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釣りあわぬ恋 その2
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グレースはセレスティアが幼い頃、武道の指南役として彼女に従事していた。
アドネイド家の子は代々、男女問わずに武を嗜むことが義務とされている。強き武の象徴であるアドネイドの人間が、護衛がいなければ満足に自分の身も守れないようでは家の沽券に関わるからである。
セレスティアは幼い頃は父クレウスの過保護のためもあって、屈強で強面の騎士達を怖がっており、武術を教えようにも中々指南役の騎士に打ち解けないという問題が起きていた。
そこで白羽の矢が立ったのが、当時から実年齢よりも年下に見えたグレースである。
当時はまだ一般兵だったが、既に高い戦闘能力を発揮して戦果を挙げ、頭角を現してきていたうえに、強面ではないグレースをセレスティアが怖がらなかったために指南役としては的確であると判断されたのだ。
一般兵である身には余るほどの大抜擢に、グレースは気合十分にセレスティアに戦闘術を叩きこんだ。
(この子は・・・天才だ)
セレスティアの才能に、グレースは舌を巻いた。
アドネイドの血を引いていることを加味しても、セレスティアはグレースの想像を遥かに超える速度で彼の教えを吸収していったのだ。
指南して二年ほどもすれば、セレスティアはグレースから見ても立派に実戦で活用できるほどの実力を身に着けるほどに育っていた。
だが、育っていたのはセレスティアの能力だけではない。
グレースの心には幼いながらも一生懸命に鍛錬に励み、そして着実に成果を上げるセレスティアに対する尊敬の念と、そして身分不相応の恋心が芽生え育っていた。
セレスティアは実に美しく成長する。
その美しい笑顔で「先生」と呼んで慕う彼女に対して、グレースは何度衝動的に愛の告白をしようかと思ってしまったほどだ。
だが、グレースは堪えた。
勿論、当主であるクレウスが怖かったから・・・だけではない。この恋心が知れただけでもクレウス自らグレースを挽肉にしてきそうではあるし、それは死ぬほど怖いが、それだけではない。
アドネイドに仕えるいち騎士でしかない自分に、彼女を娶る権利などないことがわかっていたからだ。
しかし、グレースは心のどこかで踏ん切りがついていなかったのだろう・・・
彼は一心不乱に戦果を挙げることに邁進し、いつの間にか驚異的な速度で小隊を率いる立場にまで出世していた。
騎士団で出世すれば、もしかしたらセレスティアを娶ることを認めてくれるのではないか?そのような思惑があったから、グレースは死に物狂いで努力できたのだ。
忠誠心よりも愛が彼を突き動かしていた。
駄目で元々という気持ちではあったが、それでもグレースには内心勝算も少なからずあった。
まず、クレウスが異常なほど子離れ出来ず、セレスティアに回ってきている貴族達からの釣り書きを相手にしていないこと。
クレウスにとって任せきれる相手ではないと、どれだけ有力な貴族であろうと嫁がせる気はない・・・それはアドネイド家に仕える誰もがわかっていた。
クレウスはセレスティアを政略の道具にはしたがらなかったのだ。
ではクレウスにとって任せきれる相手は誰なのか。
それはクレウスが個人的にも信用の置かる人物で、かつ武芸に秀でて立場的にも問題のない人間・・・だろうとグレースは狙いをつけていた。
普通に考えれば、いち騎士が領主の娘を娶ることは難しい。
だが、クレウスの人柄ならば、そしてセレスティアと親睦もあり、信頼を得ている自分ならばあるいは・・・と考えていたのだ。
可能性は低いし、当面は芽すらでないだろうこの恋・・・だが、いずれは叶えて見せると。
だが、そんなグレースの想いは、皮肉にも唐突に愛に目覚めたセレスティア自身の手によって終わりの危機を迎える。
反対してくれると信じている頼みのクレウスですら、反対の意向を示しつつも、それでも僅かながらに許容の可能性をほのめかしている。
ウィンクに至っては前のめり過ぎるくらいだ。
