聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

奔放な女の寂しさ

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クリスが自分の能力に気付いたのは10歳になったときだった。
自分と目が合った一部の男が自分に心酔し、何でも言うことを聞くようになるということに偶然気が付いた。
それが魅了魔法ということを知ったのは、自分の力に疑問を抱いて調べた12歳のときである。このときはまだ誰しもを術中に入れることは出来なかったが、14歳になりクリスの聖力や魔力が成長とともに向上すると、もはや誰であれクリスの魅力の魔眼の力を退けることは出来なかった。

最初に能力を本格的に試してみたのは妻子ある敬虔なラビス教徒の年上の男だった。
司祭であるその男は教えを絶対視し、生真面目な性格の故に自由奔放に生きるクリスに難色を示し、いつも口うるさく彼女に小言を言っていた。

クリスは腹いせも兼ねてそんな男に魅了の魔法をかけ、肉体関係を持った。
自分を忌み嫌っているはずの男が、愛も道徳もかなぐり捨てて自分の体を求めて腰を振る滑稽さに、クリスは狂ったようにそのときは笑いが止まらなかったが、その男はその後に自室で首を吊ったと聞いたときは「あら、つまらない」と溜め息をついた。
男は不貞をした事実が周囲に知られ、妻子に逃げられ教会では閑職に追いやられたからだった。

自分の能力の前ではどんな男も矜持を捨てる。
クリスは自分の能力を気になった男全員にかけて回った。そして、その男達全員の人生と貞操観念を破壊して回りまくった。
最初は刺激的だったそれも、やがてマンネリになり何の感情も抱かなくなると、より強い刺激を求めて彼女のは激化していった。

上層部もクリスの行いについては概ね把握していたが、政治的にも強く、かつ自身も強大な力を持つクリスを罪に問うことはしなかった。なので余計に歯止めがかからなかった。

だが、カイだけは違った。
最初から全く魅了の魔法が効かなかった。クリスの目の力を知る者は、魔力で魅了をガードしてはいるものの、それでも本気のクリスの魅了はそのガードを貫通する。だから魅了がかかりづらいように目を逸らすようになっていた。
故にカイはクリスの魅了にかからない上に、正面から目を見て話してくる唯一の男となった。
魅了の目を持つことで人の心に簡単に侵入できるようになった一方で、どこか寂しさを感じるようになっていたのかもしれないーー

とにかく、カイはクリスにとって夢中にならざるを得ない、運命の人になった。
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