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反逆
二人の癒えぬ傷
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幼き頃からの想い人をよりによって闘争心を燃やしていた相手に取られたミカエルは、深い深い絶望の淵に沈んだ。以前は毎日暇さえあれば剣を振っていたが、それを止め、ただただ無気力に過ごす日々を送った。
想いを伝えることなく、ただただアドルを倒してからという自己満足のために機会を不意にし続けていたミカエルに対し、事情を知る者達は「自業自得だ」と詰る。
騎士として心が折れ、誰もがミカエルは終わりだと思ったが、しかししばらくして彼は頭を切り替え復活を遂げた。
それからのミカエルは人が変わったようだった。
以前は剣の実力を誇り、高圧的なところがあったが、そういったものが鳴りを潜め、随分と人間として角が取れたように変貌したのである。
だが、決してアドルに対しての因縁が消え去ったわけではない。ただアドルを社会的に蹴落とすためのアプローチの方向を変えたのだ。
人望を得るようになったミカエルは、出世するためにできることは何でもやった。誰に取り入れば出世するか、どの派閥を選ぶべきか、ミカエルは剣こそアドルには勝てなかったが、そうした時流を読む力には長けていたようで、結局アドルよりもかなり早く昇進を重ね、そしてアドルの聖騎士選出の阻止も果たすことが出来た。
アドルの計算になかったのは、カトレアを妻にすることでミカエルの心を折るどころか、復讐心を煽りアドルの人生を狂わせたことだった。
聖騎士になれるはずだった。実際、他の候補はアドルに剣術で及ぶことはなかった。
しかしそれでも聖騎士に選ばれることはなかった。ミカエルの妨害によって。
結局、アドルはかつてのミカエルと同じほどの絶望を味わい、二人して生涯癒えぬ心の傷を負うことになった。
未曾有の非常事態であるにも関わらず、協力し合えない理由がここにある。
想いを伝えることなく、ただただアドルを倒してからという自己満足のために機会を不意にし続けていたミカエルに対し、事情を知る者達は「自業自得だ」と詰る。
騎士として心が折れ、誰もがミカエルは終わりだと思ったが、しかししばらくして彼は頭を切り替え復活を遂げた。
それからのミカエルは人が変わったようだった。
以前は剣の実力を誇り、高圧的なところがあったが、そういったものが鳴りを潜め、随分と人間として角が取れたように変貌したのである。
だが、決してアドルに対しての因縁が消え去ったわけではない。ただアドルを社会的に蹴落とすためのアプローチの方向を変えたのだ。
人望を得るようになったミカエルは、出世するためにできることは何でもやった。誰に取り入れば出世するか、どの派閥を選ぶべきか、ミカエルは剣こそアドルには勝てなかったが、そうした時流を読む力には長けていたようで、結局アドルよりもかなり早く昇進を重ね、そしてアドルの聖騎士選出の阻止も果たすことが出来た。
アドルの計算になかったのは、カトレアを妻にすることでミカエルの心を折るどころか、復讐心を煽りアドルの人生を狂わせたことだった。
聖騎士になれるはずだった。実際、他の候補はアドルに剣術で及ぶことはなかった。
しかしそれでも聖騎士に選ばれることはなかった。ミカエルの妨害によって。
結局、アドルはかつてのミカエルと同じほどの絶望を味わい、二人して生涯癒えぬ心の傷を負うことになった。
未曾有の非常事態であるにも関わらず、協力し合えない理由がここにある。
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