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絶体絶命
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視点はライル達の現在へと戻る。
「君、人望無かったんだね。それとも・・・嫌われるようなことした?」
憐みとも蔑みともとれるような微妙な視線でディオンに言われ、ライルは「うっ」と口を噤む。
嫌われるどころの話ではない。無理矢理犯そうとしたのだから、むしろサーラから直に殺されても仕方がないくらいなのだ。
事実、サーラはライルに対して完全に見切りをつけ、パーティーを脱する決意をした。これまで仲間だった情も何もかもが消し飛んだのだ。
サーラからしてみれば、ライルは魔物以上の脅威でしかないところまで感情が突き抜けてしまっている。
「あれ・・・?僕は・・・もしかしてとんでもないことをやってしまった・・・?
ライルは、ここでようやく・・・ようやく冷静になって自分のしたことを見つめ直すことが出来た。
「あわわわわわわわ」
お香の効果で興奮していたところも大きいが、取返しのつかないことをしてしまったとライルは顔を青くする。
すぐにサーラのところへ行き、謝りに行かねばならない。ライルはそう思ってどうにかすぐに彼女の元へ辿り着かねばならないと考えるが・・・
「あだばっ!?」
考えるライルの頭上に、岩のような固い拳が降り注ぐ。
呆然としていた冒険者の男が、再びライルへの攻撃を開始したのだ。
そして丸太のような太い足でのストンピング。ライルは立ち上がることもままならず、ひたすらに攻撃を受け続ける。
「よくわからんけど、俺の童貞喪失のチャンスを奪った恨みはしっかり晴らさせてもらうからよぉ?」
並の人間なら死んでもおかしくないくらいの攻撃にさらされ、ライルはディオンにやられるまでもなくボロボロになってしまう。
このまま見ているだけでもライルは死ぬだろうが、まだ時間がかかって誰か邪魔が入ってしまいかけないうえ、自分で手を下せないのは気に入らない。
ディオンはそう考え、激昂してライルを痛めつけている男に声をかけた。
「申し訳ないその方。その男は私がこの手で手を下したい相手なので、どうかこちらに譲っていただけないか?」
「あぁ!?」
激昂した男は、突然見た目自分より年下の少年にそんなことを言われたことで、怪訝な顔をする。
「俺は俺でこいつに晴らさなきゃいけない恨みがあんだよ!引っ込んでな!」
頭に血が上った男が、そうやすやすと良く知らぬ少年の言葉を受け入れるはずもない。ディオンは丁寧だが、貴意ある高位の魔人だからか上からな言葉遣いだ。それも男からしてみれば癪に障った。
だが、要求を跳ね除けられたにも関わらず、ディオンは微笑を浮かべたまま言葉を紡ぐ。
「もちろん、ただでとは言わない。今しばらく大人しくしていただけるのなら、貴方の童貞はこちらのレイが世話させてもらおう」
ディオンの言葉の後に、レイは小さく礼をする。
男は「えっ」と驚きの声を上げた後、ジッとレイを見つめ・・・
「大人しくしてます」
と、素直にディオンに従った。
「・・・くっ・・・」
男の攻撃は止んだが、数秒後にはそれ以上の脅威が迫ってくる。
ライルは対峙するディオン達に、どうにか対処する方法が無いかと考えを巡らせた。
剣がない。
それどころか満足に体を動かすことも出来ない。
(こりゃ・・・どう考えても死ぬかもしれない状況だな・・・)
思わず笑いそうになるライル。
だがそんな絶対絶命の状況の中、ライルの頭の中には何故かシュウの姿が浮かんでいた。
「君、人望無かったんだね。それとも・・・嫌われるようなことした?」
憐みとも蔑みともとれるような微妙な視線でディオンに言われ、ライルは「うっ」と口を噤む。
嫌われるどころの話ではない。無理矢理犯そうとしたのだから、むしろサーラから直に殺されても仕方がないくらいなのだ。
事実、サーラはライルに対して完全に見切りをつけ、パーティーを脱する決意をした。これまで仲間だった情も何もかもが消し飛んだのだ。
サーラからしてみれば、ライルは魔物以上の脅威でしかないところまで感情が突き抜けてしまっている。
「あれ・・・?僕は・・・もしかしてとんでもないことをやってしまった・・・?
ライルは、ここでようやく・・・ようやく冷静になって自分のしたことを見つめ直すことが出来た。
「あわわわわわわわ」
お香の効果で興奮していたところも大きいが、取返しのつかないことをしてしまったとライルは顔を青くする。
すぐにサーラのところへ行き、謝りに行かねばならない。ライルはそう思ってどうにかすぐに彼女の元へ辿り着かねばならないと考えるが・・・
「あだばっ!?」
考えるライルの頭上に、岩のような固い拳が降り注ぐ。
呆然としていた冒険者の男が、再びライルへの攻撃を開始したのだ。
そして丸太のような太い足でのストンピング。ライルは立ち上がることもままならず、ひたすらに攻撃を受け続ける。
「よくわからんけど、俺の童貞喪失のチャンスを奪った恨みはしっかり晴らさせてもらうからよぉ?」
並の人間なら死んでもおかしくないくらいの攻撃にさらされ、ライルはディオンにやられるまでもなくボロボロになってしまう。
このまま見ているだけでもライルは死ぬだろうが、まだ時間がかかって誰か邪魔が入ってしまいかけないうえ、自分で手を下せないのは気に入らない。
ディオンはそう考え、激昂してライルを痛めつけている男に声をかけた。
「申し訳ないその方。その男は私がこの手で手を下したい相手なので、どうかこちらに譲っていただけないか?」
「あぁ!?」
激昂した男は、突然見た目自分より年下の少年にそんなことを言われたことで、怪訝な顔をする。
「俺は俺でこいつに晴らさなきゃいけない恨みがあんだよ!引っ込んでな!」
頭に血が上った男が、そうやすやすと良く知らぬ少年の言葉を受け入れるはずもない。ディオンは丁寧だが、貴意ある高位の魔人だからか上からな言葉遣いだ。それも男からしてみれば癪に障った。
だが、要求を跳ね除けられたにも関わらず、ディオンは微笑を浮かべたまま言葉を紡ぐ。
「もちろん、ただでとは言わない。今しばらく大人しくしていただけるのなら、貴方の童貞はこちらのレイが世話させてもらおう」
ディオンの言葉の後に、レイは小さく礼をする。
男は「えっ」と驚きの声を上げた後、ジッとレイを見つめ・・・
「大人しくしてます」
と、素直にディオンに従った。
「・・・くっ・・・」
男の攻撃は止んだが、数秒後にはそれ以上の脅威が迫ってくる。
ライルは対峙するディオン達に、どうにか対処する方法が無いかと考えを巡らせた。
剣がない。
それどころか満足に体を動かすことも出来ない。
(こりゃ・・・どう考えても死ぬかもしれない状況だな・・・)
思わず笑いそうになるライル。
だがそんな絶対絶命の状況の中、ライルの頭の中には何故かシュウの姿が浮かんでいた。
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