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反逆
アドルの誇り
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ミカエルと別れた後、アドルは神殿騎士によってサンクレアの心臓に近い部屋をあてがわれた。
適当に案内されたそこは倉庫の一室であったが、戦場を渡りに渡り、どこでも休息を取ることの出来るアドルからすればどこであろうと関係ない。
大事なのは「他人の目の無いところ」を確保することだからだ。
アドルは部屋の扉を閉めると、おもむろに鞘から刀身を引き抜いた。
僅かに青白く輝くその剣は『アスカロン』。歴代の騎士団長がその任を拝命するとき、法王の命の元に先代から受け継がれる名剣である。
聖騎士の持つ聖剣や、サンクレアが厳重に管理するラグナロクほどの力は無いだろうとされているが、それでもそれに次ぐ強さを持った剣だと言われており、実際にアドルはこのアスカロンを振るい、戦場で大型で強力な魔族を何百体と屠ってきた。
しかしいくら名剣といえど、手入れは怠ってはならない。ましてこれから強力な敵と戦うことになるだろうとわかっている故に、尚更準備は念入りにしなければならないとアドルは考え、そしてこの場でそうすると決めた。
アドルはアスカロンを握り、目を閉じて念じる。
ぼぅっと手先が熱くなり、アドルの剣を握る手が光ったかと思うと、アスカロンの刀身もまばゆいばかりの光を放ち始め、やがて部屋全体が光で包まれた。
「っ!!」
アドルが僅かに息を飲む。
アスカロンの手入れとは、基本的に持ち主の『気』を流し込むというものである。
アスカロンは剣そのものの切れ味のみで性能を発揮するのではない。持ち主の気を流し込み、それを纏うことで強力な力を発揮するのである。生半可な気では剣は力を発揮するどころか、逆に持ち主の生気を吸い取ってしまうとされている。また、気を流し込んでいる最中に集中が切れても同じことになるという。
強い精神力と高い気を持つ豪の者でしかアスカロンは使いこなすことは出来ない。アスカロンが使えなくなるほど衰えた時、騎士団長は任を降り、アスカロンは次の世代に引き継がれることになる。
アドルは歴代騎士団長の中でも最長在任記録を更新中であった。
だが、年々この「手入れ」がキツくなっていくのがはっきりアドルにはわかっている。もしかしたら、これがアスカロンを最後に使うときかもしれない。アドルはそう感じたが、迷いは一切なかった。
己が持つ全てを、カイにぶつけるーー その一心でアドルは一点の乱れなくアスカロンに気を注入させた。
これだけの気を遣うアスカロンである。アドルはこのアスカロンを手に出来たことに誇りを持っていた。
しかしいくら聖剣に劣るとはいえ、このアスカロンを有象無象のナマクラだと言い放ったカイに対するアドルの怒りは深い。
アドルは楽しみだった。
このアスカロンでカイの命を奪うことが。
自分の屈辱を晴らすそのときが。
適当に案内されたそこは倉庫の一室であったが、戦場を渡りに渡り、どこでも休息を取ることの出来るアドルからすればどこであろうと関係ない。
大事なのは「他人の目の無いところ」を確保することだからだ。
アドルは部屋の扉を閉めると、おもむろに鞘から刀身を引き抜いた。
僅かに青白く輝くその剣は『アスカロン』。歴代の騎士団長がその任を拝命するとき、法王の命の元に先代から受け継がれる名剣である。
聖騎士の持つ聖剣や、サンクレアが厳重に管理するラグナロクほどの力は無いだろうとされているが、それでもそれに次ぐ強さを持った剣だと言われており、実際にアドルはこのアスカロンを振るい、戦場で大型で強力な魔族を何百体と屠ってきた。
しかしいくら名剣といえど、手入れは怠ってはならない。ましてこれから強力な敵と戦うことになるだろうとわかっている故に、尚更準備は念入りにしなければならないとアドルは考え、そしてこの場でそうすると決めた。
アドルはアスカロンを握り、目を閉じて念じる。
ぼぅっと手先が熱くなり、アドルの剣を握る手が光ったかと思うと、アスカロンの刀身もまばゆいばかりの光を放ち始め、やがて部屋全体が光で包まれた。
「っ!!」
アドルが僅かに息を飲む。
アスカロンの手入れとは、基本的に持ち主の『気』を流し込むというものである。
アスカロンは剣そのものの切れ味のみで性能を発揮するのではない。持ち主の気を流し込み、それを纏うことで強力な力を発揮するのである。生半可な気では剣は力を発揮するどころか、逆に持ち主の生気を吸い取ってしまうとされている。また、気を流し込んでいる最中に集中が切れても同じことになるという。
強い精神力と高い気を持つ豪の者でしかアスカロンは使いこなすことは出来ない。アスカロンが使えなくなるほど衰えた時、騎士団長は任を降り、アスカロンは次の世代に引き継がれることになる。
アドルは歴代騎士団長の中でも最長在任記録を更新中であった。
だが、年々この「手入れ」がキツくなっていくのがはっきりアドルにはわかっている。もしかしたら、これがアスカロンを最後に使うときかもしれない。アドルはそう感じたが、迷いは一切なかった。
己が持つ全てを、カイにぶつけるーー その一心でアドルは一点の乱れなくアスカロンに気を注入させた。
これだけの気を遣うアスカロンである。アドルはこのアスカロンを手に出来たことに誇りを持っていた。
しかしいくら聖剣に劣るとはいえ、このアスカロンを有象無象のナマクラだと言い放ったカイに対するアドルの怒りは深い。
アドルは楽しみだった。
このアスカロンでカイの命を奪うことが。
自分の屈辱を晴らすそのときが。
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