106 / 203
反逆
災悪の呼び出し
しおりを挟む
「アドル騎士団長!法王様がお呼びです。至急会議室にお越しください!」
アドル達の元にやってきたのは、複数の神殿騎士であった。
最初のカイの襲撃があった時から、サンクレアの心臓を守るためにアドル以外に神殿騎士が隠し通路前で警備していたが、その場にいた騎士も何人かやってきたのがアドルには見えた。
「なんだと?一体どうした?」
アドルが問うが、神殿騎士は
「法王様が直接話されるそうです。至急会議室にお越しください。こちらの警備は我々が引き続き我々が行います」
とだけ言って、アドルの質問には答えない意志が伺えた。
(・・・カイがここに来たとて、最後の扉が開けないうちは大丈夫か。強引に開くにしても、時間はかかるはずだ)
カイが再び現れることを警戒してアドルは戦闘の邪魔になる神殿騎士を遠ざけてまでサンクレアの心臓の警護に当たっていたが、法王が呼んでいるとならばアドルとて無碍にするわけにはいかなかった。
それに代わりにハルトをここに置いておけば、とりあえずのところは安心できるだろう。少なくとも時間稼ぎにはなるはずだ、とアドルは考えた。
しかし神殿騎士が続けた言葉は、そんなアドルの思考を打ち消すものだった。
「聖騎士様もお越し頂きたいとのことです」
ハルトは眉を顰めるだけで特にそれ以外に反応は示さなかったが、アドルは顔をひきつらせた。
(これは、もしや最悪の事態になってしまったかな)
神殿騎士からは用件を聞いていないが、アドルはこの時法王が自分を呼んだ用件についてある程度の予測が既に立っていた。
ーーーーー
「失礼します」
会議室に入室したアドルとハルトを迎えたのは、法王と重鎮達の面々であった。
彼らは緊迫した表情をしており、重苦しい空気が流れていた。
最初に口を開いたのは、大司教だった。
「聖女が反逆者カイによって葬られたと聞いた」
アドルとハルトの表情が歪む。
大司教は淡々と語り続ける。聖女マーサは大司教の娘。自分の娘が死んだというのに、彼は至って冷静に見えた。
「既に城下ではそのことが知られ回っており、騎士団は動揺して総崩れになっている。前衛は間もなく崩壊するだろうとの見通しだ」
「・・・」
アドルもハルトも沈黙している。
事態は想像以上に悪い方向に進んでいることに衝撃を受けているからだ。
「そこで、最悪の事態を想定し、法王城はこれより絶対魔法障壁を張り、籠城することとする」
だが、続いて述べた大司教の言葉に、アドルとハルトは更に衝撃を受けたのだった。
アドル達の元にやってきたのは、複数の神殿騎士であった。
最初のカイの襲撃があった時から、サンクレアの心臓を守るためにアドル以外に神殿騎士が隠し通路前で警備していたが、その場にいた騎士も何人かやってきたのがアドルには見えた。
「なんだと?一体どうした?」
アドルが問うが、神殿騎士は
「法王様が直接話されるそうです。至急会議室にお越しください。こちらの警備は我々が引き続き我々が行います」
とだけ言って、アドルの質問には答えない意志が伺えた。
(・・・カイがここに来たとて、最後の扉が開けないうちは大丈夫か。強引に開くにしても、時間はかかるはずだ)
カイが再び現れることを警戒してアドルは戦闘の邪魔になる神殿騎士を遠ざけてまでサンクレアの心臓の警護に当たっていたが、法王が呼んでいるとならばアドルとて無碍にするわけにはいかなかった。
それに代わりにハルトをここに置いておけば、とりあえずのところは安心できるだろう。少なくとも時間稼ぎにはなるはずだ、とアドルは考えた。
しかし神殿騎士が続けた言葉は、そんなアドルの思考を打ち消すものだった。
「聖騎士様もお越し頂きたいとのことです」
ハルトは眉を顰めるだけで特にそれ以外に反応は示さなかったが、アドルは顔をひきつらせた。
(これは、もしや最悪の事態になってしまったかな)
神殿騎士からは用件を聞いていないが、アドルはこの時法王が自分を呼んだ用件についてある程度の予測が既に立っていた。
ーーーーー
「失礼します」
会議室に入室したアドルとハルトを迎えたのは、法王と重鎮達の面々であった。
彼らは緊迫した表情をしており、重苦しい空気が流れていた。
最初に口を開いたのは、大司教だった。
「聖女が反逆者カイによって葬られたと聞いた」
アドルとハルトの表情が歪む。
大司教は淡々と語り続ける。聖女マーサは大司教の娘。自分の娘が死んだというのに、彼は至って冷静に見えた。
「既に城下ではそのことが知られ回っており、騎士団は動揺して総崩れになっている。前衛は間もなく崩壊するだろうとの見通しだ」
「・・・」
アドルもハルトも沈黙している。
事態は想像以上に悪い方向に進んでいることに衝撃を受けているからだ。
「そこで、最悪の事態を想定し、法王城はこれより絶対魔法障壁を張り、籠城することとする」
だが、続いて述べた大司教の言葉に、アドルとハルトは更に衝撃を受けたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる