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終焉

絶対的優位ゆえの油断

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「お前、人間をやめるつもりかよ!お前をそんな姿にする神様を本当に信奉するつもりなのか!?」


「カイ・・・君を倒せるのならばそれでいい。それを叶えてくれるラビス様は、間違いなく僕が信奉すべき絶対的な存在だ!」


カイの問いに、ハルトは迷うことなくそう答えた。


そして



「!!」


それは一秒にも満たない一瞬のことだった。
ハルトはコマ落としのような速さでカイに迫ると、剣と化した自らの右腕を振り降ろした。


「くっ」


すんでのところでカイはハルトの一撃を躱す。だがハルトのスタイルは二刀流。両腕が剣と化したハルトはそのまま連続でカイに対して斬りかかる。


キィン


カイは聖剣でそれを防ぎながら、どうにか距離を取った。



(速いな)


元よりハルトの剣は瞬速の剣。だが、今はその速さに更に磨きがかかっていた。


「流石僕の体の一部。あっと言う間に僕のスタイルに馴染んだよ・・・」


体を異形に変えられこそすれ、やはり自分の体そのものが得物になったことでフィーリングが抜群になっているのか、ハルトの剣術は格段の向上を見せていた。


「ちっ!少しは戸惑いをみせろってんだよな!」


マトモな神経をしていれば、自分の体が異形にあれば少なからず戸惑い、そこに隙が生まれるはずだとカイは考えていたが、ハルトはむしろ今こそが絶好調と言わんばかりの有様であり、この状況にむしろカイが焦りを感じていた。


「どうしたカイ?君らしくもないね。焦りが顔に出ているよ」


ハルトは微笑を浮かべながらカイに迫る。



(らしくねぇ。自分があまりに優位だと思って、余裕をかましてやがるな)


カイは焦ってはいたが、それと同時にハルトに付け入る隙を発見してもいた。
自身のパワーアップにテンションが上がり切り、ハルトは従来の彼ならばあり得ないことをした。余裕をかまし、相手を見下すという愚行を。
戦いでは僅かな慢心が敵に付け込まれる隙を作ることになる。カイなんかはそれを利用して相手を揺さぶる戦法が得意だ。

だが、真面目なハルトは敵を揺さぶるといったことが苦手だ。だからこそ、ハルトは『絶対に自分のペースを乱さない』というスタイルを貫くことを決めていたのだ。油断しない、感情に動かされない、常に冷静であれ・・・それがハルトの戦闘スタイルだった。

それが今のハルトはすっかりそのスタイルを忘れてしまっている。
あるいは異形になったことで、精神にも何かしらの影響が出ているのかもしれない。

そこがチャンスだとカイは思った。
いかに肉体が優れていようと、いかに優れた得物を持っていようと、使い手の精神が未熟であるならば付け入る隙はいくらでもある・・・かつてアドルにカイが教え込まれたことだった。

異形になることで戦闘能力が格段に向上したはずのハルトだが、アドルの教えも自らの矜持すら忘れている彼を、カイは不思議なことに脅威に感じなくなっていた。
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