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反逆
下賤な者に殺される
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カイの太刀によって斬り裂かれたマーサは、受け身を取れるはずもなく地面に体を横たえた。
大量の出血・・・聖女の全力の回復術で蘇生できるかどうかギリギリの致命傷であった。
かつてハルトがカイに負わされた傷と同じだが、聖女は自らには強力な回復術を施すことは出来ない。「他人を憂い労わる」「自らよりも隣人を優先せよ」これが聖女の矜持であるからと言われているが、詳しい理由は明らかになっていない。
一つわかることはこの場に他に聖女がいない今、もうマーサが助かることはないということ。
「がふっ・・・」
マーサが口から血を吐く。
顔色は蒼く、今にも意識を失いそうだ。本当ならマーサの応援が来る前に、早くこの場を去らねばならない。だがカイはマーサの近くに歩み寄ると、冷たい目で彼女を見下ろした。
「マーサ。イリスはな、お前のことを姉妹のようだと言っていたよ」
死にゆくマーサに、カイはどうしても伝えたいことがあった。だからこそリスクを背負ってでもこの場に残っているのである。
「マーサが内心どう思っていようが、イリスは平民出の自分にも分け隔てなく接して、親切に法術や勉強を教えてくれたマーサのことを本当に慕い、感謝してたよ。マーサが大変なときは、何があっても自分が助けてやりたい、そう言っていた」
淡々と語るカイに対し、マーサは何も答えない。
まだ絶命してはいない。意識があることをカイは確信していたので、彼はマーサからの返事を待った。
やがて、ゆっくりとマーサの口が開かれる。
「冗談じゃ、ないわ・・・下賤な人間が・・・馴れ馴れしい・・・のよ」
マーサの口からイリスの気持ちを否定する言葉が出てくるのを確認すると、カイははぁと溜め息をついた。
「その下賤な人間に惨めにぶっ殺される気分はどうだよ聖女サマ?」
怒りを抑え、冷たい目でマーサを見下すカイ。
「聖騎士であるハルトと結婚して、これからラビス教のエリートとして生きていくはずだった自分の将来が、下賤なドブネズミに踏みつぶされる気分はどうだ?」
カイの言葉を聞き、怒りで顔を歪めるマーサ。
何かを口にしようと開いたが、それは結局言葉にならず、そのままマーサは息を引き取った。
大量の出血・・・聖女の全力の回復術で蘇生できるかどうかギリギリの致命傷であった。
かつてハルトがカイに負わされた傷と同じだが、聖女は自らには強力な回復術を施すことは出来ない。「他人を憂い労わる」「自らよりも隣人を優先せよ」これが聖女の矜持であるからと言われているが、詳しい理由は明らかになっていない。
一つわかることはこの場に他に聖女がいない今、もうマーサが助かることはないということ。
「がふっ・・・」
マーサが口から血を吐く。
顔色は蒼く、今にも意識を失いそうだ。本当ならマーサの応援が来る前に、早くこの場を去らねばならない。だがカイはマーサの近くに歩み寄ると、冷たい目で彼女を見下ろした。
「マーサ。イリスはな、お前のことを姉妹のようだと言っていたよ」
死にゆくマーサに、カイはどうしても伝えたいことがあった。だからこそリスクを背負ってでもこの場に残っているのである。
「マーサが内心どう思っていようが、イリスは平民出の自分にも分け隔てなく接して、親切に法術や勉強を教えてくれたマーサのことを本当に慕い、感謝してたよ。マーサが大変なときは、何があっても自分が助けてやりたい、そう言っていた」
淡々と語るカイに対し、マーサは何も答えない。
まだ絶命してはいない。意識があることをカイは確信していたので、彼はマーサからの返事を待った。
やがて、ゆっくりとマーサの口が開かれる。
「冗談じゃ、ないわ・・・下賤な人間が・・・馴れ馴れしい・・・のよ」
マーサの口からイリスの気持ちを否定する言葉が出てくるのを確認すると、カイははぁと溜め息をついた。
「その下賤な人間に惨めにぶっ殺される気分はどうだよ聖女サマ?」
怒りを抑え、冷たい目でマーサを見下すカイ。
「聖騎士であるハルトと結婚して、これからラビス教のエリートとして生きていくはずだった自分の将来が、下賤なドブネズミに踏みつぶされる気分はどうだ?」
カイの言葉を聞き、怒りで顔を歪めるマーサ。
何かを口にしようと開いたが、それは結局言葉にならず、そのままマーサは息を引き取った。
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