聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

不真面目な聖女サマ

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イリスが強力な呪いを受け、存命が難しいという話を聞いて、マーサは鎮痛な表情を浮かべつつも内心は狂喜のあまり小躍りしそうなほど嬉しい気持ちで溢れていた。
やっと自分の目ざわりだった存在であるイリスが消える。二度と自分の人生に関わらず、歩みを邪魔してくることもない。イリスの葬式の日は、きっとマーサにとって人生最良の日になるだろう・・・そんなことすら考えていた。

しかしどうだろう。
イリスの次に目障りであったカイは姿を消したのも一瞬で再び目の前に現れ、なんとイリスを救おうなどと言っている。
何をするつもりなのかはわからない。しかし、カイが今していることはそのために必要なことなのだということをマーサは推測する。
どうやってかはわからないが、イリスが救えるという確信がカイにはあるのだろうとマーサは考えた。


(許せない・・・)


マーサの瞳に強い強い憎しみが籠る。


「ずっとずっと目障りだった!やっと消えたと思ったのに!!」


マーサは激昂し、ヒステリックに叫ぶと聖杖を構えた。聖杖の先が輝き出すと、拳大ほどの光の玉が無数にマーサの周囲に浮かび上がった。


「イリスを救う?冗談じゃないわ。ドブネズミはドブネズミらしく、さっさと死ねば良いのよ。蘇生するなんて許されない」


「ドブネズミはしぶといのさ。品性ばかりで芯のないお前らと違ってな。まぁ、その品性も言葉遣いを聞くにどうやらあまりよろしくないだがな」


「このっ・・・本当にこの土人は腹が立つわね!」


カイの言葉にマーサは怒りで顔を歪ませると、大きく聖杖を振りかざす。すると浮かんでいた無数の光の玉がカイのところへ飛んでいった。


「むっ・・・!」


カイはそれを横っ飛びですんでのところで避ける。
光の玉はカイの元いた場所をすり抜け、後方にあった礼拝堂の入口周辺に命中した。


ドォォォォォォン


命中した瞬間、光の玉は爆ぜ、爆音とともに礼拝堂に大穴を空けた。


「攻撃魔法か」


聖女は基本的に攻撃魔法を持たない。
攻撃役は聖騎士が請け負っているから、それを覚える必要がないためだ。そこにリソースを割くくらいなら、回復魔法の腕を磨くべきーー そう考えられていた。


「私は攻撃魔法をこっそり練習していたのよ」


「セオリー無視とは、不真面目な聖女サマだな。まぁ嫌いじゃないが」


「あなた達を隙あらば殺すためにいつか使うときが来る、そう考えていたからよ!」


邪悪な笑みを浮かべ、マーサは再び光の玉を浮かび上がらせた。
今度は先ほどの二倍ほどの数であり、カイは息を飲んだ。
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