聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

彼氏より面倒な彼女

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「せ、聖女様!一体何事ですか!?」


マーサの攻撃魔法の爆音を聞いた騎士達が礼拝堂へ向かって叫んだ。
だが魔法により建物が破壊された影響で瓦礫などが邪魔になり、カイ達のところへは簡単にはたどり着けないようだ。


「来てはいけません。邪悪なる元聖騎士カイが今この場にいます。私がここを食い止めますので、貴方たちはハルトかアドル騎士団長を呼んできてください!」


瓦礫の向こう側にいるだろう騎士達に向かって、マーサがそう叫ぶ。


「私なら結界魔法があるから大丈夫です。ですが皆さまがいると正直足手まといになります!」


マーサの言葉を聞き、すぐにこの場に駆け付けようとしていた気が削がれたのか、「わかりましたすぐに」とだけ返して騎士達はすぐに引き返していった。
カイにかかれば並の騎士が束になったところで一瞬にして刀の錆だろう。マーサの言うことは正しかった。

だが、マーサが人払いをしたのはそれだけではなかった。これから見せる攻撃的な自分の人間性を、一般人の・・・否、誰にだって知られなくなかったからである。


「さぁ、応援が駆け付けてくるまでには終わらせましょう」


マーサが怪しげに微笑んでそう言った。
どうやらハルトやアドルが来るまで時間稼ぎするつもりは毛頭ないらしい。自分の力でカイを殺すつもりでいるようであるのを察し、カイは冷や汗をかく。


(守る、守られるだけの女かと思ったが、これはとんだ大番狂わせだな・・・)


完全に予想外であるマーサの豹変ぶりは、常に相手の先手を読んで行動してきたカイを大いに揺さぶった。
だが、かといって動かないわけにもいかない。時間をかければハルト達が駆け付けてきてしまうからだ。そうなると勝算はほぼ完全になくなってしまう。


「っ!!」


カイはほとんどモーションを見せることなく、一瞬でマーサに距離を詰める。並の騎士なら視界に捉えることもない踏み込みだ。


「あら怖い!」


しかし、聖騎士の戦いを間近で見て慣れているマーサはすぐに反応することができた。触れると爆発する光の玉を壁にするように無数に展開し、カイは瞬時に動きを止め、再び距離を取る。


「ちっ」


カイは思わず舌打ちしたが、状況は悪かった。カイの攻撃が止められただけではない、マーサは今壁のようにして使った光の玉をそのまま飛ばすことが出来るのだ。

案の定、距離を取ったカイに対しマーサは遠慮なく浮かべた光の玉をいくつか飛ばす。カイはそれを避けたが、爆発によって轟音とともに礼拝堂が見るも無残な形に崩壊していく。当たればただでは済まない、強力な攻撃魔法であることをカイは察した。


「攻守ともに隙がない。実にハルトより面倒だな」


あるいは分断させたのは間違いだった可能性がある・・・ハルト達の前で猫をかぶらせたままのほうが良かったのではないか、そんな冗談めいたことをカイは考えていた。
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