苦痛で苦痛で仕方が無くなってしまった。
だからこそ、自分の魅力だけではどうしても口説き切れない時のために『魅了』のスキルが欲しいと考えていた。
もちろん、プライドと違法魔法としての取り締まりのリスクがあるのであくまで使用するのは奥の手だ。最低でも自分のパーティーメンバーは実力で口説いてしまいたい。それでも駄目なら・・・と、何度も何度も言うが、ライルはつくづく残念な勇者に育ってしまった。
奥の手とはいえ、実際に『魅了』スキルが使えるようになっているのか気になったライルは、誰かで実験してみようかと考える。
しかし、その相手は誰でも良いわけではない。何しろ『魅了』は使用だけでなく、スキルを持つこと自体が処罰の対象になるのだから、誰彼構わずに使用すれば、どこからライルの持つ『魅了』スキルの存在が知られてしまうかわからないのだ。
「レーナなら・・・」
そこで目を付けたのが、パーティーメンバーであるレーナだった。
ライルはレーナの父であるレウス司教から彼女を娶ることを勧められているが、当の彼女自身にはその気が無いことはわかっていた。嫌われてはいないと思うが、男としては相手にされていない状態である。
何度か遠まわしにアプローチをしたことはあるものの、気付いているのかいないのか、婚約内定者であるシュウの存在のことがあるからなのだろうか、全くのなしのつぶて状態だ。
レーナの以前の奔放な男関係の話を知っているライルは、自分が男として相手にされていないこの事実にやきもきしていたのだ。
(レーナだったら同じパーティーだから『魅了』のことが知られるリスクは減るだろうし、元が奔放な彼女のことだから僕と突如親しくなったところで怪しむ人はいないはず)
そんな最低の予想を立て、ライルは『魅了』スキルのテストをレーナに対して行った。
レウス司教のことについて相談があると適当なことを言って飲みに連れ出し、じわじわと『魅了』を使って誘惑すると、効果が出るまでにいくらかの時間はかかったが、その夜本当にレーナはライルにお持ち帰りされることになった。
(この『魅了』本物だ!)
これまで簡単そうでいて全くガードの崩れなかったレーナを口説き落せたことで、ライルは自身の『魅了』スキルの効果を実感した。
最初はレーナとのことは軽いテスト程度での接触に留めておこうと思ったが、一度寝てしまえばタガが外れたかのようにライルはレーナを求めた。レーナも『魅了』の効果があってか強く反発することはなく、二人の関係はずるずると深まっていくことになる。
シュウに関係が何となく知られていることにもライルは気付いていた。
しかし、かつては自分が尊敬する存在だったシュウの女を奪ったという達成感と愉悦感が勝り、罪悪感は感じない。
この当時シュウは既にパーティーの中でも最も戦闘に貢献できない人間になっていたので、ライルとしてはむしろシュウの方から居たたまれなくなって消えてくれるなら、それに越したことは無いとすら考えている。
祖国でかつて傲慢にしていたライル一度の挫折で心を入れ替えたはずなのに、今ではすっかり元通り・・・いや、反動がついたかのように拍車をかけて『嫌な奴』になってしまっていた。
しかし・・・
(嘘だろ!?まさか二人とも僕ではなくてシュウのことが好きだったなんて!)
時は現在に戻る。
アイラとの会話の後、ライルはパーティー拠点として購入した屋敷へ足早に向かっていた。
ライルの心にあるのは怒り、焦燥、困惑、そして屈辱。
自分が見下していたと思っていたシュウに、男として負けていた。
そしてそのシュウによって自分の立てていた計画どころか、超一流の冒険者パーティーである『光の戦士達』の存続自体が脅かされている。
全てが自分の行いが裏目に出ただけなのだが、ライルはシュウに対して身勝手な逆恨みを抱いてさえいた。
(ちっ、どこまでも目障りな人だ!)
ライルが漸く『光の戦士達』の拠点に着く。
まず向かうはサーラの部屋。
(それほどシュウのことが好きだというのなら、『魅了』を使ってでも僕のことで頭の中を塗り替えてやる!)
プライドだとかリスクだとかはライルの頭の中から抜け落ちていた。
ここでパーティー存続のために手を尽くさなければ、ライルの栄華はここで終わってしまう。
「サーラ!」
ライルはノックをすることもなく、サーラの部屋の扉を開けた。
「・・・いない」
ライルはここで少しばかり冷静になって、漸くアイラの言葉を思い出す。そういえば急用があると言っていたと。用事があるのなら自室にいない事は当然であった。
「ちっ、僕としたことが焦り過ぎていたか・・・アリエスもまだいないのかな?仕方ない、彼女達のことを待つとしようか」
ふぅと溜め息をついて、ライルは部屋から出て行こうとする。
すると、そこでふと彼の目にテーブルの上に『ライルへ』と書かれた封筒が目に入った。
「僕宛て・・・?」
ハッとして、思わずひったくるようにライルは封筒を手に取った。
異様に悪い予感がする--
ライルはいつの間にか冷や汗を全身から流していた。僅かに震える手で封筒を破ると、中に入っている手紙に急いで目を通す。
「 は ? 」
手紙の内容は、サーラがパーティーを脱退する旨のものだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
162
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる