聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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反逆

崩壊の終章

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カイが法王の部屋から城下を見下ろしていたそのとき、神都ではここ数日で一番の混乱が起きていた。

この日はユーライ国軍が通達をした王都脱出のために与えた猶予の最終日。最初は神都に残ると決断をしていたはずの民の中にも、土壇場になって脱出を選択する者が増えていたのである。


「皆さん!冷静になってください!!」


王都中にいるラビス教の神官達が必死に叫ぶ。
しかし脱出をしようとしている民は止まらない。むしろ神官達の叫びが脱出民のヒステリーを誘発しているとまで言えた。
いつだって冷静で穏やかに諭していた神官が、必死に叫ぶようになれば「それだけ危ない状況なのでは」という考えに至る者とているだろう。

世界最大最強国家であるはずのサンクレアが、遥か格下であるはずの国に追い詰められて籠城をしているという状況。そして、そんな状況にありながらも、座して何もしない法王城・・・すなわちラビス教会。

「やはり教会は自分達を見捨てたのではないか?」

発端は一人の男の発言だった。
その疑心暗鬼が瞬く間に伝染し、王都に拘るだけの地位も不動産も持たぬ者は我先にと神都を脱出するようになったのである。
残ったのは狂信的とも言えるほどにラビス教徒を信仰している者と、ある程度立場を築いて逃げるに逃げられない神官、そして王都に財を持つ貴族だけである。


それでも王都にはまだ半分強の民が残った。
信仰によって築かれたこの神都の結束は、流石に簡単には崩壊し切ることはなかった。

だが、聖騎士団からの離反者が多かったことは副騎士団長からしても痛手であった。
聖騎士団からの離反者が多く、極めて甚大な影響を及ぼしている。そしてその事実は騎士達の士気を大いに下げた。
翌日から行われる可能性のあるユーライ国軍からの総攻撃に対し、もはや抗う術などないのではないか?そんな空気が満ち、サンクレア聖騎士団は戦う前から既に負けムードが漂っている。サンクレアの取り囲む外壁が、ユーライ国軍の総攻撃などたやすく跳ね返す・・・現実的に考えればそうなるはずだった。
だが、その外壁でさえ次の瞬間には破られるのではないか。そしてそこから敵軍がなだれ込み、一人残らず蹂躙されていく・・・
そんな不安に押しつぶされた騎士が、次から次へとユーライ国へ投降していった。

城下は実質、落ちたも同然であった。
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