94 / 203
反逆
予想外の聖女の堕落に苦心する
しおりを挟む
「まいったな。少し予定と違う」
カイは冷や汗を僅かに流しながら、マーサを睨みつけた。
絶対的優位に、かつ速やかにマーサを葬ることが出来るはずだった。だが、どうやらマーサは想像以上に不真面目な聖女で、隠し玉を持っていたことに驚きを隠せない。
しかもその隠し玉は元よりカイとイリス用に用意していたものだというのだから、カイが驚くことに無理はない。
(こんなはずじゃなかったんだが・・・)
カイは己の読みの甘さを呪う。
今回の襲撃の際、カイは自分と同じく透明になったユーライの斥候と連携し、爆炎符によるサンクレア騎士団の後援部隊の攻撃を計画していた。
その目的はアドルとハルト、そしてマーサを分断するようにするためである。
アドルがサンクレアの心臓を何より優先して動くだろうことは予想がついていた。
カイがサンクレアの心臓部を襲撃することにより、アドルを焦らせ、まずは彼を法王城へ固定する。一度サンクレアの心臓へ襲撃を受けた以上、万が一のことを考え、アドルはそこを離れることはしないだろう。
ハルトはどうなるかカイにも読めなかった。
すぐにアドルと同じようにサンクレアの心臓まで来たかもしれなければ、あくまで自分の持ち場を離れることはせず戦場に居続ける可能性もあり、あるいはマーサの後援部隊の治療に付き添っているかもしれないーー
だが、いずれにせよカイからすればアドル、ハルト、マーサが同じ場所にいる状態を解消出来ればそれが良かったのだ。全員を一度に相手にするのだけは絶対に避けたかった。そのための爆炎符による後援部隊の攻撃だった。
結果としては大成功だった。
アドルは法王城に固定出来、ハルトは戦場へ、マーサは後援部隊の治療に専念した。
まさかハルトとマーサが別行動までしてくれるとはあまり期待していなかったが、実際にそれが起きた。
これは絶好の機会だと思った。
マーサ単体であれば、葬るのに都合が良すぎるからだ。
聖女は基本的に殺傷能力を持たない。その力を攻撃魔法にリソースを割く余裕などないし、あってはならないからだ。
だから、防御一辺しか取り柄の無いマーサと一体一ならば簡単に彼女を殺せる・・・そのはずだった。
「どうやら、向こうもこっちを殺す気まんまんだとはな・・・」
マーサの周囲に攻撃魔法である光の玉が増え続ける。
本来回復魔法の研鑽に向けるべき魔力を、どうやら人知れず殺傷魔法の研鑽に使っていたとは思ってもみなかった。
カイは冷や汗を僅かに流しながら、マーサを睨みつけた。
絶対的優位に、かつ速やかにマーサを葬ることが出来るはずだった。だが、どうやらマーサは想像以上に不真面目な聖女で、隠し玉を持っていたことに驚きを隠せない。
しかもその隠し玉は元よりカイとイリス用に用意していたものだというのだから、カイが驚くことに無理はない。
(こんなはずじゃなかったんだが・・・)
カイは己の読みの甘さを呪う。
今回の襲撃の際、カイは自分と同じく透明になったユーライの斥候と連携し、爆炎符によるサンクレア騎士団の後援部隊の攻撃を計画していた。
その目的はアドルとハルト、そしてマーサを分断するようにするためである。
アドルがサンクレアの心臓を何より優先して動くだろうことは予想がついていた。
カイがサンクレアの心臓部を襲撃することにより、アドルを焦らせ、まずは彼を法王城へ固定する。一度サンクレアの心臓へ襲撃を受けた以上、万が一のことを考え、アドルはそこを離れることはしないだろう。
ハルトはどうなるかカイにも読めなかった。
すぐにアドルと同じようにサンクレアの心臓まで来たかもしれなければ、あくまで自分の持ち場を離れることはせず戦場に居続ける可能性もあり、あるいはマーサの後援部隊の治療に付き添っているかもしれないーー
だが、いずれにせよカイからすればアドル、ハルト、マーサが同じ場所にいる状態を解消出来ればそれが良かったのだ。全員を一度に相手にするのだけは絶対に避けたかった。そのための爆炎符による後援部隊の攻撃だった。
結果としては大成功だった。
アドルは法王城に固定出来、ハルトは戦場へ、マーサは後援部隊の治療に専念した。
まさかハルトとマーサが別行動までしてくれるとはあまり期待していなかったが、実際にそれが起きた。
これは絶好の機会だと思った。
マーサ単体であれば、葬るのに都合が良すぎるからだ。
聖女は基本的に殺傷能力を持たない。その力を攻撃魔法にリソースを割く余裕などないし、あってはならないからだ。
だから、防御一辺しか取り柄の無いマーサと一体一ならば簡単に彼女を殺せる・・・そのはずだった。
「どうやら、向こうもこっちを殺す気まんまんだとはな・・・」
マーサの周囲に攻撃魔法である光の玉が増え続ける。
本来回復魔法の研鑽に向けるべき魔力を、どうやら人知れず殺傷魔法の研鑽に使っていたとは思ってもみなかった。
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる