新訳・親友を裏切った男が絶望するまで

はにわ

文字の大きさ
49 / 92

覚醒

しおりを挟む
「なんだこれは・・・」


ルーチェ国に出向き『行動』を起こすべく自身のコンディションを確認すると、俺の体から今までになかっただけの魔力が溢れているのを感じた。
これまでの俺ならばどれだけの修練を積んでも身に着かなかっただろうはずの魔力量が、俺の体に満ち足りているのがわかった。


「馬鹿な・・・これだけの力が何故・・・?」


突然何かをきっかけにして目覚めたというのか?しかし何故?
もちろん自身の魔力量が爆増すること自体は悪いことではないが、理由がわからず不気味であった。


「それは私とを結んだからですわ」


訳が分からず混乱している俺にアリス様が言った。


「契約・・・ですか?」


アリス様が俺の現状を把握をしていることに驚きつつも、彼女の言葉の意味を考える。
うん、さっぱりわからん。


「ルーチェの王族に伝わる力です。自分の信頼する臣下に対し、を成すことでその者の持つ力を潜在能力を超えるだけの量を増大させることができるのです。たった一人までですが」


「なんと・・・王族にまさかそんな力が・・・」


なるほど、今の俺の増大した力は、アリス様の能力が与えてくれたものなのか。


「レイツォが喜ぶかと思い、私から一方的に勝手に結んでしまった契約でしたが、ご迷惑でしたか?」


不安そうにそう言うアリス様に対し、俺は首を振った。不満などあるはずもない。


「いいえ、ありがとうございます。私は果報者です。これだけのアリス様のお心づかいを頂けるなど!」


アリス様は「一人まで」と限定された力を俺のために使ってくれ、俺は莫大な力を期せずして手に入れた。この力はこれからの俺に必要なものだ。感謝の気持ちがあれど、迷惑などととんでもない。


「アリス様。これから私は少しだけ外に出て参ります・・・お待ちいただけますでしょうか?」


「はい。レイツォの帰りをお待ちしております」


すぐに王城に帰らないことに対し、どう説明したものかと思っていたものの、アリス様は特にその辺の話をしてくることはなく、素直に頷いてくれた。
・・・もしかしたら、どこかしら俺の考えていることを理解しているのかもしれない。

俺はすぐ様部屋を飛び出した。
時間をかければ王都からアリス様の捜索隊が出されてしまうことだろう。その前に俺は目的を果たさねばならない。
急いで王城へ・・・と考えていると、ふと俺は直感的にある能力が備わっていることに気付いた。


「これは・・・」


俺は自身の状況に驚愕した。
なんと俺の体が宙に浮いているのだ。かつて高位の魔術師も使うことが出来たという浮遊術。どうやらアリス様の力で魔力の増大した今の俺ならば、この伝説だった浮遊術を自在に使いこなすことが可能なようだ。


「フフ・・・フハハ」


思わず俺の口から笑いが漏れていた。


「フゥーッハハハ!俺は、俺は今度こそお前を超えたぞ!ディオーーーッ!!」


浮遊術を使い、俺はルーチェ城を目指した。数刻もしないうちに余裕でルーチェ城までたどり着けるだけの速度だった。


「これまで散々俺に惨めな思いをさせてきた報いを受けるがいい!の時間だ!!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...