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反逆

これで最後だ

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(ほぉ、これはひどい・・・)


神殿騎士の仮面をかぶり、簡単な変装をして王の部屋から出たカイは、混乱に満ちた城内を見回して溜め息をついた。
まず城内にて警備をしている兵の数が半分以下に減っていた。それ以外の兵は壁を背にして蹲り、ブツブツと何かつぶやいていたり、城内にある礼拝堂で祈っていたり、そこかしこの部屋から物品を持ち出したりと混乱の極みに達していた。

結界を張った法王城で絶対なる安全地帯にいると思っていたら、むしろ最も危ないところに閉じ込められてしまっていたと、疑心暗鬼の思いが感染していた。

アドルとミカエルの両名の死はそれほどに法王城内を混乱に陥らせた。
せめてどちらかが生きていれば、まだ鎮めることが出来たであろう。これがカイがミカエルをも殺した理由だった。
既に法王城内の警備はザルどころの話ではない・・・むしろ警備すべき神殿騎士が暴動を起こし始めている地獄絵図と化している。

以前ハルトに対してサンクレアの心臓の警護に関して揉めていたプライドの高い神殿騎士も、今は法王城を取り囲んでいる結界を解除すべきだと幹部連中の立てこもる上層階に詰め寄っているくらいであった。


「こうなれば邪魔はないだろう」


簡単な変装だけで、いともあっけなくカイはサンクレアの心臓の近くまで辿り着くことができた。
もしかしたら変装なぞしなくても、誰にも気づかれずに来られたかもしれない・・・そう考えてしまうほど、城内の騎士達は己が任務を放棄している者で溢れかえっていた。

とはいえ、カイにはそんな神殿騎士達をそこまで責める気にはなれなかった。自分とて己が恋人の命のために、矜持と任務を捨てて国に反旗を翻したのだから。

そして、これからこの国を崩壊させようとしているのだから。








「・・・やぁ、遅かったね。カイ」


法王城は混乱に陥っているというのに、場違いとさえ言えるほど落ち着き払ったハルトがサンクレアの心臓の部屋の前にいた。
無表情に見えるが、ほんの僅かに微笑んでいるようにも見える。


「すまないな。いろいろが多くてさ」


カイは歩きながら聖剣を引き抜いて言った。


「これで最後だ。ハルト」
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