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帰郷の準備はOK?
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「ふむ・・・なるほど、いい流れですね」
ある朝、旅の道中立ち寄った宿にて、フローラは新聞の記事を読みながら満足そうに頷いた。
「ふむ、何か記事がありましたか?」
シュウは新聞を読むフローラの背後から、新聞の内容をチラ見する。
シュウの目に入った記事は、ドレーク帝国の帝都にて、養殖されていた101匹のケルベロスが逃げ出したという見出しだった。
「え、何これは」
フローラはこの記事を良い流れだと言ったのか?意味がわからないんだけど。と、シュウが引きつった顔をしていると、それに気付いたフローラがニコリと笑みを浮かべながら言った。
「あぁ、これは暗号になっているんです」
「暗号・・・?」
「ええ。帝都の新聞社の私に協力的な記者が、遠方にいる私にも帝都の様子がわかるように、記事に暗号を潜ませて情報を提供してくれているんです」
「えっ・・・そんなことを?」
「こまめに帝都の情報を知っておかないと、逃避行もままなりませんからね。暗号の取り決めが大変でしたが、お陰でリスクなく帝都の情報を得ることが出来ます」
そう言ってあどけなく笑うフローラに対し、シュウは末恐ろしいものを感じる。
フローラが読んでいる新聞は帝都でも大手の新聞社であり、周辺国にまで数日遅れとはいえ発行されているものだった。
その新聞社との記者から暗号を通じて情報を得ることが出来るようにするなど、並大抵のことではない。
自分との逃避行をどれだけ前から予測し、手を打ってきたのだろう?
そしてそれを実現するために、どれだけのコネクションを築いてきたのだろう?
年下の可愛い後輩だと思っていたフローラは、自分が思うよりずっと大きな力を手に入れ、それを行使することが出来るようになっているのだと改めて認識したシュウは、フローラがとんでもない怪物に見えて仕方が無かった。
「ちなみに暗号によるとですね・・・帝都では聖神教会内部に問題が発生し、とても極秘裏に私達への報復のために労力を割いている余裕なんて無い状態にあるそうです」
「・・・へぇ・・・」
記事の内容よりも、教会内部の情報をあっさり掴んでしまう敏腕記者を手駒に置いている事実にシュウは呆然としてしまう。
「この分なら、私達が行こうとしているシュウ様の故郷でも、そこまで強く警戒しなくても良いかもしれません」
シュウ達が目指している場所は、シュウの故郷だ。
そこは聖神教会の影響力の強い地であるが、シュウの用事を済ませるためにどうしてもリスクを承知した上で行かねばならない。
当然、いくら帝都での世論がシュウ達に味方していると言っても、闇から闇への聖神教会の報復が予想されるので、最大限の警戒をしての帰郷になると考えていたのだ。
それが意図せずして教会に余力がなくなっているというので、シュウ達にしてみればこれ以上ない朗報だった。
「なんだか今は聖女達の風紀が乱れに乱れて、大変なことになっているみたいですよ」
「・・・それは・・・確かに大事でしょうね」
聖神教会の影響力の要は、聖女を使ってのコネクションだ。
国内外の有力者と縁談を結ばせることで聖神教会は権力を拡大してきたが、肝心の聖女が処女でなくなれば、従来結べたはずの縁談が結べなくなるので、その価値は大幅に目減りする。
今、聖神教会は凄まじい勢いで資産を失いかけているのだ。
例えるなら今の教会は大怪我で大出血しているのだ。その手当もしないで敵に噛みつこうとするやつはそうそういないだろう。
「これで当初よりは安心して帰郷できそうですね。もちろん、最低限の警戒は必要でしょうが・・・」
「そうですね・・・」
フローラの言葉に、シュウは細い目を更に細めて視線を虚空に彷徨わせる。
物思いにふけるシュウのその横顔を、フローラは黙って見つめていた。
ある朝、旅の道中立ち寄った宿にて、フローラは新聞の記事を読みながら満足そうに頷いた。
「ふむ、何か記事がありましたか?」
シュウは新聞を読むフローラの背後から、新聞の内容をチラ見する。
シュウの目に入った記事は、ドレーク帝国の帝都にて、養殖されていた101匹のケルベロスが逃げ出したという見出しだった。
「え、何これは」
フローラはこの記事を良い流れだと言ったのか?意味がわからないんだけど。と、シュウが引きつった顔をしていると、それに気付いたフローラがニコリと笑みを浮かべながら言った。
「あぁ、これは暗号になっているんです」
「暗号・・・?」
「ええ。帝都の新聞社の私に協力的な記者が、遠方にいる私にも帝都の様子がわかるように、記事に暗号を潜ませて情報を提供してくれているんです」
「えっ・・・そんなことを?」
「こまめに帝都の情報を知っておかないと、逃避行もままなりませんからね。暗号の取り決めが大変でしたが、お陰でリスクなく帝都の情報を得ることが出来ます」
そう言ってあどけなく笑うフローラに対し、シュウは末恐ろしいものを感じる。
フローラが読んでいる新聞は帝都でも大手の新聞社であり、周辺国にまで数日遅れとはいえ発行されているものだった。
その新聞社との記者から暗号を通じて情報を得ることが出来るようにするなど、並大抵のことではない。
自分との逃避行をどれだけ前から予測し、手を打ってきたのだろう?
そしてそれを実現するために、どれだけのコネクションを築いてきたのだろう?
年下の可愛い後輩だと思っていたフローラは、自分が思うよりずっと大きな力を手に入れ、それを行使することが出来るようになっているのだと改めて認識したシュウは、フローラがとんでもない怪物に見えて仕方が無かった。
「ちなみに暗号によるとですね・・・帝都では聖神教会内部に問題が発生し、とても極秘裏に私達への報復のために労力を割いている余裕なんて無い状態にあるそうです」
「・・・へぇ・・・」
記事の内容よりも、教会内部の情報をあっさり掴んでしまう敏腕記者を手駒に置いている事実にシュウは呆然としてしまう。
「この分なら、私達が行こうとしているシュウ様の故郷でも、そこまで強く警戒しなくても良いかもしれません」
シュウ達が目指している場所は、シュウの故郷だ。
そこは聖神教会の影響力の強い地であるが、シュウの用事を済ませるためにどうしてもリスクを承知した上で行かねばならない。
当然、いくら帝都での世論がシュウ達に味方していると言っても、闇から闇への聖神教会の報復が予想されるので、最大限の警戒をしての帰郷になると考えていたのだ。
それが意図せずして教会に余力がなくなっているというので、シュウ達にしてみればこれ以上ない朗報だった。
「なんだか今は聖女達の風紀が乱れに乱れて、大変なことになっているみたいですよ」
「・・・それは・・・確かに大事でしょうね」
聖神教会の影響力の要は、聖女を使ってのコネクションだ。
国内外の有力者と縁談を結ばせることで聖神教会は権力を拡大してきたが、肝心の聖女が処女でなくなれば、従来結べたはずの縁談が結べなくなるので、その価値は大幅に目減りする。
今、聖神教会は凄まじい勢いで資産を失いかけているのだ。
例えるなら今の教会は大怪我で大出血しているのだ。その手当もしないで敵に噛みつこうとするやつはそうそういないだろう。
「これで当初よりは安心して帰郷できそうですね。もちろん、最低限の警戒は必要でしょうが・・・」
「そうですね・・・」
フローラの言葉に、シュウは細い目を更に細めて視線を虚空に彷徨わせる。
物思いにふけるシュウのその横顔を、フローラは黙って見つめていた。
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