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終焉
放心したハルト
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サンクレアが阿鼻叫喚の地獄になっているその頃、カイに深手を負わされ、満足に動けなくなっていたはずのハルトがよろよろと弱弱しい足取りで法王城を歩いていた。
並の人間なら致命傷でとうに死んでいただろうが、皮肉にも偽女神ラビスによって力を与えられたハルトは死ぬことなく生きていることが出来た。
「ははっ・・・」
自分の体の異変に気付いたハルトは、自傷気味に笑った。
どうあっても助からない深手。止まらない出血。
聖騎士として戦場を駆け巡り、様々な死を見て来たハルトは「これは助からない」と自身の死を確信していた。
無念といえば無念だが、結局自分の信じた偽物の正義がカイの未来を望む強い執念に負けた・・・それだけのことだと諦めの境地に達していた。
・・・はずだった。
だが、ハルトの心臓は止まることはなく、むしろ傷口が再生していくのを感じた。
失われたはずの血が体内で作られているのがわかる。ありえない。こんなのは人間じゃない。
自分の体はここまでおかしくなったのかと思うと、乾いた笑いが止まらなかった。
敬虔なラビス教信者として、教えを守るための戦う騎士として命を捧げて戦ってきた自分が、神敵として滅した魔物と同等か、それ以上に悍ましい体になってしまったのだ。
そしてその体故に命が救われた。こんな皮肉な話はないと、もう笑うしかなかった。
「どうしたものかな・・・ははっ・・・」
死は免れるようだが、生きていて一体何になるのか。
最愛の恋人は失われ、体は化け物と化している。
信じるべき神は偽物で、既に滅んでしまっている。
もう生きている意味すらハルトにはなかった。
そんなハルトは当ても無くフラフラとただ歩いている。そういうしていると、いつの間にかハルトはサンクレアの心臓へと続く隠し通路を抜け、がらんどうとしていて人一人いない法王城内をどこへともなく歩いていた。
そうしていると、やがて上の階が騒がしいことに気が付いた。
「・・・え?」
放心していたハルトの意識がそこで呼び戻されることになった。
自分の今いる階に人の気配がない・・・これが異様なことであることに、このときになって気が付く。
そしてそこで初めて視界に入るのは、何人、何十もの騎士や神官など、法王城に仕える人間達の死体だった。
並の人間なら致命傷でとうに死んでいただろうが、皮肉にも偽女神ラビスによって力を与えられたハルトは死ぬことなく生きていることが出来た。
「ははっ・・・」
自分の体の異変に気付いたハルトは、自傷気味に笑った。
どうあっても助からない深手。止まらない出血。
聖騎士として戦場を駆け巡り、様々な死を見て来たハルトは「これは助からない」と自身の死を確信していた。
無念といえば無念だが、結局自分の信じた偽物の正義がカイの未来を望む強い執念に負けた・・・それだけのことだと諦めの境地に達していた。
・・・はずだった。
だが、ハルトの心臓は止まることはなく、むしろ傷口が再生していくのを感じた。
失われたはずの血が体内で作られているのがわかる。ありえない。こんなのは人間じゃない。
自分の体はここまでおかしくなったのかと思うと、乾いた笑いが止まらなかった。
敬虔なラビス教信者として、教えを守るための戦う騎士として命を捧げて戦ってきた自分が、神敵として滅した魔物と同等か、それ以上に悍ましい体になってしまったのだ。
そしてその体故に命が救われた。こんな皮肉な話はないと、もう笑うしかなかった。
「どうしたものかな・・・ははっ・・・」
死は免れるようだが、生きていて一体何になるのか。
最愛の恋人は失われ、体は化け物と化している。
信じるべき神は偽物で、既に滅んでしまっている。
もう生きている意味すらハルトにはなかった。
そんなハルトは当ても無くフラフラとただ歩いている。そういうしていると、いつの間にかハルトはサンクレアの心臓へと続く隠し通路を抜け、がらんどうとしていて人一人いない法王城内をどこへともなく歩いていた。
そうしていると、やがて上の階が騒がしいことに気が付いた。
「・・・え?」
放心していたハルトの意識がそこで呼び戻されることになった。
自分の今いる階に人の気配がない・・・これが異様なことであることに、このときになって気が付く。
そしてそこで初めて視界に入るのは、何人、何十もの騎士や神官など、法王城に仕える人間達の死体だった。
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