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反逆

獣以下の標的

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一瞬にしてクリスに鳥肌がたった。
怒りに我を忘れ、殺気の塊になって突っ込んでくるカイは、まるで眼前に転がってくる巨岩のようであった。

正面からぶつかれば死ぬーー

そう思うほどを予感させる圧倒的迫力を持つ突撃であった。


「フッ」


クリスは口角を上げる。
余裕からの態度ではない。カイの新たな一面を見ることが出来た、その喜びからだった。
だから目をそらしたいほどの殺気をぶつけられながらも、クリスは正面からそれを受け止め、カイの動きを注視する。
普段冷静なカイのものとは思えないほど正面からの素直な大振りの剣・・・
クリスはそれをじっくり見定めてギリギリのタイミングで躱す。あえて反撃はせずに様子を見る。
空振りしたことで更に逆上しているのか、より単調になって力の入り過ぎた剣を追撃とばかりに振ってくるカイ。
それを軽くいなすクリス。


2、3度同じやり取りをしてクリスは察した。

完全にカイは怒りに飲まれ、正気を失っていると。
カイの持ち味である戦い方が出来ず、もはやその気になれば簡単に倒せる相手となってしまったと。
攻撃が思うようにいかず、より冷静さを欠くような動きが目立つようになったカイを見て、クリスは眉をひそめた。
確かにカイの斬りこみは鋭く、正面から受けるには難があるーーが、それだけだ。


「はぁ、残念ですわ」


心底残念そうにクリスは溜め息をついた。
野生動物のように、慎重に確実に仕留めに行くスタイルだったカイは見る影もない。
これ以上遊ぶ気にもならず、クリスは決心をつけた。

右手の大剣を高く掲げ、左手のそれは下段に構える。
どこから来ても迎撃できる、後の先の構えーー 本来はカイが得意とするスタイルでクリスはカイを迎え撃つつもりだった。
獰猛な獣のように殺気を振りまいてクリスに向き直るカイ。
いや、獣とてただ力任せに狩りをすることはない。冷静さを欠き、相手の分析することもやめたカイなど獣以下ーークリスはそう思っていた。


カイが再び踏み出す。
真っ直ぐに、何の策略も無しに。
今のカイと正面からぶつかるは得策ではない・・・が、奇策はあっさりはまるだろう。

カイが突っ込んでくる軌道上に、クリスはを巡らせていた。
冷静なカイならばまず引っかからない糸の形を取った聖剣・・・目には見えず、それでいて触れるだけで体が刻まれるほどの鋭さを持つ。
糸で張った網にカイが正面から突っ込んでくるだけで、彼はその身をバラバラにしてしまうはずだった。そう思って口角をクリスが上げた刹那ーー


ドォォォォン


クリスの後方、アルマのいるところで爆発が起こった。
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