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反逆
テロの脅威
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「ユーラン国軍の残党がテロを仕掛けようとしているだと・・・?」
サンクレア騎士団長室にて、騎士団諜報部からの報告を聞き、アドルは顔を顰めた。
「やれやれ、いまだ面倒を引き起こす連中だな」
アドルは忌々しそうに顔を歪ませた後、諦めたようにため息をついた。
「国境及び各重要施設のみならず、都内全域の警備を強化せよ」
アドルはそう指示を側近に出し、部下達を下がらせる。しばしして、入れ替わりにハルトが部屋を訪れた。
「参上しました!お呼びですかアドル騎士団長」
アドルは入室したハルトの顔を見やる。
(いくらか調子は取り戻したか・・・)
ユーライ国戦を終え、戦勝の街宣を行ってから一週間ほどはハルトの顔はやつれていた。目の下にはクマが出来、頬はこけ、目は虚ろで、見るからにノイローゼを患っていそうな感じであった。夜眠れずに、睡眠薬を処方して貰ったという報告も聞いていたアドルは、いくらか以前のような元気を取り戻した顔になってやってきたハルトを見て、少しだけ安堵した。
「もう調子は良いのか?」
アドルの問いに、ハルトは溌剌とした声で答える。
「はい!ご迷惑をおかけしました!」
そう言うハルトの表情には以前のような悲壮感がまるでなく、本当に元気を取り戻したかのようだ。
(聞けば毎日マーサ嬢が元気づけていたという。愛のなせる業というわけか?)
自分でも歯の浮くようなことを考えているとアドルは鼻で笑いそうになったが、それでもハルトのような単純な人間にはこれに勝る薬はないのだろうなと思う。
まだまだふさぎ込み引きずるだろうと考えていたアドルは、少しだけハルトのことを見直した。単純なハルトは打たれ弱さも持っているが、同時に立ち直りの速さもまた彼の特徴であった。
「呼んだのは他でもない。ユーライ国軍の残党が我がサンクレアにテロを仕掛けようとしている、そんな情報が入ってきたことについてだ」
アドルが話を切り出すと、ハルトはビクッと体を震わせた。
「ユーライの残党がテロ・・・それは間違いない情報なのですか?」
ハルトは恐る恐るといったように訊ねる。
「まだ裏付けは取れておらぬが、状況が状況だけに可能性は低くはない」
アドルの返答に、ハルトは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
ユーライ国との戦争はユーライの首都を制圧したことでサンクレアの勝利で終わりかけているが、軍の一部と王家は逃走を続けている。居所についてもはっきりしておらず、必死で捜索し追撃隊を差し向けてはいるがいまだ残党を殲滅できたとの報は入っていない。
そんな身を潜めている彼らが報復行動に出ることは、十分にあり得る話であった。
ハルトの脳裏にカイの反逆の一件が浮かぶ。
最後の最後でカイの行動を読み、彼の姿を見つけることはできたが、結局逃がしてしまったどころか、封魔殿の宝物を持っていかれてしまった。結果からすればカイに完全に出し抜かれた形になっているのだ。
今回ユーライの残党に同じように出し抜かれた場合、カイのときとは比にならない犠牲が出ることになる・・・
そんな想像がハルトの身を固くした。
サンクレア騎士団長室にて、騎士団諜報部からの報告を聞き、アドルは顔を顰めた。
「やれやれ、いまだ面倒を引き起こす連中だな」
アドルは忌々しそうに顔を歪ませた後、諦めたようにため息をついた。
「国境及び各重要施設のみならず、都内全域の警備を強化せよ」
アドルはそう指示を側近に出し、部下達を下がらせる。しばしして、入れ替わりにハルトが部屋を訪れた。
「参上しました!お呼びですかアドル騎士団長」
アドルは入室したハルトの顔を見やる。
(いくらか調子は取り戻したか・・・)
ユーライ国戦を終え、戦勝の街宣を行ってから一週間ほどはハルトの顔はやつれていた。目の下にはクマが出来、頬はこけ、目は虚ろで、見るからにノイローゼを患っていそうな感じであった。夜眠れずに、睡眠薬を処方して貰ったという報告も聞いていたアドルは、いくらか以前のような元気を取り戻した顔になってやってきたハルトを見て、少しだけ安堵した。
「もう調子は良いのか?」
アドルの問いに、ハルトは溌剌とした声で答える。
「はい!ご迷惑をおかけしました!」
そう言うハルトの表情には以前のような悲壮感がまるでなく、本当に元気を取り戻したかのようだ。
(聞けば毎日マーサ嬢が元気づけていたという。愛のなせる業というわけか?)
自分でも歯の浮くようなことを考えているとアドルは鼻で笑いそうになったが、それでもハルトのような単純な人間にはこれに勝る薬はないのだろうなと思う。
まだまだふさぎ込み引きずるだろうと考えていたアドルは、少しだけハルトのことを見直した。単純なハルトは打たれ弱さも持っているが、同時に立ち直りの速さもまた彼の特徴であった。
「呼んだのは他でもない。ユーライ国軍の残党が我がサンクレアにテロを仕掛けようとしている、そんな情報が入ってきたことについてだ」
アドルが話を切り出すと、ハルトはビクッと体を震わせた。
「ユーライの残党がテロ・・・それは間違いない情報なのですか?」
ハルトは恐る恐るといったように訊ねる。
「まだ裏付けは取れておらぬが、状況が状況だけに可能性は低くはない」
アドルの返答に、ハルトは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
ユーライ国との戦争はユーライの首都を制圧したことでサンクレアの勝利で終わりかけているが、軍の一部と王家は逃走を続けている。居所についてもはっきりしておらず、必死で捜索し追撃隊を差し向けてはいるがいまだ残党を殲滅できたとの報は入っていない。
そんな身を潜めている彼らが報復行動に出ることは、十分にあり得る話であった。
ハルトの脳裏にカイの反逆の一件が浮かぶ。
最後の最後でカイの行動を読み、彼の姿を見つけることはできたが、結局逃がしてしまったどころか、封魔殿の宝物を持っていかれてしまった。結果からすればカイに完全に出し抜かれた形になっているのだ。
今回ユーライの残党に同じように出し抜かれた場合、カイのときとは比にならない犠牲が出ることになる・・・
そんな想像がハルトの身を固くした。
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