聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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終焉

本当は強い女、いいえ・・・

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バキィィィ


カイが手枷をつけた、無防備なはずの女を斬り捨てようと聖剣を振り下ろしたその瞬間・・・

カイの体が物凄い勢いで後方へ吹っ飛んでいくのをハルトは目撃した。


「なっ!?」


女神ラビスに似た・・・もしくは本物と思わしき麗しい女が、斬り捨てられて血を流すという最悪な光景を想像していたハルト。だが、実際はまさか逆に剣を振り降ろそうとしたカイが吹き飛んでいくなどとは、思いもよるはずがない。


「愚かな」


先ほどまでの弱弱しい声から一転。
底冷えするような圧を持つ声で、女はそう言った。


「え・・・?」


ハルトは女を見て目を見張った。
彼女の両手についていたはずの枷がいつの間にか消えていたのだ。
へたり込んでいた姿勢からいつの間にか立ち上がっており、仁王立ちになっていた。

その風格たるや、まるで一騎当千の魔物や騎士であるかのような、有無を言わせぬ迫力を持っていた。
先ほどまでが「神々しい」圧を放っていたとしたら、今は「恐ろしい」圧だ。
かつてハルト達が相対した魔族の王・・・魔王のそれよりも圧倒的な恐怖を感じる威圧感を持っている。


「はぁ、まぁ、それくらいの跳ねっ返りでなければ、ここに踏み入れようなどとは思わないでしょうが」


溜め息をつきながら、美しく・・・だが、どこか禍々しくも見える笑みを浮かべて女が言った。

ペタ・・・ペタリ・・・


裸足のまま、女はゆっくりと吹き飛んだカイの元へ近づいていく。
呆然としているハルトなど目にも入っていないかのように、悠然とその横を素通りしていった。

ハルトは信じられないものを見ているといった顔で、唇をわななかせた。

ハルトは確かに見た。
カイが剣を振り降ろした瞬間、女はまるで虫を払いのけるかのように腕を振り、カイをたやすく薙ぎ払ったところを。


「やっぱり・・・ただの女じゃねぇじゃねぇか・・・」


ダメージを受けたもののカイは意識を失ってはいないようで、ゆっくりと立ち上がった。


「もちろん。私は貴方がたの呼ぶところの『女神ラビス』ですから。下賤な人間などと一緒にしてもらっては不愉快です」


立ち上がるカイを、つまらないものを見る目で女・・・ラビスはそう言った。

実際にラビスと名乗ったことに、カイとハルトは少なからず動揺する。
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