聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

気丈なハルト

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「マーサ・・・」

ハルトはマーサの死体を見て、ただ呆然とした。


「マーサ・・・?」


自分が最も愛し、これから共に人生を歩むべきはずだった女性が、変わり果てた姿で冷たくなっている。
その現実を目の当たりにして、ハルトは置物になったかのように微動だにせず、ただただ物言わぬマーサを見つめていた。


「聖騎士様!回復術師を連れて参りました!!」


そこへ瓦礫をかき分けるようにして、回復術師の女達を連れてきた騎士がやってくる。

「遅いよ・・・今まで何をしていたんだ?」

と、ハルトはそう言いたくなる言葉を飲み込んだ。

カイがここでマーサに凶刃を向けていたその時、彼らが少しでもカイの気をひいてくれていたなら、マーサは助かったかもしれない。自分が駆け付けるそのときまで、持ちこたえていたかもしれない。

そんなことを一瞬考えたが、すぐにそれを頭から追いやった。
カイにかかれば、聖騎士ではないただの騎士など物の数に入らないだろう。マーサの盾になろうとしたところで、秒で刀の錆になって終わりである。


「すぐに治療に入り・・・ま・・・」


回復術師達がマーサの容態を見て、言葉を失った。ハルトは能面のような表情で彼女らの様子を眺める。
回復術に詳しくないハルトでもわかっていた・・・マーサは既に絶命しているし、もし瀕死状態で生きていられていたとしても、聖女でもない並の回復術師では傷を癒してやることはできないだろう。


「仕方がないよ・・・これが運命だったんだ」


恐る恐るハルトの表情を伺う回復術師達と騎士に対し、彼はただただ抑揚のない声でそう呟いた。
癇癪を起したい衝動を抑え、泣くのを堪え、ハルトはただただ無表情なままで目を閉じ、少しの間黙っていた。

が、それも本当に少しのこと。
再びハルトは目を開くと、騎士に向かって言った。


「アドル騎士団長に僕自身が報告し、指示を仰ぐ。それまではこの場を封鎖し、マーサのことは一切口外しないこと」


「はっ・・・」


自身の最愛の恋人を失ったというのに、気丈に振る舞うハルトに目頭が熱くなるのを感じながらも、騎士はしっかりと返事をした。
ハルトはすぐに踵を返し、礼拝堂を後にする。振り返ることはしなかった。



ハルトが足を向けてのは法王城。
サンクレアの心臓に今もいるだろうアドルに会うために、ハルトは再び全力疾走でそこへ向かった。


「カイ・・・」


人の目に触れない場に出てから、無表情だったハルトは人前では見せまいと抑えてきた感情を爆発させ、怒りに顔を歪ませていた。


「必ず殺してやる!待っていろ!!」


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