聖騎士は 愛のためなら 闇に墜つ

はにわ

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終焉

崩壊を観る者

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「どうしたものかな」


サンクレアを包囲していたユーライ国軍の前衛隊長は、望遠鏡でサンクレアの様子を覗き見ながら呟いた。
法王城はここ最近、結界を張ることで籠城をしていたのだが、予定していたよりもかなり早い段階でそれを解いたのがユーライ国軍側には不思議でならなかった。

法王城・・・結界の外のいたサンクレアの騎士達は、自分達を見捨てて籠城しだした本部に絶望し、そのほとんどが投降して無力化された。結局ユーライ国軍が攻め入るまでもなく、サンクレアは法王城を残してほとんど陥落しているような状態になっている。
まだいくらか騎士は残っているようであるが、今なら攻め入ればあっと言う間に制圧できるだろうと考えていた矢先-- 法王城の結界が解かれたことで、今一度出方を伺わねばなるまいと、攻勢に出るのを中止したのだ。

法王城にはサンクレアの切り札である神殿騎士が控えている。
結界を解いたのは、彼らによる反撃の準備が整ったからではないかという憶測があり、十分にその動向を注視すべきだと考え、ユーライ国軍は反撃に備えていた。


しかし、いざ観察してみると不可思議なことが起きているのがわかった。
法王城の結界が解かれるや否や、騎士も神官も散り散りに逃げ出すように城を飛び出してきたのである。統率の取れた動きではなく、むしろ脱走兵にしか見えないものであり、到底軍事作戦の最中であるようには見えなかったのだ。


「何をやってるんだあれは」


観察していた前衛隊長は、呆れて声を洩らす。
法王城から飛び出してきた神殿騎士達は、戦うどころかサンクレア城下町に守備として残っていた騎士達と衝突をしているのが見えた。
自分達を見捨てた神殿騎士が今更ノコノコと出てきたのだから、外でいつ押し寄せるかわからぬユーライ国軍を迎撃するために気を張っていた騎士達が怒るのは無理もない。
神殿騎士達はユーライ国軍より前に、仲間であった騎士達との争いになるのではないかと思われる様子であった。


「法王城で混乱があったのではないでしょうか。もしかしたら、カイ殿の功績かもしれませぬ」


側近の言葉に、隊長は「うむ」と漏らしてからゆっくりと頷いた。


「今が機かもしれん。もう既に退去するために与えた猶予期間は過ぎた。攻め入るぞ」


サンクレアが混乱し、法王城の結界が消えた今、これが機と捉えた隊長はサンクレアへの進軍を本隊へ具申することにした。


だが、結局のところ、ユーライ国軍がサンクレアへ攻め入ることはなかった。
別の要因でサンクレアが滅ぶことになったからである。
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