追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

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追跡者達 レウス司教4

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「さて、皆様御存じの通り・・・シュウとフローラを教会騎士はおろか、白金の騎士団ですら取り逃がしてしまい、行方を眩ませてしまった要因は、フローラが『ホワイトキング』と呼んでいた白馬の快足です」


ジャッカルの言葉に「それは誰でも知っている」と、その場にいた誰もが一斉に頷いた。


「あの白馬はフローラが外遊中に見つけたものだとされていますが、あれはただの馬ではありません。我々が考えるに、恐らくは突然変異したユニコーンなのです」


「ユニコーンだと?」


そこは初耳だったのか、ルドルフも含めて聞いていた面々が驚愕の表情を浮かべる。


「聖神教会で伝説上の生き物とされていますが、古来より様々な文献であれらの存在は確認されております。そこから照らし合わせるに、我々はあれをユニコーンと考えています」


「なんてことだ・・・」


皆呆然とする中、ルドルフだけが目を輝かせ興奮気味に叫ぶ。


「やはりそうか!私も騒ぎを聞いて慌てて直接見に行ったが、あれだけの機動力、威圧感、力強さはただの馬では説明が出来ないものだ。ユニコーンと言われれば納得がいく!歴代最高レベルの聖女であるフローラなら、ユニコーンくらいの隠し玉は持っていておかしくはないだろう」


「聖女とはいえいくら何でも隠し玉強烈すぎね?」とルドルフ以外の面々は顔を見合わせるが、それでも実際に常識なら突破不可能の包囲網を突破してみせたのだから、ユニコーンかそれに近い存在なのは間違いないだろうと最後には納得した。


「我々はあれをユニコーンであると推測しました。ユニコーンは聖なる生き物。その肉体からは隠しきれないほどの魔力が溢れているのです。その量は膨大故、どこまで遠くへ行ってもある程度の残滓があるのです」


「まさか・・・」


「我々はユニコーンの残滓と思われるものをかぎ取り、そして追跡しました。彼らは隣国ガリングの僻地に今おります」


「なんだって!」


「彼らがもっとも頼りにしている機動力であるホワイトキングが、まさか自分らの居場所を指し示してしまう皮肉になるとは、全く思ってもみなかったことでしょう」


ジャッカルの話を聞いていたルドルフ達は絶句する。
魔力の残滓は人間でも多少はあるし、それがユニコーンという規格外の生き物であればなお多量に検出されるだろうが、国外まで逃げて行ったモノのそれを検知して追跡するなど、とても人間業ではないと思ったからだ。


「私は追跡を専門としている部隊の長をしております故、この程度のことは苦でもありませぬ。まぁ、彼らがホワイトキングに乗っていなければ、行方を掴むのにもう少し骨が折れていたかもしれませんが」


「おぉ・・・」


流石は『光と影』のエージェントだ。と皆が納得する。


「そして今、私の配下が既にホワイトキングの近くに待機しております。その場にはシュウとフローラもいることでしょう。今更皆さまは彼らの処刑を影像にてご覧いただけます」


ジャッカルがそう言うと、彼以外に数人ローブを纏った人間が現れ、何やら魔道具を持ってきて準備を始めた。
それはどこか別の場所で撮影された影像を映し出すための魔道具であった。
非常に効果な魔法の術符がふんだんに使われており、そのコストたるや数分の影像を映し出すだけで帝都に庭付きの屋敷を立てられるほどの金額になるという。

今回、レウスはルドルフ達婚約者候補だった者達の溜飲を下げるために、決して安くない金を捻出してこのイベントを決行する決断を下した。
レウスの私費だけでは足りないので、教会の金もいくらか手を付けてしまっている。そうまでしてもここでフローラの婚約者候補であったVIP達を宥めておかないと、いよいよレウスも生きるか死ぬかのところまで追い詰められてしまうので仕方が無かった。

これから大変だろうが、それでもひとまずここさえ乗り気ってしまえば・・・と、ジャッカルに対して期待の目を向ける。
ジャッカルはレウスの視線に気付き、僅かに頷くと芝居がかった態度で高らかに宣言をした。


「では、これより世紀の影像をご覧いただきます!」


ジャッカルの言葉に、皆がハッとして息を飲む。
地位も財産もある連中であるが、実際に影像魔道具を目の当たりにする経験の無い者もいた。

「おおおお!」


影像が部屋に映し出されると、皆がどよめいた。
突然にして部屋に森林が広がったように見えたからだ。
これにはこの集まりを企画したレウスでさえ驚いた。彼も影像魔法は初めてだからだ。


「部下からはガリング僻地の村近くにある森林に現在いるとの報告を受けております。何をやっているかはわかりませんが、今彼らはその森林に潜んでいるようです」


ジャッカルの実況を聞いて、ルドルフは鼻息を荒くする。


「その様子だと、まだフローラ達にはこちらのことは気付かれていない・・・接触していないということだな?」


「はい。彼らの前に部下が姿を現し、驚く顔を見せ、絶望に表情を歪め、そして最後に死に顔を晒す・・・その全てを順を追ってご覧いただこうと思って段取りした次第です」


「ふふ、そうか」


ジャッカルの返答を聞いて、ルドルフは満足げに頷いた。
ルドルフは変態であるが、彼が満足するプランを立案したジャッカルもそこそこにサディストである。

影像が動き出し、森の中を進んでいき、そしてピタリと足を止めた。


「ホワイトキングの気配のすぐ近くまで来たようです。『制裁』をこれから決行しますが、皆様心の準備はよろしいですか?」


シュウ達の処刑が始まる--
影像を送っているのはジャッカルの部下達だが、これから影像を撮りつつシュウ達を始末するらしい。
集まったVIP達も早々に見ることの敵わないショーを目前にしてやや緊張気味に影像に釘付けになる。


「それでは・・・『制裁』のスタートです!」


影像が動き出し、木々の隙間を抜け出て見通しの良い広場のようなところに躍り出る。
そこにいたのは・・・


「「「 え っ ? 」」」


レウスを含め、部屋にいる全員が間抜けな声を上げた。

影像にはシュウ達の姿はどこにもなく、雌馬と交尾をしているホワイトキングだけだったからだ。
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