追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

文字の大きさ
204 / 504

釣りあわぬ恋 その3

しおりを挟む
(くっ・・・!お嬢様・・・どうして突然俺以外の男と・・・!)


心の中で愚痴りながら、グレースは小隊のメンバーに特別任務で遠征する旨を伝え、準備に入った。
そんな悶々としながらも出発の準備を続けるグレースの元に、今度はセレスティアがやってきた。


「お、お嬢様・・・!」


突然のセレスティアの登場に、グレースは直立不動になりながら、やや声を裏返らせた。
心の中で延々とぶちぶち愚痴っていたのだが、まさかそれが声に出て聞かれていないかと気が気でなかったのだ。


「グレース。今回のこと、あまりに突然のことで申し訳なく思いますわ」


グレースに対し、セレスティアが申し訳なさそうに言った。
まずは自分の独り言やらが聞かれていないことにホッし、グレースは笑顔で返す。


「いいえ。特別な任務を私に任せていただき、光栄の至りであります。必ずや成し遂げてみせましょう」


内心ではとても精力的に取り組みたくもない任務なのだが、それでもアドネイド家に使える騎士としての矜持が彼に平静を保たせ、取り繕った笑みを向けた。
完全に顔の筋肉だけで笑っており、油断すると泣いてしまいそうなほど今のグレースは精神的にいっぱいいっぱいだった。


「ありがとう。やはりグレースは頼りになりますね」


セレスティアがホッとしたような笑みを浮かべてそう言うと、グレースはピクッと反応した。
信頼されて嬉しい限りなのだが、今は素直に喜べない。
心のモヤモヤがグレースをかき乱し、彼は柄にもなく冷静さを失ったからか、つい口から言葉を漏らしていた。


「そのシュウという男は、それほど素晴らしい男ですか?」


「えっ?」


セレスティアがキョトンとして聞き返すと、グレースはハッとして思わず口を手で塞いだ。


(まずい!俺は今何を言ったんだ!?どうしてこんなことを・・・)


今更自分の口を塞いだとて、吐いた言葉は無かったことにならない。
だが、それでもグレースは必死で口を塞いでいた。何故ならそうしておかないと、「どうせここまで話をしたのだから」などと勢いに乗ってしまい「私では駄目ですか?」と言ってしまいそうになるからだった。

だが、そんなグレースの奮闘を余所に、セレスティアは容赦なく彼の心をへし折りに来た。


「ええ!これまでワタクシが会った中で一番の男性でしたわ!!」


弾かれたような笑顔でセレスティアがそう答えると、グレースの心を鋭く巨大な刃物がグサッと突き刺した。


「優しそうなお顔ですけれども、穏やかな中にも野獣のような激しさを湛えた鋭い眼光・・・相当な修羅場を潜ってきたのだろう貫禄がありましたわ。けれども、私のような弱者(フリだけど)に向ける優しさを併せ持つ、とっても度量の大きな方ですの。閉じているのか開いているのかわからない目も、個性的で魅力的ですわ。ワタクシ、思わず運命の神様に文句を言いたくなってしまいましたわ。神様、なんという男性に会わせて下さったのか、と。この方に比べたら今までに出会って来た男性なんてカスですわ、と!」


グレースは固まった笑顔でセレスティアの話を聞いているが、精神的には全身の穴という穴から血を吹きだしているくらいの致命傷を負ったような状態である。
セレスティアはあれこれとシュウとの出会いの衝撃を一気に早口に捲し立てていたが、やがてハッと熱く語り過ぎていた自分に気付き、気まずそうに照れ笑いを浮かべた。


「えっと・・・その、とにかくまとめると、この恋はワタクシの一世一代の大勝負と言っても過言ではありませんの。既にお相手がいるからといって、諦めたりはしたくないのですわ」


「・・・」


「ですから、何としてもシュウ様のこと、よろしくお願いしますわね!」


「・・・」


グレースは失恋の痛みに耐え兼ね、意識を失いそうになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

外れスキルと言われたスキルツリーは地球の知識ではチートでした

盾乃あに
ファンタジー
人との関係に疲れ果てた主人公(31歳)が死んでしまうと輪廻の輪から外れると言われ、別の世界の別の人物に乗り替わると言う。 乗り替わった相手は公爵の息子、ルシェール(18歳)。外れスキルと言うことで弟に殺されたばかりの身体に乗り移った。まぁ、死んだことにして俺は自由に生きてみようと思う。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

モヴはホントにモブですか?

beniyuzuch
ファンタジー
「モヴくん、おいで」「ご主人様は渡しません」「モヴ、カガリは相棒っすよ!」 勇者の戦いが見たい!そう考えたモヴ=ニモツモチ、全力を尽くす。 目標は「勇者の隣」で荷物持ち。孤独な勇者ヒカリとワケアリ少女たちの型破りパーティが陰から世界を救うファンタジー。 カクヨム、アルファポリス、なろうで投稿しています。1話ずつ上げますのでお急ぎの場合はカクヨムでご覧ください。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...