48 / 202
反逆
仕組まれた呪い
しおりを挟む
クリスは当時を思い出しながら語る。
『最後の抵抗』
魔王を倒し、後は衰退していくだけだと思っていた魔王軍は、全世界の戦力を集結し、ある日神国サンクレアに総攻撃を仕掛けた。人類対魔族最後の決戦である。
魔族の長であり、崇拝していた魔王を倒された魔物達の恨みは凄まじく、まさに強大な肉の壁となって蹂躙すべく波のように全方向から神都へヒステリックに押し寄せる。
戦術も何もない正面からの総力戦に、サンクレア側に出来ることはただ耐えるだけ、であった。指揮をする者がいない、となると誰を先に潰したところで魔物が引くことはない。
サンクレアは聖騎士を四手に分けた。
アドル率いる精鋭部隊を主軸とした騎士団本隊が北を。西をクリスが、南をハルトが、東をカイ達が率いる騎士団が受け持ち、防衛に当たった。
聖騎士は強力な火力で何十、何百と一人で魔族を殺す。聖女は疲弊した聖騎士を癒す。騎士団はそれをサポートする。作戦はこれだけ。ただただ押し寄せる魔物を殺し、殺し尽くして神都への魔物の侵入を断固防ぐ。
地獄絵図であったが、その地獄をどの部隊よりも先に乗り越えたのは、クリス率いる西の隊であった。
西からの魔物の勢いが落ち、やがてほとんど魔物が現れなくなると、一先ずの防衛の成功に騎士達は安堵した。だがまだ戦いは終わりではない。
「クリス様。我ら西の隊は余裕があります。苦戦しているという東に応援を送りましょう」
クリスの指揮化にある西の大隊長は進言した。
西の勢力は沈静化。しかし東は魔物が特に多く大激戦と聞いており、すぐにでも増援が必要な状況であった。
「んー・・・そうねぇ」
クリスは考えた。
すぐに増援を出し、カイに恩を売るのは悪くない。だが、それよりももっと面白いことをこのときの彼女は思いついてしまっていたのだ。
「東はカイが守っているから持ちこたえるわ。それよりも南のハルトのほうが不安ね。騎士の数は多いけど、少しでも拮抗が崩れると調子を乱しちゃうと思うから」
「南・・・ですか。東ほどの苦戦はしていないようですが」
「えぇ。東は大丈夫。けど、南は心もとないわ」
「・・・はっ、それでは南を中心に増援を手配します」
大隊長はクリスの言葉通り、南を重点に増援を送り、東には少数のみ送った。
「そう、カイはきっと大丈夫」
クリスは笑う。
カイが魔物に後れを取るようなことはない。何があっても生き残る。
だが、聖女イリスはそうである必要はない。
クリスは討伐した魔物の死体の山の中にいる、あえて半殺しの状態で生かしておいた魔物の方へ向かう。
それは『大呪術師』と呼ばれる、古来より伝わる極めて強力な呪術を駆使する魔物である。大昔の呪術師人間のミイラに悪魔が乗り移ったのが生誕のきっかけと言われている。
「ぁ・・・・ぁぁ・・」
半殺しの状態であえぐ大呪術師の頬をクリスは両手で掴む。
そしてジッと目を見るのであった。
本人と聖女アルマ以外は誰も知らぬことだが、クリスの魅了の魔眼は魔物ですらも魅了する。元は人間の魔物であるなら尚更だった。
「貴方の呪術を使ってイリスを呪ってきなさい。いいわね?」
クリスは魅了の魔眼を使って、大呪術師を操った。
そして、激戦区であった東にはドタバタに紛れて簡単にその魔物を送り込むことが出来、見事狙い通りにイリスに死の呪術をかけることに成功したのだ。
『最後の抵抗』
魔王を倒し、後は衰退していくだけだと思っていた魔王軍は、全世界の戦力を集結し、ある日神国サンクレアに総攻撃を仕掛けた。人類対魔族最後の決戦である。
魔族の長であり、崇拝していた魔王を倒された魔物達の恨みは凄まじく、まさに強大な肉の壁となって蹂躙すべく波のように全方向から神都へヒステリックに押し寄せる。
戦術も何もない正面からの総力戦に、サンクレア側に出来ることはただ耐えるだけ、であった。指揮をする者がいない、となると誰を先に潰したところで魔物が引くことはない。
サンクレアは聖騎士を四手に分けた。
アドル率いる精鋭部隊を主軸とした騎士団本隊が北を。西をクリスが、南をハルトが、東をカイ達が率いる騎士団が受け持ち、防衛に当たった。
聖騎士は強力な火力で何十、何百と一人で魔族を殺す。聖女は疲弊した聖騎士を癒す。騎士団はそれをサポートする。作戦はこれだけ。ただただ押し寄せる魔物を殺し、殺し尽くして神都への魔物の侵入を断固防ぐ。
地獄絵図であったが、その地獄をどの部隊よりも先に乗り越えたのは、クリス率いる西の隊であった。
西からの魔物の勢いが落ち、やがてほとんど魔物が現れなくなると、一先ずの防衛の成功に騎士達は安堵した。だがまだ戦いは終わりではない。
「クリス様。我ら西の隊は余裕があります。苦戦しているという東に応援を送りましょう」
クリスの指揮化にある西の大隊長は進言した。
西の勢力は沈静化。しかし東は魔物が特に多く大激戦と聞いており、すぐにでも増援が必要な状況であった。
「んー・・・そうねぇ」
クリスは考えた。
すぐに増援を出し、カイに恩を売るのは悪くない。だが、それよりももっと面白いことをこのときの彼女は思いついてしまっていたのだ。
「東はカイが守っているから持ちこたえるわ。それよりも南のハルトのほうが不安ね。騎士の数は多いけど、少しでも拮抗が崩れると調子を乱しちゃうと思うから」
「南・・・ですか。東ほどの苦戦はしていないようですが」
「えぇ。東は大丈夫。けど、南は心もとないわ」
「・・・はっ、それでは南を中心に増援を手配します」
大隊長はクリスの言葉通り、南を重点に増援を送り、東には少数のみ送った。
「そう、カイはきっと大丈夫」
クリスは笑う。
カイが魔物に後れを取るようなことはない。何があっても生き残る。
だが、聖女イリスはそうである必要はない。
クリスは討伐した魔物の死体の山の中にいる、あえて半殺しの状態で生かしておいた魔物の方へ向かう。
それは『大呪術師』と呼ばれる、古来より伝わる極めて強力な呪術を駆使する魔物である。大昔の呪術師人間のミイラに悪魔が乗り移ったのが生誕のきっかけと言われている。
「ぁ・・・・ぁぁ・・」
半殺しの状態であえぐ大呪術師の頬をクリスは両手で掴む。
そしてジッと目を見るのであった。
本人と聖女アルマ以外は誰も知らぬことだが、クリスの魅了の魔眼は魔物ですらも魅了する。元は人間の魔物であるなら尚更だった。
「貴方の呪術を使ってイリスを呪ってきなさい。いいわね?」
クリスは魅了の魔眼を使って、大呪術師を操った。
そして、激戦区であった東にはドタバタに紛れて簡単にその魔物を送り込むことが出来、見事狙い通りにイリスに死の呪術をかけることに成功したのだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
59
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる