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失敗した勇者 その8
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ゾンビとは人、魔物問わず、死体のまま蘇り、動くものを指す。
その存在は極めて目撃例が少なく、古くから遭遇した冒険者達も
「生前の記憶をそのまま引き継いでいた」「生前とはまるで別人だった」「そもそも意思の疎通が出来そうになかった」「動物のようだった」「腐ってた」
などなど目撃談も様々であり、その情報はあやふやで実在するかも怪しまれているレベルだ。
現実に間違いなく存在しているのに、どうしてこうも情報があやふやなのかと言うと、やはり知らず知らずのうちに『死体が動く』ことに対しての忌避感が働くのではないかと誰かが言った。
だから間違いなく存在するのに、目撃例もあるのに、人々はゾンビのついての認識を曖昧にしてしまう。「存在するかもわからない」とあえてあやふやな存在にしてしまうことで、ゾンビという存在から目を背けてきたのだ。
ゾンビはそれだけ嫌われているといっていい存在だが、そのせいかいつの間にかゾンビに関して裏付けの取れていない間違った噂が流れるようになっていた。
「噛まれた人間はゾンビの仲間になってしまう」「ゾンビは病原菌により誕生するもの。近づけばいずれその人間もゾンビになる」「語彙力を失う」
八割は誇張、もしくは嘘とされている噂だが、「近づくとゾンビになる」といった類の噂だけはとにかく広く出回り、昔から根強く言われて信じられていた。
ゾンビが出現したという冒険者の目撃談があれば、家ごと捨ててその地から離れると言った話がたびたび聞かれるほどだ。
もちろん、ゾンビに噛まれたり近くにいるだけで仲間になってしまう、といったものは何の根拠もない迷信だ。そんなことがあるのならこの世にはもっと増殖したゾンビがいてもおかしくない。
冒険者ギルドもそれはデマであるとして噂の払拭をしているが、ゾンビに対する強い忌避感からか、そういった噂はまだまだ消え去っていないのが現状だ。田舎なら尚更だった。
だから、いつしか冒険者の間でも「ゾンビ」を見かけても軽々しくそれを口にするなと冒険者ギルドから通達が出るようになった。ゾンビと相対することのある冒険者ではない無知な一般人は、ゾンビの名を聞くだけで混乱して思いも寄らぬ行動に出ることがあるからだ。
折角栄えた町も、ゾンビの噂一つで廃墟になる・・・
為政者や商人にとってこれほど恐ろしい話はないのだ。
「・・・えっ?」
アイラからその話を聞いたライル達は、サッと顔を青ざめさせた。
今ライル達がいる村は、田舎故にゾンビについての正しい知識はほとんどない。近づけばゾンビになり、ゾンビに近づいたライル達もまた既にゾンビになりかけている・・・そのような認識になっていた。
「おいぃぃぃぃぃ!!」
呆然とするライル達の元へ、大声を上げながら御者が走ってくる。既にゾンビについての噂が流れているのを知ってか、怒り心頭である様子だった。
バキィッ
御者はライルの元へ辿り着くなり、問答無用で殴りかかった。
「ゾンビにことについて話すなと言ったのに、話したようだな?!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
悪いことをしたと自覚しているライルは、殴られても仕方がないととりあえず御者を宥めるが、御者は構わずライルを何度も殴りつける。
原因はライルの失言であるが故に、呆れ返っているレーナ達はそれを止めるでもなく眺めているだけだったが、ひとしきり殴った後で御者は息も絶え絶えに言った。
「この村はもう駄目だ。人が皆出て行ってしまうし、経済的損失は計り知れん・・・お前には賠償してもらうことになるな」
「え」
その存在は極めて目撃例が少なく、古くから遭遇した冒険者達も
「生前の記憶をそのまま引き継いでいた」「生前とはまるで別人だった」「そもそも意思の疎通が出来そうになかった」「動物のようだった」「腐ってた」
などなど目撃談も様々であり、その情報はあやふやで実在するかも怪しまれているレベルだ。
現実に間違いなく存在しているのに、どうしてこうも情報があやふやなのかと言うと、やはり知らず知らずのうちに『死体が動く』ことに対しての忌避感が働くのではないかと誰かが言った。
だから間違いなく存在するのに、目撃例もあるのに、人々はゾンビのついての認識を曖昧にしてしまう。「存在するかもわからない」とあえてあやふやな存在にしてしまうことで、ゾンビという存在から目を背けてきたのだ。
ゾンビはそれだけ嫌われているといっていい存在だが、そのせいかいつの間にかゾンビに関して裏付けの取れていない間違った噂が流れるようになっていた。
「噛まれた人間はゾンビの仲間になってしまう」「ゾンビは病原菌により誕生するもの。近づけばいずれその人間もゾンビになる」「語彙力を失う」
八割は誇張、もしくは嘘とされている噂だが、「近づくとゾンビになる」といった類の噂だけはとにかく広く出回り、昔から根強く言われて信じられていた。
ゾンビが出現したという冒険者の目撃談があれば、家ごと捨ててその地から離れると言った話がたびたび聞かれるほどだ。
もちろん、ゾンビに噛まれたり近くにいるだけで仲間になってしまう、といったものは何の根拠もない迷信だ。そんなことがあるのならこの世にはもっと増殖したゾンビがいてもおかしくない。
冒険者ギルドもそれはデマであるとして噂の払拭をしているが、ゾンビに対する強い忌避感からか、そういった噂はまだまだ消え去っていないのが現状だ。田舎なら尚更だった。
だから、いつしか冒険者の間でも「ゾンビ」を見かけても軽々しくそれを口にするなと冒険者ギルドから通達が出るようになった。ゾンビと相対することのある冒険者ではない無知な一般人は、ゾンビの名を聞くだけで混乱して思いも寄らぬ行動に出ることがあるからだ。
折角栄えた町も、ゾンビの噂一つで廃墟になる・・・
為政者や商人にとってこれほど恐ろしい話はないのだ。
「・・・えっ?」
アイラからその話を聞いたライル達は、サッと顔を青ざめさせた。
今ライル達がいる村は、田舎故にゾンビについての正しい知識はほとんどない。近づけばゾンビになり、ゾンビに近づいたライル達もまた既にゾンビになりかけている・・・そのような認識になっていた。
「おいぃぃぃぃぃ!!」
呆然とするライル達の元へ、大声を上げながら御者が走ってくる。既にゾンビについての噂が流れているのを知ってか、怒り心頭である様子だった。
バキィッ
御者はライルの元へ辿り着くなり、問答無用で殴りかかった。
「ゾンビにことについて話すなと言ったのに、話したようだな?!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて!」
悪いことをしたと自覚しているライルは、殴られても仕方がないととりあえず御者を宥めるが、御者は構わずライルを何度も殴りつける。
原因はライルの失言であるが故に、呆れ返っているレーナ達はそれを止めるでもなく眺めているだけだったが、ひとしきり殴った後で御者は息も絶え絶えに言った。
「この村はもう駄目だ。人が皆出て行ってしまうし、経済的損失は計り知れん・・・お前には賠償してもらうことになるな」
「え」
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