グレースはシュウという男の調査を託された。
それはグレースの力を信頼しての命令だったが、彼の心中は実に複雑であった。
アドネイド家の子は代々、男女問わずに武を嗜むことが義務とされている。強き武の象徴であるアドネイドの人間が、護衛がいなければ満足に自分の身も守れないようでは家の沽券に関わるからである。
セレスティアは幼い頃は父クレウスの過保護のためもあって、屈強で強面の騎士達を怖がっており、武術を教えようにも中々指南役の騎士に打ち解けないという問題が起きていた。
そこで白羽の矢が立ったのが、当時から実年齢よりも年下に見えたグレースである。
当時はまだ一般兵だったが、既に高い戦闘能力を発揮して戦果を挙げ、頭角を現してきていたうえに、強面ではないグレースをセレスティアが怖がらなかったために指南役としては的確であると判断されたのだ。
一般兵である身には余るほどの大抜擢に、グレースは気合十分にセレスティアに戦闘術を叩きこんだ。
(この子は・・・天才だ)
セレスティアの才能に、グレースは舌を巻いた。
アドネイドの血を引いていることを加味しても、セレスティアはグレースの想像を遥かに超える速度で彼の教えを吸収していったのだ。
指南して二年ほどもすれば、セレスティアはグレースから見ても立派に実戦で活用できるほどの実力を身に着けるほどに育っていた。
だが、育っていたのはセレスティアの能力だけではない。
グレースの心には幼いながらも一生懸命に鍛錬に励み、そして着実に成果を上げるセレスティアに対する尊敬の念と、そして身分不相応の恋心が芽生え育っていた。
セレスティアは実に美しく成長する。
その美しい笑顔で「先生」と呼んで慕う彼女に対して、グレースは何度衝動的に愛の告白をしようかと思ってしまったほどだ。
だが、グレースは堪えた。
勿論、当主であるクレウスが怖かったから・・・だけではない。この恋心が知れただけでもクレウス自らグレースを挽肉にしてきそうではあるし、それは死ぬほど怖いが、それだけではない。
アドネイドに仕えるいち騎士でしかない自分に、彼女を娶る権利などないことがわかっていたからだ。
しかし、グレースは心のどこかで踏ん切りがついていなかったのだろう・・・
彼は一心不乱に戦果を挙げることに邁進し、いつの間にか驚異的な速度で小隊を率いる立場にまで出世していた。
騎士団で出世すれば、もしかしたらセレスティアを娶ることを認めてくれるのではないか?そのような思惑があったから、グレースは死に物狂いで努力できたのだ。
忠誠心よりも愛が彼を突き動かしていた。
駄目で元々という気持ちではあったが、それでもグレースには内心勝算も少なからずあった。
まず、クレウスが異常なほど子離れ出来ず、セレスティアに回ってきている貴族達からの釣り書きを相手にしていないこと。
クレウスにとって任せきれる相手ではないと、どれだけ有力な貴族であろうと嫁がせる気はない・・・それはアドネイド家に仕える誰もがわかっていた。
クレウスはセレスティアを政略の道具にはしたがらなかったのだ。
ではクレウスにとって任せきれる相手は誰なのか。
それはクレウスが個人的にも信用の置かる人物で、かつ武芸に秀でて立場的にも問題のない人間・・・だろうとグレースは狙いをつけていた。
普通に考えれば、いち騎士が領主の娘を娶ることは難しい。
だが、クレウスの人柄ならば、そしてセレスティアと親睦もあり、信頼を得ている自分ならばあるいは・・・と考えていたのだ。
可能性は低いし、当面は芽すらでないだろうこの恋・・・だが、いずれは叶えて見せると。
だが、そんなグレースの想いは、皮肉にも唐突に愛に目覚めたセレスティア自身の手によって終わりの危機を迎える。
反対してくれると信じている頼みのクレウスですら、反対の意向を示しつつも、それでも僅かながらに許容の可能性をほのめかしている。
ウィンクに至っては前のめり過ぎるくらいだ。
グレースはシュウという男の調査を託された。
それはグレースの力を信頼しての命令だったが、彼の心中は実に複雑であった。
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