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プロローグ
滅亡への道
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食事が終わった後、カイは自分の持っている装備の手入れを開始した。
これから再び戦いに赴くことになるので、それの準備だ。今度向かう戦場はサンクレアの王都。サンクレアの聖騎士として国と神に忠誠を誓ったはずのカイが、今国に剣を向けようとしている。
理由は簡単。「イリスを救うために必要なこと」だからだ。
「いやいやまさか、こんなに早く行動を起こされるとは思ってもみませんでしたぁ。もう少し休んでからでも良いのではないですかぁ?」
「いや、一刻でも早く動きたい。休みなど俺には不要だ」
カイは手際良く自分の身に着けていた鎧を分解し、細かく清掃しながら不具合がないか確認している。
装備品のチェックは怠るな、紐一つの緩みが命の危険に繋がることになるーーー自分を見初め、教育し、聖騎士にまで育て上げてくれた恩師アドルの言葉をカイは思い出す。
そのアドルに再び剣を向けようとしている状況だが、カイには一切躊躇は無かった。
「祖国に剣を向ける心の整理はついたのですかぁ?」
「とうに出来ている。イリスを見捨てた、イリスの復活を邪魔する時点で、俺にとっては敵でしかない」
カイの返答に一切の迷いが無いのを察したベルスは満足そうに笑みを浮かべた。
「良いですねぇ、恋人の敵は誰でだろうと敵!思い切りの良い人は好きですよぉ」
ベルスはそう言って、小さな小袋をカイに手渡す。
「これは・・・?」
小袋を上げると、小さな丸薬が数個入っていた。
聖騎士として薬草などにはいくらか明るいカイだったが、彼の見たことのない見た目、そして知らない匂いである。
「それはバニシュ草という秘境地帯にしか生えない草をメインに、数種類の薬草と調合して作成した丸薬です。それを飲めば一定時間姿を消すことが出来ます。都合良く不思議なことに装備品まで消えるスグレモノですよぉ?」
「な、なんだと・・・そんなものが・・・」
姿を消すことが出来る薬はおろか、魔法ですらその存在を知らなかったカイは驚愕する。姿の見えない魔物の存在は知っているが、人間が同じように姿を消せるなどということなど考えたこともなかった。
自分が今話しているベルスという男は、一体何者なのだろう・・・今更のように少し気になるが、イリスを救ってくれるのならどうでも良いとカイは頭を振った。
「カイさんのような手練れの人が相手だと気配で気付いてしまうかもしれませんが、目的を達成するために是非とも役立ててみてくださぁい」
「あぁ、ありがとう」
「ありがとう・・・ですか、フフッ、良くこんな怪しい男の話にホイホイ乗れますね」
ベルスの言葉に、カイは笑って答えた。
「俺とイリスを見殺しにする神よりも、実際に助けてくれたアンタのほうが神様に相応しいよ。俺の中ではな」
カイの中には、既にラビス教への信仰も未練も残っていなかった。
ただ恋人のイリスを救いたい、彼の中にあるのはそれだけである。
カイが進もうとしている道は、かつて自分がいたサンクレアという国の滅亡に繋がる道であった。
だが、今カイは躊躇うことなくその道を歩み始めた。
これから再び戦いに赴くことになるので、それの準備だ。今度向かう戦場はサンクレアの王都。サンクレアの聖騎士として国と神に忠誠を誓ったはずのカイが、今国に剣を向けようとしている。
理由は簡単。「イリスを救うために必要なこと」だからだ。
「いやいやまさか、こんなに早く行動を起こされるとは思ってもみませんでしたぁ。もう少し休んでからでも良いのではないですかぁ?」
「いや、一刻でも早く動きたい。休みなど俺には不要だ」
カイは手際良く自分の身に着けていた鎧を分解し、細かく清掃しながら不具合がないか確認している。
装備品のチェックは怠るな、紐一つの緩みが命の危険に繋がることになるーーー自分を見初め、教育し、聖騎士にまで育て上げてくれた恩師アドルの言葉をカイは思い出す。
そのアドルに再び剣を向けようとしている状況だが、カイには一切躊躇は無かった。
「祖国に剣を向ける心の整理はついたのですかぁ?」
「とうに出来ている。イリスを見捨てた、イリスの復活を邪魔する時点で、俺にとっては敵でしかない」
カイの返答に一切の迷いが無いのを察したベルスは満足そうに笑みを浮かべた。
「良いですねぇ、恋人の敵は誰でだろうと敵!思い切りの良い人は好きですよぉ」
ベルスはそう言って、小さな小袋をカイに手渡す。
「これは・・・?」
小袋を上げると、小さな丸薬が数個入っていた。
聖騎士として薬草などにはいくらか明るいカイだったが、彼の見たことのない見た目、そして知らない匂いである。
「それはバニシュ草という秘境地帯にしか生えない草をメインに、数種類の薬草と調合して作成した丸薬です。それを飲めば一定時間姿を消すことが出来ます。都合良く不思議なことに装備品まで消えるスグレモノですよぉ?」
「な、なんだと・・・そんなものが・・・」
姿を消すことが出来る薬はおろか、魔法ですらその存在を知らなかったカイは驚愕する。姿の見えない魔物の存在は知っているが、人間が同じように姿を消せるなどということなど考えたこともなかった。
自分が今話しているベルスという男は、一体何者なのだろう・・・今更のように少し気になるが、イリスを救ってくれるのならどうでも良いとカイは頭を振った。
「カイさんのような手練れの人が相手だと気配で気付いてしまうかもしれませんが、目的を達成するために是非とも役立ててみてくださぁい」
「あぁ、ありがとう」
「ありがとう・・・ですか、フフッ、良くこんな怪しい男の話にホイホイ乗れますね」
ベルスの言葉に、カイは笑って答えた。
「俺とイリスを見殺しにする神よりも、実際に助けてくれたアンタのほうが神様に相応しいよ。俺の中ではな」
カイの中には、既にラビス教への信仰も未練も残っていなかった。
ただ恋人のイリスを救いたい、彼の中にあるのはそれだけである。
カイが進もうとしている道は、かつて自分がいたサンクレアという国の滅亡に繋がる道であった。
だが、今カイは躊躇うことなくその道を歩み始めた。
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