聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

地獄が見える

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ハルトの判断により、アドルの指示を受けるまではマーサの死については秘匿されるはずだった。
今の状況で聖女であるマーサの死が騎士達に知られれば、全軍の動揺を誘い士気に大きく影響してしまうとハルトが考えたからである。
いつかは公表せねばならないことだが、少なくともそれは今ではない。ひとまずはハルトの今後の行動も含め、アドルに指示を仰ごうと思い、行動した。

ハルトの言う通りに礼拝堂は封鎖され、現場にいた者以外は誰一人として彼女の死体を目にしていないので、すぐには誰にもマーサの死を知られるはずはなかった。



だが、マーサの死はどこかの誰かの口から報じられることになった。その悲報は即座に神都中の騎士達に伝わり、封鎖されていたはずの礼拝堂に事実確認しようと無数の騎士達が押し寄せる。


「ここを通せ!聖女様がいるだろう!?安否さえ確認出来ればそれで良い!!」


「だ、駄目だ!今ここはハルト様に通すなと言われているのだ!極秘任務中で・・・」


「一目で良い!いいから通せ!!」


「ま、待て・・・!!」


ハルトの命令を受けて封鎖していた騎士達もその勢いを止めることは出来ず、ついにマーサの死は事実であるとして人々に知られることとなってしまった。


「なんてことだ・・・本当に聖女様が・・・聖女様がお亡くなりになっている・・・」


「ま、待て・・・そういえば聖騎士の姿が無いが・・・」


「まさか聖騎士・・・ハルト様も・・・?」


疑惑が疑惑を呼び、今度は存命のはずのハルトの死亡説まで流れ始めた。


「ハルト様は生きておられる!騎士団長に指示を仰ぎに行っているだけだ!!」


マーサの死の秘匿を命令された騎士は、ハルトは存命であると訴えるが、騎士達は半狂乱になりその言葉を疑った。


「うるさい!聖女様のことだってお前達は黙っていたじゃないか!!」


「そ、それは・・・」


サンクレア騎士団に聖女マーサの死と、存命であるはずのハルトの死亡説が一瞬にして広まった。
当然ながら全軍は動揺し、そこへユーライ国軍が畳みかける。
サンクレア騎士団は大した抵抗も出来ずに、神都内へユーライ国軍の侵入を許すことになり、神都は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


「これで良し・・・」


サンクレア騎士団が総崩れになっているその姿を建物の上から見下ろしているのは、カイの指示によって最初に聖女マーサの死について通達をして回った、ユーライ国軍の斥候であった。
作戦は完了。サンクレア騎士団のかく乱は成功も成功、大成功である。


「カイ殿、ご武運を」


斥候達の仕事はほとんど終えていたが、カイはそうではない。むしろこれからが本番だった。
そんなカイにエールを送り、斥候は大混乱の神都の中へ姿を溶け込ませていった。
